傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

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第51話 初戦

「ガハハ、今日こそ俺が全員を殺ってやるぜ! この、最強の大剣でなァ!」

「前回の屈辱を果たす時がきました」

「……全員殺す」

 

 闘技場の控室は、何というか豊富なキャラクターの面々をお楽しみください、といわんばかりにウィットに富んでいた。

 

 大剣を持っている男の身長は、2メートルは超えているだろう。

 それは 剣と言うには あまりにも大きすぎた、感じがある。

 

 続く隣の人は、名門剣道大会で才能が溢れていそうな黒髪の男性だった。

 日本刀ではなく洋刀だが、明らかに強いとわかる。

 

 最後に物騒なことを言い放っていたのは、黒装束に身を包んでいる。

 男女かどうかわからないが、武器は持っていない。

 暗器の使い手なのだろうか。一応、それも剣術なのか……?

 

 エリオットの姿はなかった。周りの言葉から察するに、他国の優勝者や過去に良い成績を収めたものはシード権が与えられて、別室があるらしい。

 どうやら、ケータリングもあるとか。

 

「生ハムメロンがあったらしいぜ」

「俺が聞いたは話では、美女が世話係しているとか」

「噂によると美女がマッサージしてくれるらしいぜ」

 

 結果を残して来年も出よう。頑張るぞ。

 生ハムメロンが食べてみたい。絶対にそれだけは外せない。

 ほかに何かあっても、そっちには興味がない。

 

『――ベルク様』

 

 そのとき、声が聞こえた。

 慌てて振り返るも、そこにレナセールはいない。

 

 幻聴か……?

 

 邪な気持ちを抱いたら脳内に響き渡る道具を開発した? いや、そんなバナナ。

 

 ……無心でいよう。

 

「――ベルク・アルフォンさん」

「はい?」

「出番ですよ! 早く出ないと棄権になりますよ!」

「え、は、はい!?」

 

 気づけば無心になりすぎていた。

 

 静かに深呼吸する。入口から外に出ると、闘技場だ。

 周りの男たちが、俺を見て笑っていた。

 

「終わったなあいつ」

「ああ、完全にな」

「錬金術って噂だぜ。売名行為か?」

 

 今ここにレナセールがいれば、もしかしたら彼らの指を切り落としていたのかもしれない。

 そう思うと、ふふっと笑みがこぼれてきた。

 

 ああ、ありがたい。彼女は、どこにいても俺を支えてくれている。

 

「――見ていろ」

 

 俺は、それだけ言い残した。

 普段なら発言しない言葉だ。だが、今日は違う。

 

 闘技場に近づくと、歓声が凄まじい。

 

 大勢が俺を見ていた。まるで世界の中心にいるようなほど視線を感じ、声が聞こえる。

 

 これが、大会というやつなのか。

 

 不思議と緊張はなく、想像よりもワクワクしている。

 これもきっと師匠のおかげだ。

 

 修行の一環で、魔物に囲まれたことがある。

 どんな時も平然といられるのかのテスト。

 それに比べたらどうってことない。

 

「よォ、残念だったなアンちゃん。棄権するなら今のうちだぜ?」

 

 闘技場の上。目の前には、さっきの大男が立っていた。

 大剣が凄まじく目立つ。彼が相手だったとは。

 

「悪いがそれはしない。君も今なら間に合うぞ」

「はっ、ほざけカスが」

 

 どうやら粗暴な輩のようだ。

 審判が立っていた。ルールが読み上げられる。

 殺すのはなしで、降参でも勝利。

 

 おもしろいのは、相手の武器を破壊したら強制的に勝利ということだ。

 剣術大会と言われているだけあって、様々な武器を見られることが大会の愉悦。

 そしてそれが破壊されるのも醍醐味ということだろう。

 

 俺は、侍のように腰の鞘に日本刀を納刀していた。

 このスタイルは異世界で未だ見たことがない。

 

『それでは始まります。錬金術師のベルク・アルフォンは、今年が初出場です! 何とお手製の武器での登場! 果たして剣技はどうなのか? 対してガルドウスは、前回準優勝まで上り詰めた武器破壊の天才です! 剛腕と大剣から繰り出される一撃、今年も暴れてくれるでしょう!』

 

 なるほど、自信満々だったのはそういうことだったのか。

 

 ――なら、手加減は必要ないか。

 

「――悪いがあんちゃん、自慢の武器とやらを抜く暇すらあたえねえぜ!」

 

 試合の鐘がなると、大男は俺をめがけて一直線に駆けてきた。

 デカい身体にもかかわらず、スピードもあるらしい。

 ドシドシと闘技場が揺れる。

 

 心は穏やかだ。全てがゆっくりに視える。

 

 

 ――レナセール、頑張っているか? 俺は、これから名を轟かせるぞ。

 

 

「馬鹿が、死ね!」

「――ああ、お前がな」

 

 そして俺は、抜刀した。

 まるで時が止まったかのようだ。波紋が綺麗にキラリと光っている。

 

 魔力が漲っているのがわかった。

 ただゆっくり、相手の武器をめがけて、受け止めるように横に滑らせる。

 ぶつかり合うのではなく、俺の剣がズブズブとめり込んでいく。

 

 そして――真っ二つに切り裂いた。

 

「な……んだと!?」

「鈍らだな」

 

 それから二激目、柄の部分を狙って、大剣を完全に破壊した。驚いた大男が武器を手放す。武器が重力で落ちると、轟音を響かせた。

 誰の目から見ても武器が破壊されたとわかるだろう。そして次の瞬間、審判が声を上げた。

 

『な、な、何ということだあああああああああああああああ!? 去年、多くの武器を破壊した大剣が、見るも無残の姿に!?』

 

 そして俺は、静かに目配せする。審判が、更に声をあげた。

 

『どうみてもこれは戦闘不能です! しょ、勝者、ベルクううううううううううう・アルフォン!!!!』

 

 次の瞬間、歓声が上がった。

 盛り上がりは最高潮だ。

 

 

 エリオットはどこかで見ているだろう。

 

 

 レナセールの第一試験も始まったくらいか。

 

 

 ――さあ、ここからがはじまりだ。

 

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