傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する? 作:名無しさん
「ガハハ、今日こそ俺が全員を殺ってやるぜ! この、最強の大剣でなァ!」
「前回の屈辱を果たす時がきました」
「……全員殺す」
闘技場の控室は、何というか豊富なキャラクターの面々をお楽しみください、といわんばかりにウィットに富んでいた。
大剣を持っている男の身長は、2メートルは超えているだろう。
それは 剣と言うには あまりにも大きすぎた、感じがある。
続く隣の人は、名門剣道大会で才能が溢れていそうな黒髪の男性だった。
日本刀ではなく洋刀だが、明らかに強いとわかる。
最後に物騒なことを言い放っていたのは、黒装束に身を包んでいる。
男女かどうかわからないが、武器は持っていない。
暗器の使い手なのだろうか。一応、それも剣術なのか……?
エリオットの姿はなかった。周りの言葉から察するに、他国の優勝者や過去に良い成績を収めたものはシード権が与えられて、別室があるらしい。
どうやら、ケータリングもあるとか。
「生ハムメロンがあったらしいぜ」
「俺が聞いたは話では、美女が世話係しているとか」
「噂によると美女がマッサージしてくれるらしいぜ」
結果を残して来年も出よう。頑張るぞ。
生ハムメロンが食べてみたい。絶対にそれだけは外せない。
ほかに何かあっても、そっちには興味がない。
『――ベルク様』
そのとき、声が聞こえた。
慌てて振り返るも、そこにレナセールはいない。
幻聴か……?
邪な気持ちを抱いたら脳内に響き渡る道具を開発した? いや、そんなバナナ。
……無心でいよう。
「――ベルク・アルフォンさん」
「はい?」
「出番ですよ! 早く出ないと棄権になりますよ!」
「え、は、はい!?」
気づけば無心になりすぎていた。
静かに深呼吸する。入口から外に出ると、闘技場だ。
周りの男たちが、俺を見て笑っていた。
「終わったなあいつ」
「ああ、完全にな」
「錬金術って噂だぜ。売名行為か?」
今ここにレナセールがいれば、もしかしたら彼らの指を切り落としていたのかもしれない。
そう思うと、ふふっと笑みがこぼれてきた。
ああ、ありがたい。彼女は、どこにいても俺を支えてくれている。
「――見ていろ」
俺は、それだけ言い残した。
普段なら発言しない言葉だ。だが、今日は違う。
闘技場に近づくと、歓声が凄まじい。
大勢が俺を見ていた。まるで世界の中心にいるようなほど視線を感じ、声が聞こえる。
これが、大会というやつなのか。
不思議と緊張はなく、想像よりもワクワクしている。
これもきっと師匠のおかげだ。
修行の一環で、魔物に囲まれたことがある。
どんな時も平然といられるのかのテスト。
それに比べたらどうってことない。
「よォ、残念だったなアンちゃん。棄権するなら今のうちだぜ?」
闘技場の上。目の前には、さっきの大男が立っていた。
大剣が凄まじく目立つ。彼が相手だったとは。
「悪いがそれはしない。君も今なら間に合うぞ」
「はっ、ほざけカスが」
どうやら粗暴な輩のようだ。
審判が立っていた。ルールが読み上げられる。
殺すのはなしで、降参でも勝利。
おもしろいのは、相手の武器を破壊したら強制的に勝利ということだ。
剣術大会と言われているだけあって、様々な武器を見られることが大会の愉悦。
そしてそれが破壊されるのも醍醐味ということだろう。
俺は、侍のように腰の鞘に日本刀を納刀していた。
このスタイルは異世界で未だ見たことがない。
『それでは始まります。錬金術師のベルク・アルフォンは、今年が初出場です! 何とお手製の武器での登場! 果たして剣技はどうなのか? 対してガルドウスは、前回準優勝まで上り詰めた武器破壊の天才です! 剛腕と大剣から繰り出される一撃、今年も暴れてくれるでしょう!』
なるほど、自信満々だったのはそういうことだったのか。
――なら、手加減は必要ないか。
「――悪いがあんちゃん、自慢の武器とやらを抜く暇すらあたえねえぜ!」
試合の鐘がなると、大男は俺をめがけて一直線に駆けてきた。
デカい身体にもかかわらず、スピードもあるらしい。
ドシドシと闘技場が揺れる。
心は穏やかだ。全てがゆっくりに視える。
――レナセール、頑張っているか? 俺は、これから名を轟かせるぞ。
「馬鹿が、死ね!」
「――ああ、お前がな」
そして俺は、抜刀した。
まるで時が止まったかのようだ。波紋が綺麗にキラリと光っている。
魔力が漲っているのがわかった。
ただゆっくり、相手の武器をめがけて、受け止めるように横に滑らせる。
ぶつかり合うのではなく、俺の剣がズブズブとめり込んでいく。
そして――真っ二つに切り裂いた。
「な……んだと!?」
「鈍らだな」
それから二激目、柄の部分を狙って、大剣を完全に破壊した。驚いた大男が武器を手放す。武器が重力で落ちると、轟音を響かせた。
誰の目から見ても武器が破壊されたとわかるだろう。そして次の瞬間、審判が声を上げた。
『な、な、何ということだあああああああああああああああ!? 去年、多くの武器を破壊した大剣が、見るも無残の姿に!?』
そして俺は、静かに目配せする。審判が、更に声をあげた。
『どうみてもこれは戦闘不能です! しょ、勝者、ベルクううううううううううう・アルフォン!!!!』
次の瞬間、歓声が上がった。
盛り上がりは最高潮だ。
エリオットはどこかで見ているだろう。
レナセールの第一試験も始まったくらいか。
――さあ、ここからがはじまりだ。