傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

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第54話 初めてのお友達

 第二試験は実地試験だった。

 等間隔に並べられたテーブルに、錬金術のための道具が一式揃っている。

 ランダムに指定されたアイテムを様々な素材を使って作り出す。

 金属、鉱石、植物、そして魔法石。

 

 深呼吸をしながら、ベルク様を思い出していた。

 

『レナセール、試験で大事なことは何かわかるか?』

『技術でしょうか?』

『それも必要だが、一番は思考だ。幸い俺はレシピが浮かぶのでそこに労力は必要ないが、実際にするのでは大きく違う。しかしレナセール、君は手先が器用だ。実地試験は必ずあるが、素材選びはよく考えたほうがいい。そうすれば、必ず合格できる』

 

「レナセール、試験は始まっていますよ」

 

 私は、素材をじっくりと選んでいた。

 みんな試験が始まって一斉に選んで、そして作り出している。時間がないからだ。

 

「はい」

 

 自分に自信はない。

 でも私は、ベルク様のことを信じている。

 彼が合格できるというならば、きっと大丈夫。

 

 だから私は、出来るだけ時間を使って、じっくり素材を選んだ。

 そして、一つ一つ丁寧に合成、錬成していく。

 

 幸い私は魔法が得意だ。術式や魔法印使っている人よりも、何倍も工程が早い。

 

「――合成(シンセシス)

 

 私は元々魔法が好きだったが、すぐに嫌いになった。

 幼い頃は生きる為に使っていた。でも、色々あってから人を傷つける為に使わせられていた。

 

 精神が疲弊し、何も考えられない日々が続いた。

 

 だけど今は、未来の為に魔法を詠唱している。

 

 それが、たまらなく嬉しい。

 

 私は生まれ変わった。

 それを教えてくれたのはベルク様だ。

 

『君の名前はレナセールだ』

 

 絶対に――合格します。

 

 ◇

 

「――レナセール、第三試験へ移動してください」

「はい」

 

 そして私は、ふたたび一番目に呼ばれた。

 周りはもう笑っていない。どちらかというと、怒りすら感じられる。

 

 わかっていたことだが、正直、悲しかった。

 

 決してズルをしたわけじゃない。ただ、一生懸命に努力しただけだ。

 

 でもいい、それを認めてくれるのは、ベルク様だけで――。

 

「すごいね。第一も第二もトップだなんて」

 

 そのとき、廊下でトンっと肩を叩かれた。

 驚いて顔を向けると、そこにいたのは、私の身長とさほど変わらない、ピンク髪の女の子だった。

 綺麗な髪だ。肩下ぐらいまであって、目は青くて綺麗。

 

 装いは黒いローブ、どこかで見たことがあるような。

 

 あ、そ、そんなことより――。

 

「え、あ、ありがとうございます」

「いきなりごめんね。あなたの事を悪く言ってた人たちがみんな黙り込んじゃって爽快だったよ。止めようかなって思ったんだけど、変に騒ぐと余計に面倒なことなるかなって。だから、ごめんね」

「え、いえいえ!? とんでもない!?」

 

 彼女は頭を下げていた。

 何も悪くない。なのに、どうして。

 

 そして私は、肩の金色の鷹の紋章に気づく。

 

 思わず、声が籠れ出るほど驚いた。

 

「……セレスティ」

「あ、自己紹介が遅れたね。それに、私は二番目だったから、名前も知らないよね。ええと――」

 

 世界には多くの魔術学校がある。

 その中でも、トップクラスに有名なところは三つほどしかない。

 

 そしてその中でも最高位とされている魔術学校が、王都に存在する。

 

 血縁、魔法、剣術、すべてにおいてトップクラスでないと入学できない。

 そして、レベッカさんの母校でもある。

 

 卒業生のほとんどが、世界に歴史を残している事でも有名だ。

 

 そしてこの事も知っている。

 

 主席には、肩の金色の鷹の紋章をつけることが義務付けられていることを。

 

「私の名前は、エリニカ・クーデリー。セラスティ魔術高等学校の一年生で、氷魔法が得意かな? レナセールさんのことは知ってるよ。ベルク・アルフォンさんの元で働いているんだよね? 大会優勝したの冷風機も、レベッカの絆創膏も本当に凄い」

 

 やっぱりそうだ。私は慌てて自己紹介する。

 でもなぜ声をかけてきたのかわからなかった。

 

「ありがとうございます。でただ私は平民です。周りが、何と思うのかわかりませんので、離れていたほうが……」

「そんなの関係ないよ。あなたはすごく優秀で、それでいて周りの目をはねのける心の強さを持ってる。私は、自分の目で見たことしか信じない。ねえ、レナセールさん、良かったらお友達になってもらえませんか?」

 

 

 そして彼女が、私の初めてのお友達になるのだった。

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