傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

59 / 85
第59話 過去と未来。

「百年ほど前か。北の大地でお前(ストロイ)と出会ったのは」

「そうじゃのぅ。あの寒空の下で生き延びた人間はレベッカ、お主だけじゃったのう」

「そうはいっても-100度は流石の私でも堪えたがな」

「ふっ、どの口がいっておる。そんなもの気にせずに走り回っていたというのに」

 

 師匠とストロイが、過去に想いを馳せながら楽しく会話していた。

 

 ちなみに危うくベルク・サンドイッチとして名前が広まりそうだったが、なんとか収まってくれた。意識も、ぎりぎりOK。

 まあ、少し記憶は飛んだが。

 

 師匠は酒に弱いが回復も早いので、今は周りから止められて果実ジュースを飲んでいる。

 

 ストロイはアルコールに強いらしく、樽で二杯目だ。

 元日本人だからかもしれないが、俺は割り勘なのかそうでないのかヒヤヒヤしている。

 

 二人は何度か因縁じみた対決があったとのことだった。

 魔王が存命している時代、宮廷魔術師として名をはせていた師匠は、国の派遣によってたびたび魔王軍と戦っていた。

 その際、ストロイと何度も命がけの勝負をしたという。

 

「ベルクの剣を見てすぐにわかったぞ。師が、レベッカ・ガーデンだとな」

「そんなに似ていたのか? 俺の剣は」

「そっくりじゃ。いい腕だったのう」

「似て当然だな。ベルクは、私の一番弟子だ」

 

 確かに師匠から剣は教わったが、元々は生粋の魔法使い。流派というものでもないだろう。

 ただ、肉を切らせて骨を断つ、というのが師匠の絶対的な教えだ。

 レナセールにも危ない戦い方をしますねと言われたが、おそらくそのあたりが似ていたのかもしれない。

 

「それでストロイ、なぜ剣術大会に出場したんだ?」

「ただの暇つぶしじゃ。国王に呼ばれたからのぅ」

「国王に?」

 

 それについては、とチェコが話しの間に割って入る。

 

「ストロイさんは友好的だけど、まだまだ魔族と人間の確執はありますからねえ。大衆向けのセレモニーだったり、表向きに王都は仲良くですってアピールするんです。今後、無益な戦争が増えないように」

 

 この世界のことを俺はまだ知らない。それを知っているチェコが、分かりやすく説明してくれた。

 こう見えてストロイはかなり偉いのだろうか。国王から直々に呼ばれるなんて凄いな。

 

 そして暇つぶしに決勝まで余裕でいくのか。流石だ。

 

「我が勝てば少しは魔族についての理解も深まるかと思っての。人間の催しに参加することは、友好的な証でもあるしな」

「……もしかしてそれを俺が阻止したってことか?」

「ま、そうじゃのぅ」

 

 とんでもないことをしてないか? とはいえ、考えても仕方がない。

 ストロイは当分王都にいるらしい。宿は何と王城だそうだ。

 これがもし漫画やゲームなら俺も呼ばれるかもしれないが、そうはならないだろう。

 

 そしてレナセールの初めてのお友達とも挨拶をした。

 エリニカ・クーデリーだ。

 

「最後しか見れませんでしたが、ベルクさんとても恰好良かったです! 何というかこう、オペラみたいでした! 流れるような動き、しびれました!」

 

 なかなかに現代チックな明るさを持つ。オペラが趣味だという。

 セラスティ魔法学園ということで少し驚いたが、こうしてみるとただの女の子だな。

 

「ありがとう。話はレナセールに聞いたよ。仲良くしてくれたみたいだな」

 

 後に聞いたのだが、最後の試験はペアでの実践形式のテストだったという。

 二人は過去最高得点をたたき出し、見事に合格。

 また、エリニカがレナセールに話しかけたことで、周りから陰口も言われなくなったとのことだ。

 

 そう思うと、やはりまだまだ貴族社会というか、階級が根強い世界だ。

 この辺りはもっと良くなってほしいが、すぐには難しいだろう。

 

 話はどんどん盛り上がり、気づけばすぐ日付が変わる時間になった。

 王都ではアルコールは16歳から飲めるらしいが、エリニカは果実ジュースを飲みながら、レナセールと楽しくお話していた。

 

「ベルクさん、次は絶対勝つッスから!」

「そうだな。次は錬金術でどうだ?」

「望むところッス!」

 

 エリオットは相変わらず元気だった。若い子はこうであってほしい。まあ俺も、おじさんというわけでもないが。

 ちなみに割り勘ではなかった。気づけばストロイと師匠が払っていた。いわく、年長者に任せろと。

 

 ……ごちです!!!

 

 外に出ると酒のせいかほんのり寒さを感じた。

 ちなみに首筋の赤いのはバレなかったと思っていたが、最初からバレていた。

 とはいえ異世界は割とそう言うのを隠さない。

 エリニカは「オペラみたい!」と、喜んでいた。

 

「師匠、本当に帰るんですか?」

「そうだな。今日は一年分ぐらい会話をした。ゆっくり休むとするよ」

 

 残念だが仕方がない。そう思ってると、レナセールが師匠に駆け寄り抱きしめた。

 

「いつでも戻ってきてください。私とベルク様は、一緒に住みたいと思っていますから」

「……ああ」

 

 師匠は多くを語らない。しかし、今日は楽し気だった。

 それでもまだ外に出るのは嫌なのだろう。よっぽどのことがあったに違いない。

 

 でも今は、俺とレナセールとこうやって話せて楽しいと言ってくれている。

 手紙も交換している。今は、これでいい。

 

「ベルクさん、サーチは私が預かりますので、いつでもいってくださいね。10日ぐらいですよね?」

「その予定だ。少し前後するかもしれない。悪いなチェコ」

「いえいえ、また帰ってきたら色々と話しましょうね」

「ああ」

 

 みんなに別れを告げて、俺とレナセールは少しだけ湿った空気の中、夜道を歩く。

 レナセールはぎゅっと俺の腕を掴んでいた。

 

「楽しかった後って、なんだか寂しくなりますね」

「そうだな。でも、嬉しいよ。帰り道も一人じゃないからな」

「ふふふ、私もです。それに、楽しみですね。不安も少しありますが」

 

 大会が終わって無事に賞金と魔核が手に入った。

 そして、新たな情報も。

 

 西へ少し言った先に、経済の街と呼ばれるエコという国がある。

 そこでフェニックスの尾の素材の一つがオークションに出ると教えてもらったのだ。

 

 代理人を立ててもいいが、俺とレナセールはほとんど王都から出たことがない。

 錬金術師となり、彼女の身分が保証された今、隣国への入国手続きもしやすくなったたため、10日ほど使って旅に出ようと話がまとまった。

 

 ついでにその国でしか買えない素材をいくつか購入したい。

 また、チェコとエリオットのコネで、錬金術師の紹介もしてもらったので、挨拶もする予定だ。

 

「そうだな。でも、新婚旅行みたいな気分でもある。」

「新婚旅行ってなんですか?」

「俺がいた元の世界では、結婚した男女は、その後、少しだけ休暇をとって旅に出る。そこで、初めての思い出を共有するんだ」

「そうなんですか? えへへ……嬉しいです」

 

 師匠も誘ったのだが、私はもう十分に旅をしたとのことだった。お前たちは、二人で楽しんで来いと。

 魔王や人間との戦いの話は、不謹慎だが少しワクワクした。

 とはいえそれは過去の話だ。

 

 俺とレナセールの未来はこれから。

 それがどういう形になるのかはわからない。

 

 でもきっと、先には笑顔が溢れているだろう。

 

「もし道中で危険な相手がいたら、私がベルク様を守りますから」

「ありがとう。もちろん、俺もだ」

「はい! 魔物とか盗賊とか山賊とか、女性(・・)とか、全部やっつけますから!」

 

 最後だけは、なんか違うような?




もっとみたいなと思ってくださった方、ぜひ評価をお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。