傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

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第74話 倒すべき宿敵

 既に国家錬金術師と妃候補はペアを組んでいるとのことだった。

 各々、王妃の特性に合わせた武器を制作中とのことだが、驚いたのは殆どの錬金術師が秘匿ではなく制作過程をオープンにしているということ。

 

 聞けば国家錬金術師も一括りにされているのが気に食わないそうだ。

 気持ちはわからなくもないが凄い自信だ。

 

 また試験にトップで合格した場合は、錬金術師の知名度はもちろん向上し、政治的にもさらに強くなるとのことだが――。

 

「気にするな別に名誉のためにやるわけじゃない」

「申し訳ございません。本来ならばもっと大々的に名前を周知することもできると思うのですが」

 

 俺はただの錬金術師だ。リティアがいい成績を残したといっても何か起きるわけじゃない。

 だがそれは好都合でもある。任務を速やかに遂行し、彼女に満足してもらうだけでいい。

 

 これは依頼。ならば最大限努力する。

 

「リティア様、私もしっかりサポートします!」

「ありがとうレナセールさん、心強いわ」

 

 二人はまるで幼い頃からの友達のように接していた。俺が知らないところで仕合をしていたのだから当たり前だが。

 

 ……ちょっとだけ嫉妬(ジェラシー)

 

 戦闘試験は、いわゆるレナセールと行っていたような1vs1で行うものらしい。

 闘技場のような場所で魔力を失えば気絶する仕組みを作っているらしい。

 安全かつ実力が出るとのことだ。

 

「はい。それで今日、相手が決まったんです」

 

 するとリティアが少し表情を曇らながら言った。

 近日中に決定すると言っていたが、こんなに早いとは。

 俺は、おそるおそる尋ねる。

 

「相手は誰なんだ?」

「……第一皇子の妃、オラクル・メイリーン。聡明でありながら魔法技術も高いです。そしてペアの国家錬金術師は最も優秀と呼ばれた――」

 

 そのとき、師匠の言葉をふと思い出す。

 

『二つ名は「冷徹(チリー)」、氷の錬金術師と呼ばれている。名前は――アイス・シードル。私が唯一、勝てないかもしれないと思った相手だ』

 

「アイス・シードル。氷を司る錬金術師と呼ばれています」

 

   ◇

 

 杖屋を後にした俺たちは研究室(ラボ)に戻っていた。

 

 ――というか、一軒家(我が家)

 

「にゃおん?」

「わわ、猫ちゃん飼ってるんですね! 可愛い……」

 

 サーチが歓迎とばかりにリティアに抱き着いた。

 それをほのぼのと見ていると、レナセールが後ろから声をかけてくる。

 

「ベルク様」

「は、はい!」

 

 背筋がピンと伸び、思わず大きく声を上げる。

 

「ど、どうしましたか」

「なぜ敬語なんですか?」

「な、なんとなくだ」

「そうですか。いえ、お食事の用意はどうしましょうかとご相談を……」

 

 杖屋にいた時間が長かったので夕刻になっていた。

 いつもなら食事の時間だがリティアに家庭料理を振る舞っていいのか悩んでいるのだろう。

 

 とはいえレナセールの食事は絶品だ。

 それこそ王室料理にも引けは取らないと胸を張っていえる。

 

 ただそういう問題なのだろうか。

 

 するとリティアがサーチを抱きかかえたまま後ろを振り返った。

 なぜか満面の笑みを浮かべている。

 

「あの、良かったらお料理処を貸してもらえませんか?」

「お料理処? ああ、台所か。何かしたいことがあるのか?」

「はい! お二人にお食事を召し上がってもらいたいのです!」

「「……え?」」

 

 それからは驚きの連続だった。

 帰り道、リティアは一人で買い物にいってきていいですかと何か買っていたのだが、袋から取り出したのは食材だ。

 それを手際よく下ごしらえしていく。

 あっけにとられていた俺たちだが、レナセールが慌てて声をあげる。

 

「て、手伝いますよ! リティア様!」

「ありがとう。じゃあ、一緒に皮むきしてくれない?」

 

 ジャガイモを取り出すと手慣れた手つきで洗って剥き剥き。

 俺も動こうとしたら座っていてくださいと二人から言われてしまう。

 

「もしかして妃の試験に料理があるのか?」

「ありませんよ。私は料理が趣味なんです。といっても表向きにはできませんので、内緒にしておいてくださいね」

 

 本当に不思議な子だな。

 そうして出来上がったのはクリームシチューだった。

 王城の料理長マル秘レシピらしく、生クリームをたっぷり使ったものだ。

 ものすごいいい匂いがする。

 

 テーブルを囲って、三人と一匹でいただきます。

 

「……美味いな」

「美味しいですね! 舌がとろけちゃいます!」

 

 クリーミーな味わいはそのままにジャガイモはほくほく、ニンジンもしっかりと柔らかい。

 何より肉が美味しい。かなりいい肉だろうと尋ねてみたが、想像以上に安価なものだった。

 

「国民の模範となるべき私たちが贅沢はしてはいけませんから。美味しいといっていただけて嬉しいです!」

 

 彼女の適正魔法は『光』。

 本来は治癒にたけた能力で、戦闘向きではない。

 一方相手は氷の錬金術師、アイス・シードル。

 そしてなんと妃候補のオラクルは、氷の特性を持つらしい。

 

 正直、かなり厳しいた戦いになるだろう。

 

 とはいえそれでも勝機はあるはず。

 

 彼を知り己を知れば百戦殆からず、まずは相手を知るところからはじめるか。

 

 俺の相手はアイス・シードル。

 

 ……なんだか、美味しそうな名前だが。

 

「そういえばリティア様、今日は何時ごろにご帰宅ですか?」

「はい! 影武者を用意して王城に待機させているので、私はお泊りするつもりできました! もちろん、歯ブラシもばっちりです! 難しいようであれば一人で宿取ってきます!」

 

 スプーンを片手に親指を立てる。

 この妃候補、本当に王家の人だよな?

 

 だが頼もしいな。

 

「別に構わないが洒落た部屋ではないぞ」

「そんなことありません! とても素敵なお家ですよ! レナセールさん、大丈夫ですか?」

「もちろんですよ。私は大歓迎です! 一緒に寝ましょうね!」

 

 姉妹みたいでほんわかする。

 

 んでも、ベッド一つしかないぞ!?

 

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