傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

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第77話 たった一つの勝機。

 魔法適正とは、その人物が扱える魔法の種類のことを指す。

 これは先天的だったり後天的だったりするが、基本的に多くを扱える人は少ない。

 師匠に俺の適正は土と診断してもらったことがある。だがあくまでも適正の話。

 扱えるようになるまでには相応の努力が必要で、なおかつ魔力量の向上の訓練も必要だ。

 

 そしてこれは無関係な話だが、魔法適正は性格に影響しているんじゃないかと思っている。

 例えば火、情熱的で自信に溢れておりいつも明るい。

 水は冷静で理性的だ。風は気まぐれで猫のよう、土は堅実で真面目。

 

 闇は目的のためなら手段を選ばず、やると決めたらとことん突き進む。

 

 そしてリティアの『光』。

 

 属性の中では最も稀有で、性格は慈愛に満ちている。

 人を傷つけることが嫌いで、相手の心を思いやる。

 

 戦闘には一番向いていない。

 

「見ていてください」

 

 我が家の中庭。椅子に座ったままリティアは、俺の足の痣に手を当てる。

 すると段々光が帯びてくる。

 合わせて、痣が消えていく。触ると少し痛かったが、それもすべて綺麗になくなった。

 

「できました。これが、癒しの力です。」

「凄いな。これが治癒か」

「……申し訳ないです。こちらから頼んでおいて、これが私の得意技なんです」

 

 リティアは申し訳なさそうにしていた。なぜなら試験は技術を競うものじゃない。

 ごくごく単純明快、相手を倒さなければいけない。

 彼女の魔法はそれと相対する。だからこそというべきか、俺に頼んでおいて、という気持ちがあるのだろう。

 

 レナセールも何も言えないでいた。戦闘にたけた彼女だからこそわかるはずだ。役に立たないとまではいわないが、1vs1で使うの難しいことを。

 

 だが俺は二人とは逆だった。

 

 これなら、勝てるかもしれない。

 

 そして一つ、疑惑から確信を持ったことがある。

 

「いや、むしろ朗報だ」

「……朗報? どういうことでしょうか?」

「一つ訊ねていいか、リティア」

「はい」

「痣とは、なんだと思う?」

「え?」

「レナセールはわかるか?」

 

 俺はずっと考えていたことがある。

 二人は顔を見合わせた。ぶつけたらできることは知っていますが、なんだと思うとは? との答えがかえってきた。

 そして、やはりと思った。

 

 魔法はイメージの世界だ。

 異世界にも医者はいるが現代知識には遠く及ばない。なのになぜ治癒が可能なのか?

 

 答えは、一つしかない。

 

「リティア、このヒビを見てくれ」

 

 俺は、壁に目を向けた。この家はボロボロだ。こういったところはまだ残っている。

 彼女は、よくわからないと言った様子で見つめた。

 

「元々は綺麗だったのだろう。これを、直してもらえるか?」

「え? いや、私の力はそんなこと――」

「できるはずだ。イメージしてくれ。これは、元々綺麗な壁だったと」

 

 半信半疑だったのだろう。手を置いて、静かに魔法を詠唱する。

 だが何も起こらなかった。レナセールでさえ困惑していた。それでも俺は何度も頼んだ。

 そして――。

 

「……こんなことが」

「やはりそうか」

 

 壁のヒビが綺麗に直っていく。まるで、何もなかったかのように。

 

「こんなこと、初めてです。どうやったのですか?」

「何もしていない。おそらくだが、君を含め多くの人が勘違いしている。癒しの力とは、傷を治す力ではない。――時間を巻き戻しているんだ」

 

 魔法はイメージの世界だ。

 異世界にも医者はいるが、現代知識に遠く及ばない。なのになぜ治癒が可能なのか?

 

「痣とは、皮膚の内側の毛細血管に傷がつき、出血が起こることだ。だが君たちはそれを知らない。なのに治癒ができる。これから導き出される答えは、ただあるべき姿に戻しているだけだ」

 

 考えればこれほど単純なことはない。

 異世界人が気付かなかったのは医療技術が発達していなかったからだろう。

 俺もこれ以上二人に教えるつもりはないし、下手に神経などというものがあると理解してしまったら逆効果になりえる。

 

 闇魔法は人体を破壊するという。性格にも由来している可能性を考えると、記憶だったり生きざまが関係しているはずだ。

 

 氷魔法の特性を持つものは北の生まれが多いと聞く。

 色々と見えてきたな。

 

「で、ですが、これがなぜ朗報なのでしょうか?」

 

 これはまだ仮定にしか過ぎない。だが間違いなく可能だ。

 

「時間を戻すということは極論でいえばなかったことにしている。魔法もそうだ。火を突然出すなんて普通じゃない。ならばそれを戻すという魔法を編み出せばいい。つまり――」

 

 すると、レナセールが声を上げた。気づいたのだろう。

 

 アイス・シードルの経歴はすさまじかった。

 おそらく究極の魔法杖を作り出すはずだ。

 それこそ一撃でどんな敵をも粉砕するような。

 

 それを扱うオラクルも凄まじい魔法使いだった。アイスにこそ及ばないものの、何度も魔法大会で優勝している。

 

 だが杖はあくまでも媒体。従者の魔力量を大きく増やすことはできない。

 

 取るべき手段は――。

 

「リティア、君は――ありとあらゆる魔法を無効化させることができるはずだ」

 

 相手の魔力がなくなるまで、すべてを打ち消せばいい。

 人を傷つけたくないリティア、彼女の個性を最大限に生かす。

 

 そしてそれに適した武器を、必ず俺が作る。

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