傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

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第78話 決意

 目指すべきところが決まったのはいいが、まだスタート位置にすら立っていなかった。

 大きく分けてやるべきことは二つ。

 

 一つは、言わずもがな、俺がリティアの特性に合わせた杖を作ることだ。

 魔法無効化(アンチマジック)に特化した杖は、当然だが市場に出回っていない。

 つまり能力(チート)でレシピを思い浮かぶことはできないのだ。

 

 ただそれでも使えそうなものもある。いくつか試し、それを実行に移していく作業を始めなきゃいけない。

 ポーション作りと同じだ。一つ目より二つ目と精度を高めていく。

 嬉しいのは、リティアが費用を負担してくれること。そもそも、この試験でかかる費用は国から支払われる。

 その心配がないのは随分とありがたいが、元は国民の税金だ。

 無駄に使う事は避けたい。

 

 二つ目は、リティアが魔法無効化(アンチマジック)の魔法を習得すること。

 といっても、今のままでも扱えることは確認できた。

 

 レナセールが魔法を放ち、リティアがそれを消し去ったのだ。

 

 きっかけは俺の一言だ。できる、と思えばできる。それが魔法の世界だ。

 当然、リティアの今までの努力のおかげでもある。

 

 つまりこの二軸で仕上げていく。俺はさっそく杖の材料になりそうな安価なクリスタルや木を購入し、工房にこもって作り始めた。

 最初は簡単なものでいい。最後に良いものを作りあがればいいのだから。

 

 それよりも心配だったのは、レナセールだ。

 

 彼女は責任感が強すぎる。もしリティアの魔法が完全習得できなければ、自分を責めてしまうだろう。

 それは、嫌だった。

 

 一週間が過ぎ、二週間が過ぎ、リティアが来られない時は二人で杖の試作品を作り続けていた。

 

「レナセール」

「はい? どうしましたか?」

 

 お昼過ぎ、一息ついたところで、俺は彼女に声を掛けた。

 錬金をしていると魔術の煤のようなもので頬が黒くなることがある。

 

 それを丁寧にふき取り、頭を撫でる。

 

「今日はこれで終わりだ。出かけよう」

「え? でも、まだやることがいっぱい――」

「明日でいい。リティアもいないし、たまには休もう」

 

 最近の彼女は常に魔力を使いすぎている。いつもと違って疲れが見えていた。

 

「……でも」

「いいから。俺が休みたいんだ」

「でしたら、わかりました」

 

 まったく、いつまでも俺優先だな。

 

 着替えを終えて、久しぶりの外出だ。

 レナセールと市場にいき、フルーツを食べ、中心街で甘いものを食べた。

 

「美味しいですねえっ! でも、こんなことをしていいのでしょうか。リティア様に、申し訳なく……」

「休むのも仕事のうちだ。ほら、次だ」

「え、ええ!?」

 

 俺は強く手を引っ張り、今度は彼女に新しい洋服を見繕ってあげた。

 純白のワンピース。普段は着ないようなものだ。

 

「こ、こんなの汚れちゃいますよ!? 錬金ができません!?」

「出かけるときに着るものだ。工房では使わない」

「でも……凄く高いですよ」

「高くない。レナセール、君はもっと贅沢していいんだぞ」

 

 彼女は何も望まない。望むのは、ただ現状維持だ。

 

「私は、ベルク様と一緒にいればそれで幸せですから」

 

 夕刻になり、最後に訪れたのは懐かしい場所だった。

 

「このあたりは……」

「覚えているか。君と俺がディナーを楽しんだところだ」

 

 ここは以前、彼女と二人で食事をした、富裕層が集う(ストリート)だ。

 

 貴族たちに奴隷と一緒に食事をしているなんて、と笑われて、彼女が落ち込んでいた、嫌な思い出でもある。

 でも俺はあえてここへきた。

 

 そして以前よりもずっと高い店に入った。

 俺と彼女の胸元には、立派な錬金術師としての勲章を付けている。

 

 俺たちは溶け込んでいた。誰からも嘲笑されることなく、丁寧な対応で楽しい食事を楽しんだ。

 

「レナセール、初めて会ったときの俺たちは何もなかった。けど今は違う。幸せを手に入れてきた。それも正攻法でだ。――これからもそうだ。君は凄い。俺は、君を尊敬しているし、信じている。無理はしなくていい。いつもの君なら、心配しなくていい」

 

 店を出て、彼女に声を掛けた。レナセールは嬉しそうに腕をぎゅっと掴んだ。

 

 これは真実だ。レナセールならきっとリティアに魔法を教えてくれる。

 後は俺の問題だ。

 

 これはリティアだけの戦いじゃない。俺とレナセールが、この世界でやっていけるのかどうかの再確認でもある。

 

 そしてその帰り道、後ろから声を掛けられた。

 

 女性だ。聞いた事のない、声。

 

「ベルク・アルフォン」

 

 振り返ると立っていたのは、肩まで青髪を伸ばした女性だった。女性にしては身長が高く、胸が大きく、スタイルがいい。

 だが誰だ? 俺は、知らない。

 

 そのとき、とてつもない魔力を感じた。

 肌に突き刺さるような氷の魔力。

 

 まさか、リティアの相手のオラクル――いや違う。

 

 胸元の勲章。

 

 剣と盾、そして鷹の特別なペンダント。

 

 

 ――国家錬金術師。

 

 

 彼女が、アイス・シードルか。




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