傷ついたエルフを拾ったらめちゃくちゃ愛が重くなった件、とりあえず一緒に錬金術する?   作:名無しさん

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第81話 なんだっけ

「ほんと、美味しいですねえこのお肉パン!」

 

 リティアが、アイスの作った肉汁たっぷりの肉を頬張りながら言った。

 あの後、戻ってくるのにそう時間はかからなかった。

 

 なぜなら彼女は頭が良い。

 もしかして「肉汁のパンがズボンにかかり、レナセールさんが拭いていた。さらに頬に肉汁が飛んで、それをアイスさんが拭いていましたか? だとしたらすみません」と、戻ってきてくれたのだ。

 さすが王妃候補。にしても頭の回転が速すぎるが、とにかく助かった。

 

 リティアは朝食を食べてきたと言っていたが、肉パンを見て美味しそうと言ったので、アイスが手早く作ってくれた。

 俺としてはライバル同士なので不安もあったが、二人はそもそも顔見知りだという。

 

「セラスティで同期だったのか」

 

 といっても、とリティアが前置きをする。

 

「私とは学年も違いますし、アイスさんほど優秀ではありませんでしたので、お目かかる事は少なかったです」

「いやそんな……リティアさんの作品も何度か見ましたが、私も驚きましたよ」

「作品? リティアは何か作っていたのか?」

「恥ずかしながら錬金術の授業があったので……って、さすがにこの場では恐れ多いですけど」

「そんな事ないですよ。私もびっくりました。天候を予測する魔法具なんて、今まで見たことありませんでしたし」

「私は、アイスさんの論文がとても興味深かったですよ。王都虫の行動によって季節の変わり目がわかるなんて、とても驚きました」

 

 二人はお互いに認め合っているようだった。リティアから依頼を受けたときは因縁の対決というわけではないが、どこか恨み合っているような気持ちでやらなきゃ、と思っていた。

 でもそうではない。

 

 全力で準備し、相手を認め、力の限り戦う。

 

 そう思えば少し気が楽になった。

 

 そのときアイスが、なぜか俺の顔を見る。

 

「ベルクさん、色々ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。しかし私は今回、勝たなければならない理由があるんです。でも、今は新しい目標ができました。それは、あなたに勝つことです」

「俺に? いや、恐れ多いな」

 

 アイスは、ぶんぶんと顔を振る。

 

「レベッカの絆創膏、あの商品はとても素晴らしいものです。錬金術師としての技術もそうですが、レベッカ・ガーデンの名を上げる為に作り上げたものでしょう。その心意気と技術、畏敬の念を抱きました」

 

 師匠の名を出た時に驚いた。もしかしてレナセールが話したのだろうか?

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ。俺は君を尊敬している。同じ錬金術師であることが誇りに思うほどだ。だがそれでも、勝ちは譲らない」

 

 ふっと笑みをこぼすアイス。本当に嬉しそうだ。なぜだろうか。

 

「嬉しいです。そして、人生で初めてかもしれません。――負けるかもしれない、そう思った相手と出会えたのは」

 

 突き刺さるような圧。凄まじい魔力だ。

 だが嫌な感じはない。

 

 リティアのためにも俺は必ず。

 

「さてさて、皆さん! 良かったらもう少しお喋りしませんか!? 錬金術の話もそうですが、もっと聞きたいです! 皆さんのことが!」

 

 そこでレナセールが明るい声を上げた。

 彼女のおかげで場が和らぐ。

 

 ほんと、俺にはもったいないぐらいの相手(パートナー)だ。

 

 それから話は錬金術はもちろん、セラスティでの授業、王都についてのちょっとした裏事情なども聞けて凄く楽しかった。

 さらには魔法の杖についても教えてもらった。ありがたいが、塩をもらうだけでは悪いと現代知識をいくつか教えた。

 

「凄いですね。それで、車というのは?」

 

 しかし、彼女なら本当に自動車を作ってしまいそうだ。

 

 気づけば夕刻。リティアと杖の制作はできなかったが、有意義な時間を過ごせた。

 二人は馬車で帰っていき、俺とレナセール、サーチだけになる。

 

「嵐のように去っていきましたね。でも、凄く楽しい時間でした。――ますます、負けられませんね」

「だな。杖について試したいことがいくつかできた。疲れているだろうが、これから――」

「手伝います! やります! 頑張りましょう! 勝ちますよ、ベルク様!」

「……だな。さて、やるぞ」

 

 そして俺たちは杖作りを再開した。

 

 今日得た知識もあってよいものができそうだ。

 

 

 しかし、ふと何か忘れているような気がした。

 

 

 なんだっけ?

 

 うーん。なんか、大事なことが

 

「ベルク様、お茶を取ってきますね」

「はい」

 

 

 まあ、いい。

 

 そういえばなんでアイスは、レベッカ師匠のことを知っていたんだろう?

 

 まあ、有名だから当たり前か。

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