死ぬまでの暇潰し   作:たくは

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6.不安

 

 

 お好み焼き屋で影浦と別れる前。

 

「まだ気遣ってんのか」

「何のこと?」

「おめーだけまだ距離感じんだよ。傍目にはわかんねーみてえだが俺にはわかる」

 

 そんな見透かしたみたいに。

 

「当たり障りねーことばっか言いやがって。仲良くしてーんだかそうじゃねーのかはっきりしやがれや」

 

 せっかく知り合えたんだ。これからも良い関係で居たいに決まってる。村上と一戦する約束もあるし。

 

「俺はな、本心隠した言葉が大っ嫌いなんだよ。てめーの本性を見せろや」

 

 何が気に障ったかはわからない。けれど影浦はたまにこうやって人の感情に苛立ってはぶつかってくる。

 

 きっと影浦は僕を友達として認めてくれたんだろう。村上が根気良く話しかけ続けてくれたおかげだ。

 

「ぜってーまた来いよ」

「うん。また来るよ、必ず」

 

 影浦は隊長を務めていると言っていた。きっとぶっきらぼうに見えて仲間に目を配っているんだろうな。

 

 友達……村上も僕をそう呼んでくれたけど、こんな時に友達なんて作っても良いのか。それこそ親友と呼び合えるくらいにでもなってしまったら、突然僕が居なくなったら困るはずだ。

 

 考えれば考えるほどどうしたらいいかわからなくなる。

 僕だって余命宣告された日からけろっとしてるように見えてるかもしれないけど、周りが思ってる以上に驚きはしたんだ。ただ整理がつかないまま現実逃避を重ねているだけに過ぎない。人と距離を置かないのだってその現実逃避の一環。

 

 ただ、これ以上仲良くしてしまったら危ない気がする。

 もう何週間かすれば5月に入る。そうなれば後半年ほどで僕の命は危険に晒されるに違いない。

 

 早く答えを出そう。引き返すなら今の内なんだ。きっと。

 

 

 

 19時になる前には田村さんのいる研究室に到着した。

 

「すみません。こんな遅い時間になってしまって」

「構わない。君が来たい時間に来ていいんじゃよ。友達との時間を作りたいなら、無理して毎日通う必要もなかろう」

 

 相変わらず、のんびりしてるというか何というか。でも、ありがたい。

 

「ありがとうございます。でもいいんですか。毎日通わないと正確な記録が取れないでしょう」

「構わん構わん。未来に活きるデータより、今生きる若者を大事に。これ、私のモットー」

 

 いやいや、僕が通うことで未来の若者を救えるかもしれないじゃない。と反論するのは野暮ったい。

 

「ところで、ベッドのカーテンが閉まってますけど来客でも?」

「那須さんじゃよ。ちょっと疲れが溜まってたようで寝かしておいたんじゃ。そっとしておいてくれんか」

 

 別の研究員でも寝てるのかと思った。でもちょうどいい。渡しておこう。

 

「これ、那須さんに渡しておいてもらえませんか。お気に入りの本とDVDを交換しようと約束していたんです」

「ほうほう。任せておくれ」

 

 僕が検査を受け終わるまでの間、那須さんが起きることはなかった。数十分後には両親が車で迎えに来てくれるらしい。

 

「立花君は待ってなくていいのかね」

「え、どうして?」

「ずっと彼女と話したそうにしていたじゃないか。顔に出ていたぞ」

「……大丈夫です。また偶然会えた時にでもゆっくり話しますよ」

 

 僕が帰り支度を進めると、

 

「那須さんも君に……いや、君と話したがっていたと伝えておくぞ。たまには学校帰り以外も来るようにな」

 

 まったくこの爺さんはつくづく世話焼きだ。

 

「わかりました。今週中には学校サボってでも来ますよ」

 

 別に、次ここへ来る予定でも聞けばそれで済む話だ。でも何となく、示し合わせて会うのは違う気がした。僕らはそれほど仲を深めていない。

 

 僕が家に帰った後、就寝前に一通のメールが届いた。

 

『急で申し訳ないですが、明日の放課後は必ず来るようにしてください』

 

 田村さんから、念を押すような一文だった。

 でもどうして。体のことで何か変化があったのだろうか。

 

 考え事が頭を埋める。良くない良くない。

 

 寝ようと思って寝られるものではないけれど、動画サイトでルールもよく知らない将棋の動画を見ていれば、自然と眠気がやってきた。眠れない日は興味関心の無い動画を見るに限る。

 

 

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