とある日に某大学教授は歴史を変える書物を見つけた。
一人のゼミ生が家に古い蔵があると言う話になり興味を持った教授は休日に見に行く約束をした。
ゼミ生からしてみれば単なる話の種でしかなく教授にとっても休日のただの暇潰しであった。
そこに大切に納められていたとある人物の回顧録、筆者の名は《かた》彼女の人生を書いた数十もの書物には事細かく自身の体験した物が語られていた。
なんとなく気になった教授はその本を許可のもと持ち帰り読み進めると驚愕することになる。
《かた》なる人物は多くの歴史家の中で語られてきた謎の人物その人であったのだ。
この発見は日本史研究の世界で波紋を呼び歴史の謎を解明する新たな礎となったのだった。
ーー
まず謎の人物とは何かを説明せねばならない。
最初にその疑問が浮上したのは坂本龍馬の日記である。
彼は幕末を代表する人物の一人で教科書に掲載され、知らぬものはいないと言うほどの人物だ。
彼は幕府と新政府との江戸の無血開城を見届けた後、アメリカに渡り後の明治時代にて近代日本に大きく近づけた人物だ。
そんな彼の日記の中にたびたびは《名無しの女浪人》なる人物が出てくることになる。
坂本龍馬はその女浪士を片割れと称し、無二の相棒として書き綴っている。
女浪人は様々な人物の書物で登場することとなった。
桂小五郎、高杉晋作、勝海舟、篤姫、等々歴史の中心に居ながらも名前すら分からぬ謎の人物はただ武に優れた女性であると言うことしか分からなかった。
だがその女浪人が元新撰組一番隊隊長《沖田総司》の嫁であったなどと誰が想像しようか。
沖田総司の嫁として明治時代に撮られた写真でその姿を見ることが出来る。
それは総司とかたとの結納時の写真であり当時の写真にしては色が鮮明であると言う点から当時と異なる技術によって作られた写真機で撮られたものではないかと歴史の中では有名であった。
そんな彼女の回顧録は実に見事であり彼女の記憶の良さを物語るものであった。
これが記された時期は不明であるが、誰が何を言ったかまで詳細に記されている場面もあり、その時代の人物の思想や信念など改めて分かる書物となっていた。
そしてこの書物は後に出版され人気を博すことになる。
それは彼女の人生は実に興味深く、心引かれるものであったという証明になるだろう。
数多な人間との恋模様、歴史の闇、壮絶な人生、様々な葛藤と宿命の片割れとの戦い。
彼女はなぜ幕末の終の棲家として新撰組を選んだのか。
倒幕と佐幕、大きく揺れた幕末の動乱を逞しく生き抜いた人物のお話である。