一応本作は、短編から連載にしましたが、今後も年に1~2回くらいしか更新しないと思うので、過度な期待はしないでください。
「うおおおお!!風邪ひけ!風邪ひけ!風邪ひけ!風邪ひけ!風邪ひけーー!!」
「何してんだこの馬鹿」
「あ、あのジョニーさん…恥ずかしいので、あんまり見ないでくれると助かるんですけど…」
「おいこら。俺がお前みたいなガキの裸見て興奮するとでも思ってんのか?なめんなよクソガキ。そういうのは最低でもあと12年歳取ってから言え」
「あ、すみません…」
ひとりは今、全身に冷却湿布を張り、下着姿で扇風機の前でギターを弾いていた。おまけに部屋に戻る前、氷を大量に入れた風呂に30分も浸かっている。その様子を見ていたジョニーは、心底呆れていた。
何でひとりがこのようなバカげた事をしているかというと、バイトを休むためである。
数日前、正式に結束バンドの仲間入りを果たしたひとり。その翌日、虹夏とリョウとバンドミーティングをした。そこでひとりは、虹夏からバンドで必要なお金の話を聞いたのだ。
バンドというのは、売れるまでとにかくお金がかかる。売れなきゃすっと貧乏のままなんて事態も、珍しくない。そして当分のライブの為に諸々の必要経費で数万円必要なので、ひとりはバイトをする事になったのだ。
これを聞いたひとりは思った。『働きたくないと』。
それはひとりがニート思考なのでは無く、ただお客と話せる自信が無いからである。もしバイト中にお客様に不快な思いをさせてしまったら、最高裁で死刑を求刑されるかもしれない。出来れば断りたかったが、そんな事超コミュ障のひとりに出来る訳無く、とうとう明日がそのバイト初日。バイトが怖い。社会が怖い。接客が怖い。全てが怖い。
そこでひとりが考えた起死回生の一手が、風邪をひいてバイトを休む事である。
そうすれば、バイトに行く事が出来ずに、怖い思いをする必要が無い。実際にはただの問題の先送りでしかないのだが、今のひとりはこれに全てを賭けている。だって兎に角バイトに行きたくないから。
「ち、因みにジョニーさんは…バイトとかした事あります?」
今だに風邪をひくべく扇風機に当たっているひとりは、ふとジョニーのバンドの事が気になった。ナイトシシティと呼ばれる大都市で、トップまで駆け上がって言われるジョニーのバンド『サムライ』。そんな彼らも、やはりバイトをしてお金を稼いでいたりしたのだろうか。もしそうなら、話を聞いておきたい。何かの参考になるかもしれないから。
「あ?ガキの頃こそした事はあったが、軍を脱走してサムライ結成してからは1度もねーぞ。大抵ファンの女に貢がせたか、他のバンドメンバーが何とかしてたな。サムライ解散後も、基本はオルトに世話してもらってたし」
「あ、そうですか…」
「一応ガキの頃やったバイトで、銃や薬を運んだりはあるが」
「あ、それ以上言わなくていいです」
全然参考にならなかった。というかこうやって話を聞くと、やはりジョニーは怖いしクズな気がする。
「うう…!だいぶ寒くなったけど、まだだ!もっと寒くならないと!!」
もう随分体を冷やしたひとりだが、これではまだ足りない。ひとりは寝る前に氷枕と大量の保冷剤を用意し、それを布団に敷き詰める。そして扇風機を強風にして、タイマーを設定せず寝る事にした。これで間違いなく、明日は風邪をひいているだろう。
「え、へへへ…これで風邪…これで風邪をひける…そうすれば、バイトに行かずにすむ…」
「はぁ…何で俺はこんな馬鹿に取りついちまったんだ…」
ジョニーはため息をつきながら、ひとりの危行を眺めるのだった。
(あれ…?どこここ?)
ひとりが目を覚ますと、そこはどこかの廊下だった。薄暗く、壁に貼られているポスターがはがれていたり、カラースプレーで描かれたであろう落書きなどがある。先程まで自分の部屋で寝ていた筈なのに、なぜかこんな場所にいる。
(か、体が勝手に動く…!?)
おまけに体が自分の意志とは無関係に動く。歩みを止めようとするが、止める事が出来ない。
「ステージにはあげられませんよ!」
そのまま廊下を進んでいくと、外国人の男性が現れ、ひとりに話しかけてひとりを静止させようとする。
「ぐうっ!?」
だが話しかけられたひとりは、そのままその男性に銀色に輝く機械の左腕を使って乱暴にどかす。その時、壁にあった鏡にとある人物の姿が見えた。
(ジョニーさん?)
鏡に写っていたのは、ひとりでは無くジョニーだった。そしてジョニーは、そのまま無言で男性をどかした後、扉を開けて前に進んでいく。そこには沢山の楽器や音響機器があり、まるでSTARRYの機材置き場みたいな場所だった。更によく聞いてみると、演奏と歌声が聞こえる。どうも誰かが今、ライヴをしているみたいだ。
(これってもしかして、ジョニーさんの記憶…?)
ひとりはここで、今自分が見ているのはジョニーの記憶なのではないかと予想する。恐らくだが、ジョニーがひとりにとりついた影響で、ジョニーの記憶をジョニーになった状態で追体験しながら見ているのだろう。前に読んだ漫画で、そういう展開があったし。
(ちょっとこのまま見ちゃお…)
ならばこのまま、ジョニーの記憶を見てみようとひとりは決める。ジョニーの事を知れる良い機会だし、そもそもこの現状の止め方なんて知らないからだ。
「おいおい、高ぶってんなぁ」
先程とは別の少し太っているパンクな恰好の外国人男性が現れるが、彼は何もせず道を開ける。ジョニーはそんな彼の事など気にせず、まさに今ライヴが行われているステージへと上がって行く。ステージ上で歌っていた男性は、ジョニーを見た途端マイクから離れる。
そしてジョニーは、そのままマイクの前に立ち、マイクを掴む。
「今夜…俺は…みんなに、別れを言いに来た」
ジョニーはそう言うと、思いっきりギターを弾き出した。周りにいたバンドメンバーも、それに合わせて各々演奏をしだす。
(す、凄い…!これがジョニーさんの本気の演奏なんだ…!!)
ステージ上でのジョニーの演奏は、とても凄かった。語彙力が無くなるくらい、凄かった。以前地元のレンタルシタジオでもジョニーの演奏を聴いていたが、あの時よりずっと凄い。
音に強い感情が乗っているし、技術も凄まじい。更に直ぐ隣でリードギターをしている彼も半端では無い。ひとりも他人よりギターが上手いとう自信が少しだけあるが、これは別格だ。これに比べたら、自分はミジンコ以下である。
(私もいつか、虹夏ちゃんやリョウさんと一緒に、こんなステージに立てるのかな…?)
ジョニーの演奏を特等席で聞きながら、ひとりは自分が組んだバンドも、何時かこうなれたらいいなと思う。
ステージは大盛況のまま終わり、ジョニーは煙草を吸って一服する。そしてそのまま、外に通じるであろう扉に向って歩き出す。
「ジョニー!待てよ!」
その時、背後から声をかけられた。ジョニーが振り返ると、そこには先ほどステージ上で一緒に演奏をしていたリードギターの男性、ケリーがいた。
「やめておけ。考え直すなら今の内だ」
詳しい事はわからないが、彼はジョニーが何かしようとしているのを止めようとしているようだ。
「お別れだ、ケリー」
しかしジョニーは、それで止まるような男ではない。
「こんなバンド辞めちまえ。合ってねぇんだよ。自分のやりたい音楽をやれ」
「…じゃあな、寂しくなるぜクソ野郎」
「あばよ、来世で会おうぜ」
(あ、今の言い回しカッコいい…)
ジョニーのかっこいい台詞に、ひとりは少しだけ感動する。そしてジョニーは、振り返り扉を開けて外に出る。すると外には、どこかSFっぽいヘリコプターがあった。
「ジョニー!遅い!!」
「怒っているお前は色っぽいぜローグ。正直、ソソられる」
「さっさと乗りな!早く!」
そう言われたジョニーは、そのヘリに乗り込む。
(え…?)
ヘリの中には、家で飼っている犬のジミヘンより大きな銃を持った大柄な男性や、全身に変なライダースーツのようなものを着ている女性がいた。
おまけにヘリもよく見ると、テレビ番組のロケとかでよく見るヘリじゃなくて、まるで軍隊で使うようなヘリだ。
(な、何これ…?)
明らかにただ事じゃない。そんな雰囲気だ。出来れば今すぐここから逃げ出したい。それくらい、ここは怖い。
しかし残念ながら、今ひとりは体の自由が効かない。だからこのまま、流れに身を任せていくしかない。
そして無常にもヘリは上昇し、飛び立っていく。
それから暫くして、ヘリは大雨の中を飛んでいた。
(これ、どこに向ってるんだろ…?そしてジョニーさんは、一体何をするつもりなんだろ…?)
先程からヘリの中では、炎上とか、装甲輸送車とか、暴動とかのワードが飛び交っている。とっても物騒だ。
(大っきい…何だろこのビル)
大雨の中ヘリが飛び続けていると、見たことの無いくらい大きなビルが見えてきた。ビルには、円の中に木のようなマークが書かれている。
そしてヘリがそのビルの屋上上空へたどり着くと、
(な、なんか銃撃戦始まったーー!?)
ジョニーの隣にいたシャイタンという男性が、手にしていた大きな銃を屋上に向けて発射した。同時に、屋上にいた人もこちらに向って撃ってきた。
(何これ!?本当に何これ!?)
ひとりはパニック状態となる。だってこんな展開、漫画や映画でしか見た事無い。それをひとりは今、自分で体験しているのだ。平和な日本で生まれ育ったひとりにとって、これは簡単に受け入れる事なんて出来ない。
「ぐあっ!?」
(ひっ!?)
ひとりが怯えながらパニックになるかけていると、銃を撃っていたシャイタンという男性が撃たれて倒れた。それを見たひとりは、小さな悲鳴を出す。
「ジョニー!シャイタンが!!」
「今変わる」
そんなひとりとの事などお構いなしに、ジョニーは大きな銃を操作して屋上に撃ちまくる。
すると、屋上に設置されていた何かに着弾し、屋上で爆発が起きる。同時に。その爆発に人が巻き込まれていった。その様はまるで、いやまさに戦場だ。
(はっ…!はっ…!)
ひとりは過呼吸気味になりながらも、意識をはっきりと保てていた。普通ならとっくに意識を失っていてもおかしくないのに、何故か意識を保てている。恐らく、ジョニーの記憶を追体験しているからだろう。当のジョニーがこの時意識を失ってなんていないから、ひとりも意識を失う事が出来ない。
「飛び降りろ!」
そんな声が聞こえると、ジョニーはバックを持ってヘリから屋上へ飛び降りる。
「ジョニー。作戦はわかってるわね?」
「エレベーターに爆弾を仕掛けて起動。あとは重力がやってくれる。そして爆発で建物の基礎が壊され、タワーは崩壊。混沌と悲鳴の中、エンドロールが流れる」
(な、何それ…?あ、まさかあの時の…!?)
そのジョニーの言葉を聞いて、ひとりは青ざめると同時に思い出した。以前ジョニーが、小型の核爆弾で企業を吹き飛ばしたと言っていた事を。
そしてこれは、その時の記憶なのだろう。ならばこの後、このビルはジョニーもろとも爆弾で吹っ飛ぶ事になる。
(い、いやだ…!そんなの絶対に嫌だ…!!)
そんな最後なんて経験したくない。今すぐここから逃げ出したいが、ひとりは全然体の自由が効かない。もうこのまま、ジョニーのやる事を黙って見る事しか出来そうにない。
「行くよ!」
そう思っていると、ビルの扉が開き中に入るジョニー達。階段を降りようとした時、下から銃を持った人がこちらに向って撃ってきた。
「邪魔だ」
それをジョニーは、何のためらいも無く持っていた銀色の銃で撃ち殺した。そして撃たれた人は、そのまま地面に血を流しながら倒れる。
(え……)
瞬間、ひとりの血の気が一気に引く。
(わ、私今…人を…こ、ころし…)
人を殺した。これは日本では重罪であり、普通なら先ず経験しないであろう出来事。それを今自分は、してしまった。正確にはそれをしたのはジョニーなのだが、そんな事ひとりには関係無い。
だって今のひとりは、ジョニーなのだから。そしてそんなひとりの気持ちなんて知らんとばかりに、ジョニーは迫りくる人をどんどん撃ち殺していく。
(い、いや…いやぁ…!!)
足元に転がる、頭を打ち抜かれたり、胸を撃ち抜かれたり、体の1部が焦げている死体の数々。普通ならこんな光景を見たら嘔吐してしまうだろうが、今のひとりはしたくても出来ない。だってこれは、ジョニーの記憶を追体験しているだけなのだから。
その後ジョニーは、どうしてもやる事があると言って1度仲間と別れる。そして更に奥に進んでいく、その場にいた敵を撃ち殺していく。
(い、いやだ…!もうこんな怖い記憶見たくない!!)
ひとりは既に発狂寸前だった。いくら超がつく程のコミュ障で、友達もいなくて、人よりずっとネガティブで人間強度とメンタルの強さが低いひとり。そんな彼女がこんな事を追体験すれば、精神がすり減って行くのは当然。
というか、これを体験して精神が普通を保てる人なんて先ずいない。このままでは、本当に頭がおかしくなりそうだ。今すぐこんな記憶から目をそらしたい。記憶を消したい。逃げ出したい。でも、それは出来ない。だってやり方を知らないから。
「よし、これでいい」
『敵が来る!急いでジョニー!!』
ここでようやく希望が見えてきた。どうやらジョニーが、最後の仕事とやらを終えたらしい。後はこのまま、ヘリに乗って脱出するだけだ。
(お、終わる…!後少しで終わる…!)
後少し耐えれば、この記憶も終える事が出来る。そう思ったひとりは、後少しだけ死ぬ気で耐えようと決意した。
だがジョニーが扉を開けようとした瞬間、その扉が爆発してジョニーは吹き飛ばされた。
そして吹き飛ばされたジョニーを見下ろす、全身を分厚い鎧のような物を着て、両手に大きな機銃を持ったスキンヘッドの男。
(ひっ…)
それと目が会った瞬間、ひとりは死を覚悟した。何だあれは。あんな恐ろしい化け物、見た事無い。もしあんな化け物と敵対してしまえば、絶対に殺される。そんな思いが、ひしひしと伝わってくる。
『まずい!アダムスマッシャーよ!逃げてジョニー!!』
「ちっ!!」
アダムスマッシャーと呼ばれた化け物に、ジョニーは銃を撃ちまくるが効果があるように見えない。このままでは、殺されてしまう。
「っ!?」
「ジョニー!急いで!!」
その時、仲間の1人であるローグがジョニーを手榴弾を使って援護して、アダムスマッシャーの注意を剃らす。それと同時にジョニーは、急いでその場から離脱。残っていた敵を倒しながら、屋上へと走る。
『ドアはふさいだけど、長くは持たない。ジョニー、全速力で逃げて』
ジョニーは何とかその場から逃げる事に成功し、後はヘリに乗って逃げるだけ。そして屋上にたどり着くと、ヘリは既に飛び立とうとしていた。
「ジョニー!手を!」
先にヘリに乗っていたローグが手を伸ばし、ジョニーも思いっきりジャンプしてその手を掴む。まるで映画のラストシーンのような光景だ。
(良かった…これで終わる…)
てっきり最後は、爆弾で全身焼かれて死ぬ瞬間を体験するかとひとりは思っていたが、どうやらそれは無いらしい。ジョニーから聞いていた話と違うが、むしろこっちの方が良い。後はこのまま、ヘリで脱出して終わりだ。
(……え?)
だがそう思った瞬間、ヘリが攻撃を受けた。そしてその衝撃で、ジョニーはローグの手を離して落下してしまう。
「ぐっ…!?」
上空には、黒い煙を出しながら回転して落ちて行くヘリ。そして倒れたジョニーの視界に、先ほどの恐ろしい男が映る。
「スマッシャー…」
「言ったろ、ジョニーボーイ」
(や、やだ…)
アダムスマッシャーは持っていた機銃を足元に置くと、右腕をジョニーに向ける。その右腕には、小さなミサイルのような武器があった。
「お前の息の根を、止めてやるってな」
そう言うとアダムスマッシャーは、そのまま右腕の武器をジョニーに発射した。
「ああああああああああ!?」
ひとりはその瞬間、大声を出しながら布団から飛び起きた。
「はぁ…はぁ…あれ?ここ、私の部屋…?」
周りを見渡すと、見慣れた自分の部屋。
「どうしたんだひとり。朝からでけー声だしやがって」
「っ」
そして、部屋の壁に座りながら寄りかかっているジョニーがいた。そんなリラックスしているであろうジョニーを見た瞬間、ひとりの顔が強張る。ついさっきまで、彼の記憶を見ていたせいだ。そのせいで、ひとは今ジョニーを怖いと思ってしまっている。
自分にギターを教えてくれたし、STARRYで人生初のライブをする際に背中を蹴ってくれたりもしたけど、人殺しのテロリストだ。そんな危険人物が、自分にとり憑いている。よくよく考えたら、怖いなんてもんじゃない。
「え、えっと…」
なんて言えばいいかわからない。兎に角、先ほどの事を察せられないようにしなければ。
「お姉ちゃん、どうかしたのー?顔に蜘蛛でもひっついてたー?」
その時、部屋に妹のふたりが入ってきた。恐らく、先ほど自分が大声を出したので気になってきたのだろう。
「あ、そ、そんな感じかな?」
「そうなんだー。ん?あ、あったー」
「え?」
ふたりはそう言うと、ジョニーの近くに歩いて行く。
「ここにあったんだー、私のお人形」
そして、ジョニーの直ぐ傍にあった兎の人形を手に取る。昨日の昼に、ふたりがこの部屋で遊んでそのままにしていたのだろう。そんな自分の人形を手に取るふたりだが、ジョニーには全く気が付かない。
「もう直ぐ朝ごはんだから下に行くね。お姉ちゃんも早くねー」
「あ、うん」
ふたりはそう言うと、人形を持って部屋から出ていく。
「……」
そしてその光景を見ていたひとりは、少し考える。ジョニーは現状、ひとり以外に見えないし、何かに触る事も出来ない。一応ひとりに乗り移る事は出来るが、乗っ取ったところでこの日本であんな重火器を手にする事なんて出来ない。
更にジョニーは、この日本で何かをしようなんて考えていないと以前言っていた。そもそも出来そうに無いし。
「で?結局何があったんだ?」
「な、何でも無いです。ちょっと怖い夢を見てただけで…」
「そうかい」
結果ひとりは、ジョニーの事は怖いが、今のジョニーをそこまで危険ではないと判断。確かに過去は相当やんちゃしていたみたいだが、今は違う。そう思い込んで、頑張って今まで通りジョニーに接する事にした。
そして部屋で、汗まみれになった服も下着も全部着替えて、1階に降りて朝食を食べるのだった。
因みにこの時、流石のジョニーもひとりが着替えている時は廊下に出て覗くような真似はしなかったりする。
「すみません、コーラください」
「あ、はい。どうぞです」
「私、ジンジャーエール」
「あ、はい。どうぞです」
「「ありがとうございます」」
ひとりはSTARRYで、ドリンクスタッフのバイトとして働いていた。動きは少しぎこちないが、しっかり相手の顔を見れて、ちゃんとドリンクを作って渡せている。
更にSTARRYに来た時、ここの店長の事も怖がること無く何とか普通に話せてもいた。これまでのひとりからは、考えられない成長である。
「凄いじゃんぼっちちゃん。まだ少し緊張してるみたいだけど」
「うん。正直ちょっと心配だったけど、これなら心配ない」
「あ、ありがとうございます」
虹夏とリョウも、ひとりのバイトを褒めてくれている。ひとりがこんな風にバイトが出来ているのは、昨日の出来事が原因だ。
(昨日のあの出来事に比べたら、バイトなんて全然怖くないや)
昨日ジョニーの記憶を追体験したひとりは、本当に怖い思いをした。沢山人を殺して、沢山人が死んで、最後には自分が殺された。
そんな出来事に比べたら、ドリンクスタッフのバイトなんて全然怖くない。客の視線が何だというのか。銃を向けられたり、向けたりする事と比べるとこんなの朝飯前だ。それに虹夏の姉の店長に会って話した時も、少しだけ顔が怖かったが、昨日のアダムスマッシャーと比べたらチワワと変わらない。
(私、成長してるなぁ…きっかけはアレだったけど…)
思いかげず良い結果となり、ひとりはほっとする。これなら、なんとかバイトをしていけそうだ。
「こいつ、本当に30手前なのか…?いくら何でも若すぎるだろ…ひとりの母親といい、本当にこの世界の日本人はどうなってんだ…?」
因みにひとりがドリンクスタッフのバイトをしている時、ジョニーは虹夏の姉でSTARRYの店長である星歌を見てそんな感想を口にしていた。
その後、ひとりは虹夏からSTARRYの事やこれからの事を聞いて、絶対にバイトもバンドも頑張ろうと決める。とりあえず、明日もバイトをサボらず必ずやろう。
「ごほっ!ごほっ!今更風邪ひくなんて…」
「本当にこいつ馬鹿だな」
けれど1日遅れで風邪をひいたので、結局バイトも学校も休む事になったのだった。
おまけ ぼっちちゃんと星歌さんの会話
「新しいバイトの子だったのか。私、ここの店長やっている伊地知星歌。よろしく」
(店長さん。ちょっと怖いけど、昨日見たあのもっと怖い人に比べたら全然だ)
「てか誰かと思ったら、この前虹夏のライヴでギターやった子じゃん。最後のいきなりソロギターした」
「あ、はい。そうです」
「えっと確か、ぼっちちゃんだっけ?なんか虹夏がそんな酷いあだ名付けてた気がするけど」
「あ、はい。ぼっちです。よろしくお願いします」
「ところでさ」
「あ、はい。何でしょう?」
「虹夏から聞いたけど、なんかギターの師匠みたいな人が相当ヤバイ人なんだっけ?大丈夫?もし自分でその人に何も言えないなら、私が代わりに言ってあげようか?」
「あ、本当に大丈夫です!確かにかなり物騒で平気で人殴ったりしそうな人ですけど、私に実害なんて無いんで!」
「そ、そう?ならいいけど」
「精々私の部屋で下着姿見てきたくらいですし」
「うん、ぼっちちゃん。今すぐ私と警察行こう?そいつ普通に女の敵じゃん。何なら私が直接ぶっ飛ばしてあげるよ」
「おいこらひとり。そもそもあれはお前の自業自得みたいなもんだろうが。人をロリコンの変態みたいに言うな」
ぼっちちゃんは暫く、お肉が食べれなくなりました。でも唐揚げは別。
次回は書けたなら喜多ちゃん登場予定。でも何時になるかわからないので、気長にお待ちください。
クロス元の作品知ってる?
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ぼざろだけ知ってる
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サイバーパンクだけ知ってる
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両方知ってる