顔のいい姉の弟に生まれたので姉を曇らせたい   作:じゃがありこ

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評価、感想ありがとうございます。
ここから少しづつ話が動きますよ。


第6話

1:名無しの観客

最近の推しや

https:221%¥3852@57<&22%+asdfruhtyghjbkjeakdsfdiou

 

2:名無しの観客

あ、それ知ってる

 

3:名無しの観客

YMやんけ

 

4:名無しの観客

天才君じゃん

 

5:名無しの観客

出た音楽の神の誤植

 

6:名無しの観客

妖怪ナンデモデキル

 

7:名無しの観客

ピアノを始めギター、バイオリン、ドラムなど様々な楽器を演奏、カバー曲を投稿している動画投稿者。歌ってみたも人気。マジで推せる、うますぎ

 

8:名無しの観客

あ、そういう感じね

 

9:名無しの観客

わかるまん

 

10:名無しの観客

全楽器使えると豪語する推定学生。プロの演奏家とバンドが反応してからバズったよね

 

11:名無しの観客

投稿頻度は低いけど

 

12:名無しの観客

オリジナル曲だして欲しい

 

13:名無しの観客

顔出してないけど雰囲気はイケメン

 

14:名無しの観客

 

15:名無しの観客

初めて見る躍りを完コピした動画見て引いたわ

 

16:名無しの観客

変態だよな

 

17:名無しの観客

おかしいと思う

 

18:名無しの観客

でも歌い方とか既視感があるんだよな

 

19:名無しの観客

性別不明なのもいい

 

20:名無しの観客

わかる

 

21:名無しの観客

頑なに顔だけは出さないスタイル

 

22:名無しの観客

のっぺらぼうのお面着けてるからな

 

23:名無しの観客

公開初日の楽曲をオリジナル以上の技量で演奏して宇宙猫と化したわ!!!!!

 

24:名無しの観客

あれは阿鼻叫喚だったな

 

25:名無しの観客

あの配信、アーカイブ消してあるけど転載されて今もあるし

 

26:名無しの観客

変態すぎる

 

27:名無しの観客

美少女だと信じてる

 

28:名無しの観客

最近のチャネル登録の伸びえぐい

 

29:名無しの観客

スパチャやばいよな

 

30:名無しの観客

あ、ゲリラライブだ

 

 

 

 

 

画面の向こうで一人の少年が音を奏でている。

 

突然始まったゲリラ配信だったが、すでに1000人近い観客がいる。視聴者の中心は10代後半。彼らに人気の高い曲をアレンジ、カバーして演奏していた。ライブ以外であれば、視聴者はもう少し高めになるため、さらに演奏曲を変える。

 

それだけで面白いほど伸びるのだ。

 

歌声が音と混ざり、一瞬音の色が変わる。

 

マイクを通じて、画面の向こうにいるありとあらゆるものに静電気が飛散する。空間を貪欲に食い、広げていく息の長い旋律に、視聴者たちは息をのみ絶句する。

 

何と言う激情。

なんて特別な歌なんだ。

素晴らしい技術だ。

 

誰も彼もがそう思う中、真音は嗤う。ただの模倣、猿真似。この世界にはいない誰かの模造品。誰も自分を見てはいない。滑稽だ。何もかも。少年の爪が手の平に食い込む。

 

曲が終わり、やがて静けさが帰ってくる。他の全ての音が空気に吸い込まれてしまったのを確かめてから歌い終えた少年は、ギターを降ろして配信終了を告げた。

 

「配信は以上です。ありがとうございました!」

 

少年は丁寧に頭を下げた。そこに真音の感情はなく色も温度もない…ただ伽藍洞だった。

 

 

 

 

 

真音は掲示板を閉じた。時折、こうしたエゴサを行う。

 

そして、やはり実感するのは、求められているものを、供給すれば凡人でも評価されてしまうという現実である。

 

こんな中身のない継接ぎのくだらない作品ですら、需要を満たしてさえいれば、評価されてしまうのだ。

 

逆に自分が表現したいものというのは評価されにくい。

 

真音は自嘲気味に笑った。

 

「自分が何を表現したかったのか、何を思っていたのか曖昧になってる俺が思うのは傲慢かな」

 

転生特典は非常に強力なものだ。前世ではダメだったか 今世ではうまくいくと思っていたのだ。才能さえあれば 自分が描きたいものが描け、その作品が誰かの心を 揺さぶれると それこそが自分の存在証明になり得ると、そう思っていたのだ。

 

だけど結果はご覧の有様である。

 

折れそうになる心を繋ぎ止めるために他人の承認を求め、くだらない作品を作り、賞賛をもらう。

 

カバー曲、アレンジを混ぜた演奏、イラスト、模写、すべてに中身がない。

 

自分でもおぞましいあり方だと思っている。挙句の果てにはそんなことを続けているうちに、自分すら見失いかけるのだから本当に終わっている。

 

いっそこのまま自害しようかと思ったことすらある。

 

それでも未だギリギリ生にしがみついているのは何故だろうか。何故、音楽を続けているのだろうか。

 

自分は何がしたかったんだろうか。

 

そんなことを考えながら、目を閉じた。

 

休日の真音の目覚めはいつも遅い。眠れない日は、睡眠薬で寝ており余計に覚醒しにくくなっていた。転生した頃から、朝が弱い体質は少しばかりの改善も見られなかった。一人暮らしを始めたばかりの大学生のように、今回もぐうぐうと真音は昼間で眠りこけていた。

 

「12:00か………やばい時間だけど眠い」

 

眠たい目を擦り布団から転がりでる。少しして、ひかえめな──起きていれば聞こえるが寝ていれば起こさないぐらいの、気を遣ったノックが聞こえた。

 

「起きてるよ」

 

そういうと奏が部屋に入ってきた。珍しく髪が梳かされている。少し不格好だが身だしなみとしてはまったく問題ないレベルで整っている。

 

奏が自分で髪を梳かしている時は、病院に行くときだ。父親関連で行動する際に、奏は常に真音の様子を窺っていた。

 

「今日、病院に行ってくるから家あけるね」

 

「おっけー。俺はまだ寝てるからよろしく」

 

「………うん、それじゃあ、いってきます」

 

昔は真音も病院を訪れていたがその度に苦し気な顔をするため、奏はダメージを受けていた。演技ではあるものの、まったく傷ついていないわけでもなく嘘ではない。だからこそ、奏の心を揺らしていたのだが、これ以上は壊れると察し病院に行くのを止めた。

 

「今日も姉の顔がいいぜ」

 

そう言いながらも、夜の配信のために眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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