顔のいい姉の弟に生まれたので姉を曇らせたい 作:じゃがありこ
ライブは大盛況に終わった。万雷のような拍手と歓声を上げる観衆の中には、ふざけてアンコールを送るものまでいる。
俺以外の人間は、おそらく達成感に身を委ねているだろう。
ここまで努力してきてその結果を残せた!そんな彼らの手伝いをできたことは、自分でも悪くないとは思っている。
だけどどうしようもなく、この声が気持ち悪くて仕方がない。誰の何に称賛しているのか。
作り笑いでステージを去り、他メンバーを労う。
「お疲れ!流石だぜ真音!」
「マジ助かったわ」
「ギターの奴が熱出したときはひやひやしたぜ」
「やっぱ真音のギター最高だな!」
「………俺のギター、ね」
わかっている。彼らは善意で言っている。だけど、だからこそそれは誰も宵崎真音を必要としていない証だ。誰も俺を見ていない。
「真音も後夜祭出るんだろ?」
そんなものがあるんだっけか。
「俺はいいや。ちょっと用事があってさ」
いずれにせよ、今は気分が悪く参加する気にはならなかった。
教室に戻り、パーテンションで隠してある場所から荷物を回収、学校を出ようとしたタイミングで着信が入る。
『YMさん
以前DMさせていただいたASRUNの柊です。
前回提案いたしました弊社アイドルユニットへの新曲提供の件、正式に依頼させていただきたいのですが受注して頂けますか。』
「………猿真似しかできないのに、金とれるほどの新曲が作れるわけないだろ………」
俺はその場で携帯の電源を切った。
奏はあの後真音を探したが、見つからず家に帰ると一度帰った形跡がありその後メッセージに夜には帰ると来ていた。
奏はライブのことを思い出し外に飛び出した。弟を探すために。
しかし、当てもなく探すのは分が悪かった。普段運動しないからか、どれだけ歩いても近づいている気がしない。足取りが鈍っている気がした。
心当たりとして残っているのは、とある公園だ。最寄駅から列車の音がまた響いてきて、光の破線が薄暗い空に尾を引く。空腹感が心を締め付ける。何をやっているのだろうか。
馬鹿なことをやっている。そう簡単に会えるわけもないのに家に帰らず探しに来て、こうして後悔と徒労感で足を引きずっている。だけど、放置はできない。
あの時の真音は、ふとした瞬間に消えてしまう目が離せないそんな感じに見えた。
聴こえた。
いつの間にか俯いていた顔を上げる。公園の中心部からギターの音が聞こえる。
奏は、地面を蹴って走り出す。空気がひやりと肌を噛む、足音がやがて草を踏む音に代わり、湿った地面が体力を奪う。途中で足を止め、息を突き、目を凝らした。
真音だ。
ほんとうにそこにいた。
木に寄り掛かり、片膝を立てて闇と同じ色に沈んだアコギを膝に乗せ、弦を撫でている。シンプルなコードの移ろい、しかし優しく綺麗な曲。
「あ――――」
奏はその曲を知っていた。昔、聞いたことがあったのだ。鼻歌が聞こえる。金属弦のきらめきが夕焼けを優しく包む。
「♬~」
それは宵崎真音が子供のころに初めて作った曲。今では何を思って作ったのか思い出せない。しかし、その音だけは覚えておりこの曲を引き金に自分を思い出すのだ。
「真音………」
目を伏せて、弦を弾いていた彼は奏を見た。泣き笑いのような表情から一転、安心させるための笑みを浮かべる。
「………あれ?どうしたの?もしかしてわざわざ探しに来た?」
「ッ!」
奏は、その笑みを見たことがあった。それは同じニーゴのメンバー朝比奈まふゆと重なった。
「………文化祭見に行ったよ。ライブも見た」
「!気が付かなかった。声かけてよ姉さん」
ケラケラと笑う。
「そう言えば、瑞希さんに会ったよ。中々明るくて、愉快な人だったね!」
「瑞希は結構ぐいぐい来るからね」
「楽しかった?ライブ」
そう聞いた瞬間、一瞬だけ真音の顔から表情が抜け落ちる。ハイライトの消えた瞳が奏の視線を捉えた。
「何で、そんなこと聞くの?」
「————真音、楽しそうじゃなかったから」
意を決して、奏はそう言葉を投げかけた。真音は歓喜していた。やはり、姉にはわかるのだ。あれが宵崎真音の音ではないと。しかし、それを奏に伝えることはなかった。ここでぶつけるのはまだ早い。
「………姉さんはさ、最近というかサークル仲間と出会ってから楽しそうだよね。きっと、一緒に歩ける仲間ができたんだと思う。だから姉さんは少しだけ変わったように見える」
「そう、かな」
奏の状態は広く言えばメサイアコンプレックスだ。それは残された父の呪い。ニーゴは、誰かを救う曲を作るための媒体である当時に、向き合わなくてはいけない問題を浮き彫りにさせ、奏自身を支える役割を果たしている。
奏は思い出に蓋をして、曲を作っているが大切な人を奏が救えないと判断した場合は一気に崩れ落ちるのは容易に想像できる。だから、その出会いは必要なものだった。
だが、真音はその役目を自分がやりたかったし自分も助けてほしかった。
そんな苛立ちも乗せて、作り笑いで真っ赤な嘘を吐いた。
「俺は変わらないよ。つまらなそうに見えたなら、そうだなー緊張してたからかも」
敢えて誤魔化した真音を見て、悲し気に目を伏せる奏に興奮と好意を押さえきれなくなりそうで、ギターを差し出した。
「何か弾いてよ、姉さんの曲聞きたいな」
プロセカ、宵崎真音について語るスレ
1:名無しの豆腐?
あの!奏さん、弟君やばそうじゃない?KAMIKOU FESTIVAL!の最後、あかんだろ
2:名無しの豆腐?
それはそう!
3:名無しの豆腐?
奏の弟だぞ、闇深くないわけないやろ
4:名無しの豆腐?
ハイライトがないのひえってなった
5:名無しの豆腐?
睡眠薬を常用している考察もあったな
6:名無しの豆腐?
異質なキャラだよな。ユニットに所属していない、単独でセカイを作った、モブではないけど書き下ろし曲はない。
7:名無しの豆腐?
YMという名前で音楽もイラストレーターとしても無双しているチート
8:名無しの豆腐?
父親に忘れられたトラウマ。大量の睡眠薬、姉への劣等感?など地雷しかない
9:名無しの豆腐?
模倣が得意で全楽器をプロ以上の技量で扱え、歌もプロ級。模倣する時は人格まで分析するため、影響を受けて自分を見失いかけている?
うん、やばいな。
10:名無しの豆腐?
まふゆ亜種とか呼ばれてて草
11:名無しの豆腐?
YM=真音って確定か
12:名無しの豆腐?
>>5イラストのゴミ箱に大量の錠剤のカスが写ってる
13:名無しの豆腐?
草
14:名無しの豆腐?
>>10草
15:名無しの豆腐?
>>10草
16:名無しの豆腐?
姉への劣等感…確かに自分は追いつけないみたいなこと独白してたな
17:名無しの豆腐?
姉への劣等感が確定だとしたらマジで地獄やん。自分を見失いそれでも模倣を続けても追い付けず、結局誰の記憶にも残れないし、自分自身も覚えてられないってこと!?
18:名無しの豆腐?
ほぼ確定。直接的な描写はないけど
19:名無しの豆腐?
人の心案件
20:名無しの豆腐?
今の構図的に真音を救ってくれるの誰もいないのやばいんだ。まふゆの前に弟だろ!
21:名無しの豆腐?
ユニットに入れてないの意図してるだろうし、何かしらキーマンなんだろうな
22:名無しの豆腐?
>>17闇が深すぎる
23:名無しの豆腐?
運営………
24:名無しの豆腐?
寧々からチョコ貰う下り配信者が考察してたけど、模倣する代償でやばいことになってるのは確定っぽいよね
25:名無しの豆腐?
宵崎姉弟は才能に対して罰を受ける定めなのだ………呪われ過ぎだろ
26:名無しの豆腐?
人の心とかないんか………
27:名無しの豆腐?
本心を隠す、睡眠薬常用、自分を見失う、バレたら奏壊れそう。これ歩く地雷だろ!
28:名無しの豆腐?
まふゆと早く会話して欲しい
29:名無しの豆腐?
お労しい
30:名無しの豆腐?
早い段階でニーゴとワンダーランズショータイムに関わり持っているし、ユニットが協力して助けるのかな?
31:名無しの豆腐?
曇らせ抜いても特殊だよな
32:名無しの豆腐?
みんな忘れてないか?寧々のメス顔を引き出す男だぞ?ミクのスカートも捲ってるんだ。ありがとうございます、許すまじ。もっとやれ
33:名無しの豆腐?
ミクのスカート捲って蹴られてるの、リストカットって言われてて駄目だった
34:名無しの豆腐?
一人でセカイを作った組だと、光の司、闇のまふゆ、虚無の真音か?
おまけ
宵崎真音
性別 男性
身長 169cm
学校 神山高校
学年 1-B
部活 映画部
趣味 音楽?映画?ミュージカル?演劇?
特技 真似事
苦手なこと・もの 直射日光
好きな食べ物 ???
嫌いな食べ物 ???
人の感情の機微に非常に聡く、気遣いを見せる少年。
一度見たものを真似ることが得意。より深く研究、模倣することで同一のレベルまで真似ることができる。
動画配信サイトで音楽関連や絵描き配信を行っているようでそれなりの収益らしい。
一見、自由で優秀な優等生に見えるが………?