最強は永遠に 作:ルイス
ロキ・ファミリアはオラリオに帰る道中でトラブルに合う。
ダンジョン下層域にて毒妖蛆が大量発生により、ロキ・ファミリアの三分の一が毒に侵されてしまった。
そんな事があり、彼等はダンジョン18階層で休息を取っている。
耐異常のアビリティがH以下の団員は軒並みその毒に倒れ、椿を除いた大半の上級鍛治師達も毒に侵されていた。
時間が解決できる問題でも無いため、今はファミリア内で最も足の速いベートが地上に解毒薬を取りに行っている。
「手に入れた6、7割の素材はヘファイストス・ファミリアに渡さないといけません。………魔剣や不壊武器、特効薬などのお金。今回、遠征で使った費用はかなりのもの。ファミリアはしばらく火の車です」
「七海。言わないでくれ。僕もその事は分かっているよ。次の遠征の時は資金集めから始める」
「団長。是非ともそうしてください。ファミリアの財政を管理する立場の意見として、そこは強く進言します」
七海の強気な発言にフィンは本当に次回からはそうしなければならないと思う。
それから次の日。ロキ・ファミリアの野営地にベル・クラネル率いるパーティーが運び込まれた。ここまで来ていることからLv.2となっていることが分かる。
「早いよね。もうLv.2なんて」
「何かのレアスキルでしょう。努力どうこうの問題ではないので」
「五条さんと夏油さんならスキルが無くてもいけそうだよね」
「………否定は出来ませんね。あの人たちは我々から見ても規格外の存在ですから」
ベル・クラネル一行のパーティーが来た日の夜、晩餐にてフィンから団員たちに話があった。
「みんな聞いてくれ!!今夜は客人を迎えている。彼らは仲間のために身命をなげうち、この18階層までたどり着いた勇気ある冒険者たちだ。仲良くしろとまでは言わない。けれど同じ冒険者として欠片でもいい敬意を持って接してほしい。それじゃあ、仕切り直そう!!」
「「「「乾杯!!!」」」」
フィンの言葉によって場は騒がしくなった。
「上手くいい含めましたね」
「これでうちの団員も彼等との揉め事を避けてくれるだろう」
「そうですね」
『ぐぬあああああああああああ!!!!!』
皆がワイワイしていると、17階層につながる場所から大きな悲鳴が上がる。
その声を聞いて、ベルは声のした方へ急いで向かう。
『あんな巨大なモンスターがいるなんて聞いてないぞ!!』
『あっはははは、死ぬかと思った!!』
「えっ………………神様?」
ベルは目の前にいる自らの主神ヘスティアがいることに驚いていた。
「ベル君!!良かった無事で!!」
ヘスティアは嬉しさのあまりベルに抱きつく。
神ヘスティアがやって来たのに驚く。ベルは彼女からの説明を聞いた。
ヘスティアはギルドに依頼をする。事の原因となったタケミカヅチ・ファミリアの者たちと何故かヘルメスが捜索の依頼を受けた。
これで安心かと思われたが、ヘスティアもダンジョンに行くと言い出した。これには皆反対していたが、ヘルメスも行くと言うこととなり、護衛を増やす事となる。
新しい護衛は豊穣の女主人のリュー・リオン。
メンバーを揃えてこの階層へとやって来たわけだ。
「ーーーというわけさ」
ヘスティアから説明を受けたベルは申し訳無さでいっぱいだった。
だが、ヘスティアは気にするなと言う。
「君が無事で良かったよ」
「ありがとうございます神様」
そこから先、ベルはタケミカヅチ・ファミリアの者達と話すこととなる。
一方のヘルメスはベルたちを保護していたロキ・ファミリアと話をしていた。
「いや~驚いたよ。ベル君たちを助けてくれたのが君達【ロキ・ファミリア】だったなんて」
何気ない会話を始めるようにヘルメスは話す。
腹の中が読めない相手にフィンは警戒心を強める。
「直接ダンジョンに来た神は初めて見たわい」
「確認させて頂きたいのだが神ヘルメス。この18階層にやって来たのはベル・クラネル一行を救出するため。間違っていないだろうか?」
驚くガレスを横目にフィンはヘルメスに尋ねる。
「ああ、そうさ『勇者』。ヘスティアに依頼されてね。ここに依頼書もある」
ヘルメスは確かに本物の依頼書を提示した。
これに反対する理由もない。
「ちゃんとした依頼書だよ。それでこの野営地への滞在の許可。そして、君たちが地上に帰還する際に同伴させてほしい。それがこちらの要望だ」
「安全のため?」
「察してもらえて助かるよ。何しろ急いで来たものだから野営の準備をしていなくてね。かと言ってならず者達の街と知られるあのリヴェラに泊まるのも……ね」
交渉の上手い神である。この場にいる頭の回る者たちはそう思う。
あえて、弱みを見せるところが策士していると。
「アルゴノゥト君たち酷い目に合うだろうな」
「黙ってなさい!!」
「食料の方は自分たちでなんとかするよ。何か出費があれば地上に帰ったあと俺のファミリアが立て替えよう。何だったら謝礼も出す」
「依頼をただ受けている身にしては随分と羽振りが良いのぅ」
「はは……出発する際にヴェルフ君の事もへファイストスに頼まれているからね。遠征の帰りで疲れている君たちに頼むのは申し訳ないが……どうだろうか」
ヘルメスは神ヘファイストスの名を出して更に断れないようにした。
(全く。神というのは油断ならない)
「神ヘルメス。こちらは元より滞在も同行も受け入れるつもりでいる。余計な駆け引きはやめよう」
「おっと!!これはすまなかった。ありがとう。感謝するよ。あぁそうだ遅くなったけど遠征お疲れ様。様子を見る限り成果は上げられたのかな?」
「おかげさまで犠牲者もゼロに抑えられた」
「そりゃすごい流石ロキファミリアだ!!……それで59階層では何か発見できたのかな?」
ヘルメスの言葉に全員の表情が強張る。
「我々はロキの眷属だ、得体の知れない神に話す義理はない」
「それもそうだ悪かったよ。ただ彼の領域に踏み込もうとするのはあのゼウス達以来なもんでね。気になってしまったんだ」
「実はね…オレはロキやディオニュソスと同盟を組んだ。いわいる被害者同士の繋がりさ。極彩色のモンスター、闇派閥の残党に対する……ね」
「あいにく確認がとれるまでその言葉を信用することはできない神ヘルメス」
「構わないよ。それよりも『勇者』フィン・ディムナ。君は気づいているかもしれないがやはりバベル以外にもう一つダンジョンの入り口がある。君たちが帰還した後、本格的に調査を開始したいと俺たちはそう考えている」
そう言ってヘルメスはテントを出た。
バベル以外にダンジョンへの入り口がある。それはとても聞き逃がせる事ではなかった。
「分かってはいたけれど、やっぱり帰った後も休む暇は無さそうだ」
「団長。我々も失礼します」
「ああ。急に悪かったね。二人にもヘルメスという神を見ておいて欲しかったんだ」
「いえ。では、また明日」
七海と灰原はテントを出る。
そして、次の日にはベートが特効薬を持ってきた。ロキ・ファミリア一行は明日に出発する事となる。
17階層に出没したゴライアスをさっさっと倒してロキ・ファミリアは地上へと戻る。
ベル・クラネル一行は何か用事があるらしくその場に残った。
地上へと戻った次の日。
七海と灰原は59階層の件を五条と夏油に伝えるために二人に会いに行った。
「なるほどねー。精霊とモンスターと呪力か。わけ分からん」
「もう一度聞くけど、呪物などは無かったんだね?」
「ええ。その場には残されてはいませんでした。もし、呪物の影響だと仮定したら祓ってしまったと考えるべきか………」
「今の七海と灰原にダメージを与えるほどの呪力。この世界の人間如きでは到底敵わない筈だ。………誰かがその呪物を回収した可能性は?」
「気配は感じませんでした」
気配は感じなかった。だが、七海と灰原の脳裏に嫌な考えが浮かぶ。自分たちよりも遥かに格上の存在が干渉したのではないかと。
「何かしらの存在が動いているみたいだな」
「調査が必要だね」
「だな。一応、天内たちにも知らせておくか」
「そうだね」
これからの方針が決まる。
とりあえずはオラリオ内を隅々まで調べる。それが五条たちの役割となる。
「調査開始だね」
それから五条たちは何日も調査をした。
しかし、収獲はない。呪力の欠片さえ見つけることは出来ないでいた。
彼等は手掛かりを探しているが見つからない。そんな状況が続いていたので、彼等は気分転換を行っていた。
「いやー。祭って良いよねー。前の世界なら呪霊がいたけど、この世界じゃ呪霊はいない。賑やかなだけの祭りだね」
今日は神月祭。昔からの伝統的な祭り。
しかし、五条たちにとっては単なるお祭り。
「しょっぱいなー」
「しょっぱいねー」
五条と夏油は祭りの雰囲気を楽しんでいた。
別のところではヘルメスが世界観光旅行を餌にオリオンを探している事など彼等は知る由もない。
「にしても、敵さんはどうしてるのかねー」
「これだけ私達が探しているにも関わらず、見つからない。相手はかなり頭が回るようだ」
「………」
「悟?」
何故か黙っている五条。
夏油はどうしたのかと尋ねる。
「何か気色悪い気配を一瞬感じた。まぁ、気にすることじゃない」
「なら、良いが」
『祭りじゃ!!!祭りじゃぞ!!!!』
『お嬢様、もう少し落ち着いてください』
聞き覚えのある声に五条と夏油は声のする方へと振り向く。
振り向いた先には祭りを存分に楽しんでいる天内と黒井がいた。
「ガキだな」
「楽しいから良いじゃろ!!貴様たちとて楽しんでおるではないか」
「あーあー!!聞こえなーい!!天内の声は聞こえなーい」
「貴様。妾をからかっておるな」
「分かる?」
「分かるわ!!からかった罰じゃ!!お詫びにりんご飴奢れ!!」
「ヘイヘイ」
面倒そうにはしているが、五条の表情はとても笑っていた。それは天内も同じ。
「二人共楽しそうだね」
「ええ。とても。私たちも楽しみましょう」
「そうですね」
四人はめいいっぱい祭りを楽しむ。
青春を彼等は過ごしている。かけがえの無い、何事にも変えられない日々。
それは彼等にとって祝福とも取れるもの。
(……楽しいな。ずっと続いてほしいよ。…………………いや、続けるよ。俺の力の限りを尽くして、この日々を守る)
◆◇◆
神月祭が終わってから数日後。
世界では異変が起きていた。
遥か昔。大精霊によって封印されたはずの古代の怪物アンタレス。
それが復活してしまった。そして、そのせいで多くの被害が出ようとしている。
「アンタレスの討伐。矢に選ばれたからと言って、あの少年たちに任せておくのはどうかと思うけどね」
シヴァはアンタレスが復活したのを知っているので、同じく知っているウラノスに文句を言う。
「異界の者たちを派遣しても良かったのでは?」
「………アルテミスが喰われている。神殺しを異界の者たちにさせるわけにもいかぬ」
「確かにね。異界の者たちに神殺しをさせてはいけないね。でも、手助けぐらいは出来たのではないかな?」
「信用出来ぬ。もし、あの者にアンタレスを調教されたらどうする?神の力ごとだ」
ウラノスは今でも夏油の事を警戒している。
彼がアンタレスを取り込んだらどうなるか。内心常に恐れていた。何しろ、第二のダンジョンと言っても過言ではないから。
「君の意見も分からないでもないけどね。まぁ、僕としては彼らは光たり得るものだと思っているよ」
「闇かもしれぬ」
「見解の相違だよ。とりあえずは、無事に終わる事を祈ろう。我々は一人の憐れな少年に託してしまったのだから」
ウラノスがいるこの地下では空は見えない。
けれど、シヴァは憐れな少年と憐れな女神の事を想い見上げる。
(さて、どうなるのだろうか)
月が二つ現れた。
それに対して分かる者たちは危機感を持つ。
「傑。ダンジョンの方を頼むわ」
「悟はどうする?」
「俺はあのむかつく月をぶっ潰すわ。まぁ、月って言ったけど正確には弓矢だけどな」
「分かった。上は任せるよ」
夏油はダンジョンへ。五条は上へと向かう。
ダンジョンでは既にロキ・ファミリアたちがモンスターと戦っていた。
「七海と灰原は残業かい?」
「「夏油さん!!」」
「手伝いに来たよ」
「助かります。何しろ、無尽蔵にモンスターが湧いてきますからね」
夏油の参戦により、七海と灰原はいくらか余裕が生まれる。
無尽蔵に湧くモンスター。そのスピードは増すばかりだ。
夏油はロキ・ファミリアがいる場所よりも、更に奥でモンスターを取り込んでいた。
「全く。手駒が増えるのは良いけど、面倒だ。悟の方は大丈夫かな?」
夏油はモンスターを取り込みつつ、五条の心配をする。夏油が見る限り、あの空に浮かんだ弓矢は危険だ。いくら五条と言えど、アレを潰すのは簡単ではない。
そんな心配をされている五条は無下限呪術を使い空に浮かんでいた。
「やっぱり矢だよなー。神の力ってのは無茶苦茶だ。けど、神の力が相手だからって諦めるほどバカじゃないよ」
(何か別のところでは原因の元と戦ってる奴がいるな。そっちはこっちが片付いたら向かうか)
「さて、始めようか」
五条は矢めがけて構える。
「【九綱 偏光 烏と声明 表裏の間】」
術式順転の【蒼】と反転の【赫】を掛け合わせる事で生まれる仮想の質量。
五条家の奥義が炸裂しようとしていた。
「【虚式『茈』】」
【虚式『茈』】が空に浮かぶ矢に向かって炸裂した。その威力は下界にいる神々たちすら驚く威力。矢は半分ほど消滅した。
「結構頑張ったんだけどねー。……チッ。…まだ、半分も残ってやがるな」
(もう一度【虚式『茈』】を使うしかないよな。今度は完全に潰す)
五条はもう一度【虚式『茈』】を発動させようとする。
しかし、そう簡単にはいかなかった。
矢の一部が邪魔をさせまいと、五条めがけて飛んでくる。
「効かねぇよ」
当然無下限呪術を発動しているので、矢の一部が五条に当たることはない。
当たる寸前で止まる。
「【九綱 偏光 烏と声明 表裏の間】」
再び詠唱を始める。
その目は完全に消し去ると意気込んでいた。
「【虚式『茈』】」
【虚式『茈』】が空に浮かぶ矢を飲み込む。
オラリオは間違いなく危機に陥っていた。だが、一人の男によって難なく危機は免れる。
それを神の力で見ていたウラノスとシヴァはそれぞれの反応をする。
シヴァは楽しそうに笑みを浮かべている。しかし、ウラノスはいつもよりも気難しいそうにしていた。
「アルテミスの矢を消すとは……」
「凄い力だ。僕の全力と彼の全力。どちらが上なのかは凄く興味がある」
「………」
「別に戦うとは言っていないよ。ただ、僕は知りたいだけ。僕よりも強い存在の力を」
嬉しそうにしているシヴァ。
彼はかつての五条悟の心境と似たものを心の内に秘めていた。
破壊神として生まれた彼は強い。誰にも負けていない。だからこそ、自分よりも強いかもしれない五条が気になる。戦っても良いと思うほどに。
五条悟の攻撃を見ていた者は他にもいる。
その内の一人。額に縫い目がある彼は改めて思い知る。
六眼を持って生まれた現代最強と呼ばれた呪術師の恐ろしさを。
「全く。五条悟は化け物だね。せっかく古代の怪物を解き放ったのに一瞬で終わった。やはり、この世界でも五条悟が一番の障害になりそうだ」
(着々と準備を進めてはいる。まずは、序章だ。混沌はもうすぐ始まる。楽しみだな)
額に縫い目のある男は笑う。
彼の後ろに何者かが存在している。その存在している者たちこそ序章の登場人物とも呼べるべき存在たち。
彼等のやる事が多くの被害を生む。
惨劇が始まるまで時間に余裕はあまりない。
アルテミスの矢を消し去った五条。
彼は遠くで戦っている者たちの方に飛ぼうとする。しかし、直前で飛ぶのを止めた。
「へぇー。神の武器があったとはいえ、アレを倒すのか。ちょっとご都合主義な展開だと思うけど、俺が直接行かなくて良かったよ」
五条がアンタレスのところへ向かう直前に、ベルはアンタレスを倒した。
それを察知した五条は行くのを止めたのだ。
(俺が直接行ったら再び神が復活することは無いかもしれないからな。本当の神殺しをするところだよ)
「にしても、59階層の件といい、今回の件といい。……何者かが関わっているのか?」
(いや、まだ断定は出来ない。今回は呪力が感じなかったからな。早いとこ59階層の件を片付けないといけないな)
精霊とモンスターと呪力を合わせ持った存在。
その件はまだ解決していない。精霊とモンスターはどうでも良いが呪力は放っておけない。
故に再び調査しないといけない。
「とりあえずは戻るか」
こうして、アンタレスの復活による被害は最小限に留められた。
アンタレスを倒した少年ベル・クラネル。そして、アンタレスが使ったアルテミスの矢を潰した五条悟によって。
次話『因縁の呪霊』