最強は永遠に 作:ルイス
今、オラリオではヘスティア・ファミリア対アポロン・ファミリアのウォーゲームで持ちきりだった。
多くの者たちが、この勝負を観戦している。
それは五条たちも同じたった。彼等は暇つぶしの余興として見ている。
「どっちが勝つと思う?」
「人数が少ない方」
「ヘスティア・ファミリアか。理由は?」
「七海の仲間たちが修行つけてたみたいだから。聞いた話じゃ凄い武器を作る鍛冶師も移籍したらしい。負けないだろう」
「へぇー」
五条が少なからず関心のある者たち。
その事から夏油は少し興味を持ち始めている。
結局、五条の言う通りヘスティア・ファミリアの勝ちとなった。
オラリオではアポロン・ファミリアに賭けていた者たちは大損して泣きわめいていたとか。
ヘスティア・ファミリア対アポロン・ファミリアのウォーゲームから一週間後。
ロキ・ファミリアの団員たちは敵のアジトを見つけるためダイダロス通りを捜索していた。
そして、フィンたちは以前には無かった扉を見つける。
「見つけた。というよりも罠だ」
中を少し調べると壁は全てオリハルコンである事が分かった。
これにより、フィンたちは入れば脱出は容易では無いことを知る。
「誘いに乗ることとなるが仕方ない。このまま突入する」
フィンは敵を追い詰めているとは思いつつも親指の疼きが止まらないでいた。
それ程までに今回は判断が生死を分けるのだろう。
「フィン。雑魚どもは邪魔だ。置いていくぞ」
フィンに進言したベート。
言葉遣いが悪いせいかティオナやティオネから反発を喰らう。
「大体、後衛の支援なしでどうするのよ」
「そうそう。ここは一応ダンジョンもどきでしょ。後衛の支援は必要だよ」
「二人の言うとおりだ。置いてはいけない」
フィンもティオナとティオネの意見に賛同した。そして、全員に指示を出す。
リヴェリアと数名は扉の前で待機。それ以外は突入する事となる。
「七海。何だか嫌な予感がする」
「ええ、私もです。呪力の件もあります。十分に警戒しましょう」
灰原と七海は他の誰よりも警戒していた。
呪力の件をずっと調べていたが見つけられなかった。
そんな時にこのダンジョンもどきの存在を知る。最近の出来事からも関係していると感じていた。
「ここから先は二手に分かれる」
フィンとガレスを筆頭に二部隊へと分かれる。
七海と灰原はガレスの部隊へと入った。
ガレスの部隊は真っ直ぐ進んでいくと大きな広間へと出る。
そこにはロキ・ファミリアが探していた似顔絵の男そっくりの者が立っていた。
「お初にお目にかかる。ロキ・ファミリアの冒険者達。そして、さようならロキ・ファミリア」
彼がそう言った瞬間に床が開いた。
落とし穴という単純な罠にかかったガレス達。
部隊は散り散りとなり分断された。
「分断されましたか」
「とにかく皆と合流しないと」
他の者たちと分断された七海と灰原。
二人は皆と合流するべく先へ進む。
すると、前から闇派閥の者たちとモンスターが大量に押し寄せてきた。
突然の事で驚きはするが、すぐに二人は敵を打ちのめす。
七海と灰原の実力はオラリオでもトップクラス。この程度の相手に負けるわけもない。
時間にして僅か90秒。この時間で七海と灰原は敵を倒した。
「私達だから余裕でしたが、皆はそうではない。急ぎましょう」
「そうだね。急ごう」
ロキ・ファミリア団員たちとの合流。
それが今の最優先事項。だが、そう上手くはいかない。
「たずげて!!」
「おかあーさん!!」
二人の前に多くの者たちが現れた。しかし、彼等の見た目は人とは思えない化け物。
けれど、二人には分かる。それが人間だったと。
「……改造人間」
「…………………七海」
「……ええ。これは間違いなく彼の仕業でしょう」
改造人間を見て、二人は思う。
この世界に奴はいるのだと。そして、一刻も早く倒さなくてはならないと。
七海は彼の危険性を知っている。故に必ず祓わなければいけない。
「七海。大丈夫?」
「………ええ。灰原、行きますよ」
七海と灰原は目の前にいる改造人間を殺していく。助からないと分かってはいるが辛い。
この行為に正当性があるのかは分からない。けれど、殺さなければいけない。
それが呪術師の役目だから。
◆◇◆
人が人を恐れ憎む。そんな負の感情から彼は生まれた。
多くの人たちの人生を狂わし殺した存在。その中には七海も入る。
七海にとっては前世とも呼べるべきものだろう。七海は彼に殺された。しかし、七海が託した少年によって彼もまた敗北した。
最期は結局、彼の根源とも呼べるべき人間によってその生涯を終えたのだ。
「あー、楽しいなぁー。君たちもそう思わない?って見えてないのかぁー」
彼は闇派閥とロキ・ファミリアが戦っているど真ん中に突っ立っていた。
この乱戦。普通なら彼は格好の餌食となるはず。
しかし、普通ではない。誰にも彼は見えていないから。
「どうせ死ぬなら俺の玩具にしてあげるよ。【無為転変】」
彼はこの場で戦っている者たちに触れた。
闇派閥とロキ・ファミリア団員たちは魂を作り変えられ異形の者へと変化する。
「あぁっ……そんな……ロイドさん…カロスさん、アンジュさん…リザさん……」
「……そんな…どうして」
ロキ・ファミリア団員であるリーネとルーニーは仲間たちが化け物に変わるところを目撃して青ざめていた。
圧倒的な恐怖。それ故に化け物となった仲間たちに話しかけようとも思えない。
「……ルーニー!!逃げるますよ!!」
怯えて動けないルーニーの手を引っ張りリーネは逃げる。
「へぇー。逃げるんだ。でも、化け物となった仲間たちに殺される顔。見てみたいなぁ。ほら、追いかけて殺せ」
彼の言葉を聞いて、化け物となった仲間たちは二人を追いかける。
そこには仲間だった意識もない。
どれほどの時間逃げた事だろうか。
リーネとルーニーは場所も分からないダンジョンもどきを彷徨っていた。
だが、救いの道もある。二人は脱出できる出口のすぐ近くにいたから。
もう少しでアイズたちの助けが来るという状況だった。しかし、二人はそれを知らない。
「たすけて!!」
「たすけて!!」
「たすけて!!」
リーネとルーニーは仲間だった化け物たちに囲まれていた。容赦のない暴力が二人を襲う。
リーネは必死でルーニーを庇う。最早、助からない状況。死を覚悟してしまう二人。
すると、援軍が駆けつけた。アイズたちと七海たちである。
アイズたちは出口までたどり着いたので動けるメンバーを動員して戻っていない者たちの救助へとやって来たのだ。
そして、七海と灰原は改造人間を倒した後、呪力の残穢を追いかけてやって来た。
「七海さん!!灰原くん!!」
二人に気付いたアナキティは二人が無事であったことに安堵する。
「安心は後です。まずは敵を!!」
リーネたちを囲んでいた化け物たち。
その討伐に彼等は動くが、ここで獣人たちは気づいてしまった。
敵の匂いが仲間の匂いだと。
「ま、待ってください!!あれはロイドさんたちです!!匂いが同じなんです」
七海と灰原以外は信じられなかった。
だが、よくよく見ると彼等が身につけていた装備などがちらほらと見える。
これには流石のベートも動揺を隠せない。
「あれがロイドさんたち……」
全員が固まってしまう。
しかし、その瞬間に改造人間たちはベートやアイズたち救助メンバーに襲いかかる。
戦場にて油断は命取り。だから、油断していない七海と灰原は改造人間を容赦なく殺す。
最早、人として死んでいるのだ。これ以上苦しめないためにも。……呪術師の役目として彼等は矛を振るう。
「七海さん…彼等は……」
「分かっています。しかし、異形となった彼等は助かりません。例えこの都市最高の治療師の力を使ったとしても」
七海は真っ直ぐ迷いの無い目で通路の奥を見る。その瞳には怒りが込み上げていた。
そして、それは灰原も同じである。仲間たちをもて遊び殺されたのだから無理もない。
「皆さんは地上に帰ってください。私と灰原は残ります」
「待ってください!!ここは一旦退却するべきです!!」
「ええ。普通ならそれが一番です。しかし、私達にはやらなければならない事があります」
近くに彼がいる。
それを放って置くわけにはいかない。ここで見逃せば悲劇は更に増えると分かるから。
「なら、私達も!!」
「気持ちは嬉しいです。しかし、貴方たちは足手まといだ。厳しい事を言いますが、私と灰原だけの方が良い」
「皆は早く治療を受けた方が良い。リーネは…残念だけど助からない。でも、ルーニーは軽傷だ。早く地上へ」
「………チッ!!さっさっとリヴェリアたちのところに戻るぞ!!てめぇら!!」
ベートには分かってしまう。
七海と灰原が戦おうとしている相手は自分たちでは決して敵わない存在だと。
七海と灰原は目の前から感じるドス黒い呪力の下へと向かった。
二人が行ったのを見たロキ・ファミリアは我に返り急いでリーネとルーニーの救助を行う。
「ルーニーは……軽傷です……早く…彼女を……」
リーネは灰原の言う通り助からないと分かる。
そんな彼女の前にベートは言葉を述べる。
「ダセェな。結局、雑魚どもは無駄死にだ」
死にそうな仲間への罵倒。
それは酷いものだと、この場にいる者たちは思う。だが、ベートの想いを知らない者たちの感想でしかない。
「ありがとう。お前の手に十分救われた。………ありがとう」
リーネにしか聞こえない声でベートは言う。
その言葉を聞いて、リーネは安らかに眠った。
ロキ・ファミリアによる人造迷宮クノッソス攻略は失敗に終わる。
死者七名。そして、幹部二名をクノッソスに残して終わった。
その三日後。歓楽街が燃えた。
フレイヤ・ファミリアの侵攻により、歓楽街を根城にしていたイシュタル・ファミリアは消滅。
神イシュタルは神フレイヤ自らの手により天界に送還された。
その原因は嫉妬。
まだまだ発展途上の少年を取り合った結果。
そして、その少年は一人の女の子を救うために動いた。
多くの者たちの策謀がめぐらされた抗争。
結果はイシュタル・ファミリアの消滅で幕を閉じた。
◆◇◆
七海と灰原は改造人間たちを倒している最中。
先へ進めば進むほど、改造人間の量は増えていく。だが、それと同時に呪力が濃くなるのを感じていた。
そして、ついに彼は姿を現す。
七海を殺した存在。虎杖悠仁を必要以上に追い詰めた存在。呪霊の中でも一、二を争うほどの危険性を持つ存在。
“呪霊『真人』”が七海と灰原の目の前に立ち塞がる。
「改造人間たちを簡単に倒すなんて、君たち強いね。……良かったよ。弱すぎすると実験にならない。君たちなら最高の実験体だ」
(彼は私のことを知らない。どういう事だ?我々と同じくこの世界にやって来たのではないのか?)
七海の事を覚えていない真人。
その事が七海と灰原を困惑させていた。
「あれ?考え事?この状況で随分と余裕だね!!」
真人は改造人間を数体口から出して、七海と灰原を殺そうとする。
七海と灰原は真人に警戒しつつ、改造人間を倒していく。
(へぇー。改造人間共の対処が早いな。しかも、俺への警戒も怠っていない。俺の術式が割れているな)
「あんた達は魂と肉体。どっちが先だと思う?」
「あなたは魂が先だと答えるのでしょう」
「その通り。俺への戦い方といい、俺のこと知ってるの?」
(別個体か。呪いとしては同じだ。しかし、この世界で呪霊が誕生するなどあり得るのか?)
「七海!!考えるのは後にしよう。今は目の前の呪霊を祓うよ!!」
「……ええ。そうですね。行きますよ灰原!!」
「うん!!その意気だよ!!」
七海と灰原は真っ直ぐ真人に向かう。
真人は改造人間の形を変えて攻撃をしていく。それを七海と灰原は上手く対処しながら、徐々に間合いを詰める。
「そこ!!」
七海の技が真人の腕にヒットする。真人は完全にガードしたつもりだったが腕はもげた。そのことに関して真人は首を傾げる。
続けて灰原の拳が真人の顔面に炸裂した。
「へぇー。やるね。特にそっちの鉈の武器を持ってる方はそういう術式なの?」
「そういうとは?抽象的な言葉は嫌いです」
「良かったよ。おしゃべりが嫌いなわけじゃないんだ」
(ニ対一だからね。まだまだ俺は発展途上。もう少しだけ遊んだら撤退しようかな)
考え事をしている真人に対して、七海と灰原は再び間合いを詰めて連携攻撃をしていく。
二人の息のあった連携に真人は防戦一方だ。
(面倒だな。いくら体を壊されようと魂が無事なら問題ない。けど、この連携を止めないと呪力が尽きるかもしれないな)
真人は攻撃を受けて分かった。
この二人が自分を殺せる事は不可能だと。なぜなら、魂に直接ダメージを与えられないから。
しかし、それは真人の慢心でしかない。
両者には呪力や術式よりも情報という差がある。真人は七海と灰原の事を知らないが、七海と灰原は真人の事を知っている。これは大きなアドバンテージとなる。
「ここだ!!」
灰原の拳が真人の腹にヒットする。
真人は効かないと高をくくっていたが、それは間違いだと魂にダメージを受けた瞬間に気づく。
「ゴホッ!!」
灰原の攻撃を受けた真人は大量の血を口から吐き出す。
真人は一瞬何が起こったか分からなかった。一瞬のフリーズ。それは隙となり、七海と灰原の連携を加速させる。
二人の連携攻撃をまとめに受けている真人。
七海の攻撃のせいで体はことごとく破壊されて逃げられない。
そして、真人にとって想定外なのは灰原である。
先程までの攻撃と違い、灰原の攻撃は真人の魂に直接ダメージを与えていた。
故に真人はこのままでは死ぬと予感する。
(これはヤバいね。特に
真人のするべき行動は決まっている。だが、それをさせるほど七海と灰原は甘くない。逃げる隙を絶対に与えなかった。
(灰原の攻撃をメインにして彼の魂を潰す)
「『多重魂』『撥体』」
魂と魂を混ぜる多重魂。それで発生した拒絶反応を利用し魂の質量を爆発的に高めて相手に解き放つ技。
融合させる改造人間の魂の数に比例して威力・攻撃範囲が増加する。
それが七海と灰原を襲う。
二人は避けるが、その瞬間に真人は後方へと逃げる。そして、改造人間を数十体生み出して七海と灰原を襲わせた。
「じゃあねー。また遊ぼうー。今度はもっと楽しめるようにしてあげるよ」
そう言って、真人は逃げる。
七海と灰原は真人を早く追いかけて祓わなければならないが、まずは改造人間を倒さなければならない。
改造人間を倒した頃には真人を見失っていた。
「クソっ!!」
「逃がしてしまったね。これからどうしよう?」
「引きましょう。このダンジョンの実態が分からない現状では我々と言えど危ない。彼はこのダンジョンを知っているようでした。このまま進めば危険です」
モンスターや闇派閥の人間たちが多くいる中、サポーターの支援もなしにこのダンジョンを進むのは危険だ。そもそも何階層あるかも分からない。真人を放って置くのは危険だが、真人も消耗していると分かっているので二人は地上へ戻ることとした。
「何があるのか分からなくなってきました。この事を五条さんたちと共有して、改めて五条さんたちと一緒にこのダンジョンを攻めます」
「その方が良いね。もしかしたら、他の呪霊たちも出てくるかもしれない」
「ええ。地上へ戻りましょう」
何故、この世界で呪霊が存在しているのかは分からないが二人は呪術師として祓わなければならない。
七海の事を覚えていない真人。それは果たして別個体なのかそれとも七海たちの知る真人なのか。それは彼等には分からない。