最強は永遠に 作:ルイス
親友との再会にテンションが上がらないわけもない。五条と夏油は互いに笑い合っていた。
その様子を見ていたフィンたちは何とも言えない状況だ。
何しろ昨日会った人間と今日会った人間が笑い合っているという光景を見ているのだから。
普通なら関わるべきではないが
「にしてもここ何処だよ傑」
「さぁ、私達がいた世界ではない事は確かだよ」
「だよなー。呪霊とか全くいないし」
空港にいた時と同じく普通の会話。
そんな彼らを見て彼らを知る者たちは安心していた。
「相変わらずあなたは最強なんですね」
ロキ・ファミリアたちがぞろぞろと来た中、五条の知り合いが二人いた。
その二人とは空港で五条や夏油と共にいた
「
「正確には違います。我々が夏油さんと出会ったのは昨日です。私と灰原は一年ほど前にこの地にやって来ましたから」
「マジで?」
「大マジです!!」
一年ほど前というのを聞いて五条は驚く。
まさか、そんな前に来ていたとは思いもしなかったからだ。
「っていうか傑は昨日この世界に来たってことか?」
「まぁ、そうなるね。このダンジョンの安全階層にいたところを七海と灰原に拾われてね」
「本当に驚きましたよ。まさか、ダンジョンで会えるとは思っていませんでしたから」
「七海めちゃくちゃ驚いていたからね!!」
「普通は驚きますよ」
和気あいあいとしている。
七海と灰原を知るロキ・ファミリアの者たちは不思議に思っていた。
彼等の話の中で呪霊、この世界など気になる単語が出ているがロキ・ファミリアの者たちは理解出来ていない。
「七海、灰原、彼は君たちの知り合いで間違いないんだね?」
団員たちが困惑している中、口火を切ったのは団長であるフィンだ。
フィンは七海と灰原に五条の事を尋ねた。
だが、ここで五条にとって気になることがあった。
「七海と灰原はこのチビと知り合いなの?」
五条のチビ発言に彼を慕っている者たちが五条を一斉に睨んだ。中でも幹部のアマゾネスは今にも殴りかかろうとしている。
「五条さん。彼は私たちが所属しているファミリアの団長です」
「ファミリアー?そんなのに入ったのかよ」
「ええ。生きるために金は必要ですから。手っ取り早く稼ぐために一番強いファミリアに入りました」
二人がファミリアに入った事を知り、五条は再び驚いたが入った理由は七海らしいので笑えた。
「色々ありましたからね。その話は地上で話しましょう。夏油さんと出会った経緯も含めて」
「分かったよ。僕も知り合いに会えて少し安心したからさ」
「五条さん、意外と寂しがり屋だからね!!」
「灰原うるさい」
「すみません!!」
「ぷはっ!!懐かしいねこの光景」
「ええ。とても」
笑い合う四人。
気兼ねない雰囲気。とても彼等がこの都市で規格外な存在とは思えない。
五条はロキ・ファミリアの団員たちに怪しまれながらも地上へと帰還する。
五条的にはダンジョンをもっと見ておきたかったがそれよりも七海たちの話を優先することが大事だった。
地上に着くとほぼ強制的にロキ・ファミリアの
「おかええええりりりりりーー!!!」
本拠につくと勢いよく出てきた赤髪の女性。
彼女こそロキ・ファミリア主神であるロキだ。
団員たちにセクハラをしてはよく怒られている。今も一人のエルフに抱きついて楽しんでいた。
「ロキ。今回の遠征での犠牲者はゼロだ。到達階層も増やせなかったけどね」
「了解や。とりあえずおかえりフィン」
「ただいまロキ」
「ホンマやったらもうちょっとレフィーヤを堪能したいけど、まずはそこの四人から事情を聞かなあかんな」
ロキは五条たちを指差す。
七海と灰原も仕方無い事だと納得している。
彼等はロキに事情を説明することとなった。
完全個室の部屋。誰も入れないようにしている。それほど、今回の事が重要だと分かるから。
「ほんなら、この二人が元いた世界の仲間ちゅーわけか」
「ええ」
「七海。こいつは俺達の事情知ってるんだな」
「はい。ロキにはこれまでの経緯を全て話してあります。逆に言えば知っているのはロキくらいですが」
「こんな事、団員たちに話すわけにもいかんしな。フィンにも抱えてほしくないわ」
それぞれの思いが重なりロキ以外は知らない。
七海と灰原がどのような経緯でこの世界に来たのか五条と夏油は尋ねた。
「お二人と似たようなものですよ。目を開けたら知らない景色が広がっていた。それがオラリオだったんですけど」
それから七海は説明した。
灰原と出会った経緯などを。
七海はしばらく歩いているとおばあさんの荷物を運んでいる灰原と出会う。
こんな理由の分からない世界でも人助けをしている灰原には感心していた。
そこからはトントン拍子だった。灰原と共に知り合いを探していたが見つからず路頭に迷う。
この世界で生きていくためには金が必要であり、手っ取り早く稼ぐためにロキ・ファミリアに入団したとの事。
「そういうわけで今はロキ・ファミリアにお世話になっています。ファミリアに入る時、ロキに一応全て話しました」
「まぁ、驚いたけどな」
「こんなバカみたいな話、よく信じたな」
「神は嘘を見抜けんねん」
「「へぇー」」
神が嘘を見抜けるということに感心する五条と夏油。
「にしても、ホンマ驚いたで。別の世界から来たっちゅーのも驚きやのに
「ステイタス?」
「普通は神の恩恵を刻んだらLv.1からスタートやのにこの2人はLv.5からスタートやったんやからな」
ロキの言う通り、二人はLv.5からのスタートだった。これをどう団員たちに話せば良いのか分からなかったロキ。
結局、極東の凄腕が改宗したと無理矢理な話をして何とか団員たちを納得させた。
フィンやリヴェリアなどは疑っていたが、ロキの珍しく真面目な詮索不要という言葉に無理矢理聞く事は止めた。
「説得するのは苦労したで」
「それは申し訳無かったです」
「でも、神の恩恵を刻んだおかげで前より明らかに強くなったよね!!これなら多くの人を救えるよ!!」
「灰原、暑苦しいー」
「すみません!!」
七海たちの経緯をあらかた聞き終えた。そして、次は夏油に経緯を聞く。
◆◇◆
時間は約1日前に戻る。
夏油は五条たちと同様に目を開けたら知らない光景が広がっていた。
「ここは何処だ?」
先程まで空港にいた筈の夏油は森の中にいた。
彼がいたのはダンジョン19階層と呼ばれる場所だ。ここから24階層までは別名【大樹の迷宮】と呼ばれており、森林タイプのダンジョンとなっている。
強力な状態異常攻撃や罠タイプのモンスターが出現する場所だ。
夏油の周りには彼を取り囲むようにモンスターが多くいた。
「いきなりピンチだね。見たところ呪霊ではないか。ははっ!!笑えるね。先に言っておくけど黙って殺られる気はないよ」
夏油は攻撃して来るモンスターを潰す。フィジカルだけで彼は圧倒していた。
「何だ。予想より遥かに弱いじゃないか」
この階層のモンスターは状態異常の攻撃を仕掛けてくるが全て仕掛ける前に殺られていた。
呪力を纏っての殴る蹴る。それだけでモンスターは死んでいく。夏油傑に対して力不足の存在たちであった。
「これであらかた片付いたね」
(空港にいたはずなのに気づけば知らない森の中にいる。今の私は呪霊を一体も所持していない。呪霊操術が意味をなさない)
「呪霊も見かけないし、しばらくは己の肉体だけで戦っていくしかないね」
夏油はとりあえずこの場所を出るために歩き進む。勘だけを頼りに彼は出口を求める。
すると、先程と同様にモンスターが数体現れた。
だが、結果は夏油の圧勝というのが目に見えている。予想通り圧勝した夏油。モンスターは一体を残して全て灰となり消滅した。
「最後の一体か」
夏油の強さに恐怖を覚え、モンスターはゆっくりと後退りしている。
夏油はモンスターを倒そうと呪力を込めるが、ふと自身の手のひらを見つめた。
「まさかね」
夏油は半場冗談のつもりで、呪霊を取り込み時のように掌をかざす。
すると、逃げようとしているモンスターは夏油の掌に球体となって収まった。
「………呪霊ではないのに呪霊操術が機能した。色々とおかしな世界のようだね。恐らく私という存在がこの世界にとっては異常なのだろう」
この世界が全くの別世界だと分かっている夏油。彼は自身が異物的存在だと理解していた。この世界に変に適応したとも考えている。
何のためにこの世界に存在しているのかは知らないが目的は一つある。というよりも出来た。
「私だけがこの世界に来ているのか。それは分からない。あの時、空港にいた仲間たちは……悟は来ているかもしれない。……会いたいね」
空港にいた仲間たちに会う。
それが夏油の目的であった。その目的はこれから一時間後に叶うこととなる。
夏油は手にしている球体をどうするべきか少し悩んでいた。呪霊の時のように飲んでも大丈夫なのか。何か危険ではないか。思考がバラつく。
だが、今は手数が欲しいので呪霊のときと同様にそれを飲み込む。
呪霊の時は吐瀉物を処理した雑巾の様な味だったが、今回のそれは無味だった。
夏油は試しに呪霊と同様に先程のモンスターを使役する。特に何も問題無く、呪霊同様にモンスターを操る事が出来た。
「本当に不思議な世界だ」
夏油はモンスターを手に入れつつ先へと進む。
手数が増えた事もあり、上への階段を見つけた。上へと進むと、そこに広がっていたのは森林と所々にある水晶。
彼がたどり着いたのは迷宮18階層別名【
迷宮内において、モンスターが出現しない【
「先程までの場所とは雰囲気が違うな。モンスターなど敵意を持っている輩はいない」
「「夏油さん!?」」
18階層を眺めている夏油に話しかけた二人。
「灰原!!七海!!」
「まさか、ここで夏油さんに会えるとは思っていませんでした。遠征に来て本当に良かった」
「僕もそう思うよ!!ダンジョンで会えるとは思わなかったけどね!!」
「ダンジョン?それはこの場所を指すのか?」
「詳しい話は私たちのテントで」
七海と灰原は夏油をロキ・ファミリアのキャンプ地へと案内した。
そこには当然ながらエルフやドワーフ、狼人など様々な種族がいて夏油は少し混乱している。
そして、それはロキ・ファミリアの団員たちも同じであった。散策していたはずの
「歓迎されてないようだね」
「遠征失敗でピリピリしてますからね。詳しくは中で話します」
「彼等は猿共かい?」
「いえ、その定義に当てはまるかどうかは分かりません。………というのも、この世界に呪霊はいません」
「は?」
今日一番の衝撃的事実に夏油は呆気に取られた。彼が呆気に取られている間に七海たちのテントへたどり着いた。
聞かなければならない事が大量にある。
テントに入ると夏油は二人に質問をした。ここは何処なのか。呪霊がいないとはどういう事なのか。五条や他の者たちはいるのか。
七海と灰原は自分たちの知っていることを夏油に全て話す。
「つまり、この世界は別世界だと。この世界には呪力などはない。故に呪霊も存在しないか。二人は一年前に来て今はロキ・ファミリアというものに所属していると」
「ええ。………私達は呪力を使う事が出来ます。ですが、この世界の人たちはそもそも呪力がありません。天与呪縛などでは無い事も確認しています」
「なるほど。本当に別世界のようだね。私達は変にこの世界に適応しているみたいだ。そのおかげでモンスターに呪霊操術を使えたわけだが」
「夏油さんも術式が使えましたか。それもモンスター相手に使えるとは」
「手数が増えてありがたいけどね」
それからも夏油は七海と灰原から今まで何があったのかを事細かに聞いた。
「大体の事情は理解した。とりあえず、地上に出るとするよ。もしかした、悟たちも来ているかもしれないしね」
「そうですね。とりあえず、夏油さんは私達と一緒に行動してもらいます。くれぐれも問題を起こさないでください」
「善処するよ」
七海は夏油が五条と同じくらい問題児だと分かっているので念を押す。
自分たちが世話になっているファミリアで何か面倒な事をおこさないために。
「というわけで私の先輩である夏油傑さんです。訳あって地上まで一緒に来てもらいます」
「どういうわけなんだい?」
事情を知らない者たちの代表としてフィンが尋ねる。
「久しぶりにあった先輩を無事地上まで送り届けます。まぁ、私の力が無くとも夏油さんなら余裕でしょうが」
「よく分かってるねー」
中層のモンスターですら、夏油の足元にも及ばなかった。上層のモンスターが相手になるわけもない。
「彼は信用出来るのかい?」
「ええ。少なくとも今の夏油さんは信用してます」
「……今は……か。前科があるから仕方ない。だが、私自身は猿共が嫌いだ。それは変わらない。あの生き方に私は後悔していない」
夏油の発言を聞いて何があったのか分からないロキ・ファミリアは頭にクエスチョンマークを浮かべているが七海は複雑そうにしていた。
逆に灰原はいつも通りだ。七海のように暗くなるでもなく笑顔で夏油の言葉を聞いていた。
「イチイチ気にしてたらきりが無いよ七海!!」
「灰原の言う通りですね。
「そうかもねー」
フィンたちはあまり夏油に対して信用はしていないが、七海の言葉もあり地上まで一緒に行く事を了承する。
次の日、彼等は地上へ戻るり
その道中、ミノタウロスの群れが逃げ出すというハプニングが起きた。
ロキ・ファミリアは急いで逃げたミノタウロスの討伐に向かう。その一方で夏油はモンスターを取り込んでいた。
「味が無いから飲み込みやすい」
夏油がモンスターを球体にして飲み込む。
その光景は異常であるが、今は誰も見ていないので夏油は特に気にしていない。
というのも、七海から呪霊操術をあまり人前で見せない方が良いと言われたからだ。
モンスターを調教するではなく、取り込んで使役することが出来る。それはこのオラリオでも異常だ。フィンたちが夏油に不信感を抱くのを避けるために今は見せないようにと進言した。
夏油も七海の言うことは一応聞く。
そのおかげで夏油は人前で呪霊操術は使わず、誰もいないところで使っていた。
「七海、取り逃がしたミノタウロスは討伐したのかい?」
「後はアイズさんたちが追った数体だけです」
夏油は残りのロキ・ファミリアの団員たちと共にアイズたちの下へ向かう。
そして、上層にて彼は親友と再会した。
「悟〜、弱い者いじめはよくないよ」
「ははっ………………会えたな
「無事に会えて何よりだよ
◆◇◆
現在に戻る。
「というわけさ」
「なるほどねぇー。にしても、呪霊操術が機能してるとはな」
「私たちも術式を使えますしね。まぁ、私達は神の恩恵を刻んだ影響でスキルや魔法に変化してしまいました。不便ではないので問題ありませんが」
七海の言う通り、七海と灰原は神の恩恵を刻む前までは普通に術式を使っていた。
しかし、今はスキルや魔法によって使うこととなっている。
特別不便になったとかではないので二人共気にしていない。
「そんで自分らこれからどうするんや?うちなら事情も知っとるし受け入れるで」
ロキは五条と夏油をファミリアに勧誘した。
強いというのは分かっているのでスカウトしたのだ。
「どうするよ傑」
「さぁ、どうしようか悟」
二人ははぐらかしている様に見えるが、その腹の内では答えを決めていた。
「「断る」」
「ぶっちゃけファミリアに入るとかないわー」
「そもそも神という存在自体が気に入らない」
「それじゃあー俺たち失礼するわ」
「七海、灰原、会えてよかった。他の皆も探して皆でまた会おう」
五条と夏油は部屋の窓を開けて飛び降りる。
そして、ロキ・ファミリアを去った。
嵐のようにって行った二人。
ロキは普通にオッケーしてくれると思っていたので少しショックだった。
「自分ら居るのに普通断るかいな!!」
「仕方ありません。あの二人ですから」
「そうですよ!!というか、二人共相変わらずで自分安心しました!!」
「出来れば今後のためにも同じファミリアに入って欲しかったですけど」
「あの二人は何なんや?」
「「最強です!!」」