最強は永遠に 作:ルイス
ロキ・ファミリアを勢いよく飛び出した五条と夏油。
ロキ・ファミリアに入るのを拒んだ二人は何処へ行くでもなくベンチに座っていた。
「これからどうするよ?」
「そうだね…まずは七海や灰原以外の仲間たちを探してみるかい?」
「来てると思うか?」
「それは分からないね。七海と灰原は一年前に来たらしいから。学長たちはもっと先かもしれしない」
「だよなー。俺たちも七海たちより遅かったし」
いつの間にか五条の一人称が僕から俺に変わっていた。本人が意識して変えたわけではない。
ただただ夏油と一緒にいることで無意識に高専時代の時のように変化しただけである。
「私たちはこの世界では無名だ。有名ではないから学長たちが来ても何処を目指せば良いのか分からないと思う。故に目立つかい?」
「俺と傑で?」
「そう。私たちで」
「良いねー。面白れぇ」
自分たちの名を世界に轟かせる。
それは、仲間たちがこの世界に来ても合流出来るようにするという事。
何よりも今は五条と夏油。二人が揃っている。
二人は何でも出来る気がしていた。
「決まりだね。まずはどうする?」
「傑の手持ちを増やすー。まずはそっからでしょ」
「良いのかい?悟は暇だと思うよ」
「良いんだよ。それに下のモンスター共がどの程度なのか知る必要もあるしな」
「なら、そうしよう」
五条と夏油は再びダンジョンへと向かう。
彼らにとっては危険ではない場所。
「つーか弱すぎでしょ。下層でこの程度かよ」
「確かに戦わずして無条件で取り込める。私たちが神の恩恵を刻んだらどうなるのか少し気になるところではあるよ」
「七海と灰原でLv.5。俺たち最強だからLv.99とかじゃね?」
「Lv.99?随分とキリの悪い数字だね」
「ほら、ゲームとかだと最高Lv.99までじゃん。それと同じで俺たちも最高Lv.かもしれないって思ったわけさ」
Lv.99とはかなり大げさだが二人ならあり得ると彼等を知る者達は思うことだろう。
ダンジョン37階層。
深層と呼ばれる“真の死線”と呼ばれる迷宮の最大危険領域。ギルドの定めている適正基準はLv.4。
第一級冒険者でも油断をすれば死ぬ場所。
そんな場所を五条悟と夏油傑は余裕で進んでいた。
深層の37階層に出現する巨大な漆黒の骸骨の様な姿をしたモンスター。階層主ウダイオス。
ウダイオスは五条と夏油の前に立ちふさがる。
「デカいな」
「デカいね」
「他の奴らとは違って少し強いな。まぁ、他の奴らに比べてだけど」
「無条件で取り込めるかどうかだけど、問題無さそうだ」
ウダイオスは地中から大量の杭を弾丸の様に放ち、更に骸骨兵士のモンスターを大量に生み出して使役する物量攻撃を行う。
しかし、骸骨兵士は五条によって跡形もなく消された。
そして、夏油はいつも通りに掌をかざしてウダイオスを取り込んだ。
「傑ー。前から聞こうと思ってたんだけど、それって腹膨れるのか?」
「いや、作業みたいなものだからね。ご飯を食べるとはまた違った感覚だよ」
夏油がウダイオスを取り込んだ時点で夏油の中には238体のモンスターがいた。
まさしく、特級と呼ばれていただけはある。無限の軍隊を作れる夏油。
これに危機感を持つ者たちがいた。
それはダンジョンを見張っているとも言える神ウラノス。彼は祈祷を捧げ続け、大神としての圧倒的な神威でモンスターの大移動や地上への進出を抑え込んでいる。
故にダンジョンでの異変には敏感だ。
そして、もう一人?とも呼べるか分からないものが警戒を強めていた。
それはダンジョンそのものだ。自らが生み出したものを無制限で取り込まれる。これはダンジョンからしてみれば恐怖と言えるものだ。
だからこそ、ダンジョンは行動に出てしまった。この強さなら取り込まれないだろうと浅はかな考えのもと行動した。
ゴオオオオオォォォ!!!!!!
突如としてダンジョン37階層が揺れる。
何が起きたのか分からないが五条と夏油は警戒を強める。
ドンッ!!!!!
天井からモンスターが生み出された。
本来なら階層主が次に出るのはインターバルがある。先ほど夏油はウダイオスを取り込んだ。
これはダンジョンで討伐したに等しい。だが、五条と夏油の前には黒いウダイオスが3体現れた。
「ぴゅぅ〜。驚きだな」
「まさか、色違いの階層主が現れるとはね」
「某ゲームだとレアだぜ。コレクションしよう」
「悪くないね。先ほどの奴とは強さが違う」
黒いウダイオスは真っ先に夏油を殺そうとする。だが、夏油にその刃は届かない。
五条の無下限呪術により、止まっている。
「狙いは傑みたいだな」
「ダンジョンが私のことを鬱陶しいと思ったのだろう。だが、刺客にしては弱すぎる」
黒いウダイオスは他のモンスターと同じく夏油に取り込まれてしまった。
残り2体のウダイオスは黒い剣を持ち五条と夏油に斬りかかる。
「学習しろよ」
剣は五条に届かない。
五条が手を振り上げるとウダイオスたちは後ろに吹き飛んだ。
そして、ウダイオスは灰となる。残ったのは魔石と黒い剣のみ。
「弱っ!!」
「これが魔石か。階層主の魔石だから、換金すれば一週間の宿代には十分足りるだろう」
夏油はウダイオスから出た魔石を拾う。
「その剣も売ろうぜ」
「ああ。高く売れそうだ。悟、今日はこの辺りにしておこう」
「だな。帰りは俺が飛ばしてやるよ。あんまり力使ってないから」
そう言って五条は夏油の後ろ襟を掴む。
そして、尋常ではないスピードで地上へと向かった。夏油は呪力で身体を強化して体が吹き飛ばないようにしている。
地上に着くのはあっという間だった。
「うわぁー、夕方になってるな」
「丸一日ダンジョンにいたからね。悟のおかげで丸一日で帰ってこれたわけだけど」
「とりあえず魔石換金するか」
「だね」
五条と夏油はギルドの窓口で魔石の換金へと向かう。しかし、そこで問題が起きた。
それは何処のファミリアなのか聞かれた事だ。
「ーーですから、所属ファミリアの提示をお願いします」
「そちらこそ聞いてましたか?私たちはファミリアなんてもんには入っていないと」
「そんなわけないでしょ。恩恵があるはず。もしかして、闇派閥?」
「あぁ?んな訳ないだろう。早く換金しろって」
「規則上絶対に駄目です」
「「ケチ」」
「失礼ね!!ルールよ!!ルール!!」
埒が明かない状況。周りからあいつ等は何なんだと思われている。
だが、二人はそんな視線は気にせずギルド職員に換金するように言う。これは最早面倒な奴らとしか言いようがない。
お互いの言い合いが数分した頃、太ったエルフが汗を書きながらやって来た。
「ここは私が対応する。お前は別の冒険者の相手をしなさい」
「は、はい」
ギルド職員は別の窓口へと向かった。
五条と夏油の前に現れた太ったエルフ。彼こそギルド長であるロイマンだ。
「魔石と武器の換金でしたな。承ります」
「随分と物分かりが良いな。どうした?」
「神ウラノスからの指示ですので」
ロイマンが自ら対処しに来たのはウラノスからの指示があったからだ。
ウラノスはダンジョンで起きた出来事を把握して、五条たちと敵対しないように指示した。
「へぇー。神にしては随分と物分かり良いじゃん。まぁ、ビビってるだけだと思うけど」
「ウラノスと言えば、1000年以上前から君臨している神だね」
「1000年ね……。何か宿儺たちと似てるな」
「そうだね」
ロイマンは手早く換金を済ませた。
長年の勘とも呼ぶべきもので五条たちとあまり関わらない方が良いと感じていた。
無論、利用できればそれに越した事は無いが無理だと彼自身理解している。
「合計5千万ヴァリスです」
「へぇー。これがこの世界の金か」
アタッシュケースに入った金。それを手に五条と夏油はギルドを出た。
そして、彼等は宿屋へと向かう。
「とりあえず一週間泊まるわ」
五条と夏油はとりあえず宿屋に一週間分のお金を払った。
「この辺で美味しい店って何処かある?」
「そうですね。少し値が張りますけど、豊穣の女主人というところが美味しいですよ」
「何処にあんの?」
豊穣の女主人の場所を聞いた二人は早速向かった。大量にお金を稼いだので払えないということは絶対にない。
豊穣の女主人につくと、従業員にカウンター席へと案内される。
その時、案内した少女を見た五条は嫌そうな顔をしていた。
「悟、どうした?」
「いや、何となくだけど何かさっきの奴スゲェババアだと思っただけさ。そんなことよりも飯頼もうぜ。とりあえず、この店のオススメね」
五条が注文を終えると、彼が座っている席を一席分開けて白髪の少年が座った。
少年は何だか落ち着かない様子でメニューを見ている。
「はい!!お待ち!!オススメセットだよ!!残したらただじゃおかないよ!!」
豪快な女将に渡された料理。
それを口にして二人の感想は思っていたよりも美味しいだ。
「悪くないな」
「確かに」
二人が料理を楽しんでいると、ロキ・ファミリアの団体が店にやって来た。
彼らが現れたことにより店は騒がしくなる。
「あいつら弱いよねー。ぶっちゃけ七海と灰原だけだよ強いに分類されるの」
「神の恩恵とやらで身体能力が上がっていそうだ」
「…………傑はさぁ、神ってのを嫌ってるよな」
「急にどうしたんだい?」
「先に言っとくわ。もう一人にはしないから。………怪物になる時は一緒だからな。…もう、置いていくなよ」
「ははっ……全く、君ってやつは」
笑ってはいるが夏油の目からは少し涙が流れていた。親友の言葉は嬉しいものばかりだから。
◆◇◆
しばらく二人で話していると、ロキ・ファミリアが座っているテーブルから声が響いていた。
それを聞いていた白髪の少年は顔を真っ赤にしている。どうやら、自分のことを言われているのだと悟ったようだ。
「雑魚じゃアイズ・ヴァレンシュタインに釣り合わねぇ!!」
極めつけの言葉。これを聞いた少年は恥ずかしくて勢いよく店を出て行った。尚、お金を払っていないので無銭飲食である。
「へぇー。あの時のガキか。悔しくて逃げたって感じだな」
「それにしてもあの犬は耳障りだ」
「言えてるな。話を聞く限り自分たちのミスだって事理解してないのか?」
「バカだから理解してないんだろう」
「少し懲らしめるか?」
「悪くないね」
五条と夏油はお代をかなり余分に払い、ロキ・ファミリアがいるテーブルへと向かった。
「弱いのに威張ってもカッコ悪いよ」
「犬はワンワンと吠えるしか脳が無いとはいえ、もう少し慎んだほうが良い」
いきなりのご挨拶にロキ・ファミリアの温和な雰囲気は一気に崩れる。
原因を何となく分かっている七海は特に言うことなく聞いていた。
「何だと!!」
侮辱されたベートは二人を睨み今にも攻撃しようとしていた。
だが、二人は関係無く煽り続ける。
「弱いから弱いって言っただけだよ。聞こえなかった?その耳は飾り?」
「それとも理解能力が死んでいるのかな?」
「ぶっ殺す!!」
ベートは殴りかかろうとするが前に出た五条に拳は届かない。
無下限呪術により、ベートの拳は止まる。
そして、夏油はベートを蹴り飛ばす。
「ガハッ!!……………ゲホッ……ゲホッ……」
「かなり手加減したとはいえ、まだ意識があるのか。でも、分かっただろう?君は所詮その程度」
膝をついているベートを見下ろす夏油。
ロキ・ファミリアの団員たちは止めたいが圧倒的実力差にビビって動けない。
幹部たちですら見ているだけしか出来ないでいた。そんな中、口を開いたのは七海だ。
「そのあたりで良いのでは無いですか?」
「この犬を庇うのかい?」
「確かに我々が招いた不祥事にも関わらず、それを笑い話にしていたのは恥も良いところです」
七海の言葉にベートの話を聞いて笑っていた多くの団員たちはバツが悪そうにしている。
「だから、お二人が煽った時も仕方ない事だと思い、見逃しました。しかし、ベート君も懲りた事ですし、この辺で良いと判断しました」
「大人な対応だな。……七海、俺たちは別にこいつ等を殺すつもりはねぇーよ。少し懲らしめただけだ」
「だね。何よりも七海と灰原が世話になってるファミリアを潰すことはない」
「「たぶん」」
口を揃えて言う二人。
もしかしたら、二人は本当に潰すことがあるのかもしれないと思っている七海。
「んじゃあ、俺たち帰るわ」
何事も無かったように五条と夏油は宿屋へと帰る。残されたロキ・ファミリアはお通夜状態だったとか。