最強は永遠に 作:ルイス
ロキ・ファミリアの騒動から数日。
五条と夏油は特に何かをするではなく、ただの日常を楽しんでいた。
「今回は俺の勝ちだな。このパスタは俺のだ」
「仕方ない。負けは負けだ」
現在二人は食事の品を取り合っていた。
じゃんけんで勝った方は好きな一品を手に取るというシンプルなもの。成績は5勝5敗。
「にしても、この世界には科学ってのが無いから不便だよな。特に連絡手段が」
「だね。手紙でのやり取りなど面倒だ。まぁ、味があると言われればそれまでだけど」
「魔導具とかで代用出来るかもな。値は張るけど」
「私たちなら2日あれば大体の金は稼げる」
「ダンジョンへ行くのなら私たちもお供します」
五条と夏油に声をかけたのは七海だ。
彼は灰原と共に偶々見かけた二人に話しかけたのである。
「七海。相変わらず疲れた顔をしてるな」
「灰原は元気なのにね」
「色々ありましてね。酒場の一軒で団員たちは少なからず暗いですし、次の遠征のためにお金を集めなくてはなりませんし大変です」
「七海は財政管理もやってるからね!!」
「流石は七海だな。でも、大丈夫?俺たちについてこれるの?」
「問題ありません」
「自分も大丈夫です!!」
七海と灰原と一緒に五条と夏油はダンジョンに向かった。彼らの目的はお金を集めること。
故に上層ではなく、深層を目指していた。
「へぇー、確かに前よりも数段階強いね。これが神の恩恵の力って奴か」
「ええ。身体能力は明らかに上がっています」
神の恩恵により、二人の身体能力は格段に上がっていた。呪術師の等級なら特級一歩手前までの強さはある。
「なら、俺たちと勝負しない?俺と傑対七海と灰原で」
「えっ?」
「マジですか!?」
五条の唐突の提案に二人は驚く。
「マジマジ。そうだなー。そっちが勝ったら何でも言うこと聞くよ」
「悟、本気かい?」
「何?まさか、負けるのが怖いとか言わないよね?」
「ふふっ…当たり前さ」
「勝手に話を進めないでください。やるなんて一言も「自分はやります!!」」
七海の言葉を遮り灰原は元気よく言った。
彼自身、五条と夏油と戦えるというよりも、修行をつけてもらえるのは嬉しい。
「灰原はこう言ってるよ。七海はどうする?」
「はぁ~。やらないと言っても強制的に参加させられそうですね。分かりました。やりましょう」
「そう来なくっちゃ」
ーー闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓えーー
夏油は呪術師以外の出入りを禁じる帳を降ろした。辺りは暗くなり、誰も入れない。
この瞬間に四人は戦闘態勢へと入る。
「行きますよ五条さん!!」
灰原は真っ先に五条へ殴りかかる。
しかし、五条には無期限呪術があるのでパンチは止まる。
「威力は十分。俺が術式使ってたら訓練にならないよな。特別に無下限呪術解いてやるよ」
「ありがとうございます!!」
五条は無下限呪術を解いた状態での戦闘。
五条と灰原はフィジカルでの勝負を行う。
五条は純粋に呪力を込めただけの攻撃。術式は一切使っていない。一方の灰原は魔法により身体能力を底上げしている。
二人の真っ向勝負。互角に見えるが、実際は五条が完全に優勢である。
「まだまだ!!」
まともに五条の蹴りを受けた灰原は後ろに吹き飛ぶ。
「灰原ー!!そんな強さじゃないでしょ。もっと、……殺す気で来な」
「……ッ!!……分かりました!!」
ドンッ!! バンッ!! ドンッ!! ドーンッ!!
二人の戦闘の音が更に大きくなる。
それを見ていた七海はやはり五条は強すぎると実感した。
「よそ見かい?こちらもそろそろ始めるよ。まずは小手調べ。ミノタウロス」
夏油は呪霊操術によって、ミノタウロスを出現させた。そして、ミノタウロスは七海目掛けて突進する。
七海はかつて使っていた鉈のような武器を振り下ろし、ミノタウロスに一撃を加える。
(普通のミノタウロスではない。恐らく夏油さんの呪力で強化されている。レベルで言えばレベル4相当)
七海の考えている事は当たっている。
夏油は己の呪力でモンスターたちを強化していた。だが、ミノタウロスでは七海に勝つことは不可能だ。
七海が二、三発いれただけでミノタウロスの腕や脚はもげている。
「流石だね。なら、これはどうかな?」
夏油が次に出したのは階層主ウダイオス。
夏油の呪力で強化されたウダイオスのレベルは7相当。
ウダイオス対七海なら勝つことが出来ただろう。だが、これは一対一ではない。
モンスターと夏油の連携攻撃を七海は防げない。
「ぐっ……」
(ウダイオスの攻撃は大ぶりなので避けやすい。だが、夏油さんの攻撃は速い)
「反応が遅いよ」
夏油の攻撃を再びモロに受けてしまう。
七海は何とか態勢を整えて、夏油に狙いを定める。
(神の恩恵がある私よりも夏油さんの身体能力は上。呪力で強化しているとはいえ、ここまで差があるとは。魔力と呪力……まだまだこの世界に我々がどの程度適応しているのかは分かりませんが、これだけは断言出来る。五条さんと夏油さんが神の恩恵を得れば、世界を潰せる)
「フンッ!!」
七海の拳が夏油の腕にヒットする。
これは効いたと七海は思ったが、それが隙となり夏油の蹴りをまともに受けてしまう。
七海は後方に蹴り飛ばされた。
「良い攻撃だったよ。でも、単調だ。君の力はそんな程度のものではないだろう。さぁ、始めよう」
ウダイオスと夏油の連携攻撃。
吹き飛ばされた七海は何とか持ち堪える。
だが、夏油に攻撃を当てることが出来ない。
ウダイオスは地中からは大量の杭を弾丸の様に放つ。そして、骸骨兵士のモンスターを大量に生み出して使役した。これぞ圧倒的な物量攻撃。
「ここから先は時間外労働です。なので、本気を出します」
そう言うと、七海はネクタイをバンデージのように右手に巻き付ける。
これは自身に時間による縛りを科しているからだ。この縛りは普段は呪力を80~90%に制限しているが、彼の定めた時間を超えて仕事が長引くと呪力が増加していく。
「ハアァァッ!!!」
七海は一心不乱に骸骨兵士たちを潰していく。
それはまさしく鬼のようだった。
「ウダイオス」
夏油はウダイオスに命じて剣を出させた。
ウダイオスの黒剣を手にした夏油は七海に斬りかかる。七海は鉈のような武器で防ぐ。
(やはり、呪力無しのフィジカルは五条さんと同等。何とか防げましたが、……重い)
「更に上げていくよ」
キーンッ!! ドンッ!! バコンッ!!
夏油の剣筋を読めない七海は防戦一方だ。
そして、ついに七海の手に持っていた武器が七海の手から離れた。
夏油の剣が七海の首元で止まる。
「私の勝ちだね」
「ええ。私の負けです」
「七海も負けたんだね!!僕もだよ!!」
いつの間にか七海たちの近くにいた灰原。
元気そうにしているが、ボロボロの状態だ。かなり五条に絞られたと見える。
「二人の実力も大体知れた事だし、さっさと金稼いで帰ろうか」
「私たちはボロボロなんですが」
「これも修行だよ。神の恩恵なんて分かりやすいものがあるんだからね」
その後、彼等はダンジョン49階層まで一日で到達した。
ダンジョン49階層は一本の草木すらない。荒れ果てた広大かつ単一の階層で、石や砂など全てが赤茶色に染まった茫漠たる大空間。
深層第二の階層主『バロール』が出現する場所。
「本来なら4人でこんなところに来るのは自殺行為ですよ」
「本来ならだろ?俺たちなら余裕じゃん」
五条の言う通り、彼にとっては余裕だ。
迫りくるモンスターも五条と夏油の前では赤子同然。特に夏油にとっては作業だ。一つ一つのモンスターを球体にして飲み込む。これは面倒な作業ではあるが確実。
「悟。少し試したい事がある」
「何すんの?」
「まぁ、見ていてくれ。……【従え】」
夏油はいつも通り掌をかざした。いつもと違うのは力を込めた言葉だけ。
その結果、当たりのモンスターは一斉に小さな球体となり夏油の掌へと集まった。
「わぉ!!」
(拡張術式か……。何かしらの縛りを結んだな)
流石の五条も驚いていた。
これが呪霊操術の真骨頂なのだと分かる。
「これなら手間もないし飲み込みやすい」
夏油は小さな球体を一斉に飲み込む。
念の為、モンスターに変化が起きていないか調べたが今までと同じだった。
これにより、夏油はモンスターを更に取り込みやすくなる。
「無茶苦茶だ」
「僕も同意見だよ!!でも、やっぱり夏油さんは凄いなぁ!!」
「灰原は今でも夏油さんに憧れていますか?」
「もちろんだよ!!今の夏油さんは学生時代の夏油さんと同じだからね!!五条さんの隣に立っていたあの時の夏油さん!!」
真っ直ぐな少年。いつまでも変わらない心。
七海は灰原のそういうところを好ましく思っている。そして、やはり似ていると今でも思っている。自身が託した理不尽に見舞われる
「七海、大丈夫だよ。彼は何度でも立ち上がる。なんたって君が賭けた少年なんだから」
「ええ。そうですね……虎杖君なら大丈夫ですね」
「何話してんのー?さっさっとお前らが言ってたバロールをぶっ潰して帰るよー」
四人はバロールが出現するかもしれない場所へと向かう。そして、難なく倒した。
「これだけの素材があったら、かなりの額になるな。っていうか、こいつ等弱すぎ」
「確かにね。あの程度なら無条件で取り込める」
「お二人が規格外なだけです!!」
七海は本当に恐ろしい二人だと思う。
その気になればダンジョン攻略も出来る存在。
けれども、二人はそんな事はしないと分かっている。今の彼等は純粋に楽しんでいるのだから。
ダンジョンから出た頃には5日程経っていた。
「そう言えば、モンスターを運んでいるのを見たが、あれは何なんだい?」
「もうすぐ怪物祭だからです」
「「怪物祭?」」
「年に一回開かれるガネーシャ・ファミリア主催の催しです。闘技場を一日使用して、モンスターの調教をショーとしてやっています」
「「へぇー」」
モンスターのショーには全く興味のない五条と夏油。それよりも彼等は魔道具が何処で売ってあるのかを二人に聞いた。
「そうですね。売っている場所はバベルとかでしょう。ですが、数も少ないですし五条さんたちが欲しがっている魔道具があるかは分かりません」
「『神秘』の発展アビリティがないと作れないからね。知り合いにそのアビリティを持っている人がいるので紹介します!!」
「おっ!!ナイスじゃん」
「はい!!その知り合いはよく都市外に出ているので!!今も都市外にいるので帰ってくるのはもう少し先にはなります!!」
「んじゃあ、その時は頼むわ」
灰原に魔導具の件を託した五条と夏油。
彼等は大量の魔石と素材を手にギルドの窓口へと向かう。
「また貴方達ですか!?」
どうやら、以前五条たちと揉めたギルド職員だった様だ。
「「人違いです」」
「そんなわけないでしょ!!!貴方達みたいな人がたくさんいるわけないでしょ!!」
「「確かに!!」」
「納得早っ!!」
「んなことより早く換金しろって」
「歳かな?物忘れが激しいみたいだね」
「(イラッ)分かりました。……って、七海さんと灰原君!?」
五条と夏油と一緒にいる七海と灰原を見て驚くギルド職員。
忘れてはいけないが、七海と灰原はロキ・ファミリアの幹部。かなり有名人だ。
「どうも。時間も時間なので手早く換金してください」
「わ、分かりました!!」
今回稼いだ金は四億ヴァリス。
四人で山分けという形となった。