最強は永遠に 作:ルイス
今日からロキ・ファミリアは遠征を行う。
この前は途中でアクシデントがあり、彼等は到達階層を伸ばせなかった。
それ故に不完全燃焼だったロキ・ファミリア。特に幹部陣たちは燃えている。
「頑張るぞ!!!!」
「灰原。無茶は程々に」
当然、ロキ・ファミリアに属している七海と灰原も遠征には行く。
幾ら五条たちと再会したとしてもファミリアを投げ出すわけにもいかない。
そんな彼等を五条たちは一応見送りに来た。
「七海、めちゃくちゃ元気ないね」
「目が死んでるよ」
素直な感想を言う五条と夏油。
二人は灰原に見送りに来てほしいと頼まれ、半ば無理矢理来さされた。と言っても二人は特に嫌と思っていない。
四人で話し込んでいると、天内と黒井がやって来た。二人はアミッドから貰ったポーションなどの回復アイテムを七海と灰原に渡す。
「お主たちなら特に問題ないとと思うが死ぬでないぞ」
「ありがとうございます!!!」
「態々すみません」
ポーションを受け取ると、灰原は知り合いを見かけたようなのでそちらへと向かう。
そして、こちらに水色の髪の女性を連れてきた。
「皆さんに紹介します。友達のアスフィさんです。彼女は『神秘』のアビリティを持っていて魔道具の製作が出来ます。アスフィさん、こちらは僕の大切な人たちです!!」
「どうも。ヘルメス・ファミリア所属の者です。確か魔道具の製作依頼でしたね。どんな物をご所望で?」
「遠くにいてもお互いが話せるやつかな。通信ってやつ。出来る?」
五条はまず遠隔でも話せるスマホまではいかなくても携帯のような通信が出来るものが欲しかった。あると色々便利だから。
「出来ないとは魔道具製作者として言いたくありませんが、かなり難しいと思います。チャレンジはしてみますが時間を要します」
「それで大丈夫だよ!!ありがとうアスフィさん!!」
自分たちの依頼を引き受けたアスフィに灰原は元気よく礼を言う。
「灰原君、七海さん、遠征が無事に終わる事を祈ります」
ロキ・ファミリアの遠征が無事に終わる事を祈るアスフィ。
五条と夏油は灰原がアスフィと自分たちを会わせるために呼んだのだと分かり、本当に良い後輩だと思う。
しばらくすると、ロキ・ファミリア団長のフィンが号令をかけて遠征が始まった。
ロキ・ファミリアは人数が多いこともあり、二つの部隊での進行となる。フィンたちの部隊は幹部人も多いこともあり、かなり騒がしい。
遠征開始からしばらく歩くと冒険者たちが数人倒れていた。
「君たち何かあったのか!」
フィンが尋ねると、意識が少し残っていた冒険者の一人が顔を強ばらせながら言う。
「ミ、ミノタウロスだ!ミノタウロスが現れたんだぁ!!大剣を持ってて普通のミノタウロスより強かった!!」
「白髪のガキが今一人で戦ってるんだ!!あれはもうマジで死ぬかもしれねぇ………」
それを聞いた瞬間にアイズは飛び出した。
何事かと思ったが、アイズを放って置く理由にもいかないので、フィンを筆頭に幹部陣が追いかける。
アイズが走り出した先に小人族の少女が倒れていた。彼女は小人族の少女を壁に寝かせて進もうとする。
だが、彼女の行く先を阻む男がいた。
「【剣姫】手合わせ願おう」
「【猛者】オッタル……どうして…何でここに!!」
オッタルはアイズに剣を向けた。
そして、殺気を向けて言い放つ。
「敵対する派閥とダンジョンで相対した。殺し合う理由に十分だ」
「まさか!警告の意味は…………」
アイズとオッタルは剣を交えた。
しかし、アイズの攻撃はオッタルに全く届かない。実力差をあまりにもあり過ぎた。
「ぬるいな。だが、一つ高みにのぼったか」
そう言うと、オッタルは剣をアイズに大きく振り払った。その衝撃でアイズは後方に吹き飛ぶ。連撃を加えようとしたところでオッタルにベートの蹴りが入る。
「誰に剣を向けてんだ!!イノシシ野郎!!」
ベートに続いてティオネ、ティオナも連撃を加えるが全く歯が立たない。
「温過ぎる!!」
少し力を入れようとした所で、槍がオッタル目掛けて飛んできた。その隙にアイズたちは奥へと進む。
「やぁ、オッタル、どういうつもりだい?」
「フィンか」
オッタルの前にはフィンとリヴェリア、そして七海、灰原が立ち塞がる。
「まさか、君とはね。それでどういうつもりなのかな?」
「敵を撃つのに理由が必要か?時と場所を選ぶ理由も意味もない」
「最もだ。だけど、それは派閥の相違と取ってもいいのか?女神フレイヤは僕たちとの全面戦争を望んでいるのか?」
フィンの問にオッタルは押し黙る。下手に答えれば本当に全面戦争となるから。
「もう一度聞こう、それは女神フレイヤの意志かい?」
「いや、俺の独断だ。………留められなかったこの不幸、呪うぞ」
リヴェリアが小人族の少女を回復させた後、フィンとリヴェリアもアイズを追う。
フィンたちが先へ進んだのに対して七海と灰原はまだその場に留まっていた。
「貴様たちは行かないのか?」
「………先日の怪物祭。五条さんたちにあなた方はボコボコにされたとか」
「全ては未熟な俺の不始末だ」
「親切心として言っておきます。どれだけの鍛錬を積もうと五条さんと夏油さんには勝てませんよ」
「力の差は理解している。だが、フレイヤ様のためにも最強の座を明け渡すわけにもいかない」
「それは無理だよ。五条さんと夏油さんが最強だからね。もう、君は最強の座にはいないよ」
無情な現実をオッタルに突きつける。
最強の座など、オッタル如きでは座れないと。
「俺はお前たちよりも弱いか?」
「それは知らないよ。戦った事ないから」
「戦う気もありません。面倒ですし」
「それは困る。俺はお前たちよりも強いのか知りたくなった」
オッタルは戦闘モードに入る。
それは先程のアイズたちを足止めした軽い感じではない。正真正銘の戦闘モードだ。
「叩き潰す!!!!」
「灰原。さっさっと終わらせますよ」
「うん。………………………………ははっ」
「どうしましたか?」
一応は都市最強と呼ばれている男を目の前にして笑っている灰原。それに対して、七海は問う。
「いやぁー。一応オッタルは都市最強だよね」
「ええ。そうですね」
「本気の彼を倒したら僕たちは夏油さんと五条さんに近づけると思うんだ!!」
「?」
「もちろん、僕たちは最強には成れないよ。最強はあの二人だ。でも、二人だけにはしたくない。少しでも近づいて支えたい。もう、二人が仲違いする事がないように」
「ッ!?………………そうですね。あの二人だけにすると、何をするのか分かりませんから」
「だね!!……オッタル!!君を倒す!!」
七海と灰原も戦闘モードに入る。
七海と灰原はLv.6。一方のオッタルはLv.7。普通のレベル関係ならオッタルの方が圧倒的に優位だ。何よりも今のオッタルは獣化しており、事実上Lv.8相当の力だ。
普通なら七海と灰原は負ける。だが、彼らもまたこの世界では常識を外れた者たち。オッタルと互角以上の勝負を続けていた。
(俺は本気を出している!!獣化まで使っている!!なのに…何故圧されている!!)
「はああぁぁ!!!」
灰原の拳がオッタルの腹にめり込む。
その威力はオッタルを持ってしても耐えれるものでは無かった。
さらに畳み掛けるように七海の連撃がオッタルを襲う。
「ぐっ………」
(負ける……怪物祭の時のように……俺は負けるのか?…………否!!負けて良いわけが無い!!)
「【銀月の慈悲、黄金の原野、この身は戦の猛猪を拝命せし。駆け抜けよ、女神の真意を乗せて】“ヒルディス・ヴィーニ”!!!」
オッタルの魔法ヒルディス・ヴィーニ。これは魔力で攻撃力を強化するというシンプルな強化魔法だ。しかし、オッタルの膂力と組み合わさる事で凄まじい威力となる。これにより、斬撃すら飛ばすことも可能となっていた。
「終わらせてやろう!!!!!!」
オッタルは威力の高い斬撃を飛ばす。
当たれば無事では済まない。それはあくまで当たればの話である。
斬撃は七海たちに直撃することは無かった。
直撃したのは七海の持っている武器だけである。
七海の術式十劃呪法。これは対象の長さを線分した時に7:3の比率の点に強制的に弱点を作り出す術式だ。
この術式を使い、七海は斬撃に対して強制的に弱点を作り出した。そして、弱点を突き斬撃を両断したのだ。
「何だとッ!!」
「行くよ!!」
灰原の拳が再びオッタルの腹にめり込む。
先程の倍以上の威力がオッタルを襲う。
「ガハッ!!!!」
オッタルは吐血した。
最早、戦闘続行は不可能な状態だ。
「これ以上戦う意味はないよ」
「ええ。君の負けですよ」
「俺は……負けてなど…………」
「「負けです(だよ)」」
その言葉を聞いて、オッタルは勝てないと敗北を認める。
そして、ボロボロの状態でオラリオへと帰還した。
「強かったね」
「ええ。けれど、勝てました」
「五条さんと夏油さんに比べたら修羅でもなかったからね!!」
「私たちも団長たちのところへ向かいましょう」
「了解!!」
七海と灰原はフィンたちの下へ向かう。
追いつくと、彼等は立ち止まっていた。
彼等の目の前では少年とミノタウロスが戦っている。
「もう、アイズ・ヴァレンシュタインに助けられるわけにはいかないんだ!!!」
そう叫ぶ少年とミノタウロスの戦いが激化する。その光景を見ていたフィンたちは冒険を見ていると思う。そして、その戦いに魅入っていた。
ロキ・ファミリア団長たる【勇者】フィン・ディムナでさえ他の冒険者の勇気に感服させられていた。
ティオナが言う。昔話のアルゴノゥトみたいだと。
『ファイアボルト!!!』
『ファイアボルト!!!』
『ファイアボルト!!!!!』
少年の魔法によってミノタウロスは倒される。
そして、彼は立ったまま気絶した。
「おい、奴のステイタスを読め!!」
「オールS」
「なんだと!?」
アイズは少年の強さを知りたいという願望の元スキルを覗こうと手を伸ばす。しかし、それはリヴェリアによって止められた。
「それ以上は駄目だ。見えてしまったものは仕方ないが、…これ以上は道理にあわない」
「…うん……ごめんなさい」
知り合いとしてアイズは少年をファミリアまで送り届けることとする。アイズはリヴェリアと共に少年ベル・クラネルと小人族の少女リリルカ・アーデを彼等のホームへ届けに向かった。
残った者たちは再び遠征を再開する。
「しかし、疲れました。まだ遠征は始まったばかりだというのに」
「【猛者】と戦ったからね。勝てたけど、まだまだあの二人には届いていない」
「それでも支えるのでしょう?」
「もちろん!!もっと強くなって支えるよ!!」
(灰原はいつも正しい。そんな君に私は憧れている。………今度は死なせません。誰一人、欠けることのない。そんな理想を実現する)