ロックマンエグゼ オペレートアナザーアフター 作:クォーターシェル
コンピュータネットワークが高度に発展し、ネットワーク技術が様々な分野に利用されるようになった、近未来の社会。人々は携帯端末「PET(ペット)」と人格を持ったプログラム「ネットナビ」により、専門的な知識を持たずして、数々のネットワーク技術の恩恵を受けられるようになっていた。しかし、生活が便利になっていくその一方で、数々のネット犯罪も引き起こされていた。
……と言っても、6年前に起きたWWW(ワールドスリー)が起こした「電脳獣事件」の解決以降、大規模なネット犯罪は俺の住む国ニホン国では起こっていない。まあ、犯罪を起こす悪党はいつの世も居るものだから小さな事件は結構起こっているんだけどそれでも俺の幼少期にWWWやネビュラといったネット犯罪組織が活動していた頃よりも世界は大分平和になっている。
あっ、俺の紹介がまだだった。俺は四条院 士。ニホン国東北部に存在するイーハトーヴシティの遠野町に住む小学五年生だ。
「おっ!このニュースは……。」
俺が毎朝見ているニュース番組には、昨夜起きたという事件が取り上げられていた。なんでも、ある企業の開発部署で機密情報が盗まれたとか。
『昨夜、〇〇株式会社開発部署で機密情報が盗まれる事件が起きました。盗まれたデータは極秘プロジェクトの資料と見られ、警察では犯人の行方を追っています。』
「へえ〜極秘プロジェクトの資料か……。」
そんなニュースを見ていると、テーブルに置いてある俺のPETから声がした。
「おい士。今日は休日だしよお、家の防犯システムのメンテに行こうぜ!定期的にウイルスバスティングをしとかねえと危険だしよ」
「分かったよマルチマン」
声を掛けて来たのは俺のネットナビ、『マルチマン』だ。彼は科学省に勤める俺の母さんがカスタマイズしてくれたナビである。俺はマルチマンの言葉に頷き、庭に存在する俺の家の防犯システムを統括するコンピューターが収められた河童型に置物の前に行き、PETを置物に向けて、俺は
「プラグイン!マルチマン!」
と言った。その言葉と共に俺のPETからマルチマンが河童の置物の電脳世界に転送される。
「よう相棒。今日もバシバシウイルスを狩って行こうぜ」
俺はマルチマンと共に作業に取り掛かった。俺はPETを通して置物の電脳の内部を見てみる。電脳世界はこの間メンテした時とさほど変わっていないようだが……。その時置物の電脳世界のプログラムくんがやって来た。
「アッ、マルチマンサン。今日ハメンテノ日デスカ?」
「そうだ。で、ウイルスは発生してねえか?見つけ次第デリートしてやるからよ!」
と、マルチマンは辺りを見渡す。プログラムくんは
「ソウデスネ、マタボチボチ発生シテイマス。良カッタラ駆除の手伝イヲ頼ミマス」
と返答した。
「分かったぜ。で、どんなウイルスだ?」
「今確認シマス」
プログラムくんはそう言うと、電脳世界のあちこちからウイルスを探知するレーダーを表示した。そのレーダーには赤い点が沢山表示されている。
「アッ!アソコニウイルスノ反応アリ!駆除シテクダサイ!」
「おうよ!士、行くぜ!」
「ああ!」
そのまま俺はマルチマンをオペレートする。マルチマンがウイルスが居ると思われる場所に向かうと、ウイルスの一種であるメットールと呼ばれるヘルメットとツルハシを装備したウイルスが複数体いた。
「オラオラァ!俺が相手だ!」
マルチマンはウイルスの群れに突っ込む。そしてツルハシで攻撃してくるメットールの攻撃を躱していく。
「士!バトルチップだ!」
「分かってるさ」
マルチマンの声に応えながら、俺はナビを強化する記録媒体であるバトルチップをPETに読み込ませる。
「スプレッドガン&アタック+10!」
それと共にマルチマンの右腕にスプレッドガンが装着された。
「行くぜ行くぜ!」
マルチマンはスプレッドガンの弾を発射する。発射された弾は拡散しウイルスの群れに降り注いだ。更にこの攻撃の一発一発がアタック+10で強化されている。
「メットー!」
ウイルスたちは次々とデリートされていく。すると今度は剣を装備した騎士の様なウイルス、スウォーディンが突撃してきた。俺は慌てず次のバトルチップを入力する。
「ソード!」
今度はマルチマンの右腕にソードが装備され、スウォーディンの攻撃を受け止める。
「動きが単純過ぎるんだよ!」
マルチマンはスウォーディンに蹴りを入れてその体勢を崩し、更にソードで止めを刺した。それを見ていたプログラムくんが
「オ見事デス!コレデコノ辺リのウイルスハ全テ、デリートサレタヨウデス」
それを聞いたマルチマンは
「まっ、肩慣らしにはなったな」
と、満足気に言った。俺は
「これでメンテは終了だな」
とマルチマンをプラグアウトさせる。PETに戻ったマルチマンは肩を回したりしながら、
「しかしよお、やっぱ最近動きが少し遅くなってるぜ。そろそろアップデートさせてくれよ」
と催促してくる。ネットナビも定期的にアップデートしないと動きは悪くなる。俺は
「そうだな、夕方には母さんが帰ってくるしその時にアップデートしてもらおう」
と答える。小学生の身ではやっぱり大人にアップデートさせてもらわないといけない。小学生でそれをこなす者もいるらしいが俺はその辺の勉強はまだやってないし、ついつい科学省の職員である母さんに頼ってしまう。母さんも忙しいしおいおいそれを習う必要はあるだろうが、母さんは試したいことがあるらしく取りあえず今のところはマルチマンの大きなアップデートは母さんにやってもらっている。
そして俺は学校の宿題をやったり、漫画雑誌ロコロココミックを読んだりして過ごした。そして夕方、
「ただいまー。あー、3日ぶりの我が家だわ……」
科学省での立て込んだ仕事が終わり母さんが帰って来た。
「お帰り、母さん」
「よう、帰ったか。久しぶりだな!」
と俺とマルチマンが迎えると母さんは「うん」と頷いた。そして俺たちは父さんが待つ食卓に着く。俺は目の前の料理を食べながら、今日見たニュースについて話した。
「へえ〜、そんな事があったのね……」
母さんは興味深そうに俺の話を聞く。
「でよお、ウイルスバスティングも終わったしそろそろアップデートしてくれねえか?」
マルチマンはそう催促する。母さんは
「分かってるわ。マルチマン、今回のアップデートは驚くわよ~?」
と不敵な笑みを浮かべる。俺は
「何かあるの?」
と聞いてみる。母さんは
「そうね、マルチマンにあるナビを参考にしたとある能力を組み込むんだけど詳しいことはアップデートが完了してからね」
と、ウインクしながら答えた。
「マジか!どんな能力だ!?」
マルチマンは興味深そうに目を輝かせる。
「それは明日のお楽しみに」
と母さんは食事を続けたが、俺は少し気になったので
「その能力はネットバトルで役立つの?」
と聞いてみた。すると母さんはこう言った。
「使いこなせれば役に立つわね」
こうして食事後、母さんは俺からPETを受け取ると部屋に籠るのだった。
◇ ◇ ◇
翌日、俺は母さんからアップデートされたPETを受け取り、マルチマンの新能力の概要の説明を受けた後学校へ行く為に出発した。
「早く新しい能力を試したいぜ!」
「帰ったらね」
通学路を歩きながらそんな会話をしていると、同級生でありクラスの委員長的存在の天三 瑚蝶(てんみ こちょう)と出くわす。
「おはよう士君」
「おはよう瑚蝶ちゃん」
俺達は挨拶を交わす。瑚蝶ちゃんは俺と幼馴染である、俺の事は「君」付けで呼ぶ。
「なあ瑚蝶!今日の放課後に俺ん家に来ねえか?新しい能力のお披露目をしてやるぜ!」
マルチマンは瑚蝶ちゃんに言うが、彼女は
「ごめんなさい。今日は塾に行かないと行けないから無理よ」
と言った。そして俺は瑚蝶ちゃんと一緒に学校へ登校し、自分のクラスに入る。そのまま授業を受けることになった。担任の先生の、
「今日はウイルスバスティングの実習をします。皆さん、PETとネットナビはありますね?」
という問いにクラスの皆は
「「はーい!」」
と答える。先生は
「この中にはウイルスバスティングの経験のある子もいると思いますが、自己流ではなく教科書を元にお願いしますね。今回は授業なので」
それを聞いたマルチマンは
「ちっ、仕方ねえなあ。授業じゃなきゃ思い切り暴れてやるんだが」
と呟く。先生は
「それでは机からこの遠野小学校の電脳にプラグインしてください」
と指示を出した。それを受けた俺達は机のプラグイン端子に向かってそれぞれプラグインするのだった。学校の電脳のグラウンドのような場所で、マルチマン達クラスのナビが整列する。マルチマンの隣に立つ芋虫の様な姿の瑚蝶ちゃんのナビであるワムは、
「実習とか面倒くさいのだ」
と怠そうに言う。
「普段から食っちゃ寝してるお前は偶にでも動かないと太るんじゃねえか?」
と、俺のナビであるマルチマンはワムに言う。ワムは
「女の子に向かってなんて失礼なのだ!ていうかネットナビだから太らないのだ!」
とマルチマンに反論する。
「まあ、それは置いといて実習始めるぞ!」
と先生のナビが言う。先生のナビは
「これから学校で飼育している訓練用のウイルスが転送されてくる。君たちにはそれと戦ってもらうぞ。念のため言っておくが訓練用だからデリートされる心配は無いからな」
と説明する。そして、
「じゃあ、一番最初に戦ってもらうマルチマンだ」
とマルチマンを指名する。マルチマンは
「ええっ、俺かよ!」
と声を上げるが、先生のナビは
「どの道全員にやってもらうが、君は経験のあるほうだろう?皆に手本を見せなさい」
とマルチマンに言う。マルチマンは嫌そうに
「手本とか俺はそういうキャラじゃねえんだよなあ……」
と配置につく。
「仕方ねえな……。よし、行くぜ士!」
「ああ、いい所見せようぜ、バトルオペレーションセット!」
そうして訓練用ウイルスが転送されてきた。ウイルスの数は4体で、虫のような外見をしており、出現と同時にそれぞれが攻撃を防ぐオーラを展開する。
「んん?見た事のねえウイルスだな」
とマルチマン。確かにそのウイルス達は俺達が今までに戦ったことの無いタイプだった。しかし、何処かでその姿をみたような……
「ああっ!あれはドリームビット!」
とクラスメイトのナビの1人がそう言う。ワムが
「知っているのかなのだ?雷電号?」
とそのナビに尋ねる。雷電号と呼ばれたそのナビは
「嘗てWWWが開発した究極のウイルス、ドリームウイルスの眷属だ!一定以下の威力を無効化するオーラを張り巡らすことができるが、野生のものは既に根絶されたと聞く……」
そう解説するのだった。ほおほお、そういえば昔ウイルス図鑑を読んだ時に載っていたような……。その時、先生のナビが
「おかしいな?こんなウイルスは飼育してなかった筈だが……」
と首をかしげる。なに?どういう事だ?そう思っているとドリームビット達は火炎や雷撃を放ってこちらを無差別に攻撃してきた。
「うわあ!」
「きゃあ!」
「ぐわあっ!」
とクラスの皆はドリームビット達の攻撃を受けてダメージを負う。先生のナビは
「いかん!授業は中止だ!直ぐに皆プラグアウトするんだ!」
と叫ぶ。クラスメイトのナビ達は次々とプラグアウトしていく。ナビ達が居なくなったことでドリームビット達は電脳世界のあちこちに攻撃し始めた。このままでは学校のシステムそのものに大きな障害が発生しかねない。俺はマルチマンに
「オフィシャルの到着を待っていたら手遅れになるかもしれない。行けるか?マルチマン」
と話かける。マルチマンは
「勿論だ。俺を誰だと思っていやがる」
とにやりと笑ってドリームビット達に向き直るのだった。先生のナビが
「危険だマルチマン!オフィシャルの到着を待つんだ!」
と止めるが、マルチマンは
「心配無用だぜ!オペレート頼むぞ士!」
と戦闘態勢に入る。
「分かった。バトルオペレーションセット!」
俺はそう言ってPETを操作する。マルチマンは
「さあ行くぜ!ウイルスバスティング、開始だ!!」
と宣言と同時に戦闘を開始した。ドリームビットの一匹が雷撃を放つがマルチマンは回避する。そしてそのまま接近して飛び蹴りを放った。
「おらあ!」
しかしドリームビットの張っているドリームオーラによって攻撃は防がれてしまった。
「マルチマン!バリアの類は風系統の攻撃で剥がせると聞く!エアシュート!」
スロットインしたエアシュートのバトルチップによってマルチマンに腕に空気砲が装着された。
「そらっ!」
マルチマンは水属性ドリームビットに向かって空気砲を発射して攻撃する。するとオーラが破れた。
「良いぞ!このままどんどん行くぜえ!!」
とマルチマンはさらに攻撃を畳み掛けるべく動く。俺も新たなバトルチップをスロットインする。
「エレキショック!」
するとマルチマンの体色が全体的に黄色くなり更にマルチマンの前にてるてる坊主の様なウイルス、ウェザースが出現し水属性ドリームビットに向かって電撃を放った。電撃を受けた水属性ドリームビットはデリートされた。これで残り3体か……!マルチマンの体色が元に戻り
「なるほどなあ!大体渡萌(ともえ)の言った通りの仕様みたいだぜ!」
とマルチマン。先ほどの様に母さん、四条院渡萌があるナビを参考にして開発した『チェンジエレメンツシステム』。自らの攻撃に応じて自分の属性を変化させて同属性の攻撃力を上げるプログラムは正常に作動しているようだ。
「ドリームビットは残り3体だ。油断せずに行こう!」
と俺は次のバトルチップをスロットインする。
「クサムラシード!」
マルチマンの手元に緑色の種が出現しドリームビット達の所に投げる。すると種が落下した場所を中心に草むらが生い茂る。このチップ単体ではあまり効果は無いが、
「ヒートドラゴン!」
マルチマンの体色が赤系統に変化しバトルチップヒートドラゴンによって炎に包まれたウイルス、ツボリュウが出現し草むらを燃やしながらドリームビット達に体当たりした。足元に草むらがある場合に炎属性の攻撃を受けるとダメージは更に増す!ドリームビット達はドリームオーラによってデリートは免れていたが、纏っていたドリームオーラは許容範囲を超えて消滅していた。
「よしこの勢いで纏めて倒すぞマルチマン!」
「おうよ!」
残りのドリームビット達は火炎や電撃で攻撃してくるが、マルチマンをそれを躱していく。俺は2枚のバトルチップをスロットインする。
「モコラッシュ&ホワイトカプセル!」
羊の様なウイルス、マルモコが複数体出現してドリームビット達に突撃した。更にその突撃を受けたドリームビット達はホワイトカプセルの効果でマヒしてしまった。その動きを止めたドリームビット達にマルチマンが近づく。
「んじゃあ止めだ士!」
「ああ!」
俺は決め手のバトルチップをスロットインする。
「エンゲツクナイ!」
マルチマンはクナイを装備し、ドリームビット達を回転斬りで薙ぎ払った。残る3体のドリームビットはデリートされるのだった。
こうしてドリームビット達を倒し、学校の危機を救った俺達は褒められると同時に叱られた。ウイルスを倒せたからいいものの、オフィシャルに任せればいいのに先生の指示を無視して勝手にウイルスに挑んだことが理由だった。俺達の功罪は相殺されたのだった……。帰り道、こってり絞られた俺は待ってくれていた瑚蝶ちゃんと下校する。
「今日は塾がある筈だったけどいいの?」
と聞くと、
「学校で騒ぎがあったから、塾の方は自宅学習ってことになったのよ」
という答えが返って来た。
「確かに学校であんなことがあった後じゃ、そういう措置は取られるよね」
と納得する。すると瑚蝶ちゃんは
「あのウイルスは何だったのかしら?」
と聞いてきたが、俺もドリームビットが出現した訳が分からないので、
「ネット犯罪者が送り付けて来たとか?」
と適当に答える。瑚蝶ちゃんも俺がそんなこと知る筈が無いと思っていたのか、
「今までこの町でこんな事無かったのに物騒になって来たね」
と話を続ける。マルチマンが
「あんな雑魚くらいなら問題ないぜ!」
と言って瑚蝶ちゃんのPETの中のワムが
「マルチマンは直ぐに調子に乗るのだ」
とツッコミを入れる。俺は
「まあ、ウイルスバスティングの実習で経験できたから良かったじゃないか」
と言った。マルチマンは
「あんな雑魚じゃ俺を満足させられねえぜ」
と言う。瑚蝶ちゃんは
「先生の指示を聞かなかったのは褒められないけど、士君とマルチマンかっこよかったよ」
と言ってくれた。その言葉で俺は嬉しくなった。
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