ロックマンエグゼ オペレートアナザーアフター 作:クォーターシェル
ドリームビットの事件が起きて数日後、噂話で色々耳に入ってくるが未だにドリームビットが出現した原因は分かっていないようだった。そんな中、俺はマルチマンを使ってネットショッピングをしにインターネットの遠野エリアを散策していた。時折現れるウイルスを駆除しながら、俺達は商店が集まっているイーハトーヴシティのホームページへと向かう。すると途中で、ワムと出会った。彼女は棒状の飴のようなプログラムを食べていた。どうやら回復アイテムの類らしい。
「はむはむはむ……」
「よおワム。また何か食べてるのか?」
とマルチマンはワムに話しかける。
「はむ……あっ、マルチマン。これはさっきイーハトーヴシティHPで獅子王堂のキャンディってナビからサービスで貰ったのだ」
獅子王堂と言えば、イーハトーヴシティの老舗のお菓子会社であり、HPでも様々な商品が取り扱われている。
「はむはむ……マルチマンも食べるのだ?」
とワムは持っていた飴をマルチマンに差し出す。俺は
「ありがとうワム」
と言って受け取る。それは棒状の緑色のキャンディだった。マルチマンは
「今はダメージを受けてねえし、しまっとくか」
と飴を懐にしまう。アイテムの説明を見るとやはりこの飴型プログラムは回復アイテムらしい。ミニエネルギーよりも多く回復するそうだが……。取りあえずワムと別れ、引き続きイーハトーヴシティのHPに向かう。すると、人だかりができていた。マルチマンは
「なんだなんだ?」
とその人込みに近づく。マルチマンは知り合いであるクラスメイトのナビ、黄色い体色のノーマルナビである雷電号を発見し話しかける。
「おう雷電号。こりゃ一体何の騒ぎだ?」
すると雷電号は
「ああマルチマンか。なんでもイーハトーヴシティHPの手前に頭のおかしいナビが陣取っていて通れないらしいぞ」
と言った。その頭のおかしいナビは、道行くナビに異常な威力のバスターを発砲してデリートしてしまうらしい。
「バスターって、あのバスターか?」
「俺達に標準装備されてるバスターだ」
バスターはナビに標準装備されているエネルギーキャノンでその威力は大体貧弱なものなのだが、件のナビは何らかの違法改造を行ってバスターの威力を異常なまでに高めているらしい。
「つまりそいつは犯罪者だな?俺がデリートしてやるぜ」
とマルチマンは張り切りながらHPの方へ向かう。俺は
「油断するなよ」
とオペレートを続ける。イーハトーヴシティのHP手前のエリアに来た俺達は、そのバスターを乱射しているというナビを探す。すると複数の逃げるナビやプログラム君が居た。彼らが逃げ出してくる方向に向かってみると、そこには確かに頭がおかしいとしか思えないナビがいた。
それは黒い体色のヒールナビでバスターをあちらこちらに向けて発砲し続けている。改造されたバスターの威力があまりにも高い為か、周囲の電脳空間には弾痕の様な穴が空いていた。
「おい!そこの黒いナビ!」
とマルチマンはヒールナビに向かって叫ぶ。するとヒールナビは
「んん?なんだ、このオレの事か?」
とこちらを向いてきた。その目は狂気に染まっており、正気が感じられない。
「お前だな!バスターを乱射してるっていうナビは!」
マルチマンはそう言い放つ。ヒールナビは
「ああ、そうだなあ……お前もデリートしてやるぞお」
と言ってこちらにバスターを向けてくる。俺は咄嗟にバトルチップの1つをスロットインする。
「バリア!」
するとマルチマンを中心にドーム状のバリアが展開される。ヒールナビが放ったバスターはバリアに防がれるが、耐久値を超えたせいかバリアは消滅してしまう。
「ナイスタイミングだ士!」
「油断するなよマルチマン!」
「100人デリートすれば幹部にしてもらえる……!お前で10人目だ!」
ヒールナビはなにかブツブツと言いながら、バスターを発砲してくる。マルチマンは一旦距離を取ってバスターを躱すのだった。
「おらっ!」
マルチマンはジャンプしながらバスターを撃つがヒールナビには当たらない。
「ちっ!すばしっこい奴だぜ」
と舌打ちをする。俺はバトルチップを2枚スロットインする。
「アクアタワー&コオリホウガン!」
水柱と氷塊がヒールナビに直撃した。ヒールナビは悲鳴を上げるが直ぐに体勢を立て直す。そして再びバスターを撃ってきた。
「くたばれ!」
「みすみす当たるかよ!」
マルチマンはバスターを再び躱す。その時である、オフィシャルのナビ達が到着した。通報を受けて来たのだろう。
「お前が乱射犯か!」
「逮捕する!」
とオフィシャルのナビ2人は警棒型の武器を持ってヒールナビににじり寄る。
「次から次と!」
ヒールナビはオフィシャルのナビ達にバスターを発砲する。
「くっ!」
オフィシャルのナビ達はシールドを出現させてバスターを防いだ。その時である、マルチマンがヒールナビの意識がオフィシャルのナビ達に向いている隙に後ろから組み付いた。
「くっ、離せ!」
「その前に、その物騒なもんを取り上げてからだ!」
そう言いながらマルチマンはヒールナビに組み付いたまま、片腕を自身の固有武装である短剣『マルチダガー』に変化させてヒールナビのバスターを腕ごと切り落とした。
「ぐわあああ!?」
バスターを切り落とされたヒールナビは地面に転がる。強力なリカバリーを使わない限り、直ぐには治せないだろう。
「かっ、確保ー!」
そしてオフィシャルのナビ達が電脳ワッパでヒールナビを拘束したのだった。
◇ ◇ ◇
一連の様子を、その場から少し離れた場所で2人のネットナビが観察していた。1人は胴体が手榴弾の様なデザインをした、軍服を着こんだようなナビで、もう1人は上半身が美しい女性で下半身が魚の様な正に人魚といったデザインのナビだった。
「ねえ、あれが幹部候補?ダメダメじゃない」
と拘束されたヒールナビの様子を見ながら人魚型ナビは呆れたように言う。それに対し軍服のナビが
「ああ、あいつには期待してたんだが、ありゃあもう駄目だな。はあ、面倒だが始末するしかねえぜ」
と同意する。人魚型のナビは軍服のナビに、
「グレネードマン、あいつは一応貴方の管轄でしょ。始末の方は貴方に任せるわよ」
と指示する。グレネードマンと呼ばれた軍服のナビは、
「へいへい、分かってるよ」
と言って動き出すのだった。
◇ ◇ ◇
「流石マルチマンだぜ!今日も絶好調だったな!」
俺はそうマルチマンをねぎらう。マルチマンは
「おう!」
と返事をしたのだが、やはり気になる事があったのか、小声で話す。
(なあ士……)
(なんだ?)
(あのヒールナビの件どうにも引っかかるぜ……)
(確かに、幹部とか気になることを言ってたな。でも俺達は精々市民ネットバトラーだし、そういう捜査はオフィシャル、ネット警察の仕事だろ?)
(まあ、そうだがよ……)
好戦的で首を突っ込みたがる質のマルチマンは、やはり納得していないようで渋るのだった。俺はそんなマルチマンを宥めるように
「俺達は市民ネットバトラーなんだし、ネット警察に任せた方がいいって」
と言った。するとマルチマンは
「そうか……?」
と言って、一旦は引き下がったのだった。
俺達はライセンスを獲得して偶に小さな依頼を解決している市民ネットバトラーである。中には俺と同じ年齢でオフィシャルネットバトラーをやっていた少年も居たと聞くが、まあ大人でも難しいオフィシャルになれるかと言うと普通は無理である。今回ヒールナビを逮捕したナビ達もエリートと呼べる凄腕なのだ。
そんな事を考えながらヒールナビを引きずっていくオフィシャルのナビ2人組を見送っていると、引きずられているヒールナビの足元に何かが投げ込まれた。
「む!?」
「これは!?」
「こ、これはまさかグレネードマンさんの……!」
「おい!お前ら早く逃げろーっ!!」
マルチマンが叫ぶが、次の瞬間ヒールナビの居た場所を中心に大きな爆発が起こった。
「うおおっ!?」
爆風に思わずマルチマンはしゃがみ込む。俺は
「大丈夫かマルチマン!?」
と彼を心配する。マルチマンは
「ああ、驚いたが俺は無事だぜ。しかし爆心地にいた連中は……」
と爆発が起こった所を見る。ヒールナビとオフィシャルのナビ達は爆弾の爆発をもろに受けてしまいデリートされたのか、跡形もなく消えてしまっていた。
「これは一体……」
と俺は言う。その時、爆弾が投げ込まれた方向から軍服を着たようなナビが現れた。
「ふう……。やっぱり何かを粉々に吹き飛ばすのは気分がいいぜ……!」
と満足げな様子だ。そんなナビにマルチマンは
「今の爆発はてめえの仕業か!なんてことしやがる!」
と食って掛かる。俺は慌てて
「落ち着けマルチマン!……お前は何者だ?」
と尋ねる。するとナビは
「俺か?俺の名はグレネードマン。まあ、お前らの言うところのオフィシャル、ネット警察のお尋ね者さ」
と言った。
「お前があのヒールナビの仲間なのか!?」
と俺が問うと、彼は笑いながら
「仲間?ああ、確かにあいつも一応舎弟なんだがよ……あいつはもう駄目だったからな。始末した」
と言った。マルチマンが怒り心頭で、
「てめえ!どうやらドクズみてえだな!」
と言うと、グレネードマンは
「はははっ!言ってくれるじゃねえか。まあ否定はしねえぜ」
と言った。俺は何とか冷静さを保ちつつ
「あんた達は何が目的でこんな事をしているんだ?」
とグレネードマンに尋ねるが、
「それを言うと思うか?まあ、お前らは運が良かったな。俺は無駄な殺しを好まねえんだ」
と彼は言った。マルチマンは怒り心頭と言った様子で
「何が無駄じゃねえだ!発砲事件がお前の差し金だとしたら、何人もデリートされたんだぞ!」
と叫ぶ。グレネードマンは少し考え込み、そして何か思いついたように
「……ああ、いい事を思いついたぜ」
と言って俺達に話しかけてきた。
「なあお前ら……俺達と手を組めよ」
「なんだと?」
「手を組むってどういうこった?」
俺とマルチマンはグレネードマンの言葉に疑問を持つ。グレネードマンは
「簡単な事さ。俺がお前らに力を貸してやる代わりに、俺達の目的を邪魔する奴らをデリートするのを手伝ってくれって事だ」
と言った。俺は
「つまり、お前達の邪魔をする奴等を排除してくれって事か?でもなんでそんな事を……」
と問うが、グレネードマンは笑って
「まあ、それは後々分かるさ。で……どうするよ?」
と選択を迫ってきた。俺は
「そうだな、お前の後ろの友達にも相談してからかな!」
と言いながらあるバトルチップを構える。グレネードマンは
「友達だと?」
と後ろを振り返る。その隙を逃さず俺はバトルチップを装填する。
「ガイアハンマー!」
マルチマンは目の前にハンマーを振り下ろし、更にその衝撃波がグレネードマンに向かった!
「ぐお!?」
グレネードマンはその衝撃で後ろへ吹き飛ぶが、ダメージはそれなりにあったようだ。その証拠に足が崩れかけている。そしてその瞬間にバトルチップの効果が切れたのか、衝撃波も消滅する。
「やるじゃねえか……だが!」
とグレネードマンが手榴弾を投げつけて来た。
「クロスグレネード!」
「避けろマルチマン!」
「おうよ!」
マルチマンは手榴弾から距離をとる。手榴弾は十字型に爆発する。グレネードマンは
「まだだ!」
と言いながら、グレネードガンを構えて撃って来た。
「ちっ!」
俺は慌てて新しいバトルチップをスロットインする。
「リフレクメット!」
メットールのヘルメットをマルチマンは構え、発射された榴弾を防いでヘルメットから高速の衝撃波を発射した。グレネードマンはこの衝撃波も躱すことは出来なかった。
「がっ!」
グレネードマンは衝撃波を受けて吹き飛ぶ。そして地面に倒れたのだった。
そんなグレネードマンに、俺達は追い打ちをかける。
「ハイキャノン&バイキャノン!」
止めとして、強化されたハイキャノンの一撃を、グレネードマンに叩き込む。
「ぐわあ!?」
グレネードマンの体のあちこちに亀裂が入り、誰から見ても瀕死の状態の中、グレネードマンは起き上がった。
「はははっ!油断したぜ……ここまでの実力があるとはな……!」
「へっ、褒められても嬉しくねえよ。通報もしたし直ぐにこの場にネット警察が駆けつける!観念するんだな!」
とマルチマンはグレネードマンに言う。だが、グレネードマンは
「ほう……そりゃあまずいな」
と言って煙幕を発生させた。煙が晴れると、そこには誰もいなかった。
「逃げたか……」
「くそ!逃がしちまったぜ……!」
俺達は悔しがるのだった。
◇ ◇ ◇
ネット警察に通報してから5分程でその現場に到着した彼らは、俺とマルチマンの話を聞いて即座に捜索を始めた。そして10分後、ヒールナビの所持していたデータの欠片からとある単語が発見される。
「Re: EXE(リ・エグゼ)」
意味は分からなかったが、俺はその単語を目にして長い戦いが始まりそうな予感がした……。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想お待ちしております。
今回使用されたバトルチップ
名前:バイキャノン
効果:「キャノン」「ハイキャノン」「メガキャノン」の後にスロットしたとき、ダメージが2倍される。
(作:神谷主水様)