Re:ゼロから始める呪術生活   作:アーロニーロ

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プロろーぐ

 

「いやだ…もう、いやだ……」

 

 それはどこにでもある街中の道中にて何かがぶつぶつも呟きなが歩き続ける。時間帯も深夜ということもあり人通りがないのが救いだが、万が一常人だけでなくヤンキーだろうが見かけたら素直に道を譲りたくなるようになるなにかは黒髪のツンツン頭が特徴的なことと目の下にできた濃い隈を除けばどこにでもいるごく普通の制服を着た少年だった。こうなった原因を知るには半日ほど前に遡る。

 

 今日の朝、少年は学校へ行った。諸事情あって学校へ行くことはできなかっだが、唯一と言っていい連絡相手である妹からの激励もあってのことだった。心機一転、いつまでも妹の心配事のタネとして居座るわけにはいかないと半月ぶりにすっかり夏服に切り替わった制服を着て学校へと向かった。そして、学校の教室へと入った乙骨はクラスメイトから大歓迎を受けた。まさにドラマチック。不登校気味だった少年とクラスメイトをきっかけに青春が幕を開けようとしていた――――!

 

『やぁ、久しぶりじゃないかぁ』

 

 そこで待っていたがかつて学内にて自身を虐めていた同級生でなければ完璧だった。

 

『こっちに来ないで…』

 

『おいおい、寂しいこと言うなよ。俺がどれだけお前を殴りたかった想像してみてくれ!!』

 

 目に映った人物を前に目を伏せながらそう言う。いじめられっ子が情けなく自身に懇願している。その事実に股座をいきり立たせながら限界までほてった顔で歓迎するガングロを筆頭に四人組がニヤニヤとしながら近づいてくる。幸と言っていいのかわからないが早朝で教室には誰一人いないこの状況、―――元々教師が誰一人として止めないこともあって心配などしてもいないが―――止めるものなど誰一人いない。

 

『これ以上、焦らされてみろ?俺はお前のこと―――うっかり殺しちゃうぞ?』

 

 熱病に浮かされたようにそう呟きながらネクタイに手をかけて歩み寄る。その事実に少年は震える。それはいまから自身の身に降りかかるであろう暴力に対して、ではなかった(・・・・・・)

 

『来ちゃだめだ!◾️◾️ちゃん!』

 

『あ?何言っ、べっ』

 

 それが彼の、否彼らの最後の言葉となった。そこからはもう学校で授業を行うなど不可能だった。半死半生となった男四人組を出しておきながらそのようなことは出来るはずもないのだから。当然ながら少年は真っ先に疑われた。何せ血だるまとなった四人組のすぐ隣で膝を抱えて蹲っていたのだから。しかし、事情聴取はすぐに終わった。無理もない話だ。見た目は健康そうな文学少年が屈強と言って差し支えない男たちを比喩でなく一つのロッカーに詰めるなど不可能なのだから。

 

 家に帰えるなり少年が真っ先に行ったことは【自殺】だった。少年は限界だった。悪辣と言っていいイジメを行なっていた。同情の余地がないほどの外道ではあった。しかし、それでも自責の念に耐えきれなかった。少年に居座る彼女が人を四人も死の一歩手前まで追い詰めてしまったからではなく、自身がが弱いせいで人死にを出しかけてしまったという事実に耐えきれなかった。

 

 記憶が朧げながらも自身の住むアパートに到着するや否やキッチンからペーパーナイフを取り出した。そしてそれを逆手に持つと切先を喉に突きつける。「今から死ぬのだ」、その事実に震えが止まらない。息を荒くしながら目からは涙が溢れ始める。それでも頭の中に過るのは4人組の姿とこれまで善悪問わずに傷つけたしまった人たちの姿。

 

『フーッ…フーッ…!』

 

 覚悟を決めたように大きくペーパーナイフを大きく振りかぶる。意を決して一息と共に勢いよくナイフを喉に突き立てようとする。しかし、

 

『ダぁメぇェ』

 

 彼女が少年の死を許容しなかった。

 

『なんっでッ』

 

 少年はその場で崩れ落ちる。()()()()()()()()()()()()()()ナイフを持って。崩れ落ちたまま少年は呆然としていると腹が鳴った。時刻は夕方を通り越して深夜帯へと移っていた。あれから一食もしていない以上は無理もない話だが、少年は思わず自嘲する。あんなことをしておいて腹が減るなんて、と。

 

 腹が減った事実を無視してそのまま寝ようとするとスマホから連絡が届く。宛先は妹から。内容は事件を聞いたことに対する心配、そして【ちゃんとご飯食べてる?】の文だった。それを見た少年はもう一度だけ涙を流すと立ち上がりコンビニへと向かう決意をする。自身を思ってくれる人がいるのならばもう少しだけ生きてみようと、仮に死ぬにしても妹の面倒にならないようにしてからにしないとと思いながら。

 

 

 

 そうして現在へといたる。初めは家の中で料理を作ろうと冷蔵庫を開けたのだが、今は金曜日と平日の最終日。作り置きも底をつく頃合いということもあって冷蔵庫の中はすっからかんであった。あんなことがあった後に外に出なきゃいけないのかと思いながらも財布片手に外に出る。目指す場所は24時間営業で有名なコンビニである。

 

 精神的に追い詰められていたこともあってあまり余裕がなかったが、あまり人と関わり合いの持てない深夜帯であったのは彼自身からすると幸いであった。特になんの障害もなく到着した。月末ということや食が細いということもあっておにぎり数個で済ませるべくカゴに入れる。ついでにお菓子でもと、すると──

 

「おっと」

 

「え…」

 

 手と手がぶつかり合う。目線を向けるとそこには黒を主体としオレンジ色のラインが入ったジャージ姿に三白眼が特徴的な男と狙ったものがかぶってしまったようだ。

 

「悪ぃな、欲しいなら譲るけど」

 

「い、いえ。流石にそこまで欲しいってわけではないので……」

 

「お、サンキュー。にしても学生かぁ?こんな時間にほっつき歩くなんて悪い奴だなぁ」

 

 どうぞと譲られた商品を片手に快活に笑いながらそう言うと男はレジへと向かった。そんな男に対して少年は同年代くらいなのにコミュニケーション能力が高くて羨ましいなぁ、ああいうのを陽キャ?っていうのかなぁと思いながら同じくレジへと向かう。深夜帯だったが幸いにもレジが二つ空いていたこともあり、待たずして会計は完了した。会話が久々ということもあってかなり苦労したのは内緒だ。

 

「お、さっきの」

 

「え、あ、ど、どうも」

 

「そんな緊張すんなって。ここで会ったのも何かの縁だ。よけりゃさ、途中まで一緒に帰えんねぇか?」

 

 突然の誘いに思わず呆然とする。初めは断ろうとした。しかし、そこで頭をよぎったのは「このままでいいのか?」という疑問だった。目線を向けると相手は首を傾げながら自身を見ている。少なくともその目には四人組の様な悪意は見て取れなかった。

 

「お、お願いします?」

 

「おっしゃ、決まりぃ!俺の引きこもり生活で浮かび続けたトーク能力が火を吹くぜ!」

 

「あ、あはは…」

 

 引きこもりという事実に苦笑いしつつも、足並みを揃えてコンビニから出る二人。すると、

 

「「うっ」」

 

 目の前にいきなり光が灯されたように眩しくなる。想定外の事態に思わず一人は目を覆うように手をかざし、もう一人は目を閉じて俯いてしまう。少しして瞼の裏側まで明るくなったような錯覚が解けて目が慣れ始めてくる。一体全体なんなのか?突然の事態に頭が追いついていないでいると肩が叩かれる。肩の叩かれた方に目線を向けるとコンビニで一緒に帰ろうと言っていた男が陽の光を浴びながら呆然としている。何事?と思っているとあることに気がつく。先ほどまで夜だったのに何故陽の光が見えるのか、と。夜から一瞬で昼になった事実に理解が及ばないながらも目線を辿って前を向く。そして、

 

「は?」

 

 少年はとうとう呆気に取られてしまう。無理もない話だ。明らかにさっきの空気……空間……というか世界そのものが違う。中世の街並みに、そこを走る馬……もといトカゲのような竜。そして、明らかに人間とは違う動物が二足歩行で街を行き来している。一瞬、白昼夢か何かかと疑うがざわざわと話し声や地鳴り雑音という雑音が嫌というほど聞こえる事実がそれを否定する。

 

 というか全身を毛で覆われた猫の顔をした女性が、人間の女性と普通に会話をしている。

 フル甲冑の騎士が道の端であくびをしている。

 人間の子供と、垂れた犬耳を持つ亜人が追いかけっこをしている。

 四足歩行の大きなトカゲが引く幌つき馬車が大量に、そしてひっきりなしに往来している。この光景を幻覚だ、と判断するにはあまりにも現実的がすぎた。

 

「異世界召喚ってやつーーーー!?」

 

 情報の洪水を前にメダパニ状態に陥っていると隣から聞こえてきた大声に驚かされると同時に目を覚まさせられる。目線を隣に向けると爛々と楽しそうに目を輝かせながら笑う男がいた。あ、迷惑そうに通行人がこっち見てる。恥ずかしさということもあって男の服の裾を引っ張って先ほどまで好奇の視線を浴びていた通りから薄暗い路地裏にうつした。

 

「悪ぃ、悪ぃ。初の異世界を前にすっかり忘れてたぜ。こういうのって普通俺一人が召喚されるものじゃないのかとは思わされるが今は自己紹介からだな!俺の名前は菜月昴(なつきすばる)!御年17歳で絶賛不登校中の学生だ!よろしくな!」

 

 元気よく後ろ向きな自己紹介をするという変わったことをした男―――昴は天高く指を差して笑ってそう言った。

 

「お、乙骨憂太っていいます。年は16歳です…」

 

 それに対して今一状況が飲み込みきれないでいながらも少年は、呪いの女王を引き連れた少年はそう答えた。

 

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