Re:ゼロから始める呪術生活   作:アーロニーロ

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遅れましたわー!卒研がバリ難しいっす。


鍛錬

 

 

「それじゃあ、始めようか」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 ロズワールと座り込んだ乙骨が向かい合う。なぜ、このような状況になったのか。それを知るには少し前に遡る必要がある。

 

 

 あれはエミリアの徽章を取り返し、命を救ったことを引き換えに乙骨とスバルのロズワール邸での就職が決定した後のこと。

 

「乙骨くん、君は少し残りたまえ。話がぁ、あるんだよ」

 

「へ?」

 

 皆の食事や話し合いも終えてラムとレムの2人が食器を下げ始めた時、ロズワールが乙骨のことを引き留めたのだ。突然の呼び止めに乙骨は困惑する。しかもラムが同席しようとしたのだが、どういうわけか一対一での対話を望んでいるとのことだ。疑問にこそ思ったが、断れる様子でもなく全員がいなくなるのを待つ。そして、最後にラムが出ていったのを皮切りに話し始める。

 

「さて、今回残ってもらったのには理由があってぇね。君が契約しているとされているリカについてだぁよ」

 

「里香ちゃんについて?」

 

「そうだよ。君を預かる前に国から直々に依頼が来てねぇ。君を預かるのと同時にリカについての調査を頼まれたのさぁ」

 

 なんだって里香に関して国が動いているのか理解が追いつかない。乙骨の困惑が深まるとそれを察したのかロズワールはにっこりと笑って説明し始める。

 

「君、ここにくる前にリカちゃんが剣聖を殴り飛ばしたことを憶えているかぁい?」

 

「え、ええ」

 

「それがよくなかったんだぁよね」

 

 いまだに納得のいっていない乙骨により詳しく説明する。なんでもラインハルトは【剣聖】という括りで見ても歴代最強という声が名高いらしく、その実力はありとあらゆる方向性から見た上で紛うことなく世界最強。未だにまともな傷を一つあったことないという実話すら存在するらしい。おまけにやろうと思えば単騎で世界を滅ぼすことが可能な程、逸脱しているときた。

 

 まさに王国最強の手札にして切り札。存在自体が抑止力としてあることができる。

 

 しかしある日突然、そんな神話じみた逸話を打ち崩す出来事が起こる。

 

「君の、いや君たちの存在だよ。乙骨くん」

 

「つまり、僕たちは国から警戒されてるってことですね」

 

 ロズワールは乙骨の重苦しい言葉に対して笑みを持って是であると応える。それに対して乙骨は盛大にため息を吐きながらいらぬ心労をかけてしまい心配そうに乙骨に語りかける里香を「君のせいではない」と慰める。

 

 ロズワール曰く、最初で最後に傷を与えたのは帝国最強の蒼き雷光なる人物らしく、その人もこの世界からだと上から数えた方が早いほど強いらしい。そんな存在であっても与えた傷は頰に一筋の浅い切り傷だけなのだとか。

 

 しかし昨日ラインハルトが負った怪我は内臓破裂に骨折と明らかに尋常じゃないものだった。しかもその直前には貧民街から謎の膨大な魔力の動きまで観測されていたいう。

 

 それだけバケモノじみたラインハルトがある日突然、半死半生の状態で帰ってきたらどうなるか。語る必要性が存在しないほど場が混乱するに決まっている。そんな【剣聖】に致命傷を負わせた存在がどこにいるのかと探りを入れた結果、出てきたのは宮廷魔術師が住まうメイザース領だった。それを知った賢人会(後で知ったが大臣的な人の集まりらしい)はロズワールに命令を下した。それは魔法的なアプローチを用いて乙骨憂太と祈本里香の調査をせよとのことだった。

 

「一応は公爵の座についてはいるけどぉも、それでも現状国の頂点にある人間には逆らえない」

 

「だから僕に頼みたいと?」

 

「そゆこと。ましてや今の君は雇われる身で私は雇い主。断れる理由はなぁいと思うんだけどね。あ、断ることも可能だ。その際は雇う話は全て無かったことになり、口止め料を持ってルグニカ王国を出てってもらことになるんだぁけどね」

 

 ウィンクをしながらそう締めくくるロズワール。若干、脅しをかけてくるが乙骨自体は断るだけならかなり簡単だ。何せこの話自体、乙骨に対してなんの強制力も存在していない。話の内容的にもその賢人会なる集まりも乙骨が国にいなければ関わる気もなさそうなのだから。

 

 じゃあ、このまま大金を持って出て行けるのかと聞かれれば不可能である。

 

 今の乙骨にはベアトリスのおかげである程度知識はついたが、金銭の価値などの基礎情報などはあまり理解できていない。おまけに文字の読み書きも完璧ではない。そんな状態で後ろ盾もなく戸籍もない今の乙骨が生きていけるほど治安が良くないのは前のループというか昨日で十分に理解している。かと言って里香ちゃんを得体の知れないロズワールに調べさせるというのもなんか嫌だし、我が身可愛さに初恋相手を売るほど乙骨は落ちぶれてはいないのだ。

 

「当然ただで、とは言わないとも。契約としてリカちゃんに危害を加えないし、そちらの要件も追加で受け入れよう」

 

「口では、なんとでも言えるんじゃあ…」

 

「口で、だったらね。これは【契約】だ。互いの利害によって成り立つもの。安易に破れば破った側にそれ相応の罰則がくだぁるのさ」

 

 ニヤけた顔をしながらもロズワールの契約を語る口調はどこか真剣味を帯びている。ここまで聞いた乙骨は目を閉じて考える。今までわからなかった里香の詳細について、ロズワールの胡散臭さ、干渉によって発生する里香の安否、国から危険視されている里香の後ろ盾、それら全てが頭の中で咀嚼する。そして目を開くと指を3本立てる。

 

「先ほどの二つの条件にさらに『契約の穴をつかない』。これを加えるのでしたら」

 

「いい判断だ。頭の回転が早いねぇ」

 

 そう言ってロズワールは席を立つ。乙骨もそれに釣られるように席を立つとロズワールのほうへと足を運ぶ。そして互いに手を交わして契約が結ばれた。

 

 

 そして現在に至る。今、乙骨とロズワールの2人はロズワール邸の裏庭にいる。スバルとラム、レムの3人はこの時間帯であれば今表の庭で仕事の最中だからだ。邪魔にならないためにもと移ったこの場所で乙骨とロズワールとの間に結ばれた第二の契約が履行されようとしている。

 

「で、君が頼んだ要件は君を鍛える。でぇ、いいんだよぉね?」

 

「流石に里香ちゃんにおんぶに抱っことはいきませんから」

 

「おんぶに抱っこって言葉は聞き覚えないけど好きな子に頼り切りたくないって気持ちは大いにわかぁるよ」

 

 ロズワールが契約内容を再度確認すると乙骨は力強く頷く。これこそが乙骨の頼んだ二つ目の要件、『乙骨憂太を鍛え上げる』ということだ。

 

 乙骨は以前から憂いていたことがある。それは自身の身を里香ちゃんに守らせすぎているということだ。以前から里香が過剰に反応して他者に危害を加えることは多々あった。その危害を加える相手の中には自身の妹が含まっていたほどに。しかし、妹の件を除けば里香が他人にむけて危害を加える背景にはどうしても乙骨が絡んでいるのだ。いくら里香のことを理解できたとしても自身が弱いままでは守られ続けるままなのだ。そこで提案したのが鍛えられること。当然だが、今から体を鍛えたところでモヤシボディな自身が漫画やゲームのようにいきなり強くなれるとは微塵も思っていない。

 

 ――――が、この世界には元いた世界とは異なるある要素がある為、そうとは限らなかったりするのだ。

 

「君が習いたいのは魔法関連だってことでいいんだぁよね?」

 

「はい!」

 

「うんうん、返事よし」

 

 そう、魔法である。

 

 体を鍛えるとなるとかなりの時間を要するし、武術に関してもスバルと異なり剣道の一つもやったことのない自身ではやれることなど高が知れている。が、魔法ならばその限りではないかもしれない。今の今まで学んでこなかったというのは魔法も同じだが、ヒョロイ自身にとって最速で異世界召喚された自分の牙になるものだと確信めいた感覚がある。しかも教えてくれるのは王国最強の魔法使い。感覚派であったとしても経験則から学べることは多いはずだ。

 

「それじゃぁ、まぁずは初級から。ユータくんはもちろん、『ゲート』については知っているねぇ?」

 

「いや、そんな知ってて当たり前みたいな感じで切り出されても、知らない側からしたらそんなんなにって感じだし……」

 

「そっからかぁ…。ゲートのことを知らないか……控えめに言って、え、それ、マジ? ってぇ感じだねぇ」

 

 食事の最中でスバルが乱用していた「マジ」という単語の使い方に使用例の採点を求めるロズワール。それに対して満点であると告げるとハイタッチを要求してきた為、それに応える乙骨。そして説明を促すと話題は元に戻る。ゲートとは簡単に言っちゃうと、自分の体の中と外にマナを通す門のことらしい。ゲートを通じてマナを取り込み、ゲートを通じてマナを放出する。使うにしても溜めるにしても、必要不可欠なものだとか。万物万象、ありとあらゆる生き物が保有しているとこのこと。

 

「えっと、例えると魔力が水でゲートが蛇口って感じですか?」

 

「その認識で間違いないとも。ところで魔法には基本となる四つのマナ属性があるわけだけど、知ってるかなぁ?」

 

「えっと…、火、水、土、風、ですか?」

 

「うんうん、大当たり。どぉやらこの辺りの説明はいらなさそうだぁね」

 

 いきなりの質問に驚きながらも取り敢えず元の世界でも存在している四大元素をパッとあげてみる。すると当たりだったようで感心したようにうんうんと頷くロズワール。そして一通り頷くと説明はそれぞれのマナの属性の特性について移っていく。熱量関係の火のマナ。生命と癒しを司る水のマナ。そして生き物の体の外の加護に関わる風のマナ。体の内の加護に関わる地のマナ。おおよそはその四つに大別されていて常人はその内のひとつに適性があればマシといったところらしい。

 

「ちぃなぁみぃにぃ、私は四つの属性全てに適正があるよ?」

 

「へー…。ところでその属性についてどうやって調べるんですか?」

 

 最強の魔法使いは伊達ではないらしくまさかの全適性があるとのこと。その事実に乙骨は感心しつつも質問を続ける。そんな乙骨にロズワールは鷹揚に頷き、「ふふーん」と意味ありげにほくそ笑みながら掌を突き出してきた。

 

「もぉちろん、私ぐらいの魔法使いになると、もう触っただけでわかっちゃう。ま、実際はゲートの構造に踏み込んで確認するんだけどねぇ」

 

「え!?じゃあ、お願いします!」

 

「いぃい反応だねぇ。私にそういう時が……あったかなぁ?」

 

 思ったよりもはるかに簡単な識別方法に驚きつつも魔法というthe ファンタジーなものの適性を測れるということに内心ウキウキしながらロズワールに詰め寄ると微笑ましそうな顔をしながらロズワールはその掌を乙骨の額に当てる。

 

「よっし、んじゃちょこぉっと失礼します。あ、痒いとこあったら言ってね」

 

「特にないです!」

 

「なぁら良し」

 

 目を閉じて「みょんみょんみょん」とか言い出すロズワール。普段であればツッコミの一つや二つ入れてたが、今はそれを忘れて童心に帰ったように待ち侘びる乙骨。そして、

 

「よぉし、わぁかったよ。君の適性は『水』だね」

 

「『水』、ですか?」

 

 まさかの癒し枠。どちらかというと不健康そうな見た目もあって「お前、死にそうなツラしてんな」と言われたことのある乙骨からすると少し想定外な答えだ。乙骨としては風とかの方面だと思っていた。

 

「『水』だねぇ。あ、でも、『陰』も若干深まってるのかなぁ」

 

「それって、どうなんですか?というか、『陰』?」

 

「話してなかったけど、四つの属性を除いて『陽』と『陰』って属性もあるにはあるの。もぉっとも、該当者はほぉとんどいないからあえて説明は省いてたわけなんだけど……」

 

 ハハハと笑うロズワールに微妙そうな顔をする乙骨。一点特化とも言えない中途半端な適性を前に思わずどう言った顔をすればいいのかわかない乙骨。すると、そんな乙骨に補足するように説明し始める。

 

「でぇも、君の魔法への才能は破格だよ。ゲートの数も常人よりも多いし。何よりも驚嘆すべきはその魔力量だね」

 

「どれくらいなんですか?」

 

「なんとビックリ。低く見繕っても常人の13倍以上。こぉれは凄いよ。なんたって魔力を多く有するエルフの血を引くエミリア様より多いんだぁからね。おまけに治癒魔法への適性もあるときた」

 

「ん?水魔法は癒しの能力があるんじゃ…」

 

 乙骨の魔力量に心底驚いた様子を見せるロズワールの最後の言葉に反応する乙骨。説明を聞き間違えていなければ水魔法=癒しの力という認識で間違いないはずなのだが、

 

「そのあたりは少し面倒でねぇ。水魔法の適性があっても治癒魔法を使えるとは限らないんだよねぇ。実際、私は使えないしね治癒魔法」

 

「へー」

 

「そんなこともあって治癒魔法使いはめちゃくちゃ希少でね。全世界を見渡しても両手で数えるのが精一杯なんじゃあないかなぁ?」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

 割と身近に治癒魔法を使える存在がいた為、割とありきたりな能力かと思ったらそうでもないらしい。

 

「王国だとレムにエミリア様、ベアトリスにうちの近くにある聖域に住むガーフィールに青の称号を持つフェリックスくらいかなぁ」

 

「今の説明だけで片手が埋まりましたけど!?」

 

「私の身内には優秀なのが多いからねぇ」

 

 なんだったら内、80%はメイザース領にお住まいときた。しみじみとそう締めくくっているが、本当に数少ないのか疑いたくなる。まあ、数十万分の五と考えれば少ないのは間違いないが、揶揄われている感覚が半端ない。すると、ロズワールが指を二本立てる。

 

「君には魔法のいろはについてと『流法』の二つをお教えしようじゃあないか」

 

「流、法?」

 

 これまた聞き覚えのない単語に頭上に?マークが展開される。そんな乙骨に対してこれまた楽しそうな顔をしたロズワールが説明し始める。

 

「『流法』っていうのはぁね。わかりやすく言えば魔力で体を強化するってことだぁよ」

 

「あ、そういうのはあるんですね」

 

 魔法とかそういうのに目が行きがちでファンタジーあるあるの魔力で体を強化するという物があるのをすっかり忘れていた。

 

「振るえば岩を穿ち、守れば鉄壁に。多少、才能にも左右されるけぇど魔力が少ないものでも扱える優れた技さぁ」

 

「だったら魔法に優れたロズワールさんは使い方を知らないんじゃあ…」

 

「私の先先代は魔法の適性が皆無でねぇ。そういった『流法』を筆頭に様々な武術を習得してたのさ。そぉれに、魔法使いが近接を詰められて何もできないなんてなったら笑い話にもならなぁいだろう?」

 

「た、確かに」

 

 思っていたよりもはるかにまともな回答に思わず驚く乙骨。ロズワールの言葉が事実ならロズワールは近接も得意ということになる。逆に何なら成し得ないのだと思わされていると乙骨のおでこに手を添えたロズワールが支持を下す。

 

「じゃあ、まずは魔法の実演といこぉか」

 

「え!?い、いきなり!?」

 

「あぁんしんしなよ。私がいる限り魔法による事故は起こり得ないから」

 

「わ、わかりました」

 

「それじゃあ早速、君にやってもらうのは氷魔法の『ヒューマ』と水魔法の『アクル』から行ってみよぉか。イメージしてごらん。今、君の体の中のマナの流れを掴んで動かしてる。その一部をゲートから、体の外へ吐き出すんだぁ。それは外で形をなす――何か固めるもの想像してごぉらん」

 

 乙骨は己の中をうごめくエネルギーの行き場を妄想の中に求める。ゲート――門と呼ばれるそれを体の中心にイメージ。門がその重々しい扉を開き、内側から外へとエネルギーを溢れさせる。そのエネルギーは外へ出て、乙骨の意思に従って現象へと昇華する。そして、

 

「うんうん!一度に2つってやっぱり才能があるねぇ」

 

「わぁ!」

 

 片手には氷塊が、もう片方の手にはソフトボールほどの大きさの水の塊が浮遊していた。それを見た乙骨は嬉しそうに声を上げ、ロズワールは満足気に頷く。

 

 この後、何度か魔法を試してみた結果、ものの五分程度で乙骨1人で魔法を使用することが可能となった。

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