あと数話で里香が完全顕現すると言ったな?アレは嘘だ!はい、すんません。リゼロの内容を舐めてました。コメント乞食な俺としては批判込みでコメントがたくさんほしいのでどしどしきてください。よろしくお願いします!
それを聞いたスバルと乙骨は盛大にため息を吐くと目線を声の聞こえた方へと向ける。そこにはやはりというか、想像通りというか、
「やっぱりお前らなのね、トンチンカン組」
「へへ、こんなところで屯ってるテメェらの馬鹿さ加減を……待て、今なんてつった?」
「だからトン・チン・カン」
「あぁ、確かに3人組だしね。ところで名前は左から順に?」
「そ、大きさ順にもなっててわかりやすいだろ〜」
乙骨が的を得ていると納得する姿にそうだろうそうだろうとでも言いたげな顔で頷くスバル。2人からするとほのぼのとした会話だが、話題に挙げられた側からするとそうはいかなかったらしい。
「おい、テメェら状況わかってんのか?」
「分かってないからあの反応なんだろ。教えてやったらいいんじゃないか?」
そう言うと彼らはナイフを取り出した。苛立ちを顔に宿したおまけ付きで。常の乙骨であればまず慌てふためく状況だが、先ほどまでの出来事もあってかなり肝が座っていた。そのため3人を無視してさて、ここからどうしたものかと思案する。挙げられる案はいくつかある。
まず一つ目は一回目のように偽サテラが助けてくれるまで堪える。これに関してはあまり期待していない。そもそもこんな路地裏で人に助けられたこと自体がかなりの確率だし、再現しようにも仕舞えば先ほど自身が泣き喚いてしまい時間を削られたこともあって通り過ぎた可能性が高い。
二つ目は2人で迎撃するである。これに関しても不可能に近い。相手が獲物を持っていると言うのもあるが、それ以上にスバルが先ほど心臓を握り締められて少し疲弊している。死体や血を見て多少ハイになったところでナイフ以外にも鉈を持ってる相手では殺されかける可能性が高い。そうなれば先程の出来事で昂っていることもあり、BAD ENDルート〈【彼女】の手によって乙骨除いてみんな仲良く壁のシミ〉が起きかねない。
となると、
「これしかないかなぁ…」
「あ゛?」
乙骨がそう呟く。それに対して無視されているとでも思ったのか、優位のはずのトンチンカンの表情は険悪に染まり始める。それら全てを無視してスバルと乙骨は顔を見合わせる。どうやら答えは同じらしい。これこそ身柄を剥がされることなく、怪我をすることもなく、手を汚すこともない。
「「衛兵さーーーーーーーーん!!!」」
他人任せである。予備動作なしの救命信号に、虚を突かれたトンチンカンが思わず飛び上がる。路地裏の静寂を打ち砕き、大通りの喧騒にまで間違いなく割り込んだろう声量。え?羞恥心?あなたの前には紙屑に等しいので容易く無視できますがなにか?
「誰かーーーー! 男の人呼んでーーーーーーーー!!!」
「てめ……っ。ふざけんなよ!? ここで普通、いきなり大声出すか!?」
「状況的にこっちの命令きかなきゃ痛い目見る流れだろうが! 要求も聞かずにこれとかやんねーぞ、普通は!」
「そんな普通があってたまるか!?そんなことをせずに普通に働けよ!そうすれば僕らも傷付かず、君たちも金を得られて全員幸せだろう!?衛兵さーーーん!!この人達、刃物持ってますぅ!!」
「おいバカやめろ!?」
地面を踏み鳴らし、逆上するトンチンカン目掛けて上から怒鳴りつけ、乙骨は再度助けを呼ぶ。ヤケクソに見えるがその実、割と確率の高い賭けだったりする。前回の世界線でサテラとスバルの3人で街中を歩いている最中に騎士と思しき人間や憲兵などを見かけることは多々あったのだ。あとはこの路地裏から響き渡る声が届けば良いのだが、
「やっぱ、失敗か……」
「おどかしやがって……ほんの少しばかりだが、ビビっちまったじゃねえか」
「ほんの少しだけな!」
「ほんのちょびっとだけだけどな!」
現実はそう上手くいないものだった。息の合った連携で、自分たちの小者ぶりを否定する小者ぶり。初撃に持っていかれたペースを取り戻そうとするかのように、男たちは一度、深呼吸をして気を落ち着かせ、各々が得物を手に握り始める。状況はかなり悪い。刃物を持っているのは時として脅しの常套手段として用いられるらしいが、相手から脅しの道具として用いられる様子はない。それどころか焦らせてこちらを殺しにきかねない。故にこそこの状況は
「菜月さん、下がって」
「乙骨?」
乙骨に決意させるには十分すぎた。困惑するスバルを他所に乙骨は首から下げていた指輪を握りしめて相手を見据える。
「はっ!ヒョロイのが何しようってんでよ!」
相手は2人の中でも一際弱そうな乙骨が出てきたことに嘲笑う。そんな相手だからこそ乙骨は踏み切れる。【彼女】を呼び出すことを。内心で「手加減」を1000回ほど連呼する。そうして
「来い【里「――そこまでだ」
一人の声によって妨げられた。
その声は唐突に、しかし明確に、路地裏のひりつくような緊迫感を切り裂いた。凛とした声色には欠片も躊躇もなく、一切の容赦も含まれていない。全員が示し合わせたかのように一斉に声のした方へと目線を向ける。
そこには剣を腰に履いて佇む男がいた。まず何よりも目を惹くのは、燃え上がる炎のように赤い頭髪。その下には真っ直ぐで、勇猛以外の譬えようがないほどに輝く青い双眸がある。芸術品を思わせる美麗な顔と雰囲気が混ざり合い、この場の空気を制圧していた。
「それ以上、彼等への狼藉は認めない。そこまでだ」
サテラと似たようなことを言いながら悠々とトンチンカンの隣を抜けて、彼らとスバルの間に割って入る。あまりにも堂々とした物言いと態度に固唾を飲んでいるとトンチンカンのうちの一人が顔を青くして反応する。
「燃える赤髪に空色の瞳……それと、鞘に竜爪の刻まれた騎士剣…。お、お前、まさか!ラインハルト……『剣聖』ラインハルトか!?」
「自己紹介の必要はなさそうだ。……もっとも、その二つ名は僕にはまだ重すぎる」
ラインハルトは自嘲げに呟き、しかし眼光を決してゆるめない。そんな様子にスバルも乙骨も慄く。『剣聖』。それは剣や魔法がジャンルの世界において定番と言ってもいい存在そのもの。それも特別な人間にのみ授かるような類の。明らかに序盤に出てきていいような格ではない。目の前に立つラインハルトなる人物は剣聖の名を「重すぎる」と自嘲していたが、3人の反応を見るにどう考えたもの自身を過小評価しているようにしか思えない。
「逃げるのならこの場は見逃す。だが、強硬手段に出るというのなら、相手になる。幸いにも僕が加われば3対3と戦力では互角だ。僕の微力がどれほど彼の救いになるかはわからないが、騎士として抗わせてもらう」
「ふ、ふざけんじゃねぇッ!?」「割りに合うかよ、クソが!」「お、置いていくなよぉ!?」
慌てふためき、獲物を隠す配慮すら忘れてまるで蜘蛛の子を散らすように消えていく3人組。水戸黄門もびっくりな対処を前に二人して呆然としていると、
「お互い無事でよかった。ケガはないかい?」
男たちが完全に消えたのを見計らって、青年が微笑を浮かべて振り返った。瞬間、場を支配していた圧が消え失せる。『敵を圧倒する』を現実でやってのけた事実を前に二人は乾いた笑みが浮かぶ。しかし、このまま何も言わないのはあまりに失礼だと判断し、乙骨は前に出る。
「あの…、本当に助かりました。ありがとうございます」
「いや、あれは数の有利が消えたから過疎の判断だと思うよ。仮に僕がひとりならこうはいかなかった」
「いや、あのビビりようからしたら三対一どころか十対一でも逃げてそうだったけど……なんだ、このイケメン。本気で身も心もイケメンか。俺ルートのフラグが立つわ!」
乙骨の例に対してのあまりの謙虚な返しにスバルは思わず茶々を入れる。ちなみに乙骨もスバルと同意見だ。見れば見るほど神に選ばれたとしか思えない造形の美男子だが、その格好を見るにどうも衛兵という感じではない。剣聖という肩書きがあることを考えれば騎士だったりするのだろうか。まぁ、ひとまずそれは置いといてだ。
「乙骨憂太っていいます。改めてお礼を言わせてください」
「お、俺はナツキスバルだ。スバルって呼んでくれ」
「そんなに礼を言わなくてもいい、困ってる人がいたら助けるのは当たり前なのだから。また会えることを楽しみにしてるよ、スバルにユウタ」
軽く自己紹介を済ませるとこれまた百点満点を渡したくなるような返答をしてくる。この礼節に語彙力とそれらを組み合わせて至る答えというとやはり騎士だったりするのだろうか。それならばやれることもある。
「あの!重ね重ね申し訳ないんですけど。お願いを聞いていただけませんか!?」
「もう少し軽く話すといい。それで、お願いってなんだい?」
「スバル」
「え?」
「ほら!例の!」
「…………ああ!!そゆことね!なぁ、ラインハルト。このあたりで白いローブ着た銀髪の女の子って見てないか!?」
乙骨は思い切ってラインハルトにお願いをしてみると内容次第といった様子だが、聞き届けてくれるらしい。懐の深さに感謝しつつ、乙骨はスバルに目配せをして指示をする。一瞬、首を傾げて理解出来ていないスバルにヤキモキしつつも例のと告げると思い出したようにサテラの特徴を言い始める。
色々と短期間ではあるが散歩してわかったことなのだが、サテラの格好はかなり目立つ類のものだった。 美しい透き通るような銀髪は黒髪同様に見ることはなかった。それに鷹っぽい刺繍の入ったローブは絹を思わせるほど滑らか。おまけに徽章に宝石が組み込まれていたことや態度を考えれば自ずと高位の身分であるとこは想像に難くない。と、なれば餅は餅屋に偉い人には偉い人を用いるのがセオリーだ。
「白いローブに、銀髪……」
「超絶美少女を付け加えればなお完璧!猫型精霊も連れてるからわかりやすいんだけど、心当たりとかってない?」
一瞬、ラインハルトの目が険しくなる。それに対して乙骨は不思議に思うが話は続いていく。
「心当たりがあったら、どうするんだい?」
「伝言を頼む!内容は『盗品蔵には近づくな』で!いけるか!?」
「…会えるか分からないけど承知したよ、じゃあね」
スバルの頼みを聞いたラインハルトはすぐに笑顔に戻るとその場から立ち去る。それを見届けた二人は互いに向き合うとハイタッチをする。
「菜月さん。僕の意図をよくわかったね」
「へへへ、まぁ、察しの良さは天下一品なんだね!あ、それはそうとスバルでいいぞ?」
「ありがとう。そうするよ」
2人の作戦は単純明快。盗品蔵に来たら死んでしまうのであればそれよりも前に先んじて行動して徽章を取り返して届けるといったものだ。前回のループで盗品蔵で盗んだものを売り捌いているのは把握済み。仮に値が張るものだったとしても今の2人の手には魔法に一切頼らない、この世界におけるオーバーテクノロジーである携帯が在る。
心臓の一件のついでに共有していたのだが、携帯の価値に関しても前回のループで把握済みだったりする。商人直々に太鼓判を押されるほどの高値がつくものだった。仮に相手側が渡すことをごねたとしても最低でも5倍以上の値段を提示できれば交渉前に徽章を取り返せる可能性も十分高い。
「取り敢えずはまぁ、ちゃっちゃと向かう!」
「それに限るね」
「あ!そうだ!さっきの有耶無耶になったけどさぁ!教えてくれよさっきのやつ!」
「長くなるけどそれでも?」
「いいぜ!仮想で人との会話が満点だった俺の聞きテクをご照覧あれ!」
二人は少し早足になりながらも確かな足取りで貧民街へと向かう。 ――その背中を青い双眸が、値踏みするように見ていることには気付かずに。
◇