南雲雅?俺じゃん。   作:ざったなっつ

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 今話で葛城と一之瀬が登場すると言いましたね。あれは嘘だ!
 すみませんっ、一之瀬だけはチラッと登場しておりますっm(__)m




14話「暴力事件その2/鬼龍院」

 

 

 進行役を任された()()()放課後。

 仕事を完璧にやり遂げた俺は、満足げな表情で堀北会長の締めの言葉を聞いていた。

 

「では話し合いは終わりだ。これで審議を終わりにさせて貰おう」

 

 堀北会長が原作と同じセリフを言い放ち、特に何事もなく審議は終了。本来の流れのまま終えることができた。

 

 昨日の放課後に行った1回目の審議では、生徒会室に入ってきた綾小路にギョッとした表情で驚かれたり、茶柱先生に「まさかこの規模の揉め事に生徒会長と生徒会副会長が足を運ぶとはな」とか言われたりしたけど、特に大きな問題もなくその日は終了。

 そしてつい先ほどまで行われていた2回目の審議では、原作の流れ通り石崎たちが訴えを取り下げたことで審議自体がなかったことになり、即座に終了した。

 微かな記憶を頼りにしながら原作の橘先輩とほぼ同じように立ち回ったため、ストーリーに大きな変化はない。

 

 進行役を任された時はどうなることかと思ったけど、終わってみればなんてことはなかった。いやぁ、本当に良くやった俺!

 ストーリーが変わってしまうことは避けられないと理解してはいるものの、やはり変わらないに越したことはないからな。少し安心した。

 

「お前たちは先に出ていろ」

 

 心の中で自分を褒めていると、茶柱先生が堀北会長と俺に退室を促した。

 堀北妹は呼び止められていたため、これから2人で綾小路に関する内緒話をするのだろう。これも原作通りの流れだ。

 

「それでは、お先に失礼します」

 

 そう言って堀北妹と茶柱先生を残し、堀北会長と一緒に生徒会室から退室する。

 

 あっ、そういえばまだイベントは終わってなかった。

 この後はたしか、生徒会室の前にいた綾小路に堀北会長が話しかけ、生徒会へ勧誘する流れのはずだ。

 ただ、昨日聞いた時点では堀北会長に綾小路を勧誘する意思はなかったため、これから起こる会話の流れは原作と異なる可能性が高い。

 果たしてどうなるのか……そう思いながら生徒会室の扉を閉め、振り向くと——

 

「やっと出てきたか。待っていたぞ南雲」

 

——少し疲れた顔をしている綾小路の横に、満面の笑みを浮かべる鬼龍院がいた。

 

 なんでぇ?

 

 

 

 

——Side:鬼龍院楓花——

 

 

 今日も勉強に励む(南雲を観察する)べく、私は図書室で行われている合同勉強会に足を運んでいた。しかし——

 

「む?南雲がいないな」

 

——いつも勉強会を取り仕切っている南雲の姿が見当たらない。代わりに勉強会を仕切っているのは桐山のようだ。

 

 生徒会の用事で南雲が勉強会に来れないというのは珍しいことではないが、今日は南雲が取り仕切ると事前に本人から聞いていた。

 という事は、急な用事が入ったのか。運が悪いな。

 

「桐山、今日は南雲はいないのか?」

「1年の間でちょっとした揉め事が起こってな。その審議を堀北会長と一緒に行なっているはずだ。それが終われば勉強会に来るだろう。それよりも、手が空いているならこのプリントを配るのを手伝っ——」

「揉め事の審議か……」

 

 南雲が審議を任される事は珍しくない。だが、1年のちょっとした揉め事に堀北学と南雲が揃って参加しているという状況は、違和感(面白そうな雰囲気)しかない。是非とも詳細を知りたいものだ。

 

 そう考えた私は何かを訴えてくる桐山を無視し、他学年の事情に詳しい友人の元へ歩みを進めた。

 

「なずな、ちょっといいか?」

「楓花ちゃん。どうしたの?」

「実は少し聞きたいことがあってな。1年で起こっている揉め事について何か知っていないだろうか?」

「揉め事って……もしかして、1年CクラスとDクラスの暴力事件のことかな」

「詳しく聞かせてくれ」

「えっと、事件が起きたのは先週らしいんだけど——」

 

 なずなは知っている限りの情報を快く教えてくれた。

 すでに交流のある1年の生徒たちから仕入れた情報なのだろう。相変わらずのコミュニケーション能力だ。私には真似出来ない芸当だな。

 

「よかったら、もっと詳しく知ってる1年の子紹介する?」

「いいのか?」

「その子も私と同じで他学年の生徒とも交流したがってるから、大丈夫だと思う。むしろ喜んでくれるんじゃないかな」

 

 なずなはそう言うと、詳細を知るという1年の女子生徒にすぐ連絡を入れてくれた。

 その女子生徒もまだ校舎内に残っていたようで、今から直接会って揉め事の詳細を説明してくれるらしい。

 

「玄関近くの自販機の前で待ち合わせしませんか?だってさ。楓花ちゃんはそれでもいい?」

「構わない。よろしく頼む」

 

 なずなの手腕のお陰でスムーズに約束を取り付けることができた。話が早くて助かる。

 

「感謝する。今度パフェでも奢ろう」

「やったー!」

「鬼龍院。雑談が終わって手が空いたなら——」

 

 なずなにそう言い残した私は、仏頂面でこちらを睨んでいる桐山を無視し、足早に待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

「ほう、君がなずなの言っていた女子生徒か」

 

 待ち合わせ場所に着くと、ストロベリーブロンドの長髪を靡かせる女子生徒と桐山に似た雰囲気の男子生徒が待っていた。

 2人いるということはすでになずなから聞いていたため、特に驚きはない。

 

「はじめまして、1年Bクラスの一之瀬帆波です」

「同じく、1年Bクラスの神崎隆二です」

「2年Bクラスの鬼龍院楓花だ。早速で悪いんだが、今回1年の間で起こった揉め事について聞かせてほしい」

 

 挨拶もそこそこに、手間賃として2人に自販機の飲み物を奢りながら玄関先で揉め事の詳細を聞く。

 最初の印象通り、話し上手な一之瀬のほうが時系列も交えて詳細を説明してくれた。

 

「——というわけでして、今その審議が生徒会室で行われています」

「なるほど、証言の信憑性にもよるだろうが、明らかに不利な戦いだな」

 

 私は詳しく知らないが、入学当初に立花が似たような策を行なっていたと耳にしたことがある。その時は南雲が見事なカウンターを決めて逆に弱みを握ったらしいが、どの学年もやることは変わらないようだな。

 

 それにしても、やはり妙だ。

 

 最悪の場合は退学者が出る可能性もあるが、所詮はその程度の問題。この学校では珍しい事ではない。しかし、その程度の審議に堀北学(生徒会長)南雲(副会長)が揃って出ている事は珍しい。なんらかの——面白い——理由があるはずだ。

 

「あっ、やっほ。随分遅かったね」

 

 考えを整理していると、一之瀬が誰かを見つけて声を掛けた。その方向を見ると、メガネの女子生徒を連れた男子生徒が立っている。

 一之瀬と同じ一年の生徒だろうか?

 そう思うと同時に、その男子生徒の纏う雰囲気に強烈な既視感を覚えた。

 

「待っててくれたのか。ところで、そちらの人は?」

 

 やる気があるのかないのか分からない目。気怠げな表情のせいで冴えないように見える顔立ち。

 見れば見るほど、入学当初に見た南雲と雰囲気が似ている。

 

「私は2年Bクラスの鬼龍院楓花だ」

「先輩でしたか。オレは1年Dクラスの綾小路清隆です」

 

 まだ確定ではないが、この生徒が面白い人物である可能性は高い。私の直感もそう囁いている。

 ここは是非とも、彼と交流を深めておくべきだろう——

 

 

 

 

「——ということがあってな。翌日に審議が持ち越されると知って、私も揉め事の解決に協力していたんだ。中々面白い経験をさせてもらった」

「マジか……」

 

 原作通りの流れで終わったかに思えた今回の審議だったが、その裏では鬼龍院が大暴れしていたらしい。

 鬼龍院から聞いた話を要約すると、昨日の放課後から綾小路に付き纏い、石崎たちを騙す大立ち回りに参加し、佐倉を襲おうとしたストーカーを蹴り倒して警察に突き出したそうだ。

 まさか、原作で綾小路と一之瀬が行っていた役割を悉く奪い去っていたとは……鬼龍院、おそろしい子っ。

 

「最近は南雲が構ってくれなくて残念に思っていたが、お陰で面白い後輩を見つけることができた。感謝するぞ」

 

 鬼龍院はそう言い残し、「はっはっは」と高笑いを決めながら去って行った。嵐みたいなやつだ。

 っていうか俺のお陰みたいなこと言ってたけど、今回の鬼龍院の暴走って俺のせいなのか?原作にない流れな時点で間接的に俺のせいとも言えるけど……。ん〜、納得いかない。

 

「南雲先輩のご友人なんですね」

 

 そんなことを考えていると、綾小路が俺を見ながら言葉をかけてきた。

 

「あ、うん。よく付き纏われる仲だ」

「そうですか……」

 

 ポーカーフェイス過ぎてよくわからないが、綾小路が不機嫌な表情をしている気がする。なんでだろ……?

 あっ!もしかして、俺が鬼龍院をけしかけたと思ってないか!?

 

「あy——」

「ところで綾小路。これがお前が言った佐倉が嘘つきではないと証明する方法か」

 

 誤解を解くために口を開こうとした瞬間。堀北会長のターンが始まってしまった。

 原作通りではないが、それに近い言葉で堀北会長が問い掛け、綾小路も原作に近い言葉で返している。

 こ、これでは口を挟めないっ……!

 

「行くぞ南雲」

「は、はいっ」

 

 結局、綾小路の誤解を解く前にその場を去ることになってしまった。

 まぁ、誤解されてると決まったわけじゃないし、またどこかで話す機会はあるだろう。

 

 ちなみに、昨日言っていた通り堀北会長は綾小路を生徒会に誘おうとはしなかった。やはり、俺が本来の南雲ほど暴れていないのが原因だろう。

 まぁ、誘ったところで生徒会には入ってくれないから、結果は変わらないけどね。

 

「南雲。綾小路を見てどう思った」

 

 帰る途中、堀北会長がそう問い掛けてきた。

 そういえば、綾小路を見た感想を聞きたいっていう理由で進行役を任されたんだった。色々あり過ぎて忘れてた……。

 

「えっと、普通の生徒だな〜と思いました」

 

 今の綾小路は必要以上に注目されたくないと思っているはずなので、とりあえずそう返しておく。

 「絶対実力隠してますよ。きっと白い施設の出身とかですよ!」と言って後から綾小路に報復とかされたらたまったもんじゃないからな。

 

「ふっ、そうか」

 

 俺の子供のような感想に呆れたのか、堀北会長にクスリと笑われてしまった。

 

 






〜原作との相違点〜

・桐山生叶
 南雲と競うために鬼龍院が特別試験等でたま〜に本気を出しているため、鬼龍院のことを嫌ってはいない。

・朝比奈なずな
 他学年の生徒とも積極的に交流し、自発的に情報収集を行なっている。一之瀬や櫛田といったコミュ力お化けとはすでに友達。

・鬼龍院楓花
 なずなとはプライベートでもそれなりに遊ぶ仲。なずなの影響で交際費や貸し借りの重要性を知り、お世話になった相手にはパフェや自販機のジュースを奢るようになった。

・綾小路清隆
 過去問の一件や今回の鬼龍院の一件で南雲が自分を試していると勘違いしている。南雲への敵愾心はないが、絶賛警戒中。

・堀北学
 南雲の「普通の生徒だな〜と思いました」という感想を聞き、安心して笑った(詳しい心情はどこかで行う予定のSide:堀北学で語ります……タブン)。
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