なぜこんな事になっているのか分かりませんが、嬉しいミステリーなので急いで書き上げました!
お読みくださり本当にありがとうございますm(__)m!
それでは、本編をどうぞっ(^^)/
葛城と一之瀬が緊張していた理由は、結局のところ俺が原因だったらしい。
星之宮先生から俺の今までの功績を聞き、驚きのあまり萎縮してしまったそうだ。「クラスのみんなのおかげだからっ」と正直に伝えたけど、謙遜してると思われただけで態度は変わらなかった。悲しい……。
でも2人に嫌われたわけではないため、好感度を上げればまた気さくに話してくれるようになるはずだ。
そう信じつつ、今日も今日とて根回しに勤しむ。
クラスのみんなと煮詰めに煮詰めた『同学年のほぼ全員救済計画』が満足いく形になっため、本日から本格的に始動するつもりだ。
「おっ、いたいた」
休み時間に教室から離れた場所にある自販機へ行くと、Dクラスの
「計画は順調そうだな」
目を細めながら声をかけると、安在が悪い顔をしながら口を開く。
「南雲派閥じゃない残りのクラスメイトはほとんどが日和見主義だ。南雲派閥の勢いが強いとわかれば、すぐ味方になってくれるだろう」
「ふっ……」
さすがは安在だ。その手腕もさることながら、とてもノリが良い。
「またやってる……」
不敵な笑みを浮かべながら悪役ムーブを楽しむ俺と安在を見て、山中は少し呆れた表情となっている。うん、いつもの流れだな。
何を隠そう目の前にいるこの2人——安在くんと山中さん——は、俺の計画に全面協力してくれているDクラスの内通者である。安在は声優を、山中は小説家を目指して日々頑張っており、俺もその夢の実現に全力で協力する代わりにDクラスを掻き乱す手伝いをしてもらっているのだ。
安在にはその演技力を活かして元武藤派閥を焚き付ける役をお願いしており、説得力のある文章を作れる山中には南雲派閥への勧誘係をお願いしている。
「いつものやり取りはそのくらいにして、はやく話を始めようよ。休み時間が終わっちゃう」
「「ご、ごめん」」
もう少し密会ごっこを楽しみたかったけど、山中の言う通りなので本題に移る。
「今日2人を呼び出した理由は、Dクラスの目線でこの契約を見た時の感想を聞きたかったからだ」
そう言いながら、2人の端末にこれからDクラスと結ぼうと思っている契約内容を送った。
「す、凄い契約内容だなこれ……」
「うわぁ、とんでもないこと考えるね……」
中身を読んだ安在と山中の頬を引き攣らせた契約書。
その内容は簡潔に説明すると以下の通りだ。
・この契約が継続する期間は毎月クラスの人数×1万PPtを南雲雅に譲渡するという契約は停止される。
・南雲雅はDクラスの生徒全員に一人あたり2万PPtを毎月支給する。
・Dクラスの生徒はクラスポイントの減点が少なくなるよう、可能な限り生活態度に気をつける。
・Dクラスの生徒は特別試験や中間・期末試験に関わる南雲雅の指示には可能な限り従う。
要は「毎月全員に2万プライベートポイントあげるから、俺の指示に従ってくれ」というシンプルな内容の契約だ。
ただ、現在Dクラスに支給されているプライベートポイントは一人あたり2万4500PPt。そのうち1万PPtは俺に譲渡されるため、手元に残るのは1万4500PPt。ところが、上記の契約書にサインした場合。俺への譲渡契約が停止した上で追加分が貰えるため、合計で4万5500PPtが毎月手元に残るというとってもお得な内容となっている。
俺の指示に従う時点でAクラスへの昇格は諦めてもらう事になるが、BとCクラスより多くのプライベートポイントが手元に残るという素晴らしい契約だ。一見スルトネ……。
「どうだろう?パッと見の感想を聞きたいんだけど……」
「ん〜。立花くんがどう思うかは分からないけど、うちのクラスはほぼ全員がAクラスへの昇格を諦めちゃってるから、この契約を知ったらすぐ飛びついてくると思うよ」
「俺も同じ感想だな。南雲派閥はこの契約書がなくても南雲の指示に従うだろうから、一見するとメリットしかない契約に見える」
おお、山中と安在のお墨付きがもらえた。この様子ならDクラスのみんなに契約してもらえる可能性は高そうだな。
「でも、ちょっと気になる点はあるかな」
「なんだ?」
「これって、退学者の選定も南雲くんが行うって事?」
山中が『南雲雅の指示には可能な限り従う。』という一文を指差しながら問いかけてきた。
確かに、その疑問は抱いて当然だな。
「その点に口出しするつもりは一切ない。むしろ、状況次第ではDクラスの退学者を救うことも考えてる」
「えっ!それって、2000万プライベートポイントを融通してくれるってこと?」
「そういうことだ。でも……」
俺は計画の最終段階でDクラスがどういう状況になるかを2人に説明した。
まだ確定ではないけど、計画の後半ではDクラスのクラスポイントがゼロになっている可能性が高いこと。
それに伴って、特別試験における退学者もDクラスから出る可能性が高くなること。
クラスポイントはゼロなため、仮にAクラスが2000万プライベートポイントを融通したとしても退学の取り消しができなくなることなどだ。
退学の取り消しにクラスポイントが不要な特別試験も原作では行われていたため、そういう試験なら退学者は救えるけど……まだ不確定な要素なため、その可能性はあえて説明していない。
「なんでDクラスのクラスポイントがゼロになるんだ?」
「それは……」
「特別試験におけるクラスポイントの喪失をDクラスに全部請け負わせるためでしょ。違う?」
「だ、大正解です」
「えっ?どういうこと?」
日々物語を創作しているだけあって、山中は俺の思い描いているストーリーをすぐに察したらしい。ただ、安在はまだ理由がわかっていないため、例題を交えながら詳しく説明する。
「クラスポイントがマイナスにならないルールを逆手にとって、俺たちの学年が失うクラスポイントをできる限り少なくする。それが、俺が最終的に目指している形なんだ。例えば——」
——2年の最初に行われた中間試験。あの時は敗北クラスから勝利クラスへ100cpが移動するというルールだったが、0cpのクラスがそのマイナスを請け負えば——実際は表記が0なだけでマイナス値は加算されるが——学年全体のクラスポイントの総量は増えることになる。
Dクラスには悪いが、その役割を担ってもらうつもりだと説明した。
「はへ〜、南雲って相変わらず凄いこと考えるな。あっ!だから『可能な限り生活態度に気をつける』っていう一文が契約にあるのか」
「クラスポイントがゼロになったら、もう何をしても下がらないからってみんな好き放題しそうだもんね」
「そういうことです」
納得した表情となった安在と山中を見ながら再度問いかける。
「もう一度聞きたいんだけど、ここまでの説明を聞いた後にこの契約内容を見た時。改めて2人はどう思った?」
メリットしかないように見えると言ってくれた契約内容。しかし、クラスポイントがゼロになるという特大のデメリットを知った上で2人がどう思うのか、それが今日聞きたかった本当の感想だ。
「まぁ、問題ないだろうな」
「うん、絶対大丈夫だね」
「ふぇっ、なんで……?」
まさかの返答に思わず変な声が出てしまったが、山中が理由を説明し始めたので静かに耳を傾ける。
「まず、クラスポイントがゼロになったとしても毎月プライベートポイントを2万も支給してくれるなら私たちにはメリットしかないの。だって、今現在手元に残るプライベートポイントは毎月1万4500だからね。南雲くんもそれを見越して2万ポイントの支給っていう条件にしたんでしょ?」
「その通りです」
察しの良い山中はさらに言葉を続ける。
「退学の取り消しができなくなる件についてだけど、そもそもDクラスにはそれを行うだけのプライベートポイントがないのよね。っていうか、今現在のクラスポイントは245しかないから、そもそも退学取り消しに必要なクラスポイントも足りてないのよ」
「仮にクラスポイントが300以上あってプライベートポイントを2000万融通してもらえたとしても、退学の取り消しなんて誰も許さないだろうな。桐山ほど人望が厚いやつって、うちのクラスにはいないから」
山中と安在は苦笑しながらそう締め括った。
結構な反発があるだろうと覚悟してたけど、2人の反応的に問題なくDクラスはこの契約を受け入れてくれるかも知れない。これは嬉しい誤算だ。
次の特別試験までにDクラスを懐柔できる可能性も出てきた。
あと今の安在の言葉的に、立花に万が一のことがあっても退学を取り消してくれない可能性が高いらしい。ドンマイ立花。
「そしたら、俺がその契約を結びたがってるっていう噂をDクラス内に流してもらってもいいか?」
「任せとけ」
「あっ、クラスポイントが最終的にゼロになるかもっていう話も一緒に流しとく?」
「できればそれもお願い」
契約の時はDクラスへ乗り込んで直接説明するつもりだけど、先に知っていたほうが話がスムーズに進むだろうからな。
「とりあえずよろしく!」
「おっけー」
「りょーかい」
2人とはそこで別れ、密会がバレないよう別ルートからこそこそと自分の教室へ戻ったのだった。
◇
そんなこんなで気が付けば7月某日。
期末試験はいつも通り退学者ゼロ。安在と山中のお陰でDクラスへの根回しは順調。密かに練習していた一発芸のお陰で葛城と一之瀬の好感度も上々。あとは夏休みを待つだけだ!——と思いながらダラダラ過ごしていると、『生徒会室に至急来てくれ』というメッセージが堀北会長から届いた。
「なんだろ?」
説教かな?でも、怒らせるようなことは何もしてない……と思う。たぶん。
漫研の監査に行った時に貰った堀北会長×桐山のBL本を隠し持っているのがバレたり、葛城と一之瀬の好感度を稼ぐために堀北会長のモノマネを披露したのがバレたりしたことはあるけど、あの時は呆れた顔をされただけで怒ってはいなかったはずだ。
ということは、説教の可能性は低い……と思う。たぶん。
「し、失礼しま〜す」
「にゃっ!どうもです南雲副会長っ」
「南雲くん。こんにちは」
恐る恐る生徒会室に入ると、堀北会長だけでなく一之瀬と橘先輩の姿もあった。
堀北会長と橘先輩はハッピーセットなので違和感はないけど、そこに一之瀬と俺が呼ばれる理由はよくわからない。どういう面子だコレ?
「来たか。とりあえず座ってくれ」
そう促され、堀北会長と橘先輩の対面に座っていた一之瀬の隣に腰を下ろす。
「先ほど学校側から要請があってな。来週、生徒会主催で夏祭りを開催する事が決まった」
「えっ、来週ですか?」
俺だけでなく一之瀬も驚いてる。
お祭りの規模にもよるだろうけど、生徒会のメンバーだけで今から準備を行うのはさすがに厳しいと思ったのだろう。俺も同じ考えだ。
楽しそうだから是非ともやってみたいけど、せめてもう少し猶予が欲しい。
「お前たちが不安に思う必要はない」
「どういうことですか?」
「名目上は生徒会が主催という事になってはいるが、準備も実行も3年の生徒で行う。少しは手を借りるかも知れないがな」
なるほど……ん?
なんかここまでの説明、ちょっとおかしい気がする。いつもの堀北会長の理路整然とした説明と違って何かを隠している感じだ。なんだこの違和感?
「あの、私たち以外の生徒会メンバーがここにいないのはどうしてなんですか?」
俺が小首を傾げていると、一番聞きたかった質問を一之瀬が問いかけてくれた。グッドクエスチョンだ一之瀬。
「各学年から2人ずつ、合計で4人まで助っ人を呼べる事になっていてな。夏祭りの実行は良い経験になるだろうと思い2人に声を掛けた」
「助っ人を呼べる……」
先ほど学校側から要請があったばかりなのに、3年生が実行するとすでに決まっていること。
生徒会主催というのは名目上だけということ。
各学年から助っ人を呼べるという謎ルールがあること。
なんだこの違和感だらけの内y……あっ、わかった。たぶん間違いないだろうけど、念のため橘先輩に聞いてみるか。
「あの〜、橘先輩」
「なんですか南雲くん」
「この
「その通りです。各クラスの売上によって……はっ!なな、南雲くん!一体なんのことでしょう!?」
申し訳ないくらい動揺させてしまったけど、この反応は間違いなさそうだ。
今回の夏祭りは……3年生の特別試験だ。
〜ちょこっと解説〜
・安在くん
原作の2年生編9巻で鬼龍院に踏みつけられるというご褒美をもらった生徒。
声優という夢も口調も性格も全てオリジナル。
・山中さん
本名は山中郁子。原作の2年生編9巻で桐山の策にハマり、鬼龍院を万引き犯にしようとした生徒。
小説家という夢も口調も性格も全てオリジナル。
・夏祭り
よう実のアプリゲーム『ようマジ』で開催された夏祭りイベント。イベントシナリオ内の堀北妹のセリフから、上級生の特別試験である可能性が高い。
今作では3年生の特別試験ということにさせていただきました!