そして誤字脱字報告、本当にありがとうございます!m(__)m
そしてそして、よう実アニメ4期!制作決定しましたね!非常に楽しみです!ヽ(;▽;)ノ
それでは本編をどうぞっ!
常夏の海。広がる青空。澄み切った空気。そよぐ潮風は優しく体を包み込み——というナレーションを綾小路が豪華客船のデッキで行なっている頃。
俺たち2年Aクラスのメンバーは、とあるスパリゾートホテルの大広間でプレゼン用のスライドを作成していた。
「まさか、夏休みにスパリゾートで特別試験なんてね……」
「あるだろうとは思ってたけどな……」
「だよねぇ〜……」
なずなと愚痴をこぼしながらカタカタとキーボードを叩く。
遡ること数時間前。
「昨年は無人島でサバイバル試験を行いましたが、今年の夏休みは有名なスパリゾートで5日間の宿泊です」と真面目先生に言われ、バスに押し込められた所からこの状況は始まった。
「どうせ山奥に連れてかれてサバイバルとかさせられるんだろうな〜」と思いながらバスに揺られていると、バラエティー番組などでも見かける某有名スパリゾートへ到着。割り当てられた部屋も立派なもので、「本当にスパリゾートでゆっくりできるんだ!」と喜んでいると——学生証端末に特別試験の実施を知らせる通知が届いた。
ですよねぇ〜……。
そんな不意打ちで始まった特別試験の名は『プレゼンテーション試験』。
ルールは簡潔に説明すると以下の通りだ。
・各クラスは北海道、東京都、京都、沖縄県の中から1つを選び、その都道府県の魅力をプレゼンテーションする。
・全てのクラスは別々の都道府県を選択する。
・他クラスと同じ都道府県が選択された場合、前回の期末試験の平均点の高いクラスが選択の優先権を得る。
・準備期間は1日。
・プレゼンテーションの持ち時間は30分間。その後、質疑応答が10分間行われる。
・発表はクラスの代表者1名が行う。
・プレゼンテーションの評価者は、2学年の生徒159名と各クラスの担任を除く教職員41名の合計200名。
・評価者は1人1票を持つ。
・全クラスのプレゼンテーション終了後。評価者は最も優秀な発表を行ったクラスに1票を投じる。
・試験後、投じられた票数×2cpが各クラスに与えられる。
要は良いプレゼンをして票(クラスポイント)を稼ぐという直球な特別試験だな。
自クラスの発表にも票を入れられることから、少なくとも80cp(Dクラスは78cp)が確実に手に入るボーナス的な特別試験とも言える。
ちなみに、評価を行う教職員は高育からリモートで各クラスのプレゼンを視聴して評価するそうだ。
「札幌駅周辺のおすすめ飲食店の
「各観光スポットまでの
「おお!それこっちにくれ!表にするわ」
クラスメイトがプレゼン資料の作成に尽力してくれている中、改めて今回の試験について考えを巡らせる。
この試験で他クラスと差をつけるためには教職員41名が持つ票をどう確保するかが重要となってくるが、その票を全て手に入れるのは非常に難しい。彼らはこの場にいないため、根回しが簡単にはできないからだ。
今回の試験の
ちなみに、Aクラスは北海道、Bクラスは沖縄、Cクラスは京都、Dクラスは東京のプレゼンテーションを行う予定だ。
驚くことに全クラスが別々の都道府県を選んだため、特に揉めることもなくスムーズに決まった。
「よ〜し、完成っと!」
色々考えているうちに今回の試験で使うスライドとは
「それじゃあちょっと行ってくるわ。指示した感じで編集よろしく!」
「りょーかい!雅もがんばってね」
「何かあったらすぐ呼べよ〜」
「いってら〜」
作業中のクラスメイトに見送られながら、ノートパソコンを抱えてDクラスが集まっている大広間へと向かった。
「たのも〜」
「あ?誰が来やがっ……南雲っ!」
「やっほー立花。お邪魔しま〜す」
「おいテメェ!勝手に……」
Dクラスが割り当てられた大広間に到着した俺は——立花のブロックをサッと躱して——室内に設置されているスクリーンとプロジェクターを勝手に借り、以前安在たちに感想を求めた例の契約に関する説明準備を開始。
Dクラスのほとんどの生徒が南雲派閥に属しているため、特に大きな妨害を受けることもなく——むしろ準備を手伝ってもらいながら——無事に説明を始めることができた。
立花だけは何度か止めようとしてきたけど、「とりあえず最後まで聞いてくれ。Dクラスにとって悪い話じゃないから」と言うと、渋々ながらも聞く姿勢になってくれた。
なんやかんやで立花はクラス思いだから、Dクラスのためになるならと耳を傾けてくれたのだろう。
その後、以前安在たちに話した計画に加えて「協力してくれればその見返りとして、3年の後半に2000万以上のプライベートポイントをDクラスに配る予定だ」という説明もしたところ、「嘘だろ!?」「絶対無理でしょ」という声が上がったため、現在の南雲銀行の総資産とその推移を説明。
今後の特別試験の内容次第では4000万PPtを配ることも夢ではないと伝えると、全員が快く契約書にサインしてくれた。
「南雲、お前……さっきの話マジでやるつもりなのか?」
「え?もちろん大マジだよ。とりあえずの目標は4000万ポイント配りだな」
「マジかよ……」
立花も最後はどこか
良かった良かった。これで今回の試験から本格的に計画を始められるな!
◇
翌日。
Bクラスの異彩を放つプレゼンで会場が沸いたり、Dクラスの前衛的なプレゼンで会場が騒然となったものの、プレゼンテーション試験は午前のうちに終了。
票の集計も昼過ぎには完了し、結果は以下の通りとなった。
Aクラス:101票
Bクラス:54票
Cクラス:45票
Dクラス:0票
Dクラスの票は全てAクラスに入れてもらったため、79票は確定していたわけだけど……結果はまさかの101票!教職員が持つ41票のうち半数以上を手に入れるという予想以上の結果となった。
確証はなかったけど、今回の試験の
そして、この結果を受けたクラスポイントの推移は以下の通りだ。
——プレゼンテーション試験終了時点のcp——
Aクラス:1477→1679cp
Bクラス:478→586cp
Cクラス:475→565cp
Dクラス:235cp
他クラスとの差をさらに広げ、独走状態を維持できている。うんうん、とっても順調だ。
次はBクラスかCクラスを懐柔する必要があるけど、どのタイミングで仕掛けようか……そう考えていると、桐山が神妙な面持ちで俺のところにやってきた。
あと、その後ろにしれっと鬼龍院がいる。
「南雲、聞きたいことがある。少しいいか?」
「あ、うん。いいよ」
桐山に促されるまま、3人でひと気のない廊下の端まで移動する。
その道中、「鬼龍院と一緒にいるなんて珍しいな」と桐山に聞くと、「あいつは勝手についてきただけだ」と言われたため、鬼龍院はただの野次馬ということが判明した。
「ここでいいな。南雲、AクラスとDクラスは……」
「桐山。出端を挫いて申し訳ないが、こういう場面ではまず飲み物を奢ったりするといいそうだぞ。わざわざ時間を割いてもらっているわけだからな」
「……そうか。たしかにそうだな」
鬼龍院にまさかそんなことを言われると思わなかったのか、桐山が少し驚いた表情になっている。わかりみが深い。
たぶんなずなの影響だろうな。2人で出掛けている姿をたまに見かけるから、その時に人付き合いの技術を色々と教わっているのだろう。
「そこの自販機まで移動しよう。南雲、何か飲みたいものはあるか?」
「それじゃあ麦茶で」
「私も同じものを頼む」
「……」
桐山は納得いかないという顔をしながらも、文句を言わずに鬼龍院の分の麦茶も買ってあげている。優しいなぁ。
「さてと……南雲。AクラスとDクラスはついに契約を結んだようだな」
「うん。昨日結んだよ」
気を取り直した桐山の質問に正直に答える。AクラスとDクラスが手を組んだ事実は試験結果を見ても明らかだからな。
あと、「
「その契約に則って、Dクラスの票をAクラスに入れるよう指示したわけか。それだけでなく、Dクラスのプレゼン内容が酷かったのも南雲の指示だったんだな」
「その通りだ。BクラスとCクラスの票が増えるかも知れないけど、Dクラスだけは確実に0票にしときたかったからな」
「なるほどな……」
Dクラスには39票全てをAクラスに入れてもらっただけでなく、「東京には東京ディ◯ニーランドがありま〜す。以上!」という酷いプレゼンをしてもらうよう指示していた。
その結果。教職員が持つ41票は他クラスに流れる形となり、Dクラスは見事0票を叩き出したわけだ。
そして、「Dクラスだけは確実に0票にしときたかったからな」という俺の言葉を当然のように受け入れているということは、桐山はDクラス0ポイント計画まで把握しているらしい。
ちなみに、鬼龍院はここまでの内容を何も知らなかったようで、麦茶をちびちびと飲みながら感心したような眼差しで俺を見ている。
「わざわざそれが聞きたかったのか?」
「いや、もう1つ聞きたいことがある。むしろそちらが本題だ」
桐山が続けて口を開く。
「今回の試験ではDクラスの票が全て入ったとしても、Aクラスが確実に得られる票は合計で79票だった。だが、結果は101票。Cクラスの全員が自クラスの発表に票を入れたと仮定すれば、教職員が持つ41票のうち22票も獲得したことになる。一体何をしたんだ?」
「ああ、そのことか……」
Bクラスはスライドだけでなく、著作権フリーのBGMやイラストを使った自作動画を作成してプレゼンに臨んでいた。
内容自体に差はなかったと思うけど、プレゼンの面白さで言えばAクラスは圧倒的に負けていた。にも関わらず、Aクラスの方が教職員の票を多く獲得している結果が疑問なのだろう。
「確証はないんだけど……」
そう前置きしながら説明を始める。
「今回の試験には学校側のとある
「ちょっと待ってくれ。試験の意図だと?何だそれは」
やっぱり、桐山は今回の試験の意図に気付いていなかったようだ。プレゼンの内容的にCクラスも気付いていなかったから、仕方ないだろうけどね。そもそもヒントが少なすぎるし。
「普通の高校は2年生になると修学旅行があるだろ?高育で修学旅行があるかは分からないけど……もし今後行われるとしたら、今回プレゼンはその行き先を生徒に選ばせる時の参考にしてもらうために行なったんだと思う。だから、その
他クラスがおすすめの観光スポットや飲食店を調べる中、Aクラスはおすすめスポットの営業時間やそこまでの交通手段も調べていた。そして、修学旅行の平均日数である4日間でも充分に楽しめる旅行プランを複数作成し、プレゼン資料に盛り込んだ。
それらが教職員の関心を惹き、今回の得票数に繋がった可能性が高い。
「そういうことだったのか……」
「最初に言った通り確証はないから、偶然票が偏っただけの可能性もあるけどな」
「いや、俺もその推測は正しいと思う。なぜ学校側の意図に気付けなかったのか、答えを知った今となっては後悔しかない……」
桐山は肩を落としながらそう呟いた。
実を言うと、俺が今回の試験の——本当に存在したかはわからない——意図に気付けたのは原作知識のお陰だったりする。
原作の2年生編5巻で行われた『満場一致試験』。そこで修学旅行の行き先を決める投票が行われていたのを思い出し、「この試験って修学旅行に関係してるんじゃね?」と閃いたのがキッカケだった。
そのため俺の純粋な実力とは言えないんだけど、その理由は説明できない。ごめんね桐山……。
「時間を取らせてすまなかったな」
桐山はそう言うと、少し落ち込んだ様子でBクラスの生徒が集まる場所へ戻って行った。
「桐山……」
「安心しろ南雲。桐山は私が励ましておこう。麦茶の代金分くらいはな」
「麦茶の代金て……」
全然安心できないなぁと思っていると、「また後でな!」と言い残し、鬼龍院も桐山の後を追って行った。
「また後でな?」
どういう意味だろうと小首を傾げつつ、俺もAクラスの生徒が集まる場所へ足を進めた。
〜ちょこっと解説〜
・満場一致試験と修学旅行
原作の2年生編5巻で行われた満場一致試験には『修学旅行に望む旅行先を選択せよ』という問いかけがあり、『北海道』『京都』『沖縄』が選択肢としてありました。
今回のプレゼン試験はそこに『東京』を加えた形でございます。
そして東京ディ◯ニーランドがあるのは千葉。