南雲雅?俺じゃん。   作:ざったなっつ

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後半は本作初の綾小路視点でございます!

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☆21話「3人でカフェ/綾小路」

 

 

 帰還した葛城と一之瀬にもお土産を渡し、生徒会業務もひと段落し、AクラスとDクラスのメンバーで本当にあるか分からない出店形式の特別試験に関する会議を終え……やるべきこと一通り終了!

 

 そんな俺は冷房の効いた自室で久しぶりの自由を謳歌する……つもりだったのだが、珍しい人物からのお誘いを受け、本日はケヤキモールまで足を運んでいた。

 

「南雲先輩、お久しぶりです」

「お久しぶり櫛田さん」

 

 お誘いしてくれた相手は、3年の夏祭り試験の時にしれっと連絡先を交換していた1年Dクラスのアイドル、櫛田桔梗だ。

 

 夏祭り試験の前に顔合わせをした時は、「えっ!南雲先輩って副会長だったんですか!?」と驚かれて世間話をするどころではなくなり、試験中は別の出店を担当していたために言葉を交わす機会を得られず、まともに話したのは過去問の一件が最後というとてもお久しぶりな関係である。

 そして——

 

「お久しぶりです。南雲副会長」

「綾小路くんもお久しぶり」

 

——櫛田の隣には当然のように綾小路もいた。何この状況?

 

 当然ながら、この2人とは休日に遊ぶほど深い関係ではない。

 綾小路とは須藤の暴力事件の際に少し言葉を交わしたのが最後だし、櫛田とは上記の通りだ。

 

「わざわざ来てもらってすみません。迷惑じゃなかったですか?」ススッ

「全然大丈夫だよ。暇してたから」サッ

 

 胸部装甲が当たりそうな距離まで近づいてきた櫛田をサッと躱しながら、笑顔でそう返した。

 櫛田さん、ちょっと距離近くないです?刺激が強すぎるのですが……。

 

「南雲副会長。立ち話もなんですから、カフェにでも行きませんか?」

「あ、うん。そうだね」

 

 綾小路の提案に賛同し、ケヤキモールの中を歩く。

 そうしてたどり着いた場所は——

 

「ここでいいですか?」

「全然オーケー」

 

——原作にたびたび登場する人気カフェ、『パレット』だった。

 まさか、この2人とパレットに来ることができるとは……まるで夢のようだ。もう大満足です。楽しい夏休みをありがとうございました。

 

「あっ。俺が奢るから、2人とも好きなもの頼んでいいよ」

「それは流石に悪いです。南雲副会長を呼んだのはオレたちなんですから」

「そうですよ。むしろ私たちが奢るべきだと思います」

「いや、その……適正価格を提示したつもりだったけど、やっぱりちょっと申し訳なかったかな〜って。過去問」

「「あ〜」」

 

 2人が「そんなことあったな〜」という顔になった。

 冷静に考えると、上級生が後輩から1万5000ポイント巻き上げるって中々酷い絵面だからなぁ……実は結構気にしていた。

 

「だから遠慮なく好きなものを頼んでくれ。俺はまだ飲んでないけど、季節限定のやつとか美味しいらしいよ」

 

 つい先日会った時、「今季のシェイク美味しかったよ〜!」となずなが言っていたからたぶん美味しいと思う。

 

「そういうことなら、遠慮なく」

「ありがとうございます、南雲先輩っ」

 

 綾小路は俺のアドバイスに従って今季限定のスイカシェイクに挑戦し、櫛田は少し遠慮したのかSサイズのアイスカフェオレを頼んだようだ。

 

 この状況に感動し過ぎて今は何を飲んでもちゃんと味わえないだろうから、俺はいつも頼んでるアイスコーヒーにするかな。

 あ、ブレンドでお願いします。

 

「南雲先輩、あそこの席空いてるみたいですよ」

「おっ、ほんとだ。そこに座ろっか」

 

 飲み物を受け取り、櫛田が見つけた席へと移動する途中……無数の好奇の視線が向けられていることに気付いた。

 夏休みなだけあって結構な数の生徒が店内にいるようだ。

 そんな中を1年でトップクラスの人気を誇る櫛田とイケメンランキング5位の綾小路が一緒に歩いていたら、そりゃ目立つわな。

 

 そういえば、葛城や一之瀬と一緒に帰る時も似たような視線を感じる気がする。

 みんな人気なんだなぁ。

 

「う〜む、落ち着かない……」

「同感です」

 

 ポーカーフェイス過ぎてよく分からないけど、綾小路も視線を感じているためか少し居心地が悪いようだ。

 加えて、スイカシェイクが予想以上のボリュームだったため、これを飲み切らないと帰れないという事実に絶望した表情となっている。

 おすすめしてごめんね……。

 

「それで、聞きたいことって何かな?」

 

 2人とのカフェタイムをゆっくり楽しみたいところだけど、居心地ちょいワル空間なのですぐ本題に入ることにした。

 

「南雲先輩に聞きたいのは、葛城くんのことについてなんです」

「えっ、葛城のこと?」

「はい。実は……」

 

 櫛田の話を要約すると、つい昨日、葛城が誰かへのプレゼントを買う様子をクラスの男子たちが目撃したそうで、その相手が誰なのか知りたいとのことだった。

 昨晩綾小路の部屋で櫛田たちが話し合った結果。俺に聞けばわかるだろうという結論に至り、今日呼び出されたらしい。

 

 どうして俺に聞く流れになったのかは本当に謎だけど……それはそれとして、今の櫛田の説明を聞いてやっと思い出した。

 これ、原作の1年生編4.5巻にあった葛城の双子の妹の回だ!

 

 たしか、葛城が病弱な妹のために誕生日プレゼントを送ろうとするのだが、堀北会長に頼むも断られ、泣く泣く断念……。するかと思いきや、綾小路の鶴の一声でリスクを負ってでも妹にプレゼントを送ることを決意。

 最終的に、バスケの大会で校外に出る予定の須藤にお願いして、無事にプレゼントを送ってもらっていた。

 

 そんなことを思い出しつつ、櫛田の話に再び耳を傾ける。

 

「他人のプライベートを詮索するのは良くないって私は止めたんですけど、みんながどうしても気になるからって……」

「!」

 

 櫛田の言葉を聞いた綾小路がぎょっとした表情となっている。

 

 大丈夫、分かってるよ。

 櫛田もプレゼントを渡す相手が気になってるのに、今の発言で急に梯子を外してきたんでしょ?しかも、綾小路はそこまで気になってないのに、ここにいない池と山内と須藤の命令で仕方なく調査させられてるんでしょ?

 前世で読んでたからちゃんと知ってますよ。

 

 だがしかし、それは俺が知らないはずの情報なので、ここは櫛田に話を合わせる。

 綾小路、ごめんね……。

 

「まず櫛田さんが言った通り、他人のプライベートを詮索するのは良くないと思う。どうしても気になるなら、葛城本人に聞くべきだ」

「やっぱりそうですよねっ」

「!」

 

 櫛田の言葉に綾小路が再びぎょっとしているが、気にせず話を続ける。

 

「そもそも、葛城が誰にプレゼントを渡そうとしているのかは俺も知らないんだ。力になれなくてごめんね」

「いえ、いいんです。こちらこそ、南雲先輩に無理を言ってしまってすみません」

 

 本当は原作知識で全部知ってるけど、それは本来なら俺が知らないはずの情報だ。

 綾小路たちにこの情報を伝えるとどんな不都合が発生するか分からないため、安易に伝えるのは避けるべきだろう。

 

「どうしても気になるなら、俺が直接連絡して聞いてみようか?内容次第では聞いた情報を2人に伝える許可も取れると思うけど……」

「それなら……」

「それはさすがに悪いですよ。これ以上南雲先輩に迷惑は掛けられません」

 

 綾小路がまたもやぎょっとしている。

 今、綾小路は俺の提案に乗ろうとしていた気がするけど……う〜む、櫛田は気にせず話を続けようとしてるから、聞き間違いかな?

 

「実は、他にも南雲先輩に聞きたいことがあるんです」

「他にも?」

 

 櫛田が他にも聞きたいことというのは、勉強のコツやらおすすめのお店やら、当たり障りのない内容ばかりだった。

 何か企んでいるのかと一瞬疑ってしまったけど、この2人とお茶ができている時点で凄く楽しいため、全部の質問に正直に答える。騙してくれても一向に構わんよ。

 

「綾小路くんは普段は自炊?」

「そうですね。節約になるので基本は自分で作ってます。南雲先輩はどうされてるんですか?」

「俺も基本自炊だよ。最近はヨーグルト作りにもハマってる」

 

 スイカシェイクと格闘している綾小路にも時折話を振りながら、全員の飲み物がなくなるまで小一時間ほど雑談を楽しんだ。

 いやぁ、最高の休日だった。

 

「あっ、そういえば……」

 

 解散となる直前、この後の原作の流れを思い出した。

 

 たしか、綾小路が池たちと合流したあと、紆余曲折あって葛城の誕生日を祝おうという話になる。そして、櫛田に呼び出された葛城が訳も分からず誕生日を祝われるという謎イベントが発生するはずだ。

 原作通りならイベント発生日は明日のはずだけど、その日は生徒会で力仕事があるため、葛城を呼び出されるのは非常に困る。

 

 俺とお茶している時点で原作の流れが変わってるから、そのイベントが発生するとは思えないけど……念のため一言言っておくか。

 

「もしもの話なんだけど、『葛城は自分のためにプレゼントを買ったんだ』って誰かが言い出して、『あいつに誕生日プレゼントを用意してやるんだよ』みたいな流れになっても、それは見当違いの考えだからやめておいた方がいいよ」

「プレゼントを用意、ですか?」

「あははっ、南雲先輩って面白いですね」

 

 2人に不思議な顔をされてしまったけど、原作だとそうなるんすよ……。

 そう思いつつも、その場は無事にお開きとなった。

 

 

 

 

——Side:綾小路清隆——

 

 

「えっ!副会長にわざわざ葛城のこと聞いてきたのか!?」

「っていうか桔梗ちゃんも一緒だったのかよ!言ってくれれば俺が付いて行ったのに!」

 

 カフェの後。合流した山内と池に南雲副会長から話を聞いたことを伝えると、これ以上ないほど驚かれてしまった。

 

 それもそのはずで、池たちの無茶振りによってオレが葛城の調査を行うことに決まってしまった昨日の夜——

 

『綾小路くん、明日時間ある?葛城くんのことを南雲先輩に聞いてみるのはどうかな〜と思ったんだけど……』

 

——というメッセージが櫛田から届き、先ほどの対話が実現したのだ。そのため、オレたちが南雲副会長に会いに行っていたことを池たちは今の今まで知らなかった。

 

「そういえば、副会長とか見たことねーな」

「桔梗ちゃん、副会長ってどんな人だったの?」

「すっごくカッコいい人だったよ」

「ぐっ……」

 

 櫛田の返答を聞いた池は悔しそうに唇を噛んだ。

 確かに、南雲副会長の顔は非常に整っている。

 櫛田の心境は不明だが、大抵の女子はあの容姿に目を奪われるのだろう。事実、カフェにいた女子生徒の多くが南雲副会長の笑顔に視線を向けていた。

 

「でも、男は中身だぜ桔梗ちゃん!」

「南雲先輩は優しいし、頭も凄く良いみたいだよ。あと、2年Aクラスのリーダーも務めてるんだって」

「ぐっ、ぐぬぬぬぬぬ」

「イケメンで中身も良いって誰得だよ……」

 

 池が嫉妬を募らせ、山内も不満そうな顔をしているが、そろそろ本題に入るべきだろう。

 

「南雲副会長に聞いた結果なんだが……」

 

 特に何も情報は得られなかったことを伝えると——櫛田がいるためか——池と山内が不満を口にすることはなかった。

 しかし、山内は何かに気が付いたのか、ハッとしたように顔をあげる。

 

「やべぇ俺……分かったんだけど。葛城が誰に向けてプレゼントを用意したのか」

 

 山内が語った内容は、『葛城が自分のために誕生日プレゼントを買ったのではないか』という推測だった。

 それを聞いたオレと櫛田は、目を見開きながら顔を見合わせる。

 

『葛城は自分のためにプレゼントを買ったんだ』

 

 櫛田も先ほどの南雲副会長の言葉を思い出しているのだろう。

 さすがに一言一句とまではいかないが、山内の発言は南雲副会長が予想した内容とほぼ合致していた。

 

 驚愕しているオレたちを他所に、池と山内の会話は続く。

 

「ちょっと協力してやるか」

「協力ってなんだよ?」

 

 山内に問いかけられた池が言葉を続ける。

 

「あいつに誕生日プレゼントを用意してやるんだよ」

『あいつに誕生日プレゼントを用意してやるんだよ』

 

 池と南雲副会長の言葉が重なった。

 櫛田も相当驚いているようで、引き攣った笑みを浮かべたまま固まっている。

 

「そりゃ女の子に祝ってもらうのが一番なのはわかる。でもそれは……」

 

 池が言葉を続けている中、考えを巡らせる。

 

 先ほどの池と山内の発言から、2人と南雲副会長は面識がないはずだ。

 つまり、南雲副会長は直接会ったこともない池たちの言動をほぼ完璧に予測したということになる。

 

 そんなことは本当に可能なのだろうか?

 

 そもそも、ここまでの流れを予測するためには、オレたちが池たちに報告することも読む必要がある。

 つまり、オレと櫛田の言動も予測していなければ不可能な芸当だ。

 

「今までの出来事は、偶然ではなかったのかも知れないな……」

 

 過去問の取引はオレから南雲副会長に話しかけたことがきっかけだった。

 鬼龍院先輩に絡まれたのは、南雲副会長の指示ではなくオレのことを偶然気に入ったためだと鬼龍院先輩本人から聞いた。

 

 しかし、それら全てが南雲副会長の思惑通りだったとしたら……そんなことをする南雲副会長の意図はわからないが、警戒しておく必要があるだろう。

 

「ってことで綾小路、桔梗ちゃん。ちょっと早いけど明日は俺たちで葛城を祝ってやろうぜ」

 

 オレが思案している間にも話が進んでいたようで、池と山内の中ではすでに葛城を祝う流れとなっていた。

 しかし、ここは南雲副会長の忠告通り止めておくべきだろう。正直言って面倒でもある。

 

 同じことを考えていた櫛田の援護もあり、さほど苦労せずに2人の説得は終了。

 葛城がプレゼントを渡す相手は結局分からないまま、この日は解散となった。

 

 

 






〜それぞれの心境〜

・綾小路清隆
 南雲への警戒レベル急上昇。できればもう関わりたくないと思っている。

・櫛田桔梗
 南雲に好意を抱いている……わけなど当然なく、自身の目的のために南雲の好感度を稼いでおこうと思い、今回のカフェを企画した。

・南雲くん
 2人とカフェに行けて超ハッピー!今日は2人と物凄く仲良くなれた!……と思い込んでいる。悲しいね。
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