南雲雅?俺じゃん。   作:ざったなっつ

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この2人とはちゃんと仲良し!

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☆22話「3人でお茶」

 

 

 夢のようなカフェタイムの翌日。

 

 生徒会室の改装工事が終わったため、男子メンバーが中心となってせっせと書類を運び移していた。

 校舎内は冷房が効いているとはいえ、結構な重労働のため額に汗が滲む。

 

「南雲、何か飲んでこい。熱中症になるぞ」

「わかりました……って、堀北会長は制服着たままで暑くないんですか?あまり汗かいてないようですけど」

「普段から鍛えているからな」

「えぇ……汗腺って鍛えられるんですか?」

 

 そんな雑談を続けながらも、昼から始まった作業は午後3時頃に無事終了。本日はもう解散となった。

 頑張った頑張った。みなさんおつかれっしたぁ!

 

「あの、南雲副会長。少しよろしいでしょうか?」

「ん?いいけど、どしたの?」

 

 いつも通りスーパーの無料商品を漁りながら帰ろうかな〜と思っていると、葛城が神妙な面持ちで話しかけてきた。

 その後ろには一之瀬の姿もある。

 

「実は、相談したいことがありまして……」

「相談したいこと?」

 

 そう()()()()()()続きを促す。

 

「はい。申し訳ないのですが、少し長い話になるかも知れません」

「その話は一之瀬も関係してるのか?」

「いえ、私は葛城くんの話を偶然聞いてしまって、南雲副会長にも相談してみてはどうかと提案して今ここにいる感じです」

「なるほど」

 

 昨日櫛田たちから得た情報。葛城の落ち込み具合。そして、原作の1年生編4.5巻の知識……相談の内容はなんとなく察しがつくし、俺なら解決できる問題だとも思う。

 だが、ここで俺が介入してしまうと原作の流れを変えてしまう可能性があるけど——

 

「いいよ」

 

——それは今更なので即座に了承した。

 

 原作にない流れになるとしても、関わりの深いこの2人が困っているときは助けたいと常々思っている。

 原作知識を伝授して特別試験を無双!なんてことは、とんでもない事態になりそうだからさすがにするつもりはないけど……相談程度ならいくらでも聞くし、手が足りない時はいつでも協力するつもりだ。

 

「それじゃあ、3人でお茶でもしに行こっか」

「私もご一緒して良いんですか?」

「葛城が大丈夫なら良いけど、どう?」

「俺は構いません」

「それなら3人で行こう!」

 

 というわけで、大男と美少女を連れながらケヤキモールを歩く。

 

 到着した場所は、お値段ちょっとお高めな料理の多い和食料理店だ。

 堀北会長がよく連れてきてくれるため、このお店のメニューは大体把握している。ここはデザートや飲み物の種類も豊富なのだ。

 そしてなにより——

 

「3人です。個室席でお願いします」

「かしこまりました」

 

——このお店には個室席があるため、食事をしながらの内緒話にはうってつけな場所となっている。

 

「こちらの席へどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 店員さんが案内してくれた席に座ると、一之瀬は俺の隣の席に自然な流れで腰を下ろした。

 それを見た葛城は、俺の対面の席へと腰掛ける。

 校内でもトップクラスの人気を誇る美少女がすぐ隣にいるのはちょっと緊張するけど、葛城の相談を聞く会だからこの形になるのは当然か。

 

「あっ。今日は俺が奢るから、遠慮なくなんでも頼んで良いよ」

「にゃっ!それはさすがに悪いですよ」

「そうです。相談を聞いていただくのはこちらなので、ここは俺が奢ります」

 

 昨日のやりとりに似てるな〜と思いながら口を開く。

 

「実は俺、こう見えても2年Aクラスのリーダーって呼ばれているんだ」

「「それは知ってます」」

「えっ、し、知ってるの?」

 

 桐山から聞いたのかな?この2人は人脈が広いから、他の人からのパターンもあるか。

 そんな分析をしながら、ドヤ顔リーダー発言をちょっと後悔しつつ言葉を続ける。

 

「えっと……だからこそ、ポイントはそれなりに持ってるし、このお店を選んだのは俺だから。ここは先輩の顔を立てると思って奢られてくれないか?」

「そ、そこまで言ってくださるなら……ありがとうございます、南雲副会長」

「えと、ご馳走になりますっ」

 

 そう答えながらも、2人は遠慮して飲み物だけで済ませようとしたため、一之瀬には女子に人気の練り切りあんセットを、俺はおはぎ三色セットを選び、葛城にはデラックスあんみつパフェを注文した。

 体大きいんだから、いっぱい食べなさいね。

 

「それで、相談って何かな?」

 

 運ばれてきたお茶菓子をしばらく堪能したところで、本題に移る。

 

「実は、俺には双子の妹がいまして……」

 

 葛城が話した内容は、原作で綾小路たちにしていた説明とほぼ同じ内容だった。

 両親と祖父母が他界している……という話は口にしなかったが、妹の誕生日が来週に迫っており、誕生日プレゼントをどうにかして送ってやりたいのだと、悔しそうな表情で葛城は口にした。

 

「そうか……」

「……」

 

 自分の妹のことを思い出したのか、一之瀬は少し俯いたまま静かに話を聞いている。

 

「それで、プライベートポイントで荷物を発送する方法がないか堀北会長に聞いてみたのですが、ないと言われてしまいまして……」

「なるほど……」

 

 原作では、『学校が規則に違反する行為をポイントで許すことは絶対にない』と堀北会長から言われてしまい、葛城はプレゼントの送付を諦めようとしていた。

 しかし、この世界の葛城は生徒会に所属し、堀北会長と良好な関係を築いている。だから無条件で協力してもらえる可能性も考えてたけど……やはりダメだったか。

 

「堀北会長になんて言われたか覚えてる?」

「たしか……『学校が規則に違反する行為をポイントで許すことは絶対にない。学校にポイントを支払って物品を送ることは不可能だ』とおっしゃっていたはずです」

「なるほど……ん?」

 

 原作のセリフに少し付け足されている。

 

 おそらくだけど、堀北会長は葛城に自分で考えさせて抜け穴を見つけさせようとしているのだろう。

 妹さんに対してもそうだけど、堀北会長って気に入った相手をあえて突き放して、成長を促そうとする節があるからなぁ……今回のパターンはまさにそれだ。

 きっと、葛城が答えにたどり着けなかった時はそれとなくヒントをチラつかせて、それでも気付かない時は全部教えるつもりなのだろう。

 

「う〜む……あっ」

 

 ふと思ったけど、教育係の俺に任せるために敢えて突き放したパターンもあるのか。

 その場合はここで手を貸すのが正解だけど……うん、わからん!

 とりあえず、考えさせる形で答えに誘導していけば葛城の経験にもなるし、堀北会長の意図にも沿うはずだ。

 そう結論を固め、口を開く。

 

「まず、堀北会長の言葉の意味をちゃんと考えてみよっか」

「言葉の意味、ですか?」

「そうそう」

 

 一之瀬は先にその意味に気付いたようで、ハッとした表情となった。

 

「一之瀬は何か気付いた?」

「たぶんですけど、堀北会長は()()()()()()()()と言っただけで、()()()()()とは言っていないのかな〜と……」

「一之瀬くん正解」

 

 少しだけ照れている一之瀬を横目に、解説を始める。

 

「一之瀬が言ったように、()()()()()やり方がないだけだ」

「……個人で行うことは可能ということですか?」

「葛城くん正解」

 

 ポイントでなんでも買えると謳ってはいるけど、高育のシステムを揺るがすようなものは当然買えない。

 校外への物品発送の権利はまさにその代表例だな。

 

「それは、校則を破ることに繋がると思うのですが……」

「そうだね。バレた時は最悪退学もあり得ると思う」

「なっ!?」「えっ!?」

 

 2人して驚いてるけど、そりゃ当然でしょうよ。

 入学決定者たちにSシステムの詳細を伝える手紙なんて送ったら、初月に全クラス1000cp残しなんてことになるかも知れないからね。

 

「まぁ、プレゼントの発送だけならバレても退学はないと思うけど、校外に何かを送るのはそれだけのリスクを負う必要があるってことだな」

「リスク、ですか……」

 

 そう呟くと、葛城は真剣な表情で悩み始めた。

 葛城は真面目だから、リスクのある行動への抵抗感は人一倍強いのだろう。

 

「……」

 

 ふと、一之瀬を見る。

 

 彼女は葛城の妹の話が出る度に、表情が暗くなっていた。

 一之瀬は善性の塊だから、過去の罪への意識が人一倍強いのだろう。

 

 原作だと南雲が一之瀬の過去を言葉巧みに聞き出し、それを坂柳にバラしたことで万引きの一件が学年中に知れ渡ってしまった。

 しかし、俺は無理に聞き出すつもりも坂柳にバラすつもりも一切ないため、原作のような展開はおそらく起こらない。

 

 ただ、それだと一之瀬が過去の罪を誰にも知られないよう抱え続けることになるため、いつか話は聞いてあげたいと思っている。

 ほんの少しかも知れないけど、誰かに話すのって気が楽になるからね。

 

「一之瀬も、悩みとか相談とかあれば遠慮なく言ってね」

「南雲副会長……」

 

 一之瀬は少し逡巡した後、俺の目を見つめながら言葉を続けた。

 

「いつか、お話ししたいことがあります。私の……過去の過ちについて、です……。私の覚悟が決まった時は……その、聞いて、いただけますか?」

「もちろんだよ。いつでも聞くから、覚悟が決まった時は遠慮なく教えてね。24時間365日いつでも大丈夫だから」

「っ……ありがとうございます。南雲副会長っ」

 

 俺は坂柳に絶対チクらないから、安心して話してくれてええんやで。

 そう思いながら一之瀬を見守っていると、葛城が覚悟を決めた表情で口を開いた。

 

「南雲副会長。俺は……リスクを負ってでも妹へプレゼントを送ってやりたいです。どうか、知恵を貸していただけないでしょうか」

「よろしい。いくらでも貸そう」

 

 そこからは笑顔が戻った一之瀬も交えて、発送方法にどんなものがあるかを話し合った。

 仲の良い先生や職員さんにお願いする方法など、様々な意見が出たけど……最終的には原作に則って、近々行われる大会で校外へ出る予定のバスケ部のメンバーに頼むことに決まった。

 

「バスケ部の大会出場メンバーですか、うちのクラスにいたかどうか……」

「Bクラスにバスケ部の男の子はいるけど、出場メンバーではなかったかも……」

「大丈夫大丈夫。うちのクラスに出場メンバーいるから、そいつにお願いしよう」

「よろしいのですか?」

「全然良いよ」

 

 「もともとそのつもりだったからね」と付け加えつつ、さらに言葉を続ける。

 

「これで妹さんにプレゼントを送れるわけだけど……実は重大な問題が発生している」

 

 そう話しながら一之瀬に鋭い視線を向ける。

 

「にゃっ?」

「俺たちの悪巧みが第三者に聞かれちまったようだなぁ」

「にゃっ!?誰にも言いませんよ?」

「確かに、これは由々しき事態ですね」

「にゃっ!葛城くんまでっ」

 

 俺も葛城も一之瀬がバラすとは思ってないけど、口止めはしっかりと行っておくべきだ。

 親しき仲にも賄賂ありだからな。

 

「一之瀬さん、何か食べたいものはありませんか?何でも奢らせていただきますよ」

「一之瀬、俺も何か奢ろう。デラックスあんみつパフェはどうだろうか」

「に゛ゃ———っ‼︎」

 

 その後しっかりと話し合った結果。

 この話し合いに参加できたおかげで色々と勉強になったため、口止め料は必要ないと一之瀬に言われてしまった。

 

 なので、「俺も今回のお礼は不要だから」と葛城に伝えたところ、「南雲副会長には何らかの形で必ずお返しします」と言い切られてしまったため、葛城の恩返しがどこかで発動することに決まった。

 ほんとに気にしなくて良いのに、葛城は律儀だなぁ。

 

「そういえば、俺がAクラスのリーダーだって誰から聞いたの?桐山?」

「私は星之宮先生から聞いたのが最初ですけど、その後も色々な人から聞いたので、ほとんどの人が知ってると思いますよ」

「公然の事実だと思っていました」

「えっ、そうなの?」

 

 そんな雑談を続けつつ、楽しいお茶会は夕方近くまで続いた。

 

 






〜それぞれの心境〜

・葛城康平
 南雲への好感度さらに上昇。これからも南雲から多くのことを学ばせてもらいたいと思っている。

・一之瀬帆波
 南雲に好意を抱いている……が、それが恋愛感情なのかは本人も分かっていない。大好きな先輩であることは確か。

・南雲くん
 2人とお茶に行けて超ハッピー!今日は2人と物凄く仲良くなれた!……やったね。
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