とても嬉しいので挿絵を!と思ったのですが……間に合わなかったので、次話で、張り、ます。
それでは、南雲くんと坂柳さんと神室さんの仲良し回をどうぞ╰(*´︶`*)╯
気がつけば放課後。
ケヤキモールの定番人気カフェ『パレット』へ訪れると、先に到着していた坂柳と神室が奥のほうの席で待っていた。
店員さんからアイスコーヒーを受け取り、2人のいる席へと向かう。
「ごめん、待たせたかな」
「いえ、私たちも今来たところです」
2人の飲み物は全然減ってないため、今の言葉は嘘ではないようだ。
「初めまして、1年Aクラスの坂柳有栖です。もうご存知だとは思いますが、こちらは同じクラスの神室真澄さんです」
「どうも」
「初めまして、2年Aクラスの南雲雅です。神室さんとは改めましてだね」
挨拶を終えると、まずは坂柳が口を開いた。
「それにしても驚きました。今回のカフェが私からのお誘いだとすぐに気付いたそうですね」
「あー、うん。偶然ね」
「ふふっ、偶然ですか」
坂柳が(面白い玩具を見つけた時の子供のような)可愛いらしい笑顔を浮かべている。
喜んでもらえて何よりだけど、ちょっと怖い。
「私と真澄さんの仲が良いという情報は葛城くんから聞かれたのですか?」
「葛城から?いや、何も聞いてないよ。葛城はクラスのこととかあまり話してくれないからね」
今の話は本当で、葛城と一緒にいる時は一之瀬も近くにいることが多いため、クラス内の話題が出ることはほとんどない。
ただ、坂柳は俺の言葉を疑っているようで、「そうですか」と納得したような言葉を口にしながらも訝しげな視線を向けてきている。
葛城から聞いてると思うのが普通だろうから、俺の返答に納得がいかないのは当然だけど……このまま葛城が口の軽いやつだと思われるのは嫌だな。
坂柳が納得してくれて、葛城の誤解も解ける都合の良い理由……あっ、あった!
「……わざわざ葛城から聞かなくても、2人が友達なのは前々から知ってたよ。全部見てたから」
「全部見ていた?何をでしょうか?」
小首を傾げる坂柳も可愛いなぁと思いながら言葉を続ける。
「コンビニから出てくる神室さんと、それを引き止める坂柳さんと、プレミアム生ビール」
「「っ!」」
緘口令と原作の流れを守るために4月中は大人しく過ごしていた俺だったが、ただの偶然なのか
その中の一つが、坂柳と神室がお友達になるシーンだ。
覗き見はよくないと思ってすぐにその場からは離れたけど、何が起きていたのかは原作知識で全て知っている。
「バレたら大変なことになるから、もうしちゃダメだよ」
「は、はい……」
「ふふふっ」
俺の注意を受けて少しだけ顔色が悪くなった神室の横で、坂柳が楽しそうに笑い出した。
「あの場に人がいないことは確認していたのですが、まさか見られていたとは思いませんでした。監視カメラの映像を確認したのでしょうか?それとも、何か別の仕掛けが?」
「ん〜……秘密で」
「原作知識だよ」と言っても絶対に信じてもらえないだろうから、答えは濁しておいた。ごめんね。
「ふふっ、先ほどまでは南雲副会長のことを面白い方だと思っておりましたが、訂正させていただきます。あなたはとても面白く、非常に興味深い方のようです」
坂柳が鋭い視線を向けながら楽しそうにそう口にした。か、顔は可愛いのに物凄く怖いっ。
「そ、それで、今日はどうして俺を誘ってくれたの?ただ雑談をしたいってわけじゃないよね」
「ただ雑談をしたいだけかも知れませんよ?」
「もしそうだったら嬉しくて泣くかも」
冗談だと思ったのか、またもや「ふふっ」と笑われてしまった。
ふふっ、冗談じゃなくて純度100%の
「お察しの通り、本日南雲副会長をお呼びしたのはとある目的のためです。と言っても、すでにその目的は達成されたようなものですが」
「あ〜……なるほどね」
「もうお気づきになられたのですか?」
「視線には敏感なもんで」
「ふふっ、さすがですね」
今のやり取りで確信した。
坂柳の目的とは、『俺と一緒にカフェで過ごすこと』。それ自体だ。
おそらく、俺の存在が葛城の求心力を高めていると考えて、「私もこの金髪と仲が良いですよ〜」というアピールのために今回お誘いしてくれたのだろう。
場所が人気カフェのパレットであることや新学期初日という混みやすそうな日付であることも計算の内だろうな。
「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」
「いやいやいや、全然そんなことないよ。2人と一緒にカフェに来れて凄く嬉しいから」
坂柳と神室のペアも前世から好きだったため、一緒にお茶ができるのは本当に嬉しい。
俺との仲良しアピールのためにお茶をしてくれるならいつでも大歓迎だ。
「お呼びしたのは目的のためと言いましたが、南雲副会長とは以前からお話ししてみたいと思っておりました」
「えっ、ほんとに?」
「本当ですよ」
坂柳はいたずらっ子のような笑みを浮かべながら、俺に興味を抱いた理由を説明し始めた。
ことの始まりは5月最初の登校日。
クラスポイントの存在が初めて説明された日に真嶋先生が発した一言だったという。
『お前たち1年Aクラスのクラスポイントは940。これは
その言葉に衝撃を受けた坂柳は職員室で真嶋先生に疑問を投げ掛け、入学初日に高育のシステムを暴いたことで
そして俺が行ってきた逸話?のようなものもそこで聞き、興味を抱いたらしい。
「な、なるほど……」
まさかそんな前から目をつけられていたとは思わなかった。
あと、俺なんかに興味を抱き続けているということは、まだ綾小路のことは見つけていないようだ。原作通り体育祭で見つける流れっぽいな。
「いずれは葛城くんの陣営の生徒からも、1年Aクラスのリーダーとして認めてもらいたいと考えております。そのためにも、『歴代最高のリーダー』と謳われる南雲副会長の手腕を知ることができたらと思い、以前からお話ししてみたいと思っていたのです」
「そ、そうなんだ……」
なんかそれっぽい理由を説明してくれたけど、「私を楽しませられる相手かどうか見極めてあげましょう!」というのが本音だろうなぁ。
あと、歴代最高のリーダーって何?初めて聞いたんだけど。
「よろしければ、リーダーを目指す後輩に何かアドバイスなどいただけませんか?」
「アドバイス……?」
中々の無茶振りが来たなぁ、と心の中で呟きながら。ふと、先ほどの体育館での光景を思い出す。
堀北会長が赤組の総指揮を務めていたこと。葛城陣営の生徒がまだ多く残っていたこと。そして、神室を介した坂柳からのお誘い。
一之瀬と龍園のやり取りのように原作と同じ展開も起こってはいたけど、それは俺と龍園がまだ関わっていないからだと思う。
まだ関わりを持っていないよう実レギュラーメンバーと関わる機会が増えていけば、原作と異なる展開は今後さらに増えていくはずだ。
それならいっそ、原作の流れが完全に変わる前に俺が思い描くストーリーへ誘導するのもありな気がする……。
綾小路のように組み立てた物語を実現させられるほどの能力はないけど、俺の影響力を駆使すれば大まかな誘導くらいは可能なはずだ。
どうなるかはわからないけど、ちょっとやってみるかな。
「憶測の混ざったアドバイスでも良い?」
「構いません。気を遣わず正直に仰っていただけると嬉しいです。南雲副会長の意見はとても気になりますので」
「わかった。それじゃあはっきり言わせてもらうけど……」
坂柳の成長を後押しして俺の思い描く物語へ誘導できるかは分からないけど、ほんの少しでも良い影響を与えられたら……と願いながら、心を鬼にして口を開く。
「坂柳さんはみんなのことを下に見ているせいで視野が狭くなっているから、もっとみんなにしっかりと目を向けたほうがいいよ。坂柳さんを楽しませてくれる人が同じ学年にいないわけじゃなくて、たくさんいるのに見つけられてないだけだから。特にDクラスの子たちのことは取るに足らない存在だと思っているようだけど、それは物凄く大きな間違いだから認識を改めたほうがいいよ。凄い出会いがあるだろうからね。それと、坂柳さんについてきてくれる人たちのことはただの駒じゃなくて、ちゃんとした仲間や友人として尊重したほうがいいだろうね。駒は命令通り動いてくれるだろうけど、信頼関係のある仲間は想像以上に凄い結果をバンバン叩き出してくれるから。もちろん、予想外の事態に陥ることも多々あるだろうけど、そういった事態も的確にフォローして正しい結果に導くのがちゃんとしたリーダーのあり方だと俺は思うよ。あとは……」
「「……」」
とんでもない量のアドバイスに驚いたのか、坂柳は終始呆気にとられた表情をしていた。
隣に座る神室は思うところもあるのか、なんとも言えない表情をしている。
「……貴重なアドバイス、どうもありがとうございます。心に留めておきましょう」
話を聞き終えた坂柳の表情はぱっと見は笑顔だけど……うん、物凄く不機嫌そうだ。完全に言い過ぎたな。
「えーっと……雑談でもしよっか」
その後は、笑顔を貼り付けただけの坂柳と顔色がちょっとだけ悪い神室と共に普通の雑談に興じた。
うん、誘導って難しいね!
運命力「うん、誘導って難しいね!」