南雲雅?俺じゃん。   作:ざったなっつ

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シスコン
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☆32話「堀北会長VS南雲副会長」

 

 

 ことの始まりは体育祭の翌日まで遡る。

 

 

 生徒会室に呼び出された俺は、堀北会長からとんでもないお言葉を頂戴していた。

 

「南雲。俺は次期生徒会長にお前を選ぶつもりだ」

「っ!」

 

 次期生徒会長は堀北会長の任期後に桐山と生徒会戦でバトって決める感じかな〜と思っていたけど……まさかこんなに早くに、しかも指名して頂けるとは思わなかった。

 生徒会長の座には固執してないけど、堀北会長からの期待はとても嬉しい。

 

「あの、聞いてもいいでしょうか」

 

 ただ、一つだけ気がかりなことがある。

 

「なんだ」

「どうして桐山ではなく、俺を指名してくださるんですか?」

 

 そう、桐山の存在だ。

 

 情報処理能力、問題解決力、求心力、責任感、etc……生徒会長に必要な資質を比較した場合、俺と桐山の間にほとんど差はないと思う。

 歴代生徒会長は全員Aクラスで卒業しているという伝統を無視すれば、どちらが生徒会長になっても問題はないはずだ。

 

 ちなみに、殿河と溝脇は生徒会長になるつもりが一切ないらしい。それどころか、副会長の肩書きも勘弁して欲しいと言っていた。

 まぁ、元々俺が無理やり引っ張ってきたメンバーだからね。仕方ないね。

 

「当然の疑問だな」

 

 そう呟いた堀北会長は言葉を続ける。

 

「お前を指名した理由の一つは、桐山からの推薦があったためだ」

「えっ、桐山がですか?」

 

 い、いつの間に?

 

「次期生徒会長を指名する際は南雲を選んで欲しいと、夏休みが明けてすぐに桐山が伝えてきた」

「そうだったんですね……」

 

 ということは、出店試験のすぐ後か。

 

 そういえば鬼龍院と出店をひやかしに行った時、桐山が神妙な面持ちだった気がする。

 あの時はプールで遊んでいた鬼龍院に思うところがあったのだろうと勝手に納得してたけど、何か別のことで悩んでいたのかも知れない。

 

「言っておくが、桐山の推薦がなくとも次期生徒会長にはお前を指名するつもりでいた」

「えっ!えっと、理由を聞いてもいいですか?」

 

 驚く俺を見ながら、堀北会長が説明を始める。

 

「理由はいくつかあるが……強いて挙げるなら、生徒会長としてお前が何を成そうとするのか見てみたいと思ったからだろうな」

「何を成すのか、ですか」

 

 予想以上に期待度高めな理由だった。

 

「何も成さないかもですよ?」

「……ふっ。クリスマスパーティーやバレンタインイベント、新役員歓迎会の開催。全生徒の能力を可視化する新システムやクラス移動チケット導入の提案。目立つものだけを並べても、お前はすでにいくつものことを生徒会で成している」

「うっ、言われてみれば……」

 

 OAAとクラス移動チケットはまだ提案の段階な上に他はパーティーばかりだけど……たしかに成してはいるのかも知れない。

 

「クラスの垣根を超えた勉強会や進路相談もまだ続けているそうだな」

「つ、続けてます……」

 

 先日やっと2年Dクラス全員の進路相談が終わったところです。

 

「これだけのことを成している後輩に対して、むしろ期待せずにいるほうが難しい。それにお前のことだ。他にも色々と計画しているのだろう?」

「うぐっ……」

 

 堀北会長の期待の眼差しが眩しいっ。

 

 だが、そんな期待を裏切ってしまうようで本当に申し訳ないけど、これ以上特別なことをするつもりはない。

 原作南雲に倣ってOAAとクラス移動チケットは必ず導入させるつもりだけど、考えていることはそれくらいだ。

 

 あっ……でも、新しい方式の特別試験をやってみたいな〜と思って提案書を作成中だった。()()()()()()()()()()()特別試験も面白そうだから、できればそれも実現してみたいと思っている。

 

 あっ!……それと、生徒会長になれば他の役員より特別試験に対する発言力が上がるだろうから、来年実施予定の『無人島サバイバル試験』を少し弄りたいとも考えていた。できればペナルティの部分に少しだけ手を加えたい。

 

 あっ!!……ついでに、原作より早い段階で新しい生徒会メンバーも入れたいな〜と考えていた。堀北先輩の穴を埋めるために、堀北後輩には是非とも声を掛けたいところだ。

 

 あれ?結構色々するかも知れない。

 

「ふっ。考えていることは多そうだな」

 

 顔に出ていたのか、堀北会長にがっつり心を読まれてしまった。

 

「桐山は俺と似たところがある。あいつもお前が何を成すのかを見てみたいと思い、次期生徒会長に推薦したのかも知れんな」

「なるほど……」

 

 桐山が堀北会長のことを目標にしているためか、たしかに2人の考え方は似ているところが多い気がする。

 桐山が俺を推薦してくれた理由は、堀北会長の言う通りかも知れない。

 

「説明はもう充分だろう。そろそろ返答を聞かせてくれ」

 

 メガネの奥から熱い視線を向けてくる堀北会長は、再度確認するよう問いかけてくる。

 

「南雲。お前は生徒会長として、この学校の生徒を導く覚悟はあるか?」

 

 堀北会長の期待が込められたその問いかけに負けないよう、俺も強い意志を込めて言葉を返す。

 

「当然です!」

 

 「ふっ」と笑った堀北会長は、威圧感を消しながら言葉を続けた。

 

「南雲雅、お前が高度育成高等学校の次期生徒会長だ」

「ありがとうございます!」

 

 僅かに頬を緩ませる堀北会長と、満面の笑みを浮かべる俺。

 後輩に期待を寄せる先輩と、その期待に全力で応える覚悟を決めた後輩の図。

 この光景を見た人たちは、誰もが信じられないはずだ。

 

 

 ここからこの2人の()()()()()()することを。

 

 

「それでは引き継ぎを始めるとしよう」

「……ふぇ?」

「どうかしたか?」

 

 俺の気の抜けた返事に疑問を投げかけてくる堀北会長。

 いや、疑問を投げかけたいのはこちらなのですが……。

 

「今から引き継ぎって早過ぎないですか?例年なら生徒会長の交代は12月頃ですよね?」

「それでは遅過ぎる。できれば中間テストまでに交代してもらいたいと考えていた。理由は分かるな?」

「いや、まぁ、なんとなく分かりますけど……」

 

 堀北会長は俺の()()()()()()()としてくれているのだろう。

 

 『歴代最高の生徒会長』と謳われる堀北会長が例年よりも早い時期に会長の座を譲るとなれば、次期生徒会長のほうが優秀だと勘違いしてくれる生徒が現れるかも知れない。

 そうでなくとも、『次の生徒会長も優秀なんだろうな〜』という印象を多くの生徒に与えられる。

 原作南雲が10月中旬に生徒会長の座を手に入れたのはそういった狙いもあったのかな?

 

 だがしかし!

 

「引き継ぎはもっとゆっくりでお願いします。というか、12月でも早いくらいです。どうせなら学校が定める任期を伸ばして卒業間際の引き継ぎなんてどうでしょうか?」

 

 早期の引き継ぎには()()()()()()()()が存在する。

 俺はどうしてもそれを避けたかった。

 

「……よく分からんな。何が狙いだ?なぜそんな時期を提案してくる」

「だって……堀北会長や橘先輩が引退したら、()()()じゃないですか!」

 

 そう、寂しい。寂しいのだ!

 特大のデメリット。それは3年メンバーの引退とそれに伴う生徒会室の寂しさ!

 

 『堀北会長たちのいる生徒会室』と『生徒会長就任時の権威向上』を俺の中にある天秤に乗せた場合、当然ながら前者に勢いよく傾く。比較にもならない。

 権威向上ブースト?生徒会室が寂しくなるならそんなもんいらん!

 

「3年メンバーは仕事はせずに生徒会室で受験勉強してるだけでいいです。もちろん、備品のお茶とコーヒーも飲み放題、暖房も使い放題です。なので引き継ぎは卒業ギリギリにしましょう」

「却下だ。今すぐ行うぞ」

「嫌です!せめて12月に!」

「それも却下だ。葛城と一之瀬は充分に育った。俺やあか……橘がいなくても生徒会業務に支障はないはずだ」

 

 業務に支障があるなしの話はしてないんですよ!

 それと、いま橘先輩のこと名前で呼ぼうとしてませんでした?恋仲が良好なようでなによりですよ!

 

「生徒会長の就任に必要な書類はこれだ。必要事項を記入して即座にサインしろ」

「嫌です!」

「我儘を言うな」

 

 そんなこんなで、堀北会長との大喧嘩が始まった。

 

 それから数日が経過した現在。

 

「いい加減にしろ南雲。この書類に名前を書け」

「嫌です!交代時期の変更をお願いします」

 

 一之瀬と普段通り話せるようになったお陰で若干は改善されたものの、堀北会長と俺が喧嘩しているせいで生徒会室の空気は依然として悪い。

 いやはや、みんなには申し訳ない限りだ。

 

「変更はしない。これは決定事項だ」

「堀北会長の石頭!頑固者!シスコン!」

「最後の言葉は訂正しろ。俺はシスコンではない」

 

 むしろシスコンだけは訂正の必要ないでしょうが!

 

「なんか妬けちゃいますね……」

「にゃはは、その気持ちちょっと分かるかもです……」

 

 橘先輩と一之瀬が何か話しているが、俺たちの戦いはまだまだ終わらない。

 

「先日の()()に同意してくださるなら、早期の引き継ぎを受け入れるのもやぶさかではありません。ちなみに、橘先輩からはすでに同意を得ております」

「なぜ俺があの提案に同意しなければならない。早期の生徒会長交代はお前のためでもあるんだぞ」

「早期就任のメリットを得るより3年メンバーがいなくなるほうが嫌だって言ってるじゃないですか!交代時期の延期か提案を受け入れてくれるまで、俺は戦い続けます!」

 

 桐山たちの呆れた視線が突き刺さる中、俺と堀北会長の言い合いは続く。

 

 俺たちの戦いは、これからだ!

 

 

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