南雲雅?俺じゃん。   作:ざったなっつ

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37話「あたふた星之宮」

 

 葛城とのお茶会から数日後。

 

 一部の部活動はすでに試験休みに入り、期末試験に向けた勉強会がいたるところで開かれている中。俺は放課後の校舎内をひとり歩きながら、静かに現状を整理していた。

 

「ペーパーシャッフルの準備は、今のところ順調だな」

 

 今回のペーパーシャッフルでCクラスに勝つことができればAクラスでの卒業がほぼ確定するため、クラスの士気はいつも以上に高い。

 そして、試験問題の作成は堀北先輩と橘先輩と藤巻先輩という3年Aクラスビッグスリーにも密かに手伝ってもらったため、とんでもない難易度に仕上がっている。

 このままいけばペーパーシャッフルの勝利は揺るぎないだろう。

 

 そういえば、普通に戦うと退学者が出る恐れがあるため、『各科目の作成問題のうち、半分は救済問題(物凄く簡単な問題)にする』という契約を、つい先日2学年の全クラス間で交わした。

 そのため、救いようがないレベルで勉強をサボる生徒がいなければ退学者が出ることはないだろう。

 

「葛城のほうも、とりあえずは順調そうだな」

 

 次に葛城に関してだが。お茶会をした翌日、生徒会業務終了後に真剣な表情で話し合う葛城と一之瀬の姿を目撃した。

 おそらく、ペーパーシャッフルで2人が組んで何か仕掛けるつもりなのだろう。

 坂柳がどう動いてくるかは分からないが、2人には是非とも奮闘してもらいたい所存だ。

 

「あと整理することは……」

 

 そう呟きながら校内散策を続けていると——

 

「あらあら、南雲くんじゃない」

 

——軽くウェーブの掛かったセミロングの髪型の女性が、満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってきた。

 一之瀬クラスの担任を務める年齢不詳美女、星之宮先生だ。

 

「あっ、どうもです。星之宮先生」

「南雲くんもどうも〜」

 

 ()()()()()()()気さくに話しかけてくる星之宮先生。

 実は星之宮先生とはよく話す仲で、トータルで言えばうちのクラスの担任を勤めてくれている真面目先生よりも話している時間は長かったりする。

 廊下で会った時は笑顔で駆け寄ってきてくれるし、ちょっとした用事で職員室に行く時も必ず話しかけてきてくれるためだ。

 

 ただ……ね。

 

 星之宮先生は美人だし、前世でも結構好きなキャラだったから、俺としても話しかけてもらえるのは非常に嬉しい。嬉しいん、だけど……。

 

「相変わらずイケメンね〜、目の保養になるわ〜」

「星之宮先生もお綺麗ですよ。マジで」

「あら嬉しい!もっと言って〜。あっ、でも()()()()()()嫉妬しちゃうから、私だけじゃなくて()()()()()()()言ってあげてほしいかな」

「……うっす」

 

——うん、相変わらず一之瀬プッシュが凄い。

 

 星之宮先生は会うとほぼ毎回と言っていいほど、一之瀬に関する話題を振ってくる。

 おそらく……というか確実に、星之宮先生は一之瀬と俺をくっ付けようとしているのだろう。

 もしも2人が恋仲になってくれれば、一之瀬さんが南雲くんの協力を得られて、うちのクラスがAクラスで卒業できる可能性が上がるかも知れないわ!……とか考えてそう。打算の匂いがプンプンする。

 

 まぁ、それでも全然構わないんですけどね。こんな美人教師と楽しくお喋りできるなら、打算の一つや二つ安いものだ。

 

「急にぼーっとして大丈夫?疲れてるんじゃない?」

「大丈夫です。元気いっぱいですよ」

「それなら良かったけど、何か困ったことがあったらいつでも言ってね。南雲くんのためだったら先生何でも協力するからね」

 

 ん?今何でもするって言った?——と思わず反応してしまいそうなセリフを言いながら、星之宮先生は弾けるような笑顔を向けてきた。

 

 原作知識で星之宮先生が抱くAクラス卒業への執念——というより、茶柱先生のクラスをAクラスで卒業させないことへの異常なまでの執着を知らなければ、きっとこの笑顔に騙されていたんだろうなぁ……。

 

「そういえば、一之瀬さん最近またブラのサイズがキツくなったんだって。羨ましいわ〜」

「えっ、そ、そうなんですね。へ〜」

 

 まぁそれはそれとして、星之宮先生がたまに教えてくれるセンシティブ一之瀬情報は脳内メモリにしっかりと保存しておく。

 原作では知ることができなかったよう実ワールドの生の情報は、よう実ファンにとってとても貴重なものなのだ。だからね。仕方ないね。

 

「南雲くんはおっきいほうが好み?それとも、小さくないと興奮しないタイプ?」

「いや、特に気にしたことはないですけど……」

「え〜、強いて言うならどっちとかないの?」

 

 ヤバい、ダル絡みが始まった。しかもセクハラクエスチョンのおまけ付き。

 星之宮先生と話せるのは嬉しいけど、このパターンは長くなる流れだからちょっと面倒だな……よし、早めに切り上げよう。

 

「そんなことより、こんなところで雑談してて大丈夫なんですか?いつもより急いで歩いてたみたいですけど」

「あっ、そうだった!サエちゃんに呼ばれてるんだったわ。でもせっかく南雲くんに会えたから、もうサボっちゃおうかしら……」

「茶柱先生を待たせるのは良くないですよ」

「あら、つれないわね。仕方ないからサエちゃんのところに行くとしますかね〜」

 

 はい、ダル絡み終了。これでまた思考の海に潜れる。

 

 そう考えていると、星之宮先生が何かを思い出したように振り向き、再度声をかけてきた。

 

「そういえば、葛城くんだけじゃなくて一之瀬さんのことも構ってあげてね。南雲くんと2人でお茶とか、すっごく喜ぶと思うから」

「っ!」

 

 ワォ、まさか先日葛城と行ったお茶会のことを知っているとは……。

 原作では綾小路の動向を気にしていたけど、この世界では俺の動向も気にしてくれてるっぽいな。星之宮先生、恐るべしだ。

 

「もしかして、葛城とした話の内容まで知ってたりします?」

「ストーカーじゃないんだから、さすがにそこまでは知らないわ。南雲くんと葛木くんが一緒にお茶してたって噂で聞いただけよ〜」

 

 なるほど。ということは、葛城と一之瀬が組んで何か仕掛けようとしていることについても知らないようだな。

 星之宮先生が2人の計画を知ってたらもっとテンション上がってそうだし。

 

「あっ、でもこれ、むしろ伝えたほうがいいのか……」

「ん?どうかした?」

 

 葛城と一之瀬の計画については俺も何も聞かされてないけど、何をしようとしているのかは大体想像がつく。

 そしてその結果がどうなるかも、原作知識と照らし合わせれば容易に導ける。

 

「……星之宮先生。とりあえず、おめでとうございます」

「えっ?なになに、ホントにどうしたの?」

 

 この情報は、星之宮先生に伝えておいても問題はない。

 むしろ、星之宮先生なら葛城と一之瀬の計画に喜んで協力するはずだから、事前に知っていれば不測の事態が起こった時のサポートも期待できる。

 

 そう考えながら、首を傾げる星之宮先生へ向けて言葉を続けた。

 

「次の試験では一之瀬たちが勝ってAクラスになるので、先んじてそのお祝いをと思いまして。本当におめでとうございます」

「えっ……えぇっ!?Aクラスってどういう……」

「そのままの意味です。来月には星之宮先生のクラスがAクラスですよ。それではっ」

「ちょっ、南雲くん!?」

 

 本気であたふたしている星之宮先生のレア映像を脳内メモリに保存しながら、俺はその場から颯爽と歩き去った。

 

 






アニメ4期ノ5話目モメチャ良カッタ!
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