クライムライム   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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ヤンデレ物書いてると精神が持ってかれるので息抜きです。


もらえるモンはもらっとけ

2XXX年、侵略しに来た宇宙人に世界はドストレートで負けた。技術力という点で赤子とガ〇ダムレベルで差があったからだ。普通に負けた。

 

宇宙人はこの世界に一つの大きな課題と、二つの大きな力、いくつかの技術を齎した。

 

その課題とは、エネルギー資源の開発のためであった。宇宙人の言い分としてはこうだ。

 

『我々の技術力により判明した最も効率のいいエネルギーは、ある一定の知性を獲得した生物が発する非質量的エネルギー…君たちの言葉で表すなら「感情」と呼ばれるものだ。我々は感情エネルギーの開発のために君たちを侵略した』

 

『君たちにやってもらうことはこうだ。まず、君たちの中から一部、選出した者を「#=#」……「怪人」へと改造する。君たちの技術ではたどり着けなかった生物の改造だ。火を噴き、水を操り、物質を浮遊させたり…我々にとってはそこまでの価値を感じない…宇宙的な視野でいえばどこにでもいるような者の個性だが…君たちは残念ながらそのような個性すら持ち合わせていないらしい。我々は驚嘆した。ここまで非力な生物種がかつていただろうか。……我々の中でいう君たちは、はるか昔、君たちの祖先、そのまた祖先の…人の形をしていない、水の中で揺蕩っていた小さな生き物が、現代にも生きていたという感覚に等しい…失礼ながら、君たちは一体どうやってここまで生きていたのだね?』

 

宇宙人さん迫真のDisであった。確かに宇宙人の技術力は本当にレベルが違うもので、敵意とか害意とかそんなものを感じることなく、朝、目が覚めたら侵略されてて普通にそこら辺を宇宙人さんが異生物ペットを連れて闊歩していたレベルだった。

 

『話を元に戻そう。「怪人」は君たちの世界に放流する。改造には闘争心の植え付けも行うため、たとえ相手が同胞であろうと君たちを襲ったり暴れたり…自由にするだろう。そこで君たちに生まれた怒り、悲しみ、絶望といった負の感情を収集する』

 

『次に、これまた君たちの中から一部、選出した者を「魔法少女」へと改造する。名前が違うだけでほぼ「怪人」と一緒だ。これは我々の価値観で一番近い認識に当てはめた言葉であり、正式な名称を言うのであれば「%&Q」だ。この者達に「怪人」への対処をさせる。そうすることで生まれる喜び、安心、希望といった正の感情を収集する』

 

『こうして、我々の目的たる感情エネルギー資源開発が行われる。君たちにはノルマを課す。ある一定量まで感情エネルギーを収集できなければ、我々の手によって大量破壊を行い、感情エネルギーの強制収集に移る』

 

『あぁ安心したまえ。もちろん感情エネルギーの収集には対価を用意してある。君たちの言葉でいう飴と鞭という概念は我々にも通じるものだ。君たちが持ち得ない技術、「反重力物質を利用した無重力発生技術」「細胞の変質による延命処置あるいは若返りの技術」「瑕疵なく出来る原子の複製」これらを教えよう』

 

かくして、この世界は普通に負けて宇宙人のエネルギー資源開発の場として生まれ変わった。反発する者もいたが未知の技術で次の日には反発心が一切なくなった状態になるという事件が頻発した。また、齎された技術により、食糧問題や資源問題、寿命問題が解決されたために、人類に反抗の意思はほとんど摘まれた。

 

なぜ、怪人と魔法少女なのか。それがわかりやすく旗印として掲げやすかったからだという。別に方法自体は何でもよかったが、その世界に生まれた人間という貧弱生物の価値観に合わせてあげようという配慮であった。ならほかにもやりようがあっただろうと思うが、むさいおっさんや熱血少年が戦ってる姿よりも、ひらひらのスカートをはいた美少女が戦っていた方が華やかで応援しやすいというのはぐうの音が出ない正論だった。それが嘘だというのなら、今の今までアイドルというものが流行ってるわけがない。また、自分たちでなろうと思う環境を作ることも考えなければいけなかった。その点、魔法少女はわかりやすかった。怪人と戦い、かっこよく決めポーズでもすれば、アレになりたい!と幼い子供が想うというのは至極当然の話であった。ちなみにだが、男でもなれる。いや、男がなろうとした場合、女に改造されてから魔法少女にされる。TSである。並々ならぬ魔法少女への情熱があった。宇宙人の底知れない闇が垣間見える采配だった。

 

この世界は、魔法少女と怪人に分かれ、世界を壊しては救うを繰り返すいびつな社会構造をとるようになった。

 

 

今日も一人、悪の権化たる怪人が災禍の産声を上げる。

 

 

アメリカ、某所

 

 

ガヤガヤと騒がしく活気のあるこの世界でいっちゃんの国と謳われるアメリカの街。

俺は迷っていた。日本と違って規模がデカいということはそれだけ迷いやすいという至極当然の事が頭から抜け落ちていたのだ。なんもかんもでけぇ。道路見ろよ。車道いくつあんだ?6つくらいあんぞ。そんだけ通るのかよ。人間の当たり判定なんざほぼガノトトスだ。当たってもねぇのによろけそうになる。覇気かよ。ワンピースね。見聞色の覇気が欲しい。愚痴っても仕方ないので俺は人込みを避け、ちょうどいい感じにそこらをほっつき歩くアメリカ人に声をかけた。

 

よぉ〜ニイチャンちょっといいかい?アメリカ人は顔をしかめた。くっちゃくっちゃとガムを嚙んでる黄色人種のガキは生意気に話しかけてきたからだ。しかし、見た目による補正が強かった。アメリカ人はコイツを男ではなく子供として扱った。アジア人は若く見られやすいというが明らかに子供だったからだ。身長が110cmか120cmほど。これで大人扱いされたらたちまちアジアはロリコンショタコンが崇拝する黄金郷ということになる。ただでさえアジア、とりわけ日本という国は、「HENTAI」という共通語を生み出した国だ。そこまでいってしまったら、世の変態はこぞって日本に向かうことになるだろう。世も末だ。

 

「あ?んだよ…ジャップ…だよな?妙な歩きをしねぇってこたぁチャイナじゃねぇな。似たような顔しやがって…なんのようだ」

 

おたくらに言われたくないさ。俺等からしたらアメリカ人とイギリス人の区別なんかつきやしないぜ。

DisにDisで返しながら俺はちっちゃなおててでスマホを振った。可愛げのない態度だ。

道案内してくれよ。掲げるようにスマホを見せていきたい場所を指す。此処、行きてぇーんだが道わかるか?生憎土地勘がなくてよぉ。俺はスマホをガッと拡大した。教えられた目印というものも併せて言う。地図の案内アプリでも迷う俺からしたら、地図を見せて案内しろっつーのが一番手っ取り早い。

 

「あー…こいつは遠いぞ。車で行ったほうが早い。ムリならガールに頼りな。近くに支部がある。此処真っすぐ行って2つ目の交差点を左だ」

 

初手Disってきたアメリカ人は意外にも優しかった。ついでとばかりに魔法少女支部の場所も教えてくれた。

ちょうど行く予定あっから先寄ってくかぁ。サンキューあんがとな。くっちゃくっちゃとガムを噛みなが粗雑な礼をかまし、幾分離れた場所で俺は変身した。

 

「んだよ…怪人か…あいや…ジャップで翼つったら…おい待て!」

 

翼を広げ、風をつかむ。後ろがうるさいが…どうだっていい。

教えられた魔法少女支部、その建物を見つけるために一度高く飛んだ。高所からの広域探査。索敵網に引っかかるという欠点があるものの、近場に行く分にゃ問題ない。俺は目的の建物を見つけ、急降下する。む、止まれねぇ。

 

俺は空が飛べる。しかし、俺に車のブレーキみたいな便利なものはついておらず、ほぼ感覚は人間の鳥と同じ感じなので必然的に俺のブレーキは何かにぶつかることによる停止…バードストライクとなる。渾身の体当たりだ。ガラスに熱烈なキスをかましてやる。砕けるくらいにな…!

 

よぉ〜会いに来てやったぜぇ~チーック!

 

魔法少女支部の建物、その都合よくあった天窓から俺はバードストライクよろしく激突した。

 

しかし思ったよりも天窓は強固であり、強かに叩きつけられた俺は運動エネルギーをその体に一身に受けてグロめの鳥の死骸みたいになって死んだ。

 

 

魔法少女支部

 

「キングフィッシャー!あれほど扉から来いと何度言えばわかる!」

 

へへっ、すんません。魔法少女アメリカ支部のお偉いさんに怒られていた。

ドレッドヘアーに恰幅のいい女性で、くどくどと俺の至らない点を指摘していく様は熟練のお母さん味を感じるが、実際に3児の母でもありアメリカの魔法少女を束ねるビッグマムなのでおとなしく聞くしかなかった。

 

俺、愛称というか蔑称というか…キングフィッシャー…翡翠と呼ばれている。レアリティが高い鳥である翡翠と呼ばれるのは悪い気はしない。どちらかと言えば野生の翡翠の寿命が2年、最初の数か月で生まれた半分が死ぬという儚い命の方を暗示しているのだろう。すぐ死ぬからである。

 

「で?アンタ、誰に用があんだい?」

 

いえ、チックにお呼ばれされましたんで…

俺に搭載されたパーフェクトコミュニケーションツールはなぜかこのお偉いさんをビッグマムと千と千尋の湯婆婆のあいの子と認識するので、喋ってると自然と背筋が伸びる。こえぇーの。ビッグマムと湯婆婆に歯向かえるヤツおる?俺別に名前を忘れた竜でも骨さんでもねぇし。死ぬことを計画に入れる馬鹿がどこにいますか、お嬢さんってやつとかね。しびぃよ、しびれた。アレで一気に惚れなおしたよ。ま、加入した時からずっと好きだったがな。俺は古参アピールした。

 

「チックかい。ちょいと待ちな。…チーック!チーック!今すぐ所長室に来な!」

「てかあんた、また人前で変身しただろう!通報があったよ!目立ちすぎるんじゃあないよ!」

 

パイプに声をかけた所長が俺のお説教を続けた。でもソイツぁ無理な相談でっせ所長。俺のコレはどうやったって隠せるようなもんじゃない。もう大々的に出てしまったからだ。隠してどうにかなるようなものではない。逆に隠すといらぬ勘繰りをされる。俺のコレは見せることが安全なのだ。見えているからこそ、安心を感じる時だってある。抑止力ってのはそういうもんだ。ちょうどおたくらの核みたいにな。所長は鼻を鳴らした。

 

「アンタの都合はどうだっていいんだよ。でもアンタがしたコトの責任ってのはアンタが思っているよりも重いモンなのさ」

「…帰りはウチのを使いな。一人つける」

 

おぉ、そいつはありがたいこって。俺は俺が起こしたことを棚上げしてげへへと三下手もみムーヴしているとノックが掛かる。

 

「誰だい?」

「チ、チック、チックです…マム」

「入りな」

 

扉が開いた。声をかける。そこにいたのは赤黒い髪をした長身の女であった。

よぉー、チ~ック。来てやったぜぇ~。フリッフリのうっすいスカートをはいた如何にもコスプレ染みた女だ。アメリカの女はでけぇ。全部がでけぇ。身長なんざ180を優に超えるだろう。メリハリもある。そんな女が魔法少女のコスプレしているのだ。興奮するぜ。

 

「あ、キングか。そっか今日だもんね」

 

怯えた顔から俺を視界にとらえてきょとんとした後、思い出したように笑うこの女。忘れてやがったか?俺は疑念が湧いた。そういうところがあるからだ。約束をすっぽぬかして後日、指摘されてようやく気付く。抜けてるってモンじゃねぇぜ。本当に社会人か?俺は問い詰めた。

忘れてたわけじゃねぇよなぁ。せっかく此処まで来たってのに忘れられてましたーで帰されたらたまったもんじゃないぜ。

気にした様子もなく髪を弄繰り始める。きっとマムに怒られないということにホッとしたからだろう態度に余裕があった。けっ、俺はこの女に用があるっつって呼び出されてバースト(バードストライクの意)したってのによ…んで?どうすんだ?

 

「わかってるよ。いつもの場所いこ。マム、二人でいい?」

「三人、今日の非番で…いけるのはパンサーとグロリア…どちらも相性が悪いねぇ。仕方ない、仕事中のアンディを呼びつけるよ。どうする?待ってるかい?」

 

いやいいさ所長。俺はチックとデートしてる。指定の場所で合流すりゃいいだろ。帰りはまた寄ってけばいいか?

 

「あぁ、終わったら来な」

 

「イエスマム」

アイアイマム

 

俺達は魔法少女支部を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

俺達の世界はなんか宇宙人が来たことで劇的な変化を遂げた。

 

宇宙人はどうやらエネルギー資源として俺らを見ているらしく、エネルギー資源の対価に俺らに疑似的な不老不死を与えてやってもいいといった。

 

まぁもらえるモンは貰っとくよね。そういうノリで俺は貰う方を選択した。あとから詐欺師のやり口みてぇに、契約書にサインしたよね?みたいなノリで人体改造させられ気づいたら魔法少女物の怪人になっていた。ビビったよね。普通に一週間も経たずに起きた出来事だし。声明文みたいなのが地球全体に発布されてスマホで変なアプリインストールしてアンケートみたいなの記入したらスグだったからね。そんなノリで不老不死もらえんだ?ここらでお相手の技術力で負けを悟ったよね。勝てんわ。なんなら、朝起きたら平然と宇宙人がそこら闊歩してたしね。ペットっつって海月の触手が全部腕に置き換わったヤツを見せられた時はビビったよ。握手したわ。なんかねっちょりしてた。平然と日常に溶け込んでて何の違和感も持たなかった時点でナニカされてんだよね。負けよ負け。

 

んで、改造されたやつは他にもいたが、俺含めた数人はその中でもいくらかおかしな精神性をしていたらしく、怪人の姿が他のやつらよりも大きく違っていた。

まず俺の場合、翼があった。火を出せたり雷を操ったりしている中、俺だけ翼が生えていた。そんで小さい俺になっていた。コナン君だ。身体が縮んでしまっていた…!ってやつね。リアルコナン君には翼はないが…ともかく小さい俺だ。俺が子供になっていて、追記するならそれが複数いるのだ。明らかな異常だった。目の前に俺が居る。ドッペルゲンガーで精神崩壊でもすんのかな?と思ったらこれでいいらしい。

 

どうも俺は元からバケモンみたいな精神をしていたらしく、幾つかに分割しないと改造に悪影響があるらしい。心に合わせて肉体を改造する技術であるため、心が異質であればそれだけ改造も異質になるらしい。分割した俺はそれぞれ別の能力を持っているが、分割したせいで普通に弱い。なんなら怪人の手下であるショッカー的立ち位置の奴にも負ける。

 

そう、俺は翼が生えた俺ということだった。魔法的なモンはなく全員が全員肉体的な変化なのが癪だが、特に自我が崩壊することはなかった。別端末というか…冒険の書1、2みたいな使い分けなんだよね。プレイヤーは一緒じゃんっつー。でも普通に自己認識は別々なんだよ。キャラクターの違いってやつか?まぁいい。

 

翼が生えた俺以外にも爪が生えた日常生活に異常をきたしそうなヤツ。鹿並みの角が生えたヤツ。尻尾が生えたヤツ、一見普通に見えるヤツ、俺含んで5体だった。5体のコナン君が揃ったのである。マジかよ三人寄れば文殊の知恵なら、5人のコナン君が揃ったらどうなるんだよ…!しかし、コナン君は名探偵でもあり死神としての仕事も兼任しているため、それを模倣したヤツが5人揃うということは死の運命が五重に重複しているということであり、大災害が起こる前触れであった。

 

俺が魔改造されて数時間後、俺が拉致られた施設が爆破された。経過観察というか拒否反応が起こってないか見る時間の出来事であった。結果、翼が生えた俺以外全滅。不老不死は!?と思ったが、宇宙人が言う不老不死は残機制によるコンティニューを指すらしい。残機を稼いでいない俺達は全滅し、唯一空が飛べた俺が空に逃げたということである。ちなみに、原因は怪人の力を暴走させたアホによる盛大な自爆だった。

 

俺は4人の俺を失ってどうするか途方に暮れていたところ、その爆破事故によって生まれた感情エネルギーを稼いだ人間として選ばれ、報酬となる残機や金が貰えた。残機を手に入れた俺だが、無条件で消費され、4人の俺が生まれなおした…ここで俺等は悟ったのだ。俺等は誰か一人が生き残って残機を稼げばほぼ無限の命を手にいれたということに。

 

それから翼を生やした俺は世界各地に4人の俺を放り出して死ぬリスクを分散し、こうして宇宙人に魂を売り渡した人間であるのにある程度の自由を手に入れたのだ。一時期、俺を滅殺しようとする作戦が組まれたが、俺は非力で弱いからこそ、周りのやつらに取り入るということを重視していたので、中国の俺をどうしても殺せなくて作戦は頓挫した。

 

俺等の動向はこうだ。

 

まず、話にも出た中国の俺。中国に運んだ尾が生えた俺である。以降尾俺と呼ぶが…。尾俺はある魔法少女に取り入ることにした。その魔法少女は、三十路間近の女でマッドサイエンティストであり、自分の体を少女に魔改造してもらうことで研究に一層打ち込もうというイカれた考えを持っていたのだ。ちなみに魔法少女に改造されると、持病などはついでに治癒され、疲労耐性や痛みへの耐性、肉体強化がされるという恩恵があったが、そのために怪人と戦うノルマを課されるというのは恩恵と労力が釣り合っていない…そう思われていた。

 

尾俺の登場である。尾俺はもし自分が一人しかいない状態になった時に匿ってほしかった。そして、その魔法少女は研究に没頭するために、ノルマを稼ぐための協力者が必要だった。俺達の利害は一致し、ノルマ達成のために俺が暴れてその女が倒すというマッチポンプをすることで、俺が一人になった時の保険を手に入れたのである。

その女はクソみたいな能力を持っているがために誰にも対処することができなかった。そうして、尾俺は生き残ったのである。尾俺はその女と共存関係を築いているが、関係性が殺し殺される仲という歪なものであるため、人間関係がまるでねじれ双角錐(トラペゾヘドロン)の如く難解なものとなっていた。その様子はこうだ。

 

芽衣(ヤーイー)、俺がいない間は人並みの生活をしてくれ。俺離れられねぇんだけど』

『別に(ウェイ)が離れる理由ないよね。だって僕が必要でしょ?』

『いや俺だって買い物とか色々あるからな…』

『通販でいいじゃーん…ねぇ、僕から離れるの?』

『いや…そういうわけじゃ…』

『そうだよね…離れたら殺してくれる人いなくなっちゃうもんね。殺してほしいんだもんね。欲しがり…』

『なわけ…必要だからだよ。おら、研究進めろ。終わらせて飯にすんぞ』

『はーい』

 

といった感じである。尾俺の言い分はこうだった。

 

『アイツは研究以外一人じゃ何もできねぇし、じゃあそれ放置すんのかつったら協力者なんだから見捨てるわけにゃいかねぇだろ。それだけだそれだけ』

 

尾俺はヤバイ女と共依存の関係を築いていたのだ…。

 

次に、角が生えた俺…角俺と呼ぶが、角俺はイタリアに運んだ。イタリアに居着いた角俺は最初は順調に溶け込んでいるらしかった。角がめちゃくちゃ目立っていたが、別に炎をばら撒いたり、毒を散布して甚大な被害を出すなんてことはしなかった。ただ、角が邪魔になるほど大きい少年というだけだった。怪人が出始めた時期であったためにどう対応するのが正解か見極めていた時期というのもあった。しかし、角俺は角が生えていること以外人間と変わらないので、角に荷物をひっかけてるのを可愛いと言われてちやほやされる…そんな順風満帆の生活を送っていた。

 

歯車が狂ったのはいつだったか。いつの間にか、わけわからん魔法少女に粘着されていた。最終的には殺されるらしいのだが、監禁、粘着の末、無理心中されられるらしい。俺等が稼いだ残機の主な消費元である。情熱の国と呼ばれるからなのか、あるいは角俺が妙な人間を引き寄せたのか。その魔法少女は元男であり、ショタコンであり、粘着気質で、ドMで、メンヘラ気質で自分と一緒に死んでほしいという願望を持つ闇の性癖の頂点に立つような人間だった。おまけに金持ちで権力もあり、その魔法少女は、再生の能力を持っているために死ににくく、どれだけ殺そうとしても追っかけてくるためから逃げ惑う日々だという。

角俺が海外に逃げようとしたことは何度もあるが、そのたびにお国に情報が渡り確保される。それだけその魔法少女が面倒で厄介な能力と性質と権力を持っているからだ。大人しくさせるためのコラテラルダメージ、それが角俺だった。角俺の様子だがこうなっている。

 

『翼俺!俺を助けろ!ホントヤベェ!ガワが女だからいいんじゃね?みたいな過去の俺をぶん殴りたい!マジ、な、なんだコイツ!どこまでおってくるんだよ!』

『コルノ~!!!俺だ~!!!俺を見ろ~!!俺と一緒に死んでくれ~!!!!』

『誰が死ぬかダボがッ!近寄ってくんじゃねぇ!』

『そうだ!俺を見ろ!もっと俺を罵れ!俺に愛の罵倒を!!!』

『テメェに対する罵倒に愛もクソもあるかよ!!!死ね!!!』

『イイ!凄くイイ!もっと!もっとだ!!!』

 

俺等はそっと角俺を頭から切り離した。

 

次に、爪が生えた俺…爪俺だが、爪俺はアメリカに飛んだ。自然の中に潜ませておくことで生き残る術を身に着けさせると同時にあと一人がどこにいるのかを分からなくするためだった。そのためアマゾンの奥地に置いて行った爪俺だが…野生化していた。俺等同士でテレパシーで会話することができるのだが、ものの見事に人語を捨て野生と化していた。テレパシーは言語ではなくイメージでも送られてくるため、断片的なイメージ映像をつなぎ合わせて解釈すると、アマゾンの奥地でハンターをしている原住民魔法少女とバチバチのライバル関係を築き上げているらしかった。最終的には捕食されるらしい。それを誇りに思っているイメージが伝わってきて以降、俺等はアマゾンにいる爪俺をいないものとして扱っている。しかし、ガンガンに主張してくるため、面倒臭いことになっている。意訳するとこうだ。

 

『ふ″ー"!!ふ"ー"!(俺は獲物でアイツは狩人だ。だが獲物には獲物のプライドというものがある)』

 

発言からして負け犬ムードが漂っているが、事実、その言葉の後に断末魔や唸り声的なものが聞こえた後、沈黙した。俺等は安らかな死を願うしかなかった…R.I.P

 

次に、なんも見た目が変わらなかった俺…詳しく調べると骨が強化された個体だったので骨俺と呼ぶが…骨俺はロシアに飛ばした。ロシアの研究組織にパスして、人体実験に付き合う代わりに保護を求めたのだ。結果、お偉いさんの魔法少女にペット扱いをされているらしかった。ゴリゴリに首輪をつけられて可愛がられてるらしい。普通に嫌なので脱走したりしているのだが、脱走するたびにほぼ国を挙げて捜索され確保、お仕置きされる悲しい末路をたどっていた。骨が強化されているからか耐久力の点でいえば普通の怪人よりも高いために非人道的拷問を日夜されているらしかった。アイアンメイデンは刺さる痛みよりも、体に異物が入ってくる違和感の方がつらい。そんなことを毎回テレパシーしてくる骨俺はとても不憫だった。

 

『頼む…俺は、俺は犬だったか?』

『あぁそうだ。可愛いコーシチ…。君は一生私が飼ってやろう』

『首が…首が締まる…』

『あぁ苦しいだろう。これはしつけだ。もう逆らうな…そう言っても君は聞かないからな。何度でもこうして…っふ!引っ張り上げ、首輪を締め、所有物であることを自覚させてやる…』

『うっ…』

 

断末魔を最後に気を失った骨俺はただ安寧を祈ることしかできなかった。

 

そして、翼が生えた俺。翼俺だが…俺は日本を拠点にいろんなところを飛び回っている。基本的に他4人の俺の様子を見に行ったり、各地で暴れて残機回収に励む係だ。ついでに各国の人達とあって情報を交換したり、物資を運んだりする。宇宙人のえげつない技術力により荷物の圧縮というものがまかり通る昨今、120cm程度の俺でも都市一つ分なら余裕で賄える物資を運べたりするのだ。ちなみに人力…普通に航空機などで運ぼうとすると、愉快犯の怪人に落とされるので自ずと俺や一部の飛べるタイプに任されているというのが現状だ。魔法少女や一般の怪人も浮けはする。浮遊だ。しかし、短時間しかできないため、飛べるタイプというのは重宝されるのだ。

 

怪人は人類の敵だ。人類の敵であるのだが…正直なところ、敵をやらないと宇宙人に甚大な被害をもたらされるので必要悪みたいな立ち位置だ。あと中身は普通の人間なので、俺でいうなら、日本人として米と味噌、醤油を捨てることができなかった。比較的日本の味方をしながら活動しているのである。

 

そう、俺がここに来た理由の一つは日本で暴れられないから、アメリカでいっちょ暴れてやろうという算段である。魔法少女を管理する組織…そのアメリカ支部に足を運んだのは、今から俺は暴れますよという暗示だ。まぁチックの約束が終わったらだが…。してチックよぉ。お前の話ってのは何だ?

 

いつものカフェで席に着き、コーヒーを頼んでは問いかけた俺に、チックは幾分か躊躇い…言葉を選んで淀んでは…意を決したように言葉を発した。

 

 

「あのね、その…私のために死んで」

 

 

他4人の俺が悲惨な目に遭っているように、翼俺は圧巻の殺害宣言を受けるのだった。

 

 

tips

魔法少女、怪人は改造されるときに、世界に存在するすべての言語が理解できるように改造される。




感想評価よろしくお願いします。
2024/06/11 少しばかり内容を修正しました。
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