ダニが苦手な方ご注意を
チック
それは目の前にいる女の愛称、いや魔法少女をやっていくうえでの芸名みたいなものであり、基本的に魔法少女の裁量によって名付けられる。主に自分の能力をもとにした名前が多く、次点で魔法少女になる前の渾名などであることが多い。
チック
アメリカの片田舎で生まれたその女はアメリカを象徴するように大きく育った。身長は高く肉付きもいい。アメリカでは珍しくなった黒髪というのも目を引く要素だった。順風満帆な生活を送っていた女だが、転機が訪れる。
チック
それはアメリカでは小さな生物、特にダニに対する全般を指す。
あの小さな、アレルギーの原因を引きおこす一般的に害虫と呼ばれる生物だ。
チックは魔法少女としてダニの力を扱うことができる。そんな魔法少女居ていいのかよ。しかし、それがまかり通ってしまうのが宇宙人の技術力だ。
チックは魔法少女になることで得られるメリットに目を付けた。持病や疲れへの耐性等の効果、その中に若さを保つ効果があった。チックはそれに飛びついたのだ。
ではなぜ、チックはダニだったのか。それはチックのリソース不足からくるものだった。人間にはリソースというものが存在する。
言ってしまえばどれだけ能力を付加できるか、どれだけ身体能力を拡張できるか、そういったものだ。人間は宇宙人と比べてはるかにリソースが少ないため、既存のものを真似したほうがリソース消費が重くならない。
だから、魔法少女は大体既存の生物や現象を模倣している。たまに、リソースが桁違いのやつが生まれると、そいつは宇宙人により近い能力の付加が行われる。
チックは別に特別な人間ではなかった。ごく一般的な家庭に生まれた女だった。血統や祖先に偉大な人間を持たないありふれた人間だ。
しかし、宇宙人の調査によればなぜかダニに対する適正が異様に高かったのだ。宇宙人は言う。ダニとして生まれたらダニの頂点になっていただろうと。
チックは生まれが違えばダニの女王だったのだ。ろくでもない自分の適正を知ってチックは絶望していたが…現実は非情であり幸運でもあり、チックはダニではなく人間として生まれた。
チックは俺と出会ったことでそのことに前向きに考えるようになった。奇跡的に人間に生まれたことを喜ぼうと俺が雑に諭したからだ。
結果、魔法少女の力として、ダニの力を手に入れたチックは、その力を振って前向きに魔法少女の活動をしている。
ダニの力は多岐にわたる。一般的にノミだけと勘違いされるが跳躍できる種類もおり、また水泳能力や糸を吐く力もある。これは、ダニがサソリやクモといった生物に属しているからであり、本来なら糸を風に流して空を飛ぶバルーニングを行うのだが、人間大でそういったことはできないため、糸を吐く能力だけに限定されている。
また、ダニの一番の能力としてあげられるものがある。それは吸血だ。
ダニの吸血は、一部の種類に限定されるが人間にとってとても厄介で、吸血された際にアレルギー性疾患を起こしたり傷口から化膿して病気の原因にもなったりする。
チックはこれらの多種多様なダニの能力を持ち合わせている。しかし、悲しいことにダニとしての側面も持ち合わせてしまったのだ。
アメリカ、行きつけのカフェ
「あのねキング。血が、血が吸いたいの。貴方の血。いっぱい欲しいの。大丈夫…ちょっと痒いだけ。すぐに気持ちよくなって、すぐに終わるから」
チックは血に飢えていた。完全なる飢餓状態だった。ダニの吸血としての側面持ってしまったがために、人間、ネズミ、猫といった生物を食料としてみるようになってしまった。絵面が完璧ホラーであるため、周りから忌避されている。そのため、食糧を人間、それも俺に限定して血を吸うことで、社会になじむ努力をしているのだ。
カフェの二人用テーブルに座った俺達は、とりあえず注文をした。チックはその間もずっとそわそわしており、両手をテーブルに投げ出している。それはまるで自分にはなにもやましいもの等持っていないと示しているようだった。手を握っては開いて、握っては開く。かと思えば、手首をこすりだす。明らかになにかを我慢しているようだった。こちらを見つめる目は熱い。ふっと目線を持ち上げて交差すれば、サッと目線を逸らされるが…すぐさまこちらに視線が向く。熱視線だ。燦然と輝く眼光は、空腹の獣の目の前に最上級ランクの肉を投げおいたような有様だった。今までは俺を見ていなかったから空腹を別の何かで逸らしていたのだろう。そう、獲物となる俺を目の前にして理性が断ち切れそうになっていたのだ。
俺は顔を覆った。チック、いい加減わかってくれ。いいか?確かに俺は死んでもリスポーンする。だからお前にとっていい食糧だってのは理解している。でもな。俺だって元が付くとはいえ人間だ。わかるだろ?
死にたくねぇ
俺は迫真の声でそういった。
「わかってる。わかってるよキング。でも…が、我慢が…」
手が震え始めた。末期状態だ。俺の死が目前に迫っている。死んでも生き返るのなら死んだって良いと思うかもしれないが、別に死が辛くなくなるわけじゃない。死は何度でも経験できる史上最も苦しい痛みになり下がった。一度しか味わえないというのが理解できる。こんなもの、何度も体験してしまえば人間発狂してしまう。しかし、宇宙人の超技術で発狂を防がれてしまっている俺は、ただただその痛みを享受するしかない。俺はどうしても死にたくなかったので、みっともなく命乞いをした。
なぁチック。わかってくれよ。
確かに、お前と出会った時、俺は善意でお前に血をやった。そして、お前に前を向くように諭して、お前がやっていけるまでついてやった。
そこに下心がないとは言ったら嘘になる。俺はお前を利用したかった。
だから、俺にも罪悪感があって、お前はその罪悪感に付け入って俺の血を吸って、結局理性が立ち消えて、俺は干からびるまで血を吸われたわけだが…
今のお前はそんな可哀そうな俺に付け上がって俺を食料としてみているんだぞ。人としてダメなことだ。人の善意を食い物にしちゃいけない。道徳で教わらなかったのか?
文字通り食い物にされた俺は必死だった。別に血を吸われることは正直なところ嫌じゃない。いや、嫌ではある…嫌ではあるが…マシだ。他の死に方がろくでもないので、女に血を吸われて死ぬということが俺の中じゃ楽な死に方となっている。なんなら、綺麗どころだしプラスかマイナスかでいえばプラスじゃね?そう思えてしまっている。俺は汚れてしまった…悲しい。
チック、頼むよ。魔法少女としての力に影響されるのも分かるが、別に普通に生きていけるはずだろ?ヤギの能力を手に入れたヤツだって、若干ヴィーガンというか菜食主義者っぽくなったが、普通に肉も魚も食べていた。たまにヤギっぽく鳴くのが持ってかれてしまってる感あるが…
しかし、そんな懇願もチックには聞こえていなかった。もう限界らしく、目は充血し始めている。グロイグロいグロい。例え綺麗な女であってもバッキバキに目を開いて充血させている様は怖い。しかも、俺は120cm弱のショタで、チックは180を優に超える高身長美女だ。そんな女がショタにバキバキの充血した目で見据えている状況、はっきり言わなくても分かる。事案だ。俺は被捕食者であることまざまざと見せつけられていた。食べられてしまう。それが、ただ怖くて俺は小動物のように震えていた。
そこに救いの手が差し伸べられたのは、チックが俺の手を握って、触り心地や腕の細さを確かめているときのことだった。美味しそうとか思われてんのやだなぁ。俺腕からいかれんのかなぁ…そんなことを思っているときだった。
ガッと後ろに影が差す。見上げれば後ろに女。長い髪だ。腰まである。胸がデカい。男の欲を全部詰め込んだらこんなデカさになるだろうというデカさだった。というか全体がデカい。2m弱ありそうだ。全身が黒で包まれていて、魔法少女というより悪の女幹部といった出で立ちの女が俺の背後に立っている。切れ長でクールな目がこちらを見下ろし、ジッと俺を見ていた。キレる女上司といった風貌だ。女が急にしゃがみ込み、俺を椅子越しに抱きしめる。耳元でささやいた。低音ハスキー…甘く蕩けるような…端的に言えば下腹部にクる声だった。
「お前の血が見たい」
その声…!その姿…!禁断の二度刺し殺害宣言をしたその女は…!
俺がアメリカで最も頼りにしている元男。自分が求める女の理想像が高く、自らその理想の女になってしまった悲しい過去を持つ元男…その名は……
アンディ!
「お前の血は私だけが浴びればいい」
追記すると、コウモリの能力を持つ魔法少女だ。
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カフェは一気に修羅場と化した。
二人の女が一人の男を取り合っている。その実、中身は捕食者二体が被捕食者一体を取り合っている状況だが、周りから見ればそうではなかった。しかも、その男は明らかに未成年であり、未成年を女二人が取り合っているという絵面は完璧ポリス案件だった。しかし、通報はされない。なぜなら、その女二人は魔法少女であり、その未成年もまた翼が生えていることから怪人であることは明らかだったからだ。魔法少女と怪人というのであれば、それは女二人のキャットファイトから市民の危険を未然に防ぐ功労者二人というフィルターが掛かる。その姿を目にした客たち店員たちは魔法少女二人に感謝し、そそくさとその場から離れていく。…俺を置いて。
気づけば、この店には俺達三人だけとなっていた。他に人気はなく、人目もない。だからこそ、女二人は牙をむき出しにしてそれは自分の獲物であることを主張し始める。
「カワセミ…お前は気安く体を売るんじゃない。こんな女にまで…はしたないぞ」
俺は自分の理想の女に自らなってしまった元男という業の深い闇を持つ女に貞操の乱れを指摘されていた。どうやら、アンディ以外に血を与える行為は、アンディからすれば身売り、花売りと同じようなものであるらしい。確かに物理的に体を売ってはいる…対価は貰ってないが…。あれ?じゃあ俺損してるだけじゃね?
「キングから離れてください。大体…貴女は誰なんですか?」
チックは負けじと噛みつく。その目は被捕食者を見る目から完全な敵を見る目となっていた。獲物を横取りされそうになった肉食動物の目だった。
「私か?私はカワセミの女だ。」
「はっ?」
あ、修羅場りやがった!一気に空気が冷える。冷房でも付けたみたいだ。肌寒くてぶるりと身を震わせれば、アンディがばさりと腕から飛膜をはやして俺を包む。俺は椅子越しに抱かれ、顔だけのぞかせた状態となった。
アンディはコウモリの能力を持った魔法少女だ。チックと同じ吸血能力を持ち、空を飛べる。俺の帰りの足だ。あと超音波を出すことができ、エコーロケーションをすることができる。それで俺を見つけたのだろう。魔法少女いや、怪人を含めた中でも数少ない空が飛べるタイプということになる。
アンディは使える女だ。業が深い女だが…俺と同じく空を飛べることで広範囲に移動でき、またエコーロケーションで俺をすぐに見つけてくれる。魔法少女としての力も優れており、そこら辺のショッカー的なやつにも負ける俺からするとボディーガードとして適任なのだ。元男だが…俺はLGBTに配慮できる男。理由が例え理想の女を求めるがあまり自らなったというものだとしても、目を瞑ることができる。ぶっちゃけ女の見た目しててまともならいいんじゃないか。4人の悲惨な目に遭っている俺を思い浮かべるとそう思えてしまうのだった。
「カワセミは便利な女が好きだからな。空も飛べん時点でお前は落第だ」
ちょっと待ってつかぁさいよ!俺は弁明した。
そりゃあ俺は空が飛べて、いろんな所行けるから、じゃあいっしょに行動するならだれがいいつったら俺と同じように空飛べるやつ上げるさ。行動できる範囲からして別モンだからな。人間行けるところがおんなじ奴といた方が過ごしやすいってモンだろう。地域差って奴だ。日本でいう関東住と関西住で分かれてたら、遊ぶ約束とかしにくいだろ?だったらおんなじ関東住のやつとつるんだ方が楽ってのはそうだろうよ。これは遊びたい遊びたくないとかじゃなく、コストの問題だ。
便利な女っつーのはそこから来てる。いつだって約束を取り付けやすいんだよアンディは。普通に日本に呼びつけても来てくれるしな。
「あぁ、お前の頼みなら断る理由がない。それにお前は公平でいてくれる。俺を頼ったら今度はお前が俺の頼みを聞いてくれる。お前を好ましく思う理由の一つだ。」
よせよ。当たり前だ。俺はダチに貸し借りを作りたくない。それらを作ってしまえば途端に気の置けない仲から気を使わなくちゃいけない仲になる。そんなの息苦しくて仕方がねぇぜ。
「私も…キングが言うなら日本行くけど」
そういうことじゃねぇんだよ。これに関しては持ってるモンの違いだ。お前にゃお前の得意があって、俺にゃ俺の得意がある。アンディと俺はたまたまその得意が合致したってだけだ。だからよくつるんでるっつー話だよ。
「ふーん…まぁ、アンディ…さん?はキングを気持ちよくできないもんね?」
「はっ?」
あ、また修羅場った!空気が急転直下で氷点下だ。心なしか、俺を抱くアンディの力が強い。俺はアンディと目を合わせられなかったからだ。
「カワセミ…どういうことだ?話してくれるまで返さないぞ…!」
いや違うんすよ。これは深いわけがあって…
「キングは私に血を吸われると気持ちよくなるんだよ?知らないの?…それとも、貴女の吸血は気持ちよくないんだ?」
チーック!!!何も言うんじゃあない!首が!首がどんどん!!
抱きしめられているということは俺はアンディに命を握られているということであり、この状況は非常に不味い。抱きしめた腕がぎりぎりと絞っていく。それに伴って俺の首もどんどんしまっていく。俺は必死だった。
そうじゃあない!そうじゃあないんだアンディ!コイツの魔法少女としての力はダニだ!ダニってほら!吸血能力あんだろ!?そんでコイツに吸血されるとアレルギー性の炎症かなんかを発症すんだよ!すんげぇ弱かったり強かったりまちまちなんだけどよぉ!弱かったりするとじんわり痒くなるんだよ!!そんでコイツ、それをわかってやって痒くなると歯で甘噛みしたり舐めたりするんだよ!痒い所掻かれると気持ちいいだろ!?それをやってきてんだよ!!俺はコイツに汚されたんだ!!もうお嫁にいけない…!
「ふふっ、キング気持ちよさそうだから…血を吸うお礼にサービスしてあげようかなって」
チックは勝ち誇ったように嗤った。アンディはそれに静かな殺意を募らせ
「カワセミを拐かして誑かして…汚したのか」
一気に噴出した。
アンディの体からコウモリが湧き出る。眷属体の召喚だ。主に銃弾の肉盾や攪乱に使われるソレ、抑えきれない感情が形となってあふれ出したものだった。
「私の吸血はキングが気持ちいいようにもしている相互にメリットがあるもの…貴女のソレは独りよがりなんですね」
対するチックも我慢ならないのだろう。ぞわり、黒い影が波のようにのたうっている。よくよく見ればそれはダニだった。ダニの大群、それが波打つようにうねっている。
ダニとコウモリの衝突…それは一見後者が勝ちそうなものだが、以外にも拮抗していた。ダニの的が小さいのと、コウモリ一体に付き数十匹のダニが取り付いているのだ。グロイ。見た目がグロイ。
アンディは俺を離し、チックもまた席を立った。互いの眷属はぶつかり合い殺し合い、カフェを無残なものへと変えていく。こ、こんなところにいてられっかよ!俺は床に散らばるコウモリの死骸やダニの死骸をよけながら一目散に外に出ようとした。
バァン!
ダァン!
ピィ!
俺は二人に両手を取られて壁に押し付けられていた。ちょ、ちょっと待ってくれよ…!俺死んじゃうって…!死ぬ、死ねるから・・!な!?わかるだろ!?俺は小さくてか弱いんだ。頼むよ…へへっ
「カワセミはここだ」
「キングはそこに座ってください」
俺はアンディに引っ張られ、チックが置いた椅子に座らされた。慣れた手つきで俺を椅子へと縛っていく。なに?なんなの?縛る必要ある?
「獲物に逃げられたら堪ったものじゃないので…それにこの女を始末しないとゆっくり食事も出来そうにないので」
「カワセミ、そこで見ていろ。この売女を始末してお前の血を浴びてやる。私が一番だと刻み込んでやる」
食糧としてしか見ていない女が二人、利害の一致で俺を椅子に縛り付けて、ここに捕食者と捕食者の戦いが始まろうとしていた。
渦中の俺を差し置いて始まった魔法少女同士の戦いはそれはもうひどいものだった。
アンディは空が飛べるからイニシアチブはアンディにある。高所を取ったアンディは携帯していた武器、ショットガンを構える。魔法少女は身体能力が高く肉弾戦するものが多い。しかし、怪人だろうが魔法少女だろうが、相手は元人間だ。耐久力も能力に即したものでもない限り限界がある。そもそも怪人や魔法少女は銃口を向けられるといくらか怯む。怯まないのは軍人ぐらいだろう。民間人が多いから、銃口を向けられるといった経験が少ないためだ。そのため、ショットガンなどの銃火器は魔法少女でも怪人でも一定の効力がある。
対するチックは面白いことに糸を出した。ハダニに連なる種類が出す糸であり、人間大であるその糸はロープのようであった。伸縮性に長けている。それを壁や街灯に飛ばし、人力立体起動に使っていた。上から降り注ぐ散弾の雨を巧みに躱している。
しかし、遮蔽物などをうまく使って攪乱しようとするチックに、アンディは狙いを外さなかった。エコーロケーション、位置は常に把握している。銃火器とのシナジーが次第にチックの逃げ場所を狭めていった。じり貧だ。チックはそのことを理解しているのだろう。賭けに出た。
チックはおもむろに地面をたたき出した。ガンっ!ガンっ!と地面を罅割れさせていきコンクリートの破片を作り出している。何をするか…そうか!チックは対空兵器を作ろうとしていたのだ!糸の先にコンクリ破片を付けては固定し、それを複数作り出していく。即席の複数フレイル…!アンディが遮蔽物を躱して散弾を打ち込もうとしたときにはもう完成していた。
「なかなかにやる…が、悪あがきだな」
「それはどうですかね…?」
チックは体をくるりと回す。それに合わせて糸の先のコンクリ破片もくるりくくるりと回っていき、遠心力が次第に殺傷能力を上げていく。身体を斜めにひねって繰り出される右下から左上にかけて振るわれた即席フレイルは、躱そうとしていたアンディの片羽を持っていった!
地面へと墜落するアンディに追撃を仕掛ける。寸分たがわぬ狙いで振るわれた即席フレイルが地面へと落ちるアンディをさらに地面へと叩きつけようとした瞬間…!アンディはその状態からショットガンを発砲した。
「ガッ!?」
「うぐっ!!?」
地面へと墜落したアンディは鈍い音とうめき声を、まともにショットガンを食らってしまったチックは後ろにのけ反って倒れた。
相打ちだ…どちらも死にかけている…!
「キング…血、血を…頂戴…血…血…」
這這の体でこちらに這いつくばってくるチック。足を持ってかれたのだろう。腕だけで近寄ってくる様は麻薬中毒者のようだ。
「私゛の゛血゛だ゛ぁ゛…!!」
地獄の底から響くような声で飛膜と足で手負いの動物のように近づいてくる。対してこちらは捕食者の体を崩さなかった。
二人は互いに互いを押しのけながら俺に近づき、あと一歩、あと少し手が届くところで力尽きた。
「血…を……」
「私の…血…」
終ぞ俺を食糧としか認識しなかった二人の、その命が途切れる最後まで獲物を食べることへの執着心を見せつけられた俺は、椅子に縛られ放置された状態でさめざめと泣いた。
tips
怪人と同じく魔法少女もリスポーンする。また魔法少女に残機はない。残機無限だ。魔法少女が倒れることはあってはならない。そうした想いがシステムに反映されている。
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