闇のショタコン教団、小教会
闇の中からヌッと湧き出て土下座を晒した仮称:色魔に俺はただただ気圧されていた。いつの間にか静かになった信徒に目を向けると、全員両膝をついて両手を組み、俺に向けて祈りの姿勢を取っている。目だけがこちらを向いていて、俺はそれがとても怖くてアンディの後ろに隠れた。やってることがほぼショタガキであり、それがどうやら、闇のショタコン共の琴線に触れたらしく、途端に獣欲がはみ出してくる。獣の眼光…チックやアンディとはまた違った捕食者の視線だった。
「へへっ…そそるぜ」
「可愛い仕草すんじゃねぇの…誘ってんのか?」
「その可愛い顔をもっと見せろぉ…」
「私を膝の上に載せておしゃぶりを咥えさせろ」
おい一番最後のヤツが一番やばいってぇ!?俺は恐れ慄いた。性癖の闇が…!闇が深い…!しかし、どうやら色魔は違うらしい。敬虔で固い信徒であるらしく、その姿に怒りを燃やしていた。
「欲を抑えきれない背教者め…!今一度徳を積み直しなさい!」
色魔が信徒の頭を思いっきりはたく、その威力はやはり怪人のもので信徒は頭から地面に刺さった。再度、俺を見据え、土下座をする。怒涛の連続殺害事件が起きてしまったことに動揺が抑えきれない俺は赤べこのように頷くしかなかった。
「不始末は付けました…どうか、どうかこの者らにお許しを…」
お、おう…よくやった…?でいいのか?全然許す。俺を守ってくれたんだからな。俺は噂に聞くヤベェ女に寛容だった。何故なら、直近の闇のショタコン教徒が怖すぎて、ストックホルム症候群みたいになってたからだ。コイツもヤバイショタコンであるはずなのに、なぜだかいくらかマシに見えて、ヤバイショタコンに与えちゃいけない水をやってしまった。
闇のショタコンはつけあがった。
「おぉ…!慈悲深き神よ…。願わくば、願わくばわたくしめに御言葉を授けてください…どうか、どうか…『豚にしてはよくやったな』…そう神の御言葉を」
そんな神の言葉があってたまるかよ…!しかし、助けられたのは事実なので、やむなし…俺は言おうとした。…が、アンディがそれを止めた。どうしたアンディ?
「カワセミ、お前はそういうところがある。変な所で義理堅い。それは長所でもあり短所だ。絆されるな…ソイツはここ、闇のショタコン教団支部の長だ。マッチポンプである可能性を考えろ」
俺はアンディの言葉に冷静になった。
む…そ、そうか?そう…だよな。目的を忘れそうになっていた。俺はココにカチコミをかけに来たんだ。そんで、ソイツが、色魔がココのトップって言うなら、俺は色魔をぶちのめさないといけないのだ。俺は当初の目的を思い出した。
やい色魔!俺のダチのアンディを拷問しているらしいな!ソイツをやめてもらおうか!じゃねぇと痛い目見るぜ…?色魔は俺の言葉に目を輝かせた。
「それは神自らが罰を下してくださるということで…?おぉ…神よ!わたくしは報われるのですね…!では失礼して…」
キャーー!!!!!!
「神がわたくしを認知している…!」
おもむろに服を脱ぎだしてこちらに迫り来る色魔に俺は二度目の悲鳴を上げた。その悲鳴に色魔は妙な興奮をしている。鼻息がさらに荒くなって迫ってきた。俺はたまらず叫んだ。
確かに俺は女にちやほやされてェけどさぁ!半裸になって鼻息荒く近づいて来るヤツは勘弁してつかぁさいよ!てか逆逆!男がそれやるもんだろうがよ!俺が悲鳴上げてどうすんだ!野郎の悲鳴なんざ需要なんてないだろうがよ!
色魔は反論した。
「何をおっしゃるんです神よ!ショタの悲鳴は万病に効くアニマルセラピーなんですよ!そう…ちょうど猫のゴロゴロ音と一緒です…!」
確かにアレ医学的な効果あるらしいけどさぁ!ショタの悲鳴が効くって言うソースどこだよ…!大体俺はショタじゃねぇ…!ショタモドキだ…!お前はコナン君をショタ扱いすんのかよ…!
色魔はさらに言い募る。
「ショタは万人に宿ります。わたくしにも、神にも…貴方はショタであれという御心を持っています。それがわたくしたちを希望に導くものであるのです…ご理解を」
俺は…!中身がショタじゃねぇショタはショタと認めねぇ!
俺は勢いで自己否定した。しかし、それは紛れもなく本心であった。俺はコナン君をショタとは認められない。中身が大人であることを俺は許容できなかった。そう、俺がおねショタを求めて、例えばアンディをおね側に据えて俺がショタ側になったとしても、それは真におねショタだとは言えないと…俺は思っている。俺がおねショタを自分でやろうとしても、それはただの自己満足で欺瞞だった。真のおねショタは、ショタが無知でなくてはいけない。性を知らぬ、純真無垢がおねえさんという存在で色を塗られていく。愛欲、情事、甘い色、それらが真っ白なキャンパスに塗られていく様が、真のおねショタであると信じていた。だから、汚れてしまった人間が、俺が例えショタに回ったとしても、それは真のおねショタだとは認めない。それは信念…いや信仰に基づくものだった。俺はおねショタを信仰していた。
そして、色魔もまた別種のおねショタを信仰していた。
「神よ…!違う!それは違うのです…!人は生まれながらに穢れている!純真無垢なショタなど世界に存在しないのです!性に無知ではいられない程、この世界は知ることが簡単になってしまった!タップ一つで色を知ることができるようになってしまった…!原理主義は廃れてしまった…!だからこそ!新しい在り方を…!新しい信仰を…!模索していかねばならないのです…!貴方のそのショタでありたいという御心が!その御姿が!我々を導いてくださる希望なのです!ショタであれ!無垢であらんとするその姿が…!」
えぇい…!俺は諦めてはいないぞ…!必ずどこかに!真のおねショタを体現したショタガキがいるはずだ…!ワンピースを手に入れたショタガキが…!この世界のどこかに…!
俺は希望を捨てられなかった。どっかの偉い人は言う。人間が想像できることは必ず実現できることであると…!俺が求めているのは犯罪で…!それがあってはならないと司法が決めたものであっても…!俺たちの頭の中にある限り…!それは存在する…!実現できるものだと…!信じたいじゃないか…!
俺は見たい…!真のおねショタを…!俺が求めた理想郷を…!
「神よ…!それは無謀なことです…!貴方はご自身を試すというのですか!人よ、神の全能を試してはいけない…!それをあなた自身が…!貴方は貴方自身を殺す石を作ろうとしている…!自己消滅してもよいのですか…!」
俺は信仰に殉ずる覚悟がある…!俺は俺を試した人を愛そう!俺は俺に試練を課した人を愛そう!俺はおねショタが好きだ!だからこそ!それが例え幻想のものであろうとも…!一分の可能性があるというのなら…!俺は探し続ける…!神が最初に諦めるのは神ではないことの証明だ!!俺を神と崇めるのなら、俺を信仰とするのなら…!我が道、我が信仰に従ってもらうぞ…!俺は今まで散っていった同胞を…!信徒を…!その心を…!捨てはしない!見捨てはしない…!俺は俺自身を信仰する宗教を信じるぞー!!!信仰は!!!たとえ神であっても濁りがあってはならないィー!!!!!
「神ィー!!!!!!!!」
俺と色魔は共鳴した。そうか…お前は…!
宇宙人に改造された怪人…それもリソースが桁違いに多く宇宙人に近い形に改造された怪人は宇宙人特有の未知の能力を持つ。その一つに感応というものがある。心と心で繋がりあう力だ。俺と色魔はおねショタ信仰という点で心が共鳴した。
俺に色魔の記憶が流れてくる…!それは苦難の記憶だった。
色魔はハイレベルの変態だった。各地を飛び回る記憶が見える。様々な国の、様々な人がいる。気持ちを同じくする者、業が深い聖人のロリコン…、おねショタに見せかけたショタおね…、艱難辛苦を乗り越えて、時にくじけそうになりながらも、時に心折れそうになりながらも…草の根をかき分けてまで真のおねショタを探して…とうとう見つけられなかった。宇宙人に認められるほどの才覚を持つ変態であっても、その存在を証明することができなかった…!そうか、お前は信仰に殉じ、そして信仰に裏切られたのだな…!だから、新しい信仰を探そうとした…!今まで信じてきた教えを捨てる覚悟をしたのだな…!
色魔は信仰する宗教と時代が違えば、歴史に名を遺すレベルの偉人だった。信仰に篤く、敬虔で…そして自らの教えを間違いだといえる覚悟もあった…!そんな奴が潰れていくなんて俺は許せねぇ…!
大丈夫だ…!俺が共に居よう。お前のその努力は決して裏切られるものではない…!お前の信仰…確かに受け取ったぞ!
俺は現実へと戻ってきた。意識を色魔へと向ける。色魔は泣いていた。泣きじゃくっていた。膝から崩れ落ちて…頭を抱えて…子供のように泣きわめていた。
まるで自分がどうすればいいのかわからないというように。行き場を無くした子供の慟哭が…助けを求める子供の声が…そこにはあった。
「神っ…神よ…わたくしは…どうすれば…」
たとえどれだけ信仰に篤く、聖人だと讃えられるような人間でも、迷える子羊には変わりなかったのだ。俺はたまらず近づいて色魔の頭を抱えてやった。
良いんだ。いっぱい泣け。お前は十分やった。ただ、少し休みが足りなかったんだ。確かに信仰に殉ずるのもいいが、俺は寛容だ。一日…いや一週間くらい休んだってかまわない。信仰は生きる知恵であって支えにすれば、いずれどこかで破綻する。俺は信徒のそんな姿を見たくはない。信徒には、お前には…健康で無辜な民であってほしい。この願いは我儘だろうか?
「神よ…」
あぁ、いいんだ。よし…そうだな。認めようじゃないか。お前の献身、お前の信仰、お前の姿を。色魔、お前の名前は?
「お、おぉ…わ、わたくしめの名はヘイリー…ヘイリー・スヴェルと申します。御耳汚しを…」
いいんだ。ヘイリーか、いい名前だ。ではヘイリー。お前を正式に、俺の使徒と認めよう。お前は今後、俺の使徒を名乗ることを許す。…わかったか?
「あ゛っ゛…あ゛あ゛ぁ゛…神よ…!ありがとうございます…!使徒の名に恥じぬように務めます…!」
そうか。では最初の使命を授ける…今は休め。心に安寧を。肉体に平穏を。お前は今一度足を止めるべきだ。今まで積み重ねてきたおねショタの、その信仰の結果を振り返り、その魂の慰めとしろ。わかったな?
「神の御心のままに…」
その言葉を聞いた俺は安心したのか意識が途切れた。色魔と心で繋がりあったために色魔に多大なる影響を受けてそれに引っ張られ、自らを神と名乗ってしまうようになった俺には、感応という力の大きさに耐えられず脳の処理速度が限界になって停止、俺は気絶してしまったらしかった。目が覚めると色魔はどこにもおらず、俺を介抱していたアンディが言った。
「カワセミ…性癖はほどほどにしろ」
へっ、理想の女になったお前に言われたくねぇぜ。俺は鼻をこすりながら言った。
そうして、闇のショタコン教団カチコミ事件は幕を閉じた。
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魔法少女支部、お説教部屋
いや別に解決もクソもしてねぇわ。なんだこれ。魔法少女支部に行くと問答無用で拘束具をつけられてお説教部屋に叩き込まれた俺とアンディだが、俺は今回の事件を冷静に振り返った。
最初のカチコミの理由たるアンディの拷問をやめるってのどっかいったし、色魔ってやべぇ奴いるし、ソイツと普通に性癖談義して意気投合してサヨナラばいばいしただけじゃねぇか。それに途中で俺に罵倒を求めてたのがなくなるわけじゃねぇ。なんだよ。豚にしてはよくやったなって。それが神の言葉ってその宗教終わってんだろ。てかなんだよ神って。びっくりしたわ。確かに、俺は真のおねショタを求めている。しかし妥協もできる人間だ。別になかったらなかったで自前のやつで満足できるし、何なら女にちやほやされるから自前の方がいいすらまである。ノリと勢いでいうモンじゃねぇな。なぁアンディ。
「あの時のお前は何かに憑りつかれているようだったぞ。それこそ、信仰に憑りつかれているといってもよかったほどだ」
へへっ、よせよ。俺をあんなヤバいヤツと一緒にしないでくれ。俺は鼻の下をこすろうとしたが掻けなかったので、ごろんとアンディに転がり込む。アンディの太ももに鼻をこすりつけて興奮した。
「カワセミ…そんなんだから勘違いされるのだ。手を出されたとしても文句は言えないぞ」
別に減るもんじゃねぇし良いじゃねぇかよ。それに…俺と同じように手足を拘束されてんだから手を出せるわけねぇだろ~。俺はイキった。アンディは絶世の美女といってもいい肉体を持ち合わせているので、中身が男であっても別にかまわなかった。再三言うがTSに理解があるんだ。俺。アンディの肉体は完成されているといっていい。男が好きそうな肉体と言えばわかるだろうか。同性からしたら太ってるといわれそうな、しっかりと肉がついている身体だった。俺は別になんでもかんでも太ければいいって派閥じゃねぇ。何事もバランスだし、細ェヤツも好きだ。昨今は太ければいいって感じのが多くて、最近になってようやく細いヤツの供給が来た。俺は雑食だが、細いヤツしか好かん奴からしたら、ソイツは砂漠の中で見つけた一滴の水だろう。誰だって食いつくだろうさ。何が言いたいのかというと、極上と評することができる女とこうして触れ合えることがたまらなく幸福であるということだ。我が世の春だぜ…!
「ふっ、手足が使えずとも…!」
アンディがそう言って、俺に向けて倒れこんでくる。身長差、体格差でむぎゅりと押しつぶされた俺だが天国だった。そうか…ここがエデンか…。俺が勝手に理想郷にたどり着いていると、アンディは俺の首筋にもぞもぞと体を動かして狙いを定め、牙をぶっ刺した。
いってぇ!
「ふふっ…油断したなカワセミ…私もお前目当てなのだぞ…横入りする女なぞ許せるわけなかろう…」
あ、アンディ!それ以上はヤバい!血が…!俺は命を吸われていた。
「私を助けてくれるはずじゃなかったのか…?啖呵を切ったカワセミはかっこよかったのにな…」
ぐっ…俺も男だ。そう言われると後には引けなかった。
けっ、吸えェ!いくらでも吸ってみやがれ!お前を受け入れてやる…!妙なプライドを刺激されて俺は無抵抗でされるがままになった。
「単純な男だ…。元男だからな…こうしてやればいうことを聞いてくれる…」
てめぇアンディ嵌めやがったな!元男…それが男心を擽る煽りをしてくる。ずるい…いい女が過ぎる。くっ…俺の中の女騎士が敗北宣言した。
「男に二言はない。…そうだろう?」
俺は甘く蕩けるような声に囁かれて悪い気はしなかった。アンディになら誑かされてもいいという想いがあった。俺は強がるように言った。
あたりめぇよ。それに借りは返すって言ったからな。チックに食べられそうになった時の借りを返せていねぇ。これで貸し借りなしだ。遠慮せず飲みな。
俺の許可を待っていたといわんばかりに血を吸う勢いを上げる。ちょ、はや、早い…!
「あぁ…カワセミ…美味しいよ。お前の血は」
アッー!!!
そうして、アンディにカラカラに干からびるまで血を吸われた俺は、ビッグマムの帰りを伝えに来た職員に対してその惨たらしい遺体を見られて悲鳴を上げられるのだった。
「キャー!!!!!」
tips
リソースを多く持つ人間はより宇宙人に近い改造を受ける。その一つに感応と呼ばれるものがある。心と心で会話するテレパシー能力だ。その本質は、精神の汚染、他者を心で支配することにある。
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