クライムライム   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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ギスオンライクな作品書いて…供給が少ない…!


滴る汗に夢を重ねて

アメリカ、地下闘技場控室

 

 

俺は控室でスタッフと一緒になって今日のマッチの打ち合わせをしていた。出された服に難色を示す。これ絶対着なくちゃいけんの?全然肩とか脇とか開いててハズイんだけど…

 

「需要と供給ッスよ。キングさんニッチな需要あるしあんま顔出さないじゃないッスか。レアキャラなんで数少ない登場回を無駄にしたくないんスよ」

 

嫌だなァそのニッチな需要。ようはショタコンじゃんね。最近闇のショタコンにあったばかりなんだよ。偏見ってこうして生まれんだなァって…光のショタコンですとか言われても疑うし、なんならショタコンな時点で身を引くよね。まぁショタコンであることを世間様に見せている時点で…ってのはある。いや隠せよってな。そんなオープンするモンじゃねぇよ性癖って。匂わせるにしても相手を選べよな。なんで俺にかますんだよ。

 

スタッフは後輩口調だった。良いよね後輩口調。安易なキャラ付けと言われそうだが、王道な魅力がある。色々属性過多が叫ばれる昨今、王道的なキャラクターはそれだけだと味付けが薄いと思われがちだ。だが王道には王道の良さがある。非テンプレというのはテンプレ無くしては生まれない。尖ったキャラクターは王道キャラが居るからこそ映えるのだ。

その点、この後輩スタッフは見た目とのギャップもあってverygoodだった。

見た感じ彫り深めでラテンっぽいスタッフ…褐色でお胸はそんなにないが、足は太ましい。運動をしている人の足だ。髪は黒髪のポニテで後輩口調という性癖の役満みたいな存在…

 

宇宙人の改造の賜物だ。すべての言語を喋った相手の性格や特徴に合わせて翻訳する技術、成長や脂肪のつきやすさ等を遺伝子レベルで改変することができる技術、感情エネルギーの収集を応用した心を変える技術、それらのおかげで、今まで言語の壁や外見の壁に阻まれて理解できなかった海外人への萌えの解像度が上がったのである。まったく、最高だぜ宇宙人様はよぉ…。

 

後輩スタッフは王道に理解があった。

 

「いやぁ…いいっすよね後輩口調。オレぇ魔法少女に改造されてから真っ先に日本のアニメ漁ったんすよ。やっぱこう…生で理解したいじゃないッスか。そんでアニメ見て全部わかるように脳内で翻訳されて…すげぇ!ってなったんスよね」

 

どうやらスタッフはリアルネカマらしい。っつーかTSね。汗の輝く陸上部後輩概念にいたく感銘を受けたとのこと。おぉ…そんためだけに改造されたんか、オタクの鑑じゃねぇか。そこまで熱意があるなら普通に日本語学べよとは思うが…

後輩スタッフは努力できるオタクだった。

 

「ひらがなカタカナはいけるんスよ。ただ漢字で挫折したんスよね。『日』とか何スかアレ。いっぱい呼び方あるじゃないッスか。一つに統一してくれって感じッスよ。学ぶ側からしたら」

 

おぉそれな。日本人でも思うわ。何でこんな呼び方あんの?って。でもそれが日本語の良いところなんだよ。表現の奥深さっていうのかね?例えばエロティックなモンを官能的とか蠱惑的とか、色香を纏うとかそういう表現ができんだよ。一つ一つでイメージさせるモンが違う。そこをどんどん掘り下げて行ったら今の日本が出来あがったわけよ。

 

「さすがHENTAIを生んだ国ッスね。」

 

DISなのか褒めなのかわからんコトいうなよ。俺等その言葉に押し潰されそうになってっからね?なんかHENTAIの国だっていうけど、全員が全員HENTAIなわけじゃないし。なんかそういう風潮あるよね。日本人はエロいエロくない限らずHENTAIでなくちゃいけないみたいな風潮。尖がってることを強要されてんだよ。ひでぇよな。

 

「ある種の期待ッスからねぇ…宇宙人に改造された日本人は何するか…?ってみんな思ってたッスよ。そんでやったのが大規模コスプレ撮影会からの突発的なプリ〇ュア撮影からの握手会じゃないッスか。期待の斜め上いったッスよ」

 

そう、日本は宇宙人に魔法少女と怪人に改造される話が来た時、真っ先に飛びついた集団がいた。

ジャパニーズオタク共である。オタク共は自らを魔法少女や怪人に改造されることを望み、あらゆるリスクを飲んだうえでTSやら人外化をかまして、日本の栄えある大規模同人即売会で魔法が使えるコスプレ集団として登場、悪ノリに悪ノリを重ねてそこで唐突なプリ〇ュアを始めたのだ。

 

結果、被害はなぜかほぼゼロ、感情エネルギー収集も大きく、かつ日本での宇宙人改造に対して好意的というか熱狂的なファンを作り出したという怪偉業を成し遂げたのである。運営スタッフからは唐突なコトすんなと怒られたらしいが、地球全体で見れば大成功を収めたという点で宇宙人から高評価をもらった事例だ。今もなお動画投稿サイトでリアルプリ〇ュアを投稿している。

 

アレはもうオタクの熱意が成せる業よ。誰も話し合いとかしてないのに、その場で唐突にプリ〇ュア始まったかと思ったら即興でBGMつけたり、演出したりするヤツが出てくんのおかしすぎだろ。フラッシュモブもかくやという具合の完成度だったぞ。そのくせ、ほとんど被害はなかった。というか数少ない被害者もその場で自ら怪人の人質になって小芝居に興じていたからだった。その後ちゃんとケアされてたし、流れるように握手会に移行していたのが強すぎた。もう公式イベントじゃねぇか。

 

「アレでやっぱ日本人だなって思ったッスよね」

 

クソっ、一部のオタクのせいで全体に波及している…!おかしいだろマジ…その被害を今、俺が受けている…!オタクのアホ共め…!勝手に性癖の人柱にさせられてる…!

 

「いやキングさんはもうって感じッスよね。ドストレートじゃないッスか。ならこれも大丈夫ッスよ」

 

だとしてもだよ。それでもこれァアウトでしょ。モロじゃん。放送委員会すっ飛んでくるよ。てかエグイんだよね。俺一回も採寸とかされてないのにぴったりなのおかしくない?なんなん?

 

なんでこうも揉めているのかというと、俺に手渡された衣装というのが、バニースーツと網タイツであるからだった。これを着ろと…正気か?

 

「正気も正気ッス。採寸に関しては……キショイんスけどいるんスよ。見た目で採寸できる人が。というかキングさんは色んなモン特定されてますからね。好きなモンとか、休日の過ごし方とか」

 

こわっ、キショ、え、なんそれ?知らないんだけど…俺粘着されてるアイドルみたいな感じなの?えぇ…訴えたら勝てるぞマジ。全然嫌だよ。全然嫌悪感ある。俺ぇエゴサとか避けてんだよね。イタリアの角俺とアマゾンの爪俺が派手にやり過ぎてて検索するとヤバイ奴ばっか引っかかるからさ。

前者は角俺に対する愛を啜る文豪がヒットすんだよ。そのどれもがキショくて…。生々しいんだよな。なんか妙な湿り気と妙に解像度高めの文章なんだよ。俺への理解があってキッショイ。

後者はなんかUMAみたいな扱いされてんだよな。俺を検索欄にいれたら、伝説の生物とか、恐竜と人のハーフとか出てくんのよ。翼竜人って。ソレたぶん強化フォームになった爪俺なんだよね。なんだよ翼竜人って。だからあんまそういうの見たくなくてさぁ…えぇ…マジでそんなことなってたの?

 

俺のプライバシーは亡きものとされていたことに気付いてドン引きした。うんうんと後輩スタッフが肯定する。

 

「そうッスよね。フツーにキショイッスよね。でも今ちょっとずつ良くなっていってるッスね。ファンクラブの方が取り締まってるって聞きました。今日なんか大規模な粛清あったらしいッスよ。いきなり始まったらしくて、ネットじゃ阿鼻叫喚してました。ファンクラブ会長さんが突発的に始めたらしいッス」

 

おぉう…俺の知らないところで出来ていた特定班が俺の知らないところで出来ていたファンクラブに粛清されていた…。マジかよ…ありがたい…ありがたいけど…なんか怖いわ。えぇ…俺なんかファンサとかした方がいいの?

 

「今日キングさんが出るってもう出回ってるッスからね。ファンクラブの方絶対来ますよ。運営的にはファンサお願いしたいんスけど…」

 

いやでも、それならこの衣装で十分じゃない?

 

「ッスねぇ…」

 

俺は釈然としないものを抱えたまま、とりあえず着てみようということになった。

着替え終わった自分を見てみる。うーん…これでマジで行くの?大丈夫?

 

「お願いするッスよ。ギャラ弾むんで…」

 

む…どんくらい?どんくらい出せる?俺は目が$になった。

 

「ザっと……こんくらいッスかねぇ」

 

ほーん…手で出された4本指に訳アリ顔をする。まだいけるな…もう一声いけない?ファンサすっから…ね?俺は7本指を立てておねだりした。

 

「しょうがないにゃあ…こんくらいッスね。これ以上はちょっと…国のアレに引っかかるッス」

 

後輩スタッフは見抜きネタも知っていた。指は6本。良いねぇその姿でそれ言うのは癖に刺さるわ。おーけーおーけー、それに免じてそれでやってやろうじゃないの。俺は目をスロットの如くピロンピロンピロンと切り替えて真剣な目をした。キリッ

あ、再三言うけどやっぱコンプラ違反とかで訴えられたりしないよね?

 

「大丈夫ッスよ。感情エネルギー稼げるなら宇宙人は文句言わねッス。実際キングさん登場回めちゃくちゃ稼げてるんで。文句言うヤツいたらその日のうちにキャトられて次の日には別人ッス」

 

怖いわぁ…やってることほぼ独裁者じゃんね。いやまぁ侵略されてんだから、実質宇宙人さんの独裁国家なんだけどさぁ。

 

「普通に俺等敗戦者ッスからねぇ…」

 

賠償金とか取られなかっただけよかったよな。

 

「ッスね」

 

ッと…もう時間じゃないか?そろそろ会場に行くかぁ。ダベってるうちに時間になったので椅子から立ち上がる。それに合わせて後輩スタッフが控室の扉を開けた。うむ、ご苦労。

 

「じゃ、キングさん今日はよろしくお願いするッス。なんかあったらスタッフに話せば俺が対応するんで。俺がキングさんの担当ッス」

 

お、了解。じゃ、報酬分だけ仕事してきまぁ…。横を通り抜け、後輩スタッフに見送られる。後輩スタッフは最後に忠告をしてくれた。

 

「頼むッスよ~!あ、キングさーん!個人情報のヤツ、ネットとかで声明した方がいいッスよ~!粛清されたとしてもまた湧いて出ると思うんで~!」

 

りょ

 

俺は手と丸い尻尾を振りながら控室を後にした。

 

ーーーーーーーーー

 

アメリカ、地下闘技場会場

 

 

天井の照明がまぶしく煌めき、地下は人々の熱気に当てられ徐々に徐々にボルテージが上がっていくのを肌で感じる。ローマのコロッセオとプロレスの会場を組み合わせたようなスタイル。円形状に金網が張られ、四つの入り口が存在している。プロレスやらと違う点は、金網から内側は砂と土で整備されており、天井ど真ん中に巨大な錨状の振り子がついている。ダ○ソ無印の古城ね。あんくらいの殺意高め振り子。そんな殺意マシマシギミックが付いたここは地下闘技場、感情エネルギー収集のために作られた裏公営施設だった。

 

俺は実況解説コーナーに立った。バタバタと動き回るスタッフに案内されて会場へと姿を現すと、俺を見た客が歓声を上げた。やだなぁ…げんなりするも仕事なので気合を入れる。俺は今までしてこなかった手を振ったりウィンクをしたりするとおそらくファンクラブの者だろう人間が発狂しているのが見える。やべぇなァ…マジで居んのか…。

 

しゃあない…ギャラは出るし、俺のプライベートをひそかに守ってくれた奴らだ。そいつらを大切にしよう。色魔というヤバイ奴を許容した以上、ある程度は寛容に行かねばあるまいて…。俺は心を切り替えた。日本に生まれ、日夜性癖に触れた俺の渾身のショタを見せてやるよ…

 

俺はギュンッと両膝を内に向けて、内股になって膝をこすり合わせつつ、手を股間に当てて隠す。別にカバーというか体の凹凸があんまりでないデザインだから必要ないんだが、恥ずかしさの演出だ。もう片方の手を脇に挟んでいかにも見られたくないというポーズ、目は伏せがちにきょろきょろと動かし、時折客に目を合わせては逸らしてやる。控室で一緒に付けられたインカムマイクで、出来る限り高い音で切ない声になるように喉を締めて……

 

み、見ないでぇ……

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

キッショ、大歓声だわ。ショタコンはこんなに増えていたのか…世も末である。思った以上に歓声が上がってビビった俺はそそくさと実況席に向かった。

 

地下闘技場とある通り、地下なのだがそんなに暗くない。まぁ見せモンだからな。暗くてよく見えなかったらブーイングモンだろうよ。ドカッと実況席のパイプ椅子に座り隣に座っているいつもの解説役さん、魔法少女:パンサーと今日の試合の最終打ち合わせをする。よく代打で来っから相手も慣れたもんよ。

 

よっす、パンサーお久~。今日は確か…チャンプ出るよね?防衛戦だっけか。確か…オッズは挑戦者が8.6だったか?珍しく10倍下回ってんじゃねぇの。挑戦者はそんな強いん?

 

「キングお久~。すっごいことしたねぇ…なんか言われたん?」

 

いやぁ…運営にファンサしろって言われちゃってさぁ…。ここまで反響あるとは思わなかったよね。軽い気持ちでやって後悔してる。これはもっとギャラ上げてもらわなきゃ割に合わねぇよ。

 

「キングは自分の事甘く見過ぎだよ~。色んなとこ行くからそれだけ名が知れちゃってるしそもそも他4人が濃すぎて引っ張られてるところあるよね」

 

それな。一番影響与えてんのは中国の尾俺だ。宗教染みたモンを作っている。闇のショタコン教団とはまた別口なんだよな。実態は貢がせサークルに近いけど。俺に貢ぎモン送ってくる時もあってさぁ。どうする?って尾俺に伝えたら貰っとけっていうからありがたく貰ってんだよね。普通に生活をそれに頼ってる節あるもん。知らない人に生活頼ってるんだよね。その知らない人は妖しい宗教にハマっていて、その宗教の開祖は別人格の俺っつー漫画みたいなことが起きてる。どうすればいいの?

 

「何それウケる。あ、オッズのことはね。今回出るヤツはちっとばかし骨があると思うよ。なんでもロシアから流れてきたらしくて…国上がりなんじゃないかって」

 

綺麗にスルーされた…悲しい。まぁ仕事で来てんだから仕事の話しなきゃだよな。俺は話しに戻った。つーか…ロシアかぁ。犬となっている骨俺を思い出す。最近様子見にいってねぇなぁ。試合終わったらちょいと話を聞いてみるのもいいか。つーかこの服寒いな。羽織りないの?着ちゃダメ?

 

「もったいないよ~。ファンサファンサ」

 

あっそう…。ダメか…。ん?どしたんスタッフ…なんか問題?…あ〜前説ね。台本?いらんいらん。いつものでしょ?あ、ちょっと俺の私情挟んでいい?内容?あの~…俺の個人情報についてね。ほら、今荒れててさ。最近気づいてここらでお灸を据えないとなって。良い?あ、OK?助かる…じゃ、やるか。キュー振りお願いしていい?…頼むね。

 

俺はガッとマイクをオンにして深呼吸する。カッチンをもったスタッフが手で数えてくれる。息を整えて、気合を入れて、精神のスイッチを入れる。よし…

 

さーん、にー、いーち…

 

カッチンの鳴る音と共に声を張り上げた。その声にウサギ耳が振るわされる。

 

レディィィィスエンジェントルメェェェェン!!!お前等ァ!?!賭けの準備は出来てるかァ!?席には座れているか!?トイレは入ったかァ!?あと30分で始まんぞ!!今回はチャンプの第25回防衛戦だッ!今宵、骨のあるヤツが挑戦者としてきやがったぜぇ!期待しときな!今の挑戦者オッズは8.6だッ!10倍を下回ってんぞ!もしかしたら…あるんじゃねぇのォ!奇跡がよォ!酒は持ったか!?なきゃ買え!!グッズは買ったか!?回すタオルがねぇと盛り上がらねぇぞ!!乱闘騒ぎはご法度だ!ウチは健全にやってるんでね!乱闘したやつはすぐさま追い出す!いいな!?

 

紹介が遅れたなァ!今宵の実況はこの俺、キング!キングフィッシャーが務める!解説はいつものこの人…パンサーさんだ!!

 

パンサーさんは公私混同を避けるタイプの人だった。すぐさま解説役に切り替わる。

 

「いや~…どーもどーも。今回もよろしくお願いします。解説務めますパンサーです。いや~今日の実況はキングさんということで…居ると回しやすくて助かりますね。解説に集中できるのでありがたいですし…解説を取って食うことがないので毎回居てほしいんですよね」

 

そりゃあね。解説するのが仕事なんだから仕事取ったらダメでしょうよ。実況ってのはわかりやすく説明するってのもあるが、会場をあっためるって仕事もある。適材適所で俺は割り振られてんだ。そこを出しゃばって実況解説全部俺はさすがにやりすぎでしょうよっつーね。俺の負担デカいわ。

 

「キングさんなら出来そうですけどね」

 

やれって言われたらやるけどな。っつーわけで…

 

俺は手をグーに握りしめて、座っていたパイプ椅子に立つとグーを掲げて宣誓した。足や腕がスース―するが気にせずやる。恥ずかしからないことがミソだ。こういうのは恥じらうとキモイのが湧くからな。ありがたいことにパンサーさんもノッてグーを掲げてくれる。優しい。

 

改めてぇ!第25回ッ!チャンプ防衛戦の開幕を宣言するッ!てめぇら!!!声を張り上げろよ~!!!!せーの…

 

ファイトクラブだぁ~!!!!!!

 

「「「「「「「「「ファイトクラブだ~!!!!!!」」」」」」」」」

 

 

パイプ椅子の上で危なげにぴょんぴょんする俺はプロ根性だ。こうすりゃいいんだろというようにしている。てかファンサした時のほうが歓声でけぇじゃねぇか。もっと張り上げろ。

 

そう、俺はバニーボーイ()となって、地下闘技場で実況役をしていた。時は今日の午後までさかのぼる。

 

ーーーーーーーーー

 

アメリカ、魔法少女支部

 

 

「キーング!!!!!」

 

ギュエッーーーー!!!

 

俺はマムの渾身のグーを食らって奇怪な叫び声をあげて壁に激突した。お説教部屋からの脱走、聞けば凶悪犯とされる色魔と遭遇して意気投合して帰ってきたという。それに加えて、職員が呼びに行ったら血をカラカラに吸われてミイラと化していた。そのせいでその職員さんはトラウマとなったらしい。わんわん泣いていた。それは…ごめんというしかなかった。甘んじて受け入れよう。泣かせちまえばそりゃあ俺が悪い。

 

壁へと叩きつけられた俺だが絵面が完璧に悪かった。DVかな?少なくとも未成年に暴力をふるうアレな状況であることは明らかだった。しかし、マムに逆らえるもの等この場にいない。俺はガクガクと震える足でふらつきながら立ち上がりマムにいう。

 

トラウマ植え付けたのは悪かったしよォ…脱走したのもわりぃけどよォ…俺の置かれた状況を知ってんなら理解してくれよマム…大体、マムも知ってんだろ?闇のショタコン教団…

 

マムはアメリカのほぼすべての魔法少女や怪人について把握している。無論、魔法少女、怪人になって怪しげな活動をする集団もだ。闇のショタコン教団は信者の数も活動場所もてんでバラバラだ。どこで集会をするのかは信者ですら教えられていないとされている。しかし、ショタコンという業の深さは必然的に同じ穴の狢であるショタコンを引き寄せる。類は友を呼ぶのだ。それは宇宙人に改造された色魔が持っていた感応能力の劣化版だった。足りないリソースを集団で補っている。闇のショタコン教団は同胞と無意識下で集まることができる。本人すらどうしてたどり着いたのかわからない。だが、確実にそこに集まるべきという本能じみたものが発揮される。それはきっと、色魔がトップに立っているからだ。集団でリソースを賄っているために無制御となっている感応能力を色魔が制御している。一定の方向性を持たせているのだ。色魔とつながりを持ったことで、俺は闇のショタコン教団の絡繰を知った。なぜ俺が居場所を特定できたのか。それはたぶん招かれたからだ。神が自分を信仰する宗教に許可を求めることはない。神にとって自身を信じる宗教は子であり手足だからだ。手足に許可を求めることなどありはしない…。俺は色魔の影響で段々と神の素養が備わりつつあった。脳裏で囁く

 

(神よ…我々をお救いください)

 

うむ。唐突に電波を受信した俺は、高揚に頷いた。マムはそれに怪訝な表情をするも話を続ける。

 

「それについては重々承知してるよ。未だ尻尾が掴めない…たとえ信者を拷問したとしても一切の口を割らない。相手の記憶にすら集会の痕跡はないんだ。どう足取りを掴めって話さね」

 

ショタコンが無意識にまで根付いているために記憶に残らないのは当たり前だった。なるほど…実態が掴めないわけである。昨日どうやって息をしていたのか問われるようなものだ。そんなの普通に息してましたと答えるしかない。俺が訳知り顔で頷いていると、それが癪に障ったのか、はたまた更年期か再度怒鳴られた。

 

「ともかく…アンディとチックの件でウチから払う金はナシだ!日本に帰んな!」

 

そう言われると俺は魔法少女支部を追い出された。クソ…金が…

魔法少女と怪人の戦いは世界的に必要な事なので、魔法少女の組織に申請すれば金が貰える。しかし、お説教部屋の修理代やトラウマになった職員さんの慰謝料でなんも貰えなかったので俺は一人、魔法少女支部の前で途方に暮れていた。宇宙人から貰った金でも足りないんだよね。生活していく分には知らない人の仕送りで足りんだけどさ。俺鳥類託児所とかいろいろやってから金がどうしてもね…。

 

アンディは別の所にいる。ちょっと用が出来たらしい。帰るっつってもそれ待ちになる。どうすっかなぁ…。悩んでいると魔法少女支部から出てきたヤツに声をかけられた。

 

「キングさん?キングさん今暇ッスよね?声聞こえてしまたよ~。金が入用ならちょっと付き合ってもらえないッスか?」

 

件の後輩スタッフだった。なに?バイト?運搬かい?

 

「や、地下闘技場の実況ッスねぇ。今日の担当バテたんスよ。んで誰もやる人がいないつって話回って来て…お願いしていいッスか?」

 

ほう…報酬は弾むんだろうな?俺は金にがめついプロデューサーの如く指をこすり合わせた。対する後輩スタッフは人差し指と親指でわっかを作りにんまりと笑う。

 

「それはもう」

 

そういうことになった。

 

tips

地球は宇宙人に負けたために、あらゆる法律が宇宙人の下になった。感情エネルギーを集めるためには既存の法律はある程度無視される。挙がっていたはずの文句の声は次の日には消えていた。




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