クライムライム   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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愛の形は人それぞれ

アメリカ、地下闘技場

 

 

さぁさぁ!これから今日やるチャンプ防衛戦について説明していくんだが…その前に、少し私情を挟まさせてほしい!

 

俺は、立っていた椅子から降りて、金網デスマッチの如く囲われているバトルフィールドの入り口をウロチョロし始めた。

誰だってバニースーツの女が歩いてたらそっちに目が行くモンだ。生憎俺は男でもっと言うならガキだから、バニースーツを着たショタガキという業の深い見た目をしている。

放送コードスレスレてかアウトだろう。踏み越えてんだよね。ラインを。文句を言おうものなら宇宙人にキャトられるために誰もが口を噤んで言わないが。怖ェ世界になったモンだぜ…。

 

俺は自分の見た目について目をつぶって喋り始めた。

 

ちょいと俺のプラべ、私生活についての話があってね!あんまりSNSには触れないようにしてきたんだが、どうにも俺の個人情報をすっぱ抜いたりする奴らがいるらしいじゃねぇか!俺はまぁ色んなとこ行くから結構名が知れてんだわ。そんなもんだから、有名税みたいなモンだろっつーことでそこまで触れてこなかった。…が最近それが目に余るほどになってきてよぉ…聞けば俺の休日の過ごし方まで出回ってるらしいじゃねぇか。はっきり言おう。

 

キモイ

 

そりゃあそうなんだよ。溜めていうモンでもねぇと思うが大事だからね。普通に私生活すっぱ抜かれて嫌にならないヤツなんていねぇさ。不快だよなっつー…。まぁあんまり触ってこなかった俺も悪いかな?とは思うんだけど、正直なところ俺がこんな人気になるとは思ってなかったんだわ。やっぱ俺以外の俺っつーのがデカいんかね?まぁいい。

 

観客は静かに俺の言葉を聞いてくれる。物分かりいいんじゃねぇのと思ったが、関係なくてくっちゃべってる奴を背後から近づいた謎の人物共が布かなんかで口をふさいで絞め落としていたからだった。こえぇーよ。なにしてんの?引きながらもペラを回す。

 

そんでよぉ…対策を考えなくちゃいけねぇってことになった。そんで…ここに居るんだろ?ファンクラブって奴らがよォ。俺全然認知してなかった非公式ファンクラブね。いるだろうなって前提で話してる。てかいる?手上げてもらっていい?

 

俺が手を上げるように指示すると、サッと手を上げる結構な人数の奴…おぉ…大体会場の2割か…?てか絞め落として奴もかよ…暗殺集団なの?そんな密偵っつーか…仕事人みたいなことしてたんかよ…これで俺を守っていたのか…。

 

おぉう…結構いるな…。まぁで、お前等のファンクラブを公認にすることにした!今雑に決めたわ!公認な!認知するわ!餌は不定期で与えていく!んだからお前等に俺のプラべの保護を頼むわ!なんでも俺のプラべを晒したヤツを粛清したらしいじゃねぇの。それを公認のものにしようかなってよ。今あるモンを利用しようかなってわけ。頼むわ!あとでファンクラブの運営してる奴に会いたい!詳しい話をしよう。ガッて集まってくんの嫌だから先着順っつーか、お前らの中で運営を引っ立ててきた奴に褒美をやろうって感じで。んじゃ、そういうことで。

 

俺は話を締めくくった。解説実況席に戻る。

 

「大丈夫キング?結構危ないことしてない?」

 

パンサーさんこればっかりは許容していかないとダメなんだよね。今日ちょっとね。色魔ってわかる?あの極悪人。

 

「わかりますね。あの得体のしれない怪人」

 

そうそう。今日ちょっと接触してさぁ。紆余曲折の末に使徒っつーか…ファンとして認めたんだよね。ソイツもショタコンでさぁ…。

 

「ヤバ…えぇ…確かイギリスで発見報告があったらしいじゃないですか。一夜の内に資産家のお金が飛んだって…平凡な女で記憶に残らない顔で…それなのにどこか惹かれるものがあったって…確実にそうだよね」

 

え、そうなの?なんか俺と同じく手広くやってるんだよね。しかもちゃんとあくどいのよ。こわ~…まぁその色魔クンをね?認知したというか、ファンとして認めたからじゃあファンクラブも認知しないと不公平だよなって。

 

「なるほど…後ろから刺されないようにしてくださいね?…まぁキングさんの場合、誘拐されそうですけど」

 

それな。俺は万感の同意を示した。なんか俺不倫の末刺されるってよりは、誘拐の末にヤバい女の子供にされそうな気がするんだよね。性癖の闇に沈められそうっつーか…怖いわ。そういうところもあるからさ、っぱ守ってほしいんだよね。頼むわ。

 

とりあえず話したいことは話せたので、俺はチャンプ防衛戦の話に戻った。解説実況席にマイクを設置してお行儀よく座る。仕事はね?ちゃんとやらなね?

 

関係ないヤツ、付き合ってもらって悪かったな!話はこんだけだ!それじゃあみんなお待ちかねのチャンプ防衛戦についてだ!

 

この地下闘技場きっての英雄、チャンプは始まって3回目の地下闘技場大会からこれまでで…通算21回の優勝を果たした伝説だァ。まぁお前らもフツーに飽き飽きしてんだろうが…見栄えがね。映えないんだよ。毎回チャンプだから、みんなチャンプ勝つんだろうなっつー…。出来レースに近いよな。強すぎだよね。うん。

だもんだから、20回目のチャンプ防衛戦からまた新しいルールを入れ始めた。頭上のコレ、巨大振り子ね。これ使ってチャンプをぶち殺そうっていう魂胆よ。もうこの地下闘技場大会はチャンプと挑戦者が戦うなんてモンじゃねぇ。如何にチャンプをぶち殺して、最後まで生き残ってた奴を輩出するかになってる。乱闘ルールもそのためのモンだ。お前ら、チャンプを殺せぃ。

 

俺は軽くジャブとしてチャンプの殺害宣言をした。うむ…観客の悲鳴にも似た歓声が俺の言葉を肯定してくれている。やはりチャンプは死ぬべきだ。とりあえず聴衆から肯定が得られたので話を進める。

 

それじゃあ説明だ!まずチャンプと挑戦者がこの地下闘技場、金網デスマッチみたいなトコで戦ってもらう。そんで開始時間から10分経つと強制的に5分の休憩が入る。そこで乱入OKだ。デスマッチの中で待機してほしい。そんで休憩終わったら乱入してきたヤツとチャンプ、挑戦者で戦ってもらう。そんでまた10分経ったら、上の振り子が落ちて金網デスマッチの中を殺戮しまくる。生き残れ。最後まで生き残ったヤツが勝者だ。賭けは三つある。チャンプと挑戦者と乱入者。乱入枠はひとまとめな。開始10分経ったら休憩時間の時に乱入者枠が追加されるから掛けたい奴は掛けろ。途中からだから、その分オッズは高い。博打枠だな。まぁ正直乱入枠は期待してない。期待してないが…まぁやってやったヤツには褒美っつーかね。俺も一応運営側だし貢献していかないといけないから。俺からの特別賞っていうかね?そこらへんはなんか考えるわ。ま、頑張れ。

 

俺はわかりやすく地下闘技場大会チャンプ防衛戦について説明した。というかこれしか言いようがない。ほぼデスゲームだ。だが、この地下闘技場を見てる奴なんて血が見たい奴しかいねぇからそれでいい。どうせ、ガ〇ツの富裕層みたいなノリの奴等だからな。賭け事もしてんだろうよ。てか普通にOKだしな。さっきオッズ言ってたし。

 

ってぇわけで…選手入場だァ!まずは~…赤コォォォォナァァァァ!!!!!チャーンプ!!!!この地下闘技場無敗にして視聴者に死ぬことを請われる伝説ゥゥゥ!!!リーベルトォォォォ!!!はよ死ね。

 

通路からバッとチャンプが登場する。半裸の男だ。豪勢なマントを羽織って、腰にはベルトを巻いている。腹が立つ態度だ。自分が強いってのを理解しているような傲慢だね。俺が支配者と言わんばかりに観客に向けて手を振るが、返ってくるのはブーイングと死ねのハンドサインだ。嫌われてんねぇ。

 

「キングさぁ…俺の扱い酷くね?」

 

近づいてきたチャンプがのたまう。

 

やめてほしかったら死ね。絵面変わんねぇんだよ。スポンサーとかも考慮しろよ。見世物だからね?わかってる?視聴者はお前に飽き飽きしてんの。もっと新しいヤツを見てぇんだよ。変わり映えしないってのはテレビからしたら致命的だからね?俺はコンコンとテレビの裏事情を話すがチャンプの言い分は前と変わらずこうだった。

 

「いや俺、最強じゃん?最強を証明し続けないとさぁ。やっぱチャンピオンじゃん。みんなの憧れでいないと…」

 

てめぇは五条さんじゃねぇ。てか憧れでもねぇ。お前の血が見たいってヤツが居るんだよ。…おーい!観客~!!チャンプの死が見たいか~!!!

 

「「「「「「「「「「みたーーい!!!!」」」」」」」」」」

 

「血を見せろ~!!!」

「死ねェ~!!!俺の掛け金返せぇ~~!!」

「はよ死ね!!ワンパターンなんだよワンパターン!!」

「絵面変わんなくてつまんねぇよ~~~!!!」

 

な?クソ野蛮な観客の声援にチャンプは肩をすくめた。そういうとこあるよな。なんか改造されて法律緩くなってから野蛮人増えたよ。血を見たい奴が多すぎる。ほぼゴミじゃん。人間性どこいったんだよってね。まぁ俺も同じ気持ちだ。お前の血を見せろ。

 

チャンプは皮肉を言った。

 

「カス観客の声援涙が出るね。元気出たわ。ってぇことでいってくるわ」

 

おっす死んで来い。

 

「死なねぇって。…あ、また俺が勝ったら俺に褒美とかある?」

 

ねぇよ。なんで毎回勝ってるヤツに上げなきゃいけないんだよ。死んだらまぁやらんことはないわ。兎角お前の血が見たい。

 

「じゃあ死なねぇ…血は見せてやるよ…ちぇ」

 

なんなの?

 

俺はよくわからないままチャンプを不機嫌にしてステージへと見送った。なんなんだろうね?パンサーさんわかる?

 

「うんにゃ、ショタコンなんじゃない?チャンプ同性愛者のケあるよね。戦ってる時とかモロに。ショタも守備範囲なんでしょ?」

 

うへぇ…ショタコンはココにもいたのか…。死ぬことは拒否する癖に俺の血が見たい発言は肯定すんのがキモイ。なんでそこで寛容なんだよ。断れ。ってか、世に蔓延るショタコンの根は深いな…。どこにでもいる。まるでご家庭の台所にいる黒い蟲のよう…。は酷いか。さすがにね?

 

「まぁ大っぴらにしてる時点で…とは思いますけどね。解説ですが…チャンプは怪人…それも宇宙人に認められた最高峰人類の一人です。生半可な攻撃は通さない肉体と宇宙人特有の能力を移植されています。空間転移…テレポートですね。正式には空間に対する自身の上書きらしいんですが…テレポートで通ります。これがシンプルに強い。危機的状況からの脱出。相手のレンジ外から攻撃、体内の臓器をシャッフルする技…どれをとっても最高峰の強さを誇ります。宇宙人曰く、受信に特化した個体だそうで、脳に埋め込まれた上書き装置の処理速度に追いついているらしいです。バケモンですね。じゃ青コーナーも行きましょうか。」

 

だな。チャンプがバケモンなコトは周知の事実なのでさっさと流した。

 

さて…青コォォォォォォォォナァァァァァァァァ!!!!!!!!新たなる挑戦者ァ!!ロシアからの刺客かァ!?はたまたどこぞのエージェントかァ!?謎の男ォ!ヴァーシリィィィィ!!!!

 

通路からヌッと一人の男が現れる。黒い外套に身を包まれたやつだ。一応登録書類には男と書かれているが、ぱっと見じゃわからないだろう。すべてがなぞに包まれた男がステージへと一歩、また一歩進んでいく。

 

いやぁ…パンサーさんどう見ます?こうしてみると…そこそこ身長はあるのでパワータイプですかね?

 

「ん~…どうでしょう?まだわからないですね。男であることから怪人なのは間違いないんですが…こうまで隠されていると判断もつきませんね…ただ、場慣れしています。人の視線に気圧された風には感じない。舞い上がったりもしていない。抑えきっている…相当な手練れと見ますね」

 

なるほど…ありがとうございます。

 

観客が煽りに煽る。おいおい、金網に捕まんな。オリに入れられたサルかよ。そこ!ヒャッハーしない!まだ始まってねぇから!

 

俺が近くの観客をぶっ叩いてステージから離しているうちに両者がステージ内へと入った。お互い向き合う。挑戦者はまだ外套を外さない。何をするんだ…。目が離せない。

 

おっと、準備が整ったようで…。パンサーさん始めちゃいます?

 

「ですね。両者とも準備は出来ているので始めちゃいましょう。」

 

ではではぁ!チャンプVS挑戦者ァ!第25回チャンプ防衛戦開始ィ!!!

 

俺はガインとコングを鳴らした。

 

ーーーーーーーーー

アメリカ、地下闘技場金網デスマッチ内

 

 

両者互いに向き合っている。殺気の読みあいだ。如何に動くか、相手の動きにどう対応するかそれらを殺気だけでやり取りしていく。熟練者同士の挨拶のようなモンだ。しかし、はたから見ると、黙ってぼっ立ちしてるクソダサい状況なので、あおりを入れてやる。

 

オイオイどうしたァ!さっさと動かねぇと乱入者が横からかっさらったり、振り子でお陀仏になるぞ~!さっさと動いて死ねェい!

 

「キンーグ!焦んな焦んな…。キングが望んだ通り…俺の血が見られそうなヤツだ…滾るぜ」

 

キショ。殺気でわかりあうな。しかし、対する挑戦者も感じ取ったようだ。この場に来て始めて声を出した。

 

「『強いな。よく感情が練られている』」

 

急に武道家みたいなコト言い出した挑戦者だが腑に落ちないことがある。

 

パンサーさん…声がなんか…。

そう、声が男と女が複数人混ざり合った奇妙な声をしているのだ。

 

「えぇ、二重…いえ複数人が同時にしゃべっているようです…ということは…二人以上で参加した可能性、あるいは…」

 

挑戦者が外套を脱ぐ。その姿が露わになる。長い髪、長い腕、長い脚、そのすべてが長い男…?腕は膝まで丈がある。胴体が異様に小さい。髪のせいで全体像がつかめない。まるでホラー映画に出てくる女のようだった。

 

頭がカクンと左に傾く。口がわなないた。

 

「『お見苦しいものを見せる。私はヴァーシリー…怪人……。【惨劇】のヴァーシリー…お見知りおきを…』」

 

パンサーさん、挑戦者は…!二つ名持ちだぞ!いったい誰なんだ!?

 

この世界で二つ名、そういうものがつくのはそれだけ名が知られることをしたということだ。いくつかあり、あのアンディにもある。【吸血鬼】だ。アンディは無差別吸血をかまして甚大な被害を人類にもたらしたことがあるからだ。ブラッドヴァレンタイン…バレンタインに引き起こした惨事…!それは俺が原因で、最終的に眷属のコウモリ含めて集られ血を吸われてミイラになったあの事件で…その姿から【吸血鬼】と名付けられた。

 

二つ名とは悪名がほとんどだ。ほぼ指名手配犯の名前と一緒である。だがパンサーさんも知らないようだった。

 

「…わかりません!もしロシアの二つ名だとしたらあそこは秘匿主義です…!何も情報がない…!」

 

解説実況が驚く中、戦いは静かに始まった。

 

「アンタ…そうか。妬けるな」

「『ふっ…そうでもない』」

 

互いにしかわからない言葉を合図に動き始める。両者、悠然とした歩み寄り。油断か?あるいは余裕か…いずれにしても互いの手がすぐに届く場所に陣取った。

 

「始めようぜ」

 

「…あぁ」

 

皮切りに両者動き出す…!挑戦者…!長い腕をしならせ脇に打ち込むような左フック…!チャンプは堅実にガードし、ステップを刻み始める!能力は使わないのか!?挑戦者の攻撃は続く。左フックからつなげるような右フック、右フック、左ストレート!隙が無い!攻撃のつなぎに違和感を感じる。妙に動きが連動している…?チャンプは堅実に堅実を重ねて威力を散らしている。おかしい。転移を使えばレンジ外にいけるのに。そうしないのはなぜだ?

 

状況は動き続ける。チャンプは右回りに円を描くように移動し始める。側面を責めるためだ。しかし、挑戦者、長い腕を使ってカバーしている。単純なリーチが防御面でも生かされている。腕の当たり判定がデカい。横っ腹を責めようと防がれてしまう。挑戦者は左を得手としていた。執拗な左フック。絶対的な信用から繰り出される必殺の技は常用に足りるコンパクトさと苛烈なまでの威力を伴っていた。鈍い音。ガードする腕がきしんでいる。押されている…!?チャンプが押されているぞ…!?

 

だがここでチャンプも動いた。左フックを打った瞬間にその腕、肘に対して逆折りにするよう右を打つ。たまらず挑戦者は左腕を引っ込めるが、チャンプは的確に隙と弱点を指摘し続ける。最善手を打ち続けている。左肘への攻撃、左腕の付け根、左肘、左肘…確実に砕きにかかっている…!ガードを誘っては執拗に…!何度も…!

 

両者一息。インターバルだ。一歩離れて牽制しあう。弧を描いて頭部への狙いをちらすチャンプに対して、挑戦者は無造作に打ってくる。避けの姿勢もない。これがボクシングなら打ってくださいと言ってるようなものだ。

 

そう、二人はボクシングをしていた。互いにこぶしのみを使って殴り合いをしている。能力を使わないただの身体能力でだ。俺は叫んだ。

 

見栄えのこと考えろっつってんだろうがよぉ!テメェ等がタダ殴り合ってるところなんかつまんねーに決まってんだろ!能力使え能力を!

 

「キーング、コイツはとうに使ってるんだよ。クソ厄介だぜ。まだこんなのが外野にいたのかよ」

「『ほう、気づかれていたか』」

 

あぁん?じゃあ何使ってんだよ?見た目からじゃわかんねぇぞ。

 

「その見た目だよ。アンタ、死体を使ってるだろ?内臓をシャッフルしてんのになんともねぇってことは、体の内部が液状になってるか…シャッフルしてもなんともねぇ死んだ奴ってことになる」

 

死体だと…?

挑戦者はクックッと笑い出しネタ晴らしをし始めた。堪え性がない…というより鼻から隠すこともなかったということなのだろう。朗々と話し始めた。

 

「『私は彼の体を使わせてもらっている。いや…私達、というべきか。改めて自己紹介させてもらおう。【惨劇】のヴァーシリー…肉体の名だ。中にいるのはダリア、ベラ、カタリナ…一つの男の体に三つの女の精神が入り込んでいる』」

 

俺ははたと気づいてテレパシーを送った。ロシアで犬っころの扱いを受けている骨俺だ。

 

(骨俺…骨俺…!【惨劇】の二つ名を知っているか!?ヴァーシリー、ダリア、ベラ、カタリナ…この名前に聞き覚えは…!?)

 

(ウッ…ウッ…うぅ…ぁ、あぁ…?)

 

骨俺はどうやらダウンしているらしかった。仕方がないので口だけを乗っ取って多分いじめているであろう飼い主に声をかけた。

 

あー…あー…、飼い主!飼い主いるか?!俺だ!キングだ!キングフィッシャー!【惨劇】の二つ名に聞き覚えは!?ダリア、ベラ、カタリナという女どもに聞き覚えはないか!?

 

どうやら、骨俺はケツに溶けた赤い蝋燭を垂らされている最中だった。赤い蝋燭と鞭を持った軍服姿の女がこちらを見ている。アブノーマルなことしてんな。女は言った。

 

「ほう…キングか。【惨劇】はこちらで悪名…いや悲惨な運命をたどった男の二つ名だ。ヴァーシリー…女を三人はべらす軟派な男だと思われていた。…が、実際は女三人に付き纏われていただけだった。それを本人の鈍感さから気にしていないだけだったというオチだな。その女三人はその鈍感さにしびれを切らし、凶行に走った。ヴァーシリーを怪人へと改造し、三人も魔法少女になった。そして、残機を手に入れたヴァーシリーを殺し、残機を消費しないように能力を使って死体に封じ込めている。そして、その中に能力を使って女三人の精神を入れて、それを能力で操っている…ふふっ、君たちの国には三匹の鎌鼬という話があるらしいじゃないか。アレと一緒だな」

 

お、おぅ…とりあえずわかったわ。あ、近々そっち行くから骨俺大切にしてくれよな。思ったよりも最悪な名前の由来を聞いた俺はドン引きしながら別れの言葉を言った。

 

「わかっている。ペットを大切にしない飼い主など飼い主失格だからな…」

 

そういいながら、愛おしそうに火傷しているケツをなでる女の歪な愛情を垣間見た俺はすぐさまテレパシーを切った。

 

パンサーさん!あいつの能力わかりましたよ!あと二つ名も!俺は女から聞いた内容をパンサーさんにコピペした。聞いたパンサーさんもドン引きした。そりゃあね。どうする?これいう?言えないよね?放送コード引っかからん?

 

「いやでも…言わないと視聴者に伝わんないですし…それに怒られるとしても宇宙人がキャトッてくれるんでやっちゃいましょう」

 

それもそっか。納得した俺はマイクを握って声を張り上げた。

 

挑戦者ァ!ヴァーシリー!人の死体を保存する能力とォ!人の精神に入り込む能力ぅ!そして人を操る能力の三つが一人の男に集約した姿だァ!ハーレム男の悲惨な末路から名づけられたその名は【惨劇】!

 

「死体ということで生半可な攻撃は通じませんね。何せ死んでいますし。それに中の三人の女をいかに倒すのかが鍵となるでしょう。隙を曝せば精神につけ入れられる可能性もあります。強敵ですよ…彼…彼女たちは」

 

三人の女が詰まったヴァーシリーはにやりと笑った。

 

「『私達の愛のカタチだ』」

 

悍ましい愛がそこにあった。




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