王家の墓。それは、王の一族が眠るデカめな墓のことである。
言うに及ばず、王家に長い歴史は付き物。大抵のファンタジー世界では、言及されなくても王家の血筋は脈々と受け継がれているものである。それっぽいゲームが3タイトルあれば、その内の一つ位はその歴史がストーリーに絡んだりもするのではなかろうか。
そして、このゲームもその一つに該当する。まぁストーリーはよくある話で、特に感心も感動もない。本筋は選んだヒロインとの冒険と恋愛なので。
加えて、墓と言いつつ中がダンジョンのようになっているのも変わらず。ただ、この世界における王家の墓は常時魔物が徘徊している訳ではないので、まだマシと言えるかも。以前プレイしたゲームは魔物が跋扈する状態だったが、何故放置しているのか理解できなかった。
きっと、王様は裏で嫌われているのだろう。あくまで俺の感想だが、この世界の王も、大して偉大な感じはない。そもそも、この手の王様で偉人キャラがパッと思い付かない。
要らん話は捨て置いて、勇者と担がれた我々生徒会メンバーは、可及的速やかに王家の墓へと行く羽目になったそうな。
ただ幸い、王家の墓は序二段先生に遭遇したタワーとは違い、近場に存在する。位置的には我がコルフォート領と四条領に跨って存在する。これは古来、大貴族である両家が王を守護する役目を担っていたという歴史的背景がある。そして現在、両者は没落気味。あなかなし。
「――で、何故この組み合わせに?」
「はっ? その方が都合がイイんじゃないの?」
2割ギレの水仙。この密室状態での過剰な刺激は命に関わりそうだ。多少口は慎むとしよう。
「いや、この移動時間を利用して、アルフェンを攻略しようと思ったんだけど……」
王様のありがたい根回しにより、徒歩でも現実的な道程を馬車で移動する流れとなった俺達。まぁそれはイイとして、何故三台なのか。それならもう人数分寄越してもろてって話だ。王様は四則計算が困難な程に脳が老いているご様子。もう隠居した方がよろしいのでは。
「攻略? アンタ会長は話しても信じないって言ってたでしょ?」
見ての通り、一台には俺と水仙、後は一匹狼と、吐いて吐かれたペアが乗っている。そういえば、この事実をネタにすればカルシェラの傀儡化はほぼ完了と見ていいだろう。
「まぁ、そうだな。俺らは常に前を向く必要がある。分かるか? これからドラゴンとの接敵が確定している状態でタワーを登らされていたあの時の俺の気持ちが。言っておくが、今は正にそういう状況だぞ」
「っ……つまり、山吹色騎士はドラゴン以上に強いってことなの?」
「その前にだけど、山吹色の甲冑を着た騎士って、どう思う?」
俺自身の精神衛生上、一度だけ挟んでおきたい質問ではあった。
「はっ? 別にどうって、そういう時代の話でしょ」
「そう、か……」
「何でそんな下がってんのよ……」
これがカルチャーギャップというヤツか。とある文化圏の人間に野球のグローブを渡した所、頭に被ったという話を耳にしたが、そういう感じか。普通は暗黒とかで黒、最悪白とか赤だろ。
「まず、ドラゴンのような耐久性はない。だが、単純な攻撃力がヤバい。多分、ちゃんと構えたアルフェンがワンパン……じゃなくて、一撃で戦闘不能に追い込まれる威力だ」
脳内で確認すれば、この王家の墓クエストは先日のタワーよりも後、終盤と判定して間違いない時期に赴く予定のものだ。クリアによって手に入る装備品も、カナト専用なため、ノードロップの序二段ドラゴンと同様、何の得もないおつかいと言って相違ない。
王家に掛けられた呪いの象徴らしい件の甲冑騎士に関しては、戦闘面における印象は非常に薄い。というのも、山吹色騎士はそのテキトーなバランス調整の被害者筆頭であり、奨励レベルに達したパーティの火力なら、雑魚敵と変わらぬ手間で撃破が可能なのである。
だがしかし、ロリっ子ローリーさんが漏らしていたように、今ここでの我々は勇者という名の非常に脆弱なパーティであり、また主人公とメインヒロインが不在という、中々にイレギュラーな状態なのである。
「……それって、私達も同じってことよね?」
「あの戦闘の時は多分地味にアルフェンのHP――体力は消耗してたと思うから、俺らでも何とかなるドラゴンの一撃で逝った風に見えた。だが本来なら、俺らとアルフェンじゃ結構な耐久差があると考えられる」
役職が違うからねぇ。
「その揺るぎない真実をどうにかしてアルフェンに伝え、今日の所は帰宅するっていうのが最善なんだけど、どうにかならないか?」
「帰宅って……今の会長は、私から見ても張り切ってるみたいに見えるし、難しいんじゃないかしら……」
「王様も見た目だけなら温厚そうだし、敵が結構強そうなので、少しだけ鍛錬の期間を頂きますって言って先延ばしにできないもんなのか?」
後、称号とか送り迎えの馬車とか要らんから、装備品か金銭という形で援助してほしい。まぁこれはRPG史上叶ったことのない夢だが。理由はバランス崩壊。
「無理よ。王命は何よりも優先される。私達貴族のルールでもあるし、学園に通っているなら、その身分すら関係ないわ」
「何で皆そこまで王様に従うん?」
ちょっと軽く革命しようぜ。
「もう一回初等教育受け直してきなさいよ……」
許されるなら俺だって通いたいわ。この世界の小学校とやらに。
「どうしたもんか……アルフェンの根性に賭けるか……水仙さぁ……」
「何?」
「『金剛陣』覚えてない? あぁいや、嘘。覚えてないよなぁ……くそっ、あんなバカみたいな格好させてないでオンボロ小屋で読ませりゃよ――んぐっ!?」
「――今アンタ馬鹿みたいな格好って言った?」
頭を悩ませていた俺は、まるで差し出すように首を水仙へ近付けてしまっていた。そしてそこからのヘッドロック。
「っ……ごめ……嘘……っす……」
謝罪とタップで何とか解放されるが、危惧していたドツボにハマってしまったらしい。
「……この次に何か起こる前には、読んでおくわよ……」
「っ、それは割とマジで頼む。あるだけで選択肢が広がるのは間違いない」
現状、俺自身のレベルアップは絶望的だが、水仙には伸びしろしかない。
「わかったって。それより、もう着いちゃうわよ。結局どうするの?」
ゆったりとしたペースの馬車でもこんなに早く着いてしまうとは。もう少しシンキングタイムが欲しかったのだが。
つまり、また出たとこ勝負か。考えてみれば、現実の世界においても、十全に打合せをして事に当たれる機会の方が少ないのかもしれない。
「にしても、お互いの領内なのに周囲はほぼほぼ放置されてるな」
馬車の中から外へ目を向けると、視界は言った通りな感じ。イメージ的には西部劇の荒野のような塩梅か。とは言っても、西部劇に詳しい訳ではないのだが。
「国王様からも御触れが出てるし、誰も近付かないからよ。人がいないなら、こうなるのも当たり前のことでしょ」
加えて、土壌の問題もあるのかもしれない。だとしてもその正体は、設定だからという究極に収束する。少なくとも、地形やその成り立ちにまでケチを付けて回ってたら永遠に愚痴が止まらん。
その一方で、ご丁寧に入口の真ん前で馬車は止まる。俺らのは最後尾だった。
「――それでは、行くとしようか」
「その前に、勝算はあるのか?」
馬車が一旦離れていく中、前置きなしに凸ろうとする会長様に声を掛ける。ちなみに、もうキャラを気にするのは止めた。俺では、レクスのクズ道を体現することはできない。この数日で確信に至った。後めんどくさい。
「レクス君……もちろんだ。ドラゴンを屠った戦術について、四条さんから聞いたよ。僕はそれこそが、強敵に打ち勝つ唯一の策だと知った……僕が全力で耐え、ラトーラ君の魔法で倒す。これ以上の戦略はない」
「なる、ほど……」
何と。コイツ、天才か。今のアルフェンは、元の世界で言う所の小学校低学年程度の柔軟性を備えている。そう。大抵の古代RPGを見渡せば、キャラの自由意志による戦闘など本当に目も当てられない惨状が約束されているのだ。
設定上は知性溢れる学校一の秀才という美人先輩であっても、一度オートバトルとなれば無意味なデバフ魔法を連発しまくるケースは確固として存在する。そんな中で、通常のタンク戦略の有効性に気付くとは。
とにかく、俺の中でのアルフェンの評価は爆上がりした。
「アルフェン、お前は山吹色騎士の強さ、その特徴について、どの程度把握している?」
「それは……君と大差はないよ。書物で読んだ通りさ。一対一での剣技においては、右に出る者なしと言われている」
「……」
いや、そうでもないけど。
論点は、アルフェンが目標からの一撃に耐えられるか否か。だがしかし。
「もう一つ聞くが、このメンバーにヒーラー、傷を癒す魔法の使い手が不在であることについて、どう捉えている?」
「ちょっと――」
「――傷を癒す魔法? レクス君……水属性魔法の中でも、その系統の魔法が使える者は希少だ。ラトーラ君ですら、習得に至っていない。もちろん、そのような学生が生徒会にいてくれれば心強い……それについては、同意するよ」
「……マジかぁ……」
隣の水仙さんの表情を見る限り、それがこの世界での常識らしい。
つまり、メインヒロインのリースこそが伝説の勇者的存在だったらしい。確かに、癒しの魔法はレアだという話は作中でも出るが、ニュアンスが大分改変されているように思えてならない。ただ、その部分に文句を言っても事態が好転しないのもまた、自明の理か。
「アルフェン、正直に言う。山吹色騎士の一撃にお前が耐えられたとして、その後はどうする? まさかラトーラが何発も魔法を放つ間、何度も攻撃を受けるつもりなのか?」
「問題ないよ。今回は傷薬も3つ用意してある。盤石の構えだ」
「……」
キャラが装備できるアイテムは3枠。故にポーションは最大で3つ持てる。何故この世界の人類は収納魔法を軽視するのか。魔人に蹂躙され尽くして果てる、あの残念な英雄の名を知らんのか。そう、確か、ケプラーといったか。
ツッコミはその辺にして、どうやらアルフェンのおつむのキャパシティは、タンク戦略のイロハのイの一画目でバースト寸前だった様子。なので、もうヤツに真っ当な思考は期待できないだろう。
そんな中、我々はいきなり下り階段となっている王家の墓へと足を踏み入れる。ここで、そういえばカルシェラも存在していることに気付くが、いつも通りの存在感の薄さでアルフェンの背中に続く。
「ラトーラ。お前は、何か思う所はないのか?」
「…………」
安定の無視。タワー以来一回も口を聞いていないパーティ不動の火力担当は、二人を追って階段を下っていく。相手が後輩なら直ちに呼び出し、暴力で軽く分からせるルートもあり得るレベルのスルーだ。
彼女の思考回路は割とガチ目に理解不能である。今の所、状況が困窮しないと他者の言葉に耳を貸せない、一風変わった呪いが掛けられていると捉えておこう。
「……もし、アルフェンが一撃に耐えられるなら、ポーションを使った耐久戦法で勝てるっちゃ勝てるか……」
「っ……いいの? ポーションのこと、会長に知られても」
結局、俺のパートナーはこのお人よしツンデレ金髪のみなのか。まぁ全然文句はないが。
「そうだな。全滅するよりはいい。さっきも言ったけど、今後のことを考えるなら、アルフェンを味方に付けるのは必須事項と言っていい。流れ次第だけど、事情説明については、水仙もフォローしてほしい。改めて思ったが、結局お前だけが頼りだ」
「っ…………わかったわよ。ほら、置いてかれるわよ」
とりあえず殿で階段を下りる。一応プランAはアルフェンの耐久性能に期待。変な色の騎士の攻撃力はドラゴンのそれを凌ぐが、水仙と俺が序二段先生の尻尾パンチに耐えられたことを考えれば、非現実的な案ではないだろう。
そして思考に没入する暇もなく、パーティは墓の最奥へと辿り着く。正確には、辿り着いてしまう。もう少し考えていることを水仙と共有しておきたかったのだが、世の中そう都合よくは進まない。
「――この先にいるはずだ……皆、準備はいいだろうか?」
無論、ノーと叫びたい。
ちなみに、ここのギミックは行きはよいよい帰りは怖い、某不思議系ローグライクダンジョン方式であり、実質の主である山吹色騎士を倒すと、帰り道は亡霊モンスターが群がってくるという、何を表現したいのかよくわからん仕様となっている。
「僕が相手の攻撃を引き受ける。その隙に、皆は反撃に徹してほしい。では、行こう」
一人で話を進めていく型リーダーのアルフェンは、面々の無言を消極的肯定と受け取り、奥へと続く石の扉を押し開ける。
やってることは完全に墓荒らしのそれであるが、まぁ勇者とはそういうものであり、加えて、他人の居住地に無断で押し入り、タンスを開けて家探ししまくる行為よりは、幾分マシと言えるのかもしれない。
「―――――」
中はそこまで広くない。もし天井がもう少し低ければ、そこそこの圧迫感を覚える空間となっているだろう。その奥には墓標と棺、そして。
色は濃い目の黄色。何千年か、何百年かは知らないが、気が遠くなる時間やられ待ちし続けていると捉えると、何だか気持ちがちょっと沈む。逆に言えば、我々はその枷から解放しにきたと見ることもできる。
とりあえず見たままを言えば、西洋剣で武装した動く黄色い甲冑だ。これは単なる仕様だが、非常に緩慢な挙動で闖入者に反応を示している。
「よし、アルフェン。ここで耐えれたら、この物語の主人公はお前だ……」
「何言ってんのアンタ……」
祈る俺に茶々を入れる水仙。そんな我々など知らず、勇ましき生徒会長は自慢の大剣で山吹色騎士へ斬り掛かる。
「――はあぁっ!」
ヒット。まぁそれなりのダメージか。後200回殴れれば打倒は叶うであろう。
「―――――」
そして、先程からのゆったりとは一線を画す反撃の剣。回避の確率が極端に低いゲーム仕様に引っ張られた、敵側の理不尽な攻撃スピードである。
「ぐあぁぁっ!?」
「――っ!?」
視界の奥で、鮮血が迸(ほとばし)る。というか、アルフェンさんは左肩から真っ二つに斬り裂かれている。これは、完全なるオーバーキルだ。
「ぎぃぃああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
驚愕の反応速度によるカルシェラの叫び。その音圧により、目の前のグロ映像のショックが吹き飛ばされる。これはつまりバフか。
「――モヤっと玉どーんっ」
「――ぎゃっ――」
俺は技名を唱え、懐から出したボールを敢えてカルシェラにぶつける。
「――ちょっ!? アンタっ! 何やってんのよっ!? 大体、この手の相手にこんなことしても無駄だって――っ!?」
問答無用で水仙の腕を引っ張る。場がそこそこの閉鎖空間なためか、煙幕の効果は割と高めで、甲冑の姿は見えない。
「ラトーラっ! こっち――」
「っ……」
とんぼ返りで退く。抵抗されたらどうしようと思ったが、水仙は手を引かれるままに付いてきてくれている。だが、銀髪少女の方は未だ無表情で俺の顔を見返すのみ。
「言っておくが、そのままだとアルフェンの二の舞だぞ。まぁそうなったら、後で回収して生き返すけど」
「……」
それだけ言って扉を抜けると、今度はラトーラも従ってくれた。
「えっ? 嘘……逃げられ、てる……どうして?」
「仕様だ」
最初はバグだったが、面白がったユーザーに乗っかる形でアプデでも修正されなかった。
そう。山吹色騎士は、唯一逃げることが可能なボスキャラなのである。少なくとも、その部分はこの世界においても踏襲されているのが確認できた。
「後は……」
「いいいやああぁぁぁぁっ!?」
絶叫しながら走り去るカルシェラは捨て置き、扉から少し距離を取って場を見る。
「――えっ? 追って、きてる……」
「なるほど……」
どうやらこのイベントは忠実再現系に当たると断定しておこう。
逃げられることによるバグの連鎖。
山吹色騎士は本来、某ジムの代表者のように一切の移動が禁じられているが、一回戦闘に入った後、相手に逃げられた場合においては、その限りではない。
ゆっくりと、追い掛けてくるのだ。
これにより、ネット上では、王宮の中に山吹色騎士を迎え入れてみた、といった類の動画が複数投稿される始末。また都合が良いことに、何処で倒してもイベント進行に影響はなく、それも修正されない理由の一つであると推測される。
「どうしよっか? やっぱ、倒すべき?」
「アンタ何でそんな余裕なのよ……」
「大丈夫だ。アルフェンはまた教会へ連れて行けばいい。この肌寒い環境なら、そう簡単に腐ることもないだろう。で、ラトーラ。もし倒すなら、お前の協力が不可欠だ。どうする?」
普通に歩く程度の速度で墓を引き返しながら質問を投げる。一方の山吹さんは甲冑らしい金属音を立てながら健気に追随する構えだ。
「…………わかった」
「マジか……」
拒否ってくれれば、ならしゃーないっすねぇってノリで帰れたのに。
「っ……けど、倒すって、どうするのよ?」
その速度はともかく、追ってくる山吹さんに対して、気が気ではない様子の水仙さん。
「まぁ……あんまりよくないんだけど、他に方法がないから……っていう感じのヤツ」
「アンタ説明する気ないでしょ……」
「いや、口に出したくないだけだ」
「同じだから……」
「……付いていけばいいの?」
「うん、頼む。結局、頼りになるのはラトーラだけだから」
「……」
「はっ? アンタさっきと言ってること違わない?」
「いやいや、今のは火力面の話ね。攻撃の話っ」
山吹さんにビビりながらも俺にキレるという離れ技をやってのける水仙。
そして我々三人は、無事地上へと帰還を果たす。
「水仙。とりあえず馬車には帰るよう伝えて。事情は後で説明するって感じで」
「わかったわよ……既に乗り込んでるカルシェラは?」
「いい。カルシェラ育成計画は既に凍結させた」
解凍するのはいつになるやら。
「何言ってのかわかんないけどわかったわ……」
この世界のほとんどの一般王国民に対し、無類の説得力を有する水仙。これは、辛い過去から得た数少ない成果かもしれない。
去る馬車を横目に、三人と甲冑は付かず離れずの距離を保ちながら荒野を行く。大分陽も傾き、周囲に人気はない。
「……何処へ向かうの?」
「まぁでも、コルフォートの屋敷は馬鹿デカくて目立つから助かるな」
「……はっ?」
「……」
頭の中では、様々なパターンに備えて策を練っておく。こういう時は一生黙っているラトーラはありがたい。また、モヤっと玉も1ダース購入したし、収納にあるものを入れれば全然余裕だ。後は若干の賭け要素がどう作用するかだ。
色々言ってきていた水仙も、俺が割と本気で考えている様子から察してくれたのか、以降は山吹さんとの距離感に細心の注意を払ってくれた。
そして、陽もまぁまぁ沈み掛けた時、俺達は目的の場所へ無事目標を釣ったまま到着した。
「――で、アンタの屋敷の中に強力な武器でもある訳?」
「そんなのあったら絶えず携帯しとるわ」
金を力に代えて発射する装置とかかな。銭投げの上位互換的な。
「っ……」
どうやら、ラトーラは今の説を推していた様子。コイツ、実はただの魔法脳筋か。
「えっ? 裏手……っ!? アンタ……まさか……」
「…………」
文句を言うかと思ったが、馬留めまで入っても何も言わずに付いてくるラトーラ。もうこの人のことが全くわからない。
「後はワープのタイミングだけど、エンカウント反応の瞬間に転移すればイケるだろ。多分」
「だから教えなかったのね……」
一応、ラトーラを最も遠ざける位置に立たせ、山吹さんの接近を待つ。
「――――ドゥドゥドゥッ。落ち着けアルレッキーノ。あの甲冑は敵じゃない。だから大丈夫だ」
「どう考えても敵でしょ……」
恐怖に震える愛馬を落ち着かせつつ、俺は反応と同時に転移を発動させた。