かませクズ貴族転生   作:サムラビ

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萎える足止めと復活と展開

「――コイツ……丈夫過ぎるんだけど……」

「半分はそうだけど、もう半分はこっちが非力なのが要因だけどな」

 

 現状において戦力外の俺は、やっと気付いてカルシェラの遺体を出口側ギリギリまで運んで下ろす。触れた者を呪うような顔は目を閉じたことで解消され、やはり目は顔の印象を築く中心なのだと思い知る。もちろん、そのような思考は現実逃避に他ならない。

 

「っ……アンタ、いつもみたいに何か考えて手伝いなさいよ……」

 

「おいおい……俺はレクス・フォン・コルフォートだぞ? 殴っても蹴っても祈っても、1ダメージだって入らん。モーションの無駄だ」

 

 なので、俺はウロウロを繰り返す。

 

「後でシメる……」

 

 何か不穏なことを言っているが、純然たる事実なので諦めてほしい。

 

 既にラトーラが攻撃を繰り返していた、その倍以上のターンが経過しているが、未だこの恐るべき泥沼戦は終わらない。

 

 三体いたモンスターの内、二体は消え去り、こちらは三人いたパーティから一名の死者が出ている。死因が切断、爆散系ではないため、ラトーラの遺体はまるで寝ているように綺麗。何故潰れないのか、別にゲームとしては表現可能なはずなのだが。まぁ求めてはいない。

 

 昔、グロくて18禁、というフレーズを聞いた気もするが、そのまま流す。

 

 現状は少々異質。

 

 所々ひび割れている化けボトルシップは、攻撃力低下デバフを繰り返すのみ。ただ、そのリソースが無限であるに加え、真面目に攻略しようとすれば前線の火力が削がれるのは致命的であり、決して雑魚というイメージはない。

 

 先に散った二体に比べ、若干耐久が高かったことが今を作り上げているのは嘘ではないが、その若干の数値を削り切れない我々の雑魚さこそが問題と言えるだろう。俺は言う。

 

「……だから『アリアン・ランス』覚えとけって言ったのになぁ……」

 

「はぁっ!?」

「え……嘘……今のツィート聞こえたん?」

 

 耳が地獄過ぎる。デバフを浴び続けながら振り返る金髪美少女。それでも尚、彼女が俺を撲殺するのは容易。

 

「それは何言ってるか分からないけど、さっきのは聞こえたわよ………………今度までに、送られたの読んどく……」

 

「……助かります……」

 

 実際、俺の忠告通りに困ったため、何とか自分への厳しさが勝ってくれた様子。おそらく、今回は素直に読破し、習得してくれる流れっぽい。それだけが、本件における収穫か。

 

「まぁ、さすがにそろそろだろう。で……さっきも休憩中に話したけど、より確実性を高めるって意味で、水仙が二人共運んだ方がいいと思う。っていうか、試しにラトーラ背負ってみたけど、かなり動きが鈍る」

 

 だって、お米より重い。意識を失った人間は非常に重いという事実。そして、俺の力パラメーターのヤバさ。

 

「っ……アンタこそ少しは身体鍛えなさいよ……」

「一応風呂入る前に腕立てしてる」

 

 が、成果が出るのはまだまだ先。

 

「…………」

 

 残念な指針が固まった所で、その時を待つ俺だったが、そんなキリよく事象は生じない。

 

 本来ならこの場で使用するはずもない初級魔法の連発。相手からすれば真綿で首を締められるような感じだと思われるが、そこは相手がBOTで良かった。

 

「…………」

 

「――っ、倒せたっ」

「っ、あ、あぁ、はいダッシュっ!」

 

 やや寝そうになってた所を切り替え、俺は出口の階段へ向けて全力で走る。

 

 ちなみに、エンカウントしたらゲーム終了なのは言うまでもないが、その可能性はほぼない。だとしても、命が掛っている以上万全を期す。

 

「――あぶねぇ……」

 

 朝日が目に沁みる。地下から地上へ。正に生還である。

 

「まぁ、ほぼ入口からなんだけど」

 

 凄ぇ強い敵の出るダンジョンに行って一回だけ全力で戦ってすぐ宿屋に戻り、それを繰り返すというのはRPG攻略の一つだろう。ハクスラだと結構楽しい。一応、やってることはそれ。

 

「ちょっと……ブツブツ言ってないで、カルシェラ背負いなさいよ」

「いや、能力面を考慮したら俺がラトーラ担当だろ」

 

 カルシェラをディスる気はないが、明らかに細いし。

 

「っ…………カルシェラ、ちょっと臭うんだけど……」

「ほぅ……」

 

 ゲーム設定世界補正により、腐敗にはまだ遠いはずだが、嘔吐、失禁、脱糞と、考えられる要因は複数存在する。もちろん、掘り下げるような愚は犯さない。

 

「よし……向こうで動揺している従者の皆さんを呼んでくるから、そこに降ろしといて」

「……わかった」

 

 カルシェラの亡骸から手を放し、ラトーラを背負う水仙。設定通りの彼女なら、我慢して二人共キャリーすることだろう。優等生ロールも大変だ。

 

 俺は50メートル程の距離を標準的な速度で走破し、言われなければ動かない系の人達へ事情を説明。色々面倒臭いので、コルフォート領の教会で蘇生させる手筈を整えるよう指示を加える。

 

 アルフェン、申し訳ないがもう少しだけ待っていてくれ。後、名も知らぬ二人も。

 

 

「――けど、同じやり方で残りの三人も助けられるのよね?」

「ラトーラにどれだけ指示が通るかが焦点になるけど、概ねイケるはず」

 

 

 カルシェラは後ろの馬車、そして何故かラトーラは対面に座る水仙の膝枕。正直、体勢も含めて寝ているようにしか見えない。

 

「後は対策として、武闘派の従者を二人、後衛に配置してリスクを散らすのもアリかもしれん」

「酷いやり方だけど、それでも私達の役目よりは大分マシなのよね……」

 

 これについても、消極的賛成を示す水仙は、最早既存の設定から逸脱していると言わざるを得ないだろう。当然、助かる話ではある。

 

「それより、生き返らせてすぐ再突入はさすがになぁ……予定も狂ったし、蘇生が完了したらラトーラには一旦休息を取ってもらって、先に四条領に行こう。さすがにこれ以上挨拶を先延ばしにするのはマズい」

 

 この世界には電話という便利且つ必須な連絡手段もないため、あれだけのことがあったのに未だ何もコンタクトを取っていない。

 

 ちなみに、ヒロインとチャットしたりする感じでスマホみたいなのを世界観に入れようとしていたらしいが、シナリオの都合上カットされたらしい。

 

「都合よく電波が届かないとかにしてでも採用してほしかった……」

 

 こんな雑な世界観なのだから、多少のご都合主義が加わった所で問題はなかろうに。ただ、戦闘が終わった瞬間に掛ってくる電話とかには、違和感を覚えてしまう方ではある。

 

 そして、この後の予定について色々と確認をしていると、高速馬車は領地を跨いで最寄りの教会へと到着したらしい。馬車が止まったのだから、そういうことだろう。

 

「――レクス様っ! お待ちしておりました」

「う……」

 

 俺よりも先に、生理的嫌悪というリアクションを示す四条家次期当主。

 

 馬車を開いて我々を出迎えたのはドM貴族のハンバーガーさん。この前のアポなし訪問とは違い、派手な服装で決めているが、全く決まってはいない。また申し訳ないが、個人的には朝から見たい顔でもない。

 

「おぉ……っていうか、教会の入口までの数十メートルに赤い絨毯が引いてあるんだけど……」

 

 しかも鎧に身を包んだコルフォートの騎士達が剣を掲げて花道を形成している。俺達は死人を出して逃げ帰ってきたのだが。

 

「もてなしてるんだろうけど、無駄の極致ね……」

 

「っ、四条様っ! こちら、段差がございますっ! ささっ、この私めの背をお踏み下さいっ!」

 

 その肥満体に似合わぬ妙な俊敏さで跪き、馬車の前でひれ伏す大貴族。

 

「今日も平常運転だな……」

 

 少なくとも、午前の早い時間帯にフィットしたテンションではない。加えて、貴族という言葉で連想する概念から遠過ぎる。

 

「…………」

 

「…………ちょっと、どうにかしなさいって」

「えっ? いや、慈悲の心があるなら、踏んでやった方がイイんじゃないか?」

 

 期待に胸を膨らませているその表情に、妙な哀愁を感じてしまった今日この頃。

 

 ちなみに、その性癖が暴力から遠く、無害性が強いため、四家における領民の支持は最もマシという、何だか複雑な事情もあったりする。

 

「……アンタのことなら踏んでもイイんだけど?」

「ハンバーガー、悪いが先に教会の方で待っててくれ……」

 

「――っ!? はっ!」

 

 その感情は読み取れないし読み取らないが、おっさんは元気良く立ち上がり、言われた通りにしてくれる。正直、俺も四人の中では最も好印象ではある。クズ貴族の跡継ぎはドM貴族、アリかナシかで言えば無論ナシだ。

 

 馬車から降り、正に教会と言った造りの建物にインする。前室を抜けると、これまた想像通りな室内で、ステンドグラスがまぁ綺麗。ただ、存在感を以て奥に控える肥満な初老男性により、未だ隣の水仙さんはその表情を引き攣らせている。

 

「まぁ、全然正常な反応だと思うけど、それでも四大分家の長で一番まともな感じしない?」

「っ……しない」

 

 どうやら、本当に気持ち悪いらしい。ただ、寝取りの人だったらまた血を見ていたかもしれないので、最寄り位置の偶然には只々感謝。

 

 

「――それでは、復活の儀式を始めさせていただきます」

「おぉ……」

 

 

 少し感動。

 

 姿を現したのは妙齢の神官女性。女性である理由は、本ゲームの性質を考えれば自ずと明らかになるだろう。教会の数だけ同一人物が存在しているのだろうが、キャラデザがよろしい事実はここでも反映されている。

 

 そして、さすがの仕切りで棺へ入れられた両者が、会衆席の先で横に並んでいる。

 

「あ、そういえば、寄付金……は、もしかしてハンバーガーさんが既に?」

「はい。よろしければ、すぐにでも」

 

 声がイイ。

 

「ちなみに……ラトーラ、銀髪の方がお幾らとか、教えてもらっても?」

「はい。ラトーラ様が3万ガバチョ、カルシェラ様が2千ガバチョになります」

 

 差。

 

「…………水仙。何故二人に2万8千もの金額の開きがあるのか、分かる?」

 

「はっ? 一般的に、強い人の方がお金もかかるわ。さすがに、3万っていうのは、聞いたことがないけど……」

 

「なるほど。では、お願いします」

「承知致しました」

 

 詮無き疑問は捨て、先を促すこととする。

 

「――――」

「――――」

 

 神官さんが両手を掲げると、眩い光が一瞬、それで終わり。ゲームと同様のエフェクトだった。今はとにかく呆気なく感じられるが、ゲームプレイ中はスムーズで助かると思っていた。

 

 そんな中、結構な反射神経でラトーラが起き上がり、棺から出る。正直、ホラー映像としか捉えられない。そして、ゾンビは一直線で俺の方へ。

 

「お金は?」

「あーいや、オゴりでいいよ」

 

「そう。もう一度行く?」

「えっ? いや……うーん……明日の同じ時間……がイイな。後で使いを送るわ」

 

「……わかった」

 

 やっぱスマホ欲しいなぁ。

 

 そういえば、ラトーラの交通手段について気になったが、銀髪の後ろ姿は既に前室へ。

 

「今更だけど、あの子が何を考えてるのか全然分からないわ……」

「多分だけど、自分の魔力を向上させることが価値観のド真ん中なんだと思う」

 

 それに関連して、現在はゲーム設定という見えない壁によりスランプ状態。おそらく、何もしないよりは生徒会の連中と行動した方が、という感覚なんだろう。

 

「おっ、何という神なタイミング……」

「前々から思ってたんだけど、神の使い方おかしくない?」

 

 銀髪と入れ代わりで視界に入った緑色の短髪、茶色系が標準な世界では実に目立つ。女中筆頭のシオンさんが今来たということは、多少はスムーズに事が運ぶことを予見している。

 

 水仙が少し離れ、現れた従者と二言三言交わして戻ってくる。

 

「アンタが来るならいつでもって話らしいけど、ホントに今から行くの?」

 

「マジで? 超助かるわ。じゃあ……ちょっとだけ用事を済ませて、そっちに向かおう。水仙、一回帰る?」

 

 俺は未だ復活の狼狽から立ち直れずにいる憐れな同級生を振り返りつつ、やや早口でそう伝えた。

 

「…………何か、私も段々アンタの考えが分かるようになってきたわ……付き合うわよ」

 

 

 よく見る呆れ顔を向けられるが、俺はマイペースに展開予測を頭に浮かべつつ、今日がまだ始まったばかりだという事実を思い出した。

 

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