よく染みたおでんを一つ。   作:吉野リョウ

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とある日の帰路

私は当番の仕事を終え、シャーレを後にした。

(あ、そういえば。)

19時を過ぎているとさっき先生が言っていたのを思い出し、見慣れた道へと歩き出す。

「いらっしゃい。ご注文は?」

「えぇ、じゃあ牛すじと大根、それと特製ウーロンを」

「あいよ。」

そういうと、主人は慣れた手つきで各々の注文の品を取り繕っていく。

「はい、お待ち。」

スッと皿とカップを差し出してきた。

「ありがとうございます。」

よく染みた牛すじと大根を交互に食べる。

(やはり、安心できる場所だな。ここも)

私は以前までここと家くらいしか自分に鎧を着せることなくいられる場所はなかった。

最近ではシャーレに行くことも多くなり、先生といる場所もまた...。

そんなことを考えながら学生なりの小さな宴会を開いていると、

「すいません主人。ウーロンハイと牛すじをお願いします。」

隣から見知った声が聞こえたが気のせいだろうと少し席を横にずれる。

「あれ?カンナじゃないか。さっきぶりだね」

「先生こそ、なぜここに?」

「いやね、カンナと前ここであったでしょ?

 それで今日カンナにあって思い出してね。まさかまた同じことが起こるなんてね。」

「あ〜、注文は以上かい?」

「あ、すいません。一旦それだけで。」

「あい。」

「すいません主人。私も特製ウーロンをもう一杯」

「あいよ。」

間も無くして先生の手元にも牛すじとウーロンハイが置かれた。

そして私の元にも特製ウーロンが届いた。

「じゃあカンナ。乾杯。」

「あぁ、乾杯」

紙コップの擦れた音が少しなり、互いにのみあった。

「あれ、何か味が変な気が...」

「ほんとだ、味がウーロンハイというより。」

私とカンナは主人をチラリと見る。

「あら?取り間違えちったか。悪りぃな」

「じゃあこれはお酒ですね。」

「あぁ、大丈夫カンナ?頭とか痛くない?」

「え、えぇ...だい..じょうぶです。」

_____________________

大丈夫と口ではいうが、カンナは顔が紅潮していた。

「顔が真っ赤じゃないか。主人、水をいただけますか?」

「おう。すまねぇな兄ちゃん。俺のミスでよ。」

「いえ、紛らわしい注文をした私の問題ですから。こちらこそすいません。」

「こっちは心配いらねぇからよ、そこの嬢ちゃんは常連なんだ。

 またきて欲しいからそっちを心配してやってくれ。」

そう言って紙コップに入れたひんやりとした水を手渡してくる。

「はい。カンナ、はい水。ゆっくり飲んでね」

「あ、はい。ゴクゴク....はぁ」

「落ち着いた?」

「えぇ、ちょっと頭が痛いですが...」

「ごめんね、私が油断していたよ。匂いで気づくべきだった。」

「いえ、大丈夫ですので...」

(先生...近い...)

少し頭がくらついて、先生の方にもたれかかってしまう。

「カンナ!?」

「ちぃと酒に弱かったみてぇだな。ほれ。」

「これは?」

「あんたらの食いかけだ。パックに詰めておいたから今日は一旦帰っとけ。」

「あぁそうですね。すいません。今料金を。」

「いんや、嬢ちゃんにシクって酒飲ませんたん俺や

 だから今回の料金はチャラにすっから見逃してくれ」

「いえそういうわけには...」

「ダァ鬱陶しい大丈夫だっつてんだからいいんだよ。

 ほらいったいった!」

そう言い切って主人は軽い力で私たちを押しのけていった。

「すいません!ツケにしといてください!」

そう言ってカンナをおぶって店を後にした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ねぇカンナ。カンナの家ってどこだい?」

「う〜ん...う〜ん....」

「....やむ得ないか...。」

私は道を歩む足を止め、見知った道へと着くように方向転換をした。

 




カンナってお酒弱そうですよね。
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