よく染みたおでんを一つ。   作:吉野リョウ

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とある日の私たち。

先生は寝巻きと下着を手に取り、私に話しかける。

「じゃあ、ちょっとシャワー軽く浴びてくるね。」

「それは、そのいわゆる....」

「ち、違くてね!一人で寝る分にはいいんだけど、カンナと寝るんだったら嫌な思いさせたくなくて...

 ほんとに違うから!」アセアセ

「はは、ちょっと揶揄ってみただけです。私は大丈夫ですが、お気遣い感謝します。」

「じゃあちょっと言ってくるね。」

そう言って先生は、風呂場のドアを開けて中に入っていった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

先生が風呂場に入って数分後...

「...はぁ」

多少収まったものの、まだ頭痛がする。

(先生の部屋にいるんだな、私。)

軽く部屋を見渡してみる。

綺麗に片付けられている雑誌やゲームソフト、フィギュアが置かれている棚があったり、

机の上に唯一埃がかぶってない写真が一つ、家族写真のようなものだろう。

いわゆる男性の部屋、という印象を受ける。

私は大半の趣味に疎い。多少読書や、推理物の映画を嗜むがそれっきりだ。

少しでも先生の好きなものに近い趣味を持っていれば...なんて。

だけど、そんな憂鬱を晴らすようなものが目に入った。

推理小説だ。しかもかなりマニアックで知る人ぞ知る名作の。

気になって手に取る。

「先生もこう言ったものを読むのか...」

少し、ほんの少し...にやけてしまう。

「カンナ、それ好き?」

「キャッ!?」

本当にびっくりした...らしくない声を出してしまった。顔がまた赤くなる。

「ははは、カンナがそんな声を出すの珍しいね。」

「わ、笑わないでください!」

「で、カンナ。それ好きなの?」

頭を乾かしながら先生はそういった。

「えぇ、数少ない私の...趣味?でしょうか。

 好きなんです。小説。」

「それ私も好きなんだよね、

 仕事が少ない時は休憩時間に読めるようシャーレに持っていくこともあるんだ。」

「!へぇ、そうなんですね。」

「カンナは他にどんなのが好きなの?」

「えぇ、そうですね...他には・・・」

それから私は少しの間頭痛のことを忘れて先生と話した。

いや、もう頭痛は無くなっているのかもしれない。

ただ、今は先生と話したい。それだけだった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「おっと、もう11時だね。」

「もうそんな時間ですか。」

「明日も仕事だし...

 じゃあ、まぁその...寝ようか。」

「そう...ですね。」

さっきまで好きなことを話して興奮した脳が、また別の意味で熱くなるのを感じる。

 

私が先に布団に入ると、先生は辿々しく続いて入る。

「ちょっと狭いね。」

「えぇ、でも暖かいです。」

「....そっか。」

先生と合わさる背中、

その背中からは多少の温もりと、溢れるほどの優しさをひしひしと感じる。

そんな時、先生が口を開く。

「ねぇ、カンナ。」

「はい。なんでしょうか。」

「高校....楽しい?」

急にそんなことを聞く先生の声はどこか不安げだった。

「そうですね。楽しいです。

 後輩たちも私のことを怖がってはいますが、一緒にいて幸せですよ。」

「...そっか....そっか。」

部屋に僅かな豆電球の光が指す。

その光は眠気を同時に運んでくる。

「...先生。」

「ん?なんだい。」

「先生は仕事、楽しいですか?」

なんて、そんなことを聞く。先生が出す答えは分かり切っているのに。

「楽しいよ。楽しいに決まってる。

 忙しいし、やることも多いし、責任もある。ただ...」

「生徒とみんなと一緒にいられるのが好きなんだ。大好き。もちろん、カンナといる時だってね」

 

ズキン。

声色からしてわかる。先生が優しい笑みを浮かべていることに。

私は、先生の方を向くように体を回した。

そして、先生の背中に抱きつく。

「ちょ、カンナ。」

先生の制止を求める声を無視して、叶うはずないことを言う。

「先生。」

 

「好きです。心の底から。」

 

僅かな沈黙だった。しかし先生は答えが決まっているかのように口を開く。

「カンナ。気持ちはとても嬉しい。だけど、私たちは...」

「先生と...生徒。」

「...そう。だから...」

とうに抜け切ったお酒の感覚がぶり返しそうになる。

この先の言葉が聞きたくなくて、頭を、ふさげもしない大きな耳ごと先生の背中に押しつける。

だけど、先生は...。

「だからね、カンナ。カンナが卒業するその時まで...」

「私のことを、カンナがまだ好いてくれたなら。」

「その時は、お付き合い...してくれないかな?」

「こんな私でいいなら、ね。」

私は涙が出そうなのを堪える。

この人生で、本気で泣いたことなんて数えるほどだが

今だけは、情けないほどに泣いた。

 

しばらく経って返事を返す。

「先生。ありがとうございます...」ヒック

そして二人は眠りについた。




カンナの絆ストーリー見て、ただただこれをかいてみたかったです。
ただ、自分の文章力が追いつかず...悔しい。
まだまだお目汚しですが、次回最後になると思います。
お楽しみに。
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