ガンダムSEED~オリ主で主要キャラ全員生存ルート爆走記~ 外伝 作:とーふ@毎日なんか書いてる
(第三者視点)
これはまだキラとアスラン、セナが月面都市コペルニクスで生活していた頃の話だ。
いつもの様に幼年学校から帰ってきたキラが、制服も脱がずにソファーに飛び込んでゴロゴロとしていた。
セナはそんなキラを見て、お疲れ様と言うと、台所まで行ってコップに水を入れてきて、それをソファーのすぐ隣にあるテーブルの上に置き、キラの鞄を片付けようと床に投げ捨てられた鞄を持って運ぼうとした。
しかし。
「えー。水なのー? 僕、ジュースが飲みたいなぁー」
「でも、お姉ちゃん。お母さんがジュースは一日一杯だけって言ってたでしょう? 今飲んじゃうとおやつの時に飲めなくなっちゃいますよ?」
「大丈夫だよ。ちょっとだけならバレないって! ね。セナも一緒に飲もう? それにさ!」
キラは立っているセナを抱きしめるとそのままソファーに倒れ込んで笑った。
「セナも一緒にゆっくりしようよ。今日はもういっぱい勉強したんだから」
「でも」
「良いの。ほら。お姉ちゃんのお願いだよ」
「……なら、しょうが「なくないぞ! セナ!」っ、アスランお兄ちゃん」
セナは怒りに満ちたその声に体を震わせると、キラに抱きしめられたまますぐ近くで怒りに震えている少年に視線を向けた。
「さっきから黙って見ていればなんだ! キラ! 帰ってきてすぐにダラダラ、ダラダラとせめて制服を着替えるくらいはしたらどうなんだ!!」
「もー、アスランは今日も煩いなぁ。良いじゃん僕がどんな格好で過ごしてもさ」
「いいワケあるか! その制服を誰が洗うと思っているんだ!」
「別にアスランじゃないでしょ。アスランには関係ないじゃん」
「俺はお前とセナの兄としてな、だらしないお前の生活を改善させる義務があるんだ。お前がだらしないとセナまで真似してしまうかもしれないからな! 健全な生活をする為には……」
「ねぇー。セナ。ゲームやろ。ゲーム」
「え? でも今、アスランお兄ちゃんが話を」
「良いよ。別にいつもの話なんだから。姉としての自覚をー。とかそんな話ばっかり。もう飽きちゃった」
キラのその不真面目な態度に手をプルプルと震わせながら、怒りを全身で示していたアスランが声を出す。
「キラ!!!!」
「っ、んぃーうっさ」
「どうしてお前はいつもそうなんだ!! やったらやりっぱなし! 宿題もやる気が無いからとやらない! 授業も聞かない!! 分かっているのかキラ!! 聞いているのかキラ!!」
「はいはい、はいはい。聞いてるよ」
「はい。は一回だキラ!」
「分かってるから細かい所まで突っ込んでこないでよ」
「お前は! そんなで将来はどうするつもりなんだ! 一生このままというワケにもいかないんだぞ!!」
「将来ぃー? そんなのテキトーに生きるから大丈夫だよ」
「適当なんかで生きていけるか!!」
「あれぇ~? アスランってば知らないの? 適当っていうのは適した当たりって事で……あ」
「お姉ちゃん。流石にその発言は悪手です」
「キラ!!!!」
本日二度目の雷が落ちて、キラは両手で耳を塞ぎながらクッションでアスランをガードしようとする。
が、それをアッサリ奪われてしまい、最終手段とセナの背後に隠れる事にした。
「キラ! 良いか!? お前のそういういい加減な態度がセナの教育に悪いという事を自覚しろ! お前はセナの姉なんだ! もっと将来の事を考えて、しっかりと今を見据え、一日一日を大切に意味を持って」
「あーあーあーあー。もういつものが始まっちゃったよ」
「キラお姉ちゃんがアスランお兄ちゃんを怒らせるからですよ」
「そんな事言っても勝手に怒るんだからしょうがないじゃん」
「聞いてるのか!? キラ!」
「はいはい。聞いてるから」
「はいは一回で良いと言っているだろう! キラ!」
「あー、もう本当に煩いなぁ」
「ふふ。でも良いじゃ無いですか。お兄ちゃんとして、お姉ちゃんの事を考えてくれているんですよ」
「どこが! あんなの怒りたいだけじゃん。それに僕アスランが兄なんて認めて無いから。僕の兄さんはラウ兄さんだけだよ」
「……なに? どういう事だキラ」
「いーっだ。いつも煩いアスランには教えてあげない!」
「そうか。セナ。お兄ちゃんに教えてくれ」
「はい。ラウ兄さんは私やキラお姉ちゃんよりも年上のお兄さんで、今は仕事で遠くへ行っているんですが、たまに帰ってきてお土産をくれるんです。面白い話とお菓子とか置物とか」
「そうだよ! アスランなんかよりずっと頼りになって格好いいお兄ちゃんなんだから!」
セナとキラの発言にアスランはかなりダメージを受けた様だった。
よろよろっと体をふらつかせると、壁に手を付きながら頭を抱える。
「ちょ、アスラン大丈夫? アスランなんかって言ったのは謝るから元気出してよ」
「いや、別にそれは大丈夫だ」
「そう? なら良いけど」
大丈夫だと言いつつも、明らかにダメージを受けているアスランにキラは心配そうな声を出しながらその背を撫でた。
しかしアスランはそんなキラの事は気にせず、セナへと強い視線を送る。
「セナ。そのラウ兄さんはどんな人なんだ」
「えっと。そうですねぇ。キラお姉ちゃんに宿題をやらせるのが上手かったですね」
「っ!」
「ちょっと。アスラン。本当に大丈夫?」
「キラ」
「何? どうしたの? お水が欲しい?」
「今すぐ宿題をやれ」
「えぇぇえ!? 突然何!? イヤなんだけど!」
「良いからすぐにやれ! 早くしろ!」
「ヤダ! 絶対にヤダ!!!」
「何でお前は……「アスランお兄ちゃん」なんだ? セナ」
「ラウ兄さんは命令するのではなく、重要さを教えるタイプの人でした」
「キラ」
「……何さ」
度重なる説教により、完全にアスランを警戒しているキラがアスランの視線から逃げる様に動き回る。
その落ち着きのない様子にアスランの眉間に皺が寄るが、必死に耐え、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「良いか。キラ。宿題というのはな。将来のお前の為に」
「はいはい。分かったって。だから別に宿題なんか頑張らなくても良い感じに生きて行くから」
「そんないい加減な考えで大丈夫な訳が無いだろうが!! いい加減にしろ!!」
「生きていけるもん!」
「出来ない!」
「出来る!!」
「出来ない!!!」
「出来るよ! だって僕どうしようもなくなったらラウ兄さんと結婚するもん!」
「……は?」
「セナと一緒にね。ラウ兄さんと暮らすの。家の事はセナにちょっとずつ教えて貰って。理想のお嫁さんになるもん」
「キラ、お前は俺にチョコレートを渡しただろう? バレンタインデー」
「え? うん。そうだけど。だから何?」
「いや、そうだな。まぁ、そうだな」
「はぁ?」
キラは心底何を言ってるのか分からないという顔をして、首を傾げた。
そして、時が止まったキラとアスランの間にセナが入って、二人を引き離す。
冷静になって貰う為に。
だが、その程度で火が入った二人の争いが止まる筈もなく、熱はさらに激しくなるのだった。
「セナ! 俺とそのラウ兄さんとやらとどっちが理想の兄なんだ!」
「そんなのラウ兄さんに決まってるだろ!」
「キラには聞いていない! どうなんだ! セナ! ハッキリ言ってくれ!」
「えと……いやー」
「俺か!?」
「ラウ兄さんだよね!?」
「あー。まぁ、私的にはどっちも素敵なお兄さんというか。何というか」
「「セーナー!」」
「あぅー! ここは戦線離脱です!」
「待て! セナ!」
「お姉ちゃんから逃げるなんてダメだよ! セナ!」
キラとアスランは逃げるセナを追いかけ、遂に捕まえた時はベッドに三人で倒れ込み、そのまま笑って終わるのだった。
しかし、この日の出来事はアスランの中に深く刻み込まれた。
故に。
XX年後。
「諸君。私がラウ・ル・クルーゼだ。諸君らの所属する部隊の隊長となる……と、どうした。アスラン・ザラ」
「いえ。問題ありません」
「問題のありそうな顔をしているがな」
「いえ。問題ありません」
「そ、そうか」
それからアスランはクルーゼのファーストネームを聞くたびに、かつてのライバルを思い出し険しい顔をしてしまうのだった。