ガンダムSEED~オリ主で主要キャラ全員生存ルート爆走記~ 外伝 作:とーふ@毎日なんか書いてる
(アルバート視点)
初めてセナ・ヤマトという人間に興味を持ったのは、オペレーション・ウロボロスで地球に撃ち込まれたニュートロンジャマーをたった一人の少女が解析し、その無効化装置を作ったという話を聞いた時だった。
周りの人間たちはあり得ないと大騒ぎだったが、私としては正直そこまで驚きは無かった。
コーディネーターにだって優秀な人間とそうでない人間は居るのだ。
単純な話、その少女は普通のコーディネーターよりも優れた人間だったという話なのだろう。
大した話でもない。
しかし、興味が生まれた以上は会ってみたいとも思った。
無能共とは違い、話をする事が出来るだろうからと。
だが。
彼女は何故かコーディネーターだというのに、地球に居るという。
しかもナチュラルの中で生活をしているのだそうだ。
辛くは無いのだろうか。話が通じない人間と共に居る事が。
進化した人類を自称するコーディネーターですら、私の話をまともに理解出来ないというのに、ナチュラルなど、余計に酷いだろう。
だが、彼女はその中に居るという。
そんな選択をしている事がただただ疑問であった。
次にセナ・ヤマトという人間を意識したのは、彼女が開発したというニュートロンジャマーキャンセラーの解析を行っていた時だ。
ほぼ全てが完璧で美しい構成をしている中に、たった一つ奇妙なバグを見つけたのだ。
無論、まったくバグが無く完璧な状態ではないからおかしい。などと言うつもりはない。
どうあっても開発を行っている上でミスはあるし、回避できないバグだって存在はする。
しかし、だ。
このニュートロンジャマーキャンセラーのバグはそういう点から考えると非常に奇妙な物であった。
何故なら、このバグは、ある一定の決まった法則で動かす事により、システム全体を緊急停止させる事が出来るからだ。
安全装置とは違う。
何故ならこれは直接システムの内部に入り込んで、起動させなければ使えないからだ。
故に、バグと私は考えたのだが、それにしてはおかしい部分が多い。
まず、このバグは意味もなくシステムの根幹に関わっている為、取り除く事が非常に困難である事。
次に、巧妙に隠されている為、私以外の人間は誰も気づいていない事。
最後に、おそらくはこの仕掛けを使えば、危機的状況……例えばプラントに再び核が撃ち込まれるような状況になろうとも、即座に緊急停止させられるという事だ。
……。
ここまで考えて、私はセナ・ヤマトという人間をしっかりと調べようと思った。
もしかしたら、ただ、優秀な人間というだけでは無いのかもしれないと。
戦争も激しくなり、飽きもせずに新兵器を、新兵器をと注文が入って嫌になっていた頃。
私は、ようやくまとまったセナ・ヤマトについての情報を見ていた。
最も古く公的な記録に彼女が現れるのは月のコペルニクスだ。
3歳の時、ヤマト家に引き取られたという彼女は、キラ・ヤマトという姉や、幼馴染のアスラン・ザラというザラ議長の息子と共にごく普通のコーディネーターとして過ごしていた。
しかし、10歳の時、偶然月に居たブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルに誘拐され、地球へ行き、エイプリル・フール・クライシスで地球の救世主として表舞台に立った。
それから先は地球軍に協力しながらG兵器を開発し、自身もストライクセイバーという名の機体に乗って、ザフトと戦闘中。
だが、最高評議会としては彼女の才能を考え、ザフトで保護しようとしているとの事だ。
これだけ見ていると、彼女がナチュラルの味方をしている様に見えるが、以前知ったニュートロンジャマーキャンセラーの件を考えると違う見え方がしてくる。
そう。おそらくだが、彼女は戦争を止めようとしているのだ。
地球軍の内部で、核ミサイルが仮に発射されても、それを自身の機体から止める気でいる。
そうとしか思えなかった。
小さな子供の力などかき消されてしまう様な世界で、必死にもがく少女を私は頭の中に思い浮かべて苛立つような気持ちを私は感じるのだった。
最悪な報告が私の所に届いた。
ストライクセイバーが撃破されたとの事だった。
犯人はアスラン・ザラだ。
連合に残されたG兵器の一機、ストライクという機体を討つ際に撃破したらしい。
嘆かわしい事だ。
あれほどの才能がくだらない戦争などで失われてしまうとは。
人はここまで愚かなのか。
使えるかもしれないという事でコックピットブロックとメインシステムは設計局に運ばれてきたが、今更こんな物を見ても、何の役にも立つまい。
……。
しかし、彼女がこの世に居たという痕跡を見る意味でも価値はあるか。
「……ふむ。コックピットが小さいですね」
「セナ嬢はまだ子供だったらしいですからね」
「そうなのですね」
「写真もありますよ。見ますか? 昔の写真ですが、可愛い子ですよ」
見た目になど興味はないが、一応見れば、確かに幼い少女に見えた。
姉と思われる少女や、同じ年代の少年と撮った写真には笑顔が溢れている。
幸せだったのだろう。
おそらくは月に住んでいた頃のものか。
「戦争とは、本当に下らないものですね」
これほどまでに苛立ったのは久しぶりだった。
「そういえば、フリーダムとジャスティスにニュートロンジャマーキャンセラーが搭載される事が決まったそうですよ」
「そうですか」
「あれ? 嬉しくないのですか? これで以前より言っていた通り、フリーダムとジャスティスはその性能を完璧に発揮できる訳ですが」
「今更ですよ。何もかも」
彼女の遺産を使い、戦争を激化させる行為に喜びなどない。
彼女はそんな事を望んではいなかっただろうから。
しかし、己の事ながら奇妙な事に、フリーダムとジャスティスについては完璧に仕上げようと思った。
それが彼女の意思に反する事だと分かっていてもなお、自分自身を止められなかったのだ。
そして、設計局に泊まり込み、作業をしていたある日、私は異変に気付いた。
「……侵入者、ですか? しかし、警報はありませんね。気づかれていない。という事ですか」
偶然閲覧していた場所のプログラムが何者かによって改変されているのだ。
しかも鮮やかな手口で、設計局にも、ザフトにも気づかれていない。
私はちょうど現場に居たから気づいただけだ。
「これは、ニュートロンジャマーキャンセラーの……バグを修正している!? バカな、あれは、そんなに簡単には……」
誰にも修正する事など出来ないと思われたニュートロンジャマーキャンセラーのバグ。外部から任意に緊急停止出来る仕掛けが瞬く間に修正され、初めから存在していなかったかの様に綺麗さっぱり消えてしまったのだ。
しかもフリーダムとジャスティスに搭載された物だけが。
私はその行為に、つい先日決定されたフリーダムとジャスティスのパイロットについて思い出していた。
ザフトが保護したという少女『キラ・ヤマト』そしてストライクを討った英雄『アスラン・ザラ』
どちらも彼女にとって縁の深い人物だ。
まさか。もしかしたら!!
私はいてもたってもいられず、二機にハッキングを仕掛けて来た者を特定しようと動いた。
しかし、彼女は早く、しかも完璧に痕跡一つも残さずに去っていった。
だが。甘い。
設計局にアクセスする為にはどうやっても中継点を通らなくてはいけないし。それは即座に痕跡を消す事は出来ない。
どうやっても残ってしまう物はあるのだ。
そこから特定していけば……。
「場所は……ディセンベルの、ここですか」
私は即座に休暇を取り、彼女が居ると思われる区画へと飛んだ。
そして、町の中を歩きながら、彼女の写真を手に、どこかに居ないかと探す。
……。
我ながらバカな事をやっているなとは分かっているが、それでも止める事が出来なかったのだ。
それから数日間、該当地区を探し歩き、私は遂にあの少女を見つけた。
油断しているのだろう。母親と思われる人間と二人で、変装もせずに歩いている。
私は少女と偶然を装ってすれ違いながら、その言葉を呟いた。
「ニュートロンジャマーキャンセラーには意図的なバグが仕込まれていますね」
そう。それはおそらく世界でも私と彼女しか気づいていない事。
そして、彼女の中では彼女しか知らない事だ。
故に。
「っ!!?」
驚きに満ちた表情で彼女は立ち止まり、私に振り返った。
笑みが止まらない。
ようやく出会えたと。
「……貴方は」
「はじめまして。と言っておきましょうか。アルバート・ ハインラインと申します。セナ・ヤマト」
こうして私は彼女とようやく会う事が出来たのだった。
はい。会話シーンほぼ皆無で笑った。
どうして……どうして……
私にも分からない。
ちなみに、後2話でいったん終わりですが。
それが終わった後は何か思いついたら書く感じですかね。
まぁ、多分書こうと思えば外伝は無限に書けるんですけど。
どうするかな……。悩む。