まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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2話(結婚について話し合い)

 

 次の日の夕食で後片付けをした後、瑠美衣や愛久愛海に ちょっとかしこまった感じで向き合う。久しぶりにビーフシチューを作ったが、2人ともしっかり食べてくれるから作りがいがある。

 

「昨日の話の続きなんだけど」

「ママとパパは結婚したくなりました♪」

 

 アイから2人の願望を伝えてくれる。

 瑠美衣や愛久愛海は普通に頷いてくれた。

 

「ママもパパも行動が早いよね」

「いい意味で欲張りだからな」

 

 それもアイの長所だからな。

 

 愛久愛海はどこか懐かしそうな表情を見せてから、少し心配そうな表情を見せてくる。たまに思うけど、俺たち相手でもお兄ちゃんっぽさを見せるところがあって、それも彼の長所だ。

 

「すでに話し合っていると思うけど、今後大丈夫?」

 

「それはアイドルだからってことかな?」

 

 愛久愛海は、アイのほうに質問のようで。

 彼女が質問を返すと、彼は頷いた。

 

「アイドルはやめて、いろいろやってみようと思うんだ。マルチタレントっていうのを目指して」

 

「へぇー、えっ!?

 ママ! アイドルやめちゃうの!?」

 

 瑠美衣が飛び上がるくらいにビックリしている。共演することを夢見ていて、アイドルのトレーニングも少しずつ行っているからな。愛久愛海も前世からの根強いファンらしいので、悲しんでいる様子だ。

 

「歌手としては続けるよ? でもそろそろB小町自体は解散しようって流れなの」

「ママなら、ソロでもすごいと思う……」

 

 瑠美衣も心のどこかで分かっているのだろう。

 ソロアイドルの大変さというのを。

 

「ありがとね ルビー」

「ううん、ワガママでごめんなさい」

 

 『ごめんなさいしなくていいよ』って瑠美衣の隣に座って、アイはよしよしと撫で始めた。すぐに娘がほんわかな表情になるくらい、ママさんの母性はすごい。

 

「ママは純粋なアイドルじゃなくて、女優とか歌手とかいろいろね。それでも推せる?」

 

 懐かしいな、その質問は。

 瑠美衣に続いて、俺も愛久愛海も頷いた。

 

「もちろん! マルチタレントでも1番になれるよ!」

「お? じゃあ、全部の1番でも目指そっかな?」

 

 やはりこの2人には笑顔が似合うな。

 

「ルビーと共演するときはアイドルに戻るよ!」

「マルチタレントってお得なんだね! 」

 

 素人にあまり詳細は分からないが、芸能界におけるアイは、今とそんなに変わらないだろう。少なくとも変わるのは、B小町は解散して、アイも自動的にアイドル卒業ということくらいだ。

 

「B小町のアイドルとしては引退、それはね」

「外でも隠すことなく、家族4人で出かけられるように」

 

 アイの言葉に続いて、俺が夢を伝える。

 

 瑠美衣や愛久愛海は、まだ不安そうだ。

 

「世間に俺たち家族の関係がバレたら、まあ炎上だろうな」

 

 2人はSNSもやっているから伝わりやすいだろう。特にママのことになると熱くなってしまうから、今回もレスバ? するのだろうか。瑠美衣がネットトラブルに巻き込まれないよう、俺と愛久愛海でよく教えているけど。

 

「この問題は先延ばしにもできるよ。でも、今後どうなるか分からない」

 

 実際に、えーと名前なんだったか。

 そう、カミキヒ君にはバレてしまっていた。

 

「だからバレて、あれこれ好き勝手に言われるより、真っ向勝負してやろうって思ってね」

 

「なんというか」

「パパらしいね」

 

 俺は家族の中で、どういう扱いされているのだろうか。

 

「愛久愛海と瑠美衣も、きっと心無い言葉を言われるだろう。このまま隠し通すことも選べる。ここには嘘のプロもいるんだ」

「褒められた気がしないなー」

 

 アイは困ったような表情を見せる。

 特に瑠美衣に、嘘つきの技術なんて教えたくないだろう。すでに愛久愛海はリスクとリターンを考えているようで、必要に応じて嘘を使えると思うけど。

 

「瑠美衣と愛久愛海にも一緒に選んでほしいんだ」

 

 俺は子どもたちに目線を合わせるように、2人の瞳を見つめる。

 

「数年の間に公表するか、このまま隠し通すか。どっちも(つら)いことでごめんね?」

 

 瑠美衣や愛久愛海は考えこんでいる。

 アイは優しい表情で顔を近づける。

 

「ルビーはどう思う? ワガママでいいよ?」

「私は……」

 

 瑠美衣は、アイの手のひらを握った。

 

「ママとも…… もっと遊びに行きたい」

「うん、休みの日、いっぱい出かけようね」

 

 涙目のアイは瑠美衣を膝に乗せて、いっぱいナデナデを始める。お仕事が忙しくて一緒に過ごせる時間は多くないけど、こういうときの2人はホントに幸せそうだ。

 

 テレビの観光名所の番組を見て、行きたがっている様子もあったが、やっぱり我慢させちゃっているらしい。瑠美衣は前世ではあまり外出していなかったのかもしれないな。

 

「愛久愛海はどう?」

「僕はさっきから父さんに賛成だったよ」

 

 愛久愛海は、挑戦的な笑みを浮かべる。

 

「あれこれ好き勝手に言われるより、僕も真っ向勝負がいいと思うよ」

 

 それな。

 1週間もすれば他の炎上ネタ探しに移るだろう。

 

「僕も芸能界のこういうことを調べておくよ」

「お兄ちゃん、私も協力するね!」

「うちの子たち、優しすぎない?」

「うぅ~ ルビーもアクアもありがと~」

 

 

 俺たちは家族4人で ぎゅ~ とした。

 

 

「さてと、家族としての方針は定まったね」

 

 結局のところ『準備ありで炎上する』。

 その報酬には、いろいろな夢がすでにある。

 

「改めてありがとう、瑠美衣、愛久愛海」

「「どういたしまして」」

 

 瑠美衣や愛久愛海は、気合を入れるような仕草を見せた。

 

「ママとパパの結婚でしょ? 全世界が祝うべき!」

「僕たちが祝うのが1番嬉しいと思うぞ、ルビー」

 

 

 ちょっとかしこまった感じで、2人が並んで立つ。

 

 

「いつもありがとう、愛してる

「ママもパパも愛してるよ!」

 

 愛久愛海と瑠美衣が愛を伝えてくれたんだ。

 ヤバ、嬉しくて涙が……

 

ぅぇ~~ん!!

 

 アイも声をいっぱい出しながら、嬉し泣きを始めてしまった。

 俺も涙でいっぱいでよく前が見えないが、アイが飛び込んでくるのを受け入れる。

 

「みんな愛してるよぉ~~!!」

「よしよし 愛しているよ」

 

 まるで赤ちゃんのように甘えてくるアイを抱っこしてあげる。愛情で幸せが限界突破モードだな。

 

 

 やはり俺もアイも、後ろめたさは感じていない。2人で一緒に選んで、生まれてきてほしいと思った子どもたちだ。むしろこんなに賢くて優しい子たちです、と自慢したい誇らしさすらある。

 

 

☆☆☆

 

 

 瑠美衣と愛久愛海が寝静まった頃に、俺とアイは、パソコンを使って斉藤さんと通話を繋げた。この3人だけで話し合うのは、アイドルになりたいって聞いた時にファミレスに連れていかれたことを思い出す。

 

 今後について、俺とアイの考えを伝えた。

 

 アイがマルチタレントを目指すことや、俺や子どもたちとの関係を公表すること、自分と子どもの関係を誤魔化すような嘘はつきたくないこと、子どもたちも納得してくれていること、そして家族4人で遊園地に行ってみたいこと。

 

「…… まずは社長として話すか。俺の夢は叶ったが、今のB小町の現状は知っての通りだな。ちょうど解散を視野に入れていたところだ」

 

 彼によれば。

 B小町メンバーはセンターを競い合うライバルでもあるが、アイの信者のようになっているようだ。もしアイがいなければ、B小町はドームライブができるまで注目を集めることはできなかっただろう。その実力に嫉妬しつつも、期待は大きかっただろうって。

 

「まっ、今はあいつらにも個人の仕事が大量に来た。ずいぶんと羽を伸ばして楽しんでいるぞ」

 

「ん、そっか♪」

「よかったな、アイ」

 

 寄りかかってくるアイの頭を撫でる。

 たぶんアイが心配すると、逆に怒られるかもしれないぞ、『私は自分の力で輝ける!』って。

 

「おーい、2人の世界にまた入っているぞ。お前らは昔からすぐイチャイチャと……」

 

「えへへ ごめんごめん」

「話を続けましょうか」

 

 ゴホン と斉藤さんは咳払いして、俺たちは表情を戻す。

 

「とりあえず、これはまだ計画段階の話だぞ。2年、いや1年以内には、2度目のドームライブをする!」

 

「「おぉ~!」」

 

 思わず2人でひかえめな拍手をする。

 さすが社長、雰囲気づくりが上手い。

 

「つまり2度目のドームライブで解散にする。日本全国のやつらに、B小町を伝説として刻みつけてやる!

 

 キッパリと宣言した。

 

 無理にグループとしてギリギリまで稼ごうとせず、人気が最高潮の時に解散というのは斉藤さんらしいな。まだ彼には伝えていなくて、今後の瑠美衣次第で、もしかすると未来でB小町は復活するかもしれないけど。

 

 アイは、クスッと嬉しそうに笑った。

 

「ちなみに他のアイドル候補、見つかりそうなの?」

 

「うぐっ、痛いところついてきやがった」

 

 1番目に引いたのがB小町で、しかもアイというSSRのような存在を、街を歩いていて引き当てたんだ。たぶん彼の中で満足できる人が見つかっていないのだろう。しかも社長で忙しくて、自分でスカウトに行けないのもある。

 

「もうミヤコに社長を譲って、スカウトマンになってやろうか」

「あっ、ミヤコママは、今後も私のマネージャーでよろしくね~」

 

 アイは麦茶を飲みながら片手間に伝える。

 斉藤さんはとても苦い表情を見せた。

 

「おい、栗栖、お前はマネージャーに興味ないか? もしくは社長でもいい」

「急に何を言っているんですか、社長」

 

 いやホント、この社長は急に何を言っているんだ。

 

「んー、マネージャーは良い提案なんだけど、ちょっとまた忙しくなるかもしれないから」

 

 アイの呟きに、斉藤さんがギギギと首を動かした。

 

「は? ……え? マジ?」

「いえ、さすがに今の時期は考えていない、はず」

 

 『なんとなくだよ♪』とアイが可愛く言う。

 なんだか将来のスケジュールが埋まった気がする。

 

「そだ、ミヤコママと時期は合わせよっか?」

 

「おいぃぃ!? そいつ真顔で本気(マジ)だぞ!?」

 

「まあまあ、まずは無事にいろいろ済んでからね?」

 

 斉藤さんもすっかり動揺しちゃって、ミヤコさんとの子どもが欲しくなっているのかもしれないな。もしかして、よく女子で話している時って、こういう話もあるのだろうか、俺の母さんを含めて。

 俺、20代にして弟か妹ができるかもしれない。

 

 

 再び斉藤さんは咳払いをする。 

 

「では、関係を公表することについてだが、親として言おう……別の意味で大変になるぞ?」

 

 確実に炎上するだろうな。

 しかもアイは仕事に影響も出てくる。

 

「私1人じゃ(つら)くて、耐えられなかったかもね」

 

 『でもね、お義父さん?』って、しっかりと伝える。

 

「クリス君が隣にいてくれて、愛久愛海や瑠美衣も支えてくれる。一緒に苦難を乗り越えてくれる家族がいるから。他にも力になってくれる人がいて」

 

 斉藤さんやミヤコさん、俺の両親、さらには苺プロの人たち、B小町メンバー、芸能界で親しい人たち、どんどん名前が挙げられていく。

 

 俺たちは思わず涙が出た。

 愛を求めていた少女が、こんなに愛に囲まれている。

 

 そして、アイは幸せそうに笑った。

 

「じゃあドームライブの時に、すでに子どもがいて結婚するので引退します、でいい?」

 

「待て待て、その通りだがストレートすぎるぞ!?」

 

「さすがにそういうの会見ですよね、芸能界?」

 

 たくましさも出てきたらしい。

 そんなところもアイの可愛らしいところだ。

 

 

 

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