まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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6話(星野一家の休日)

 

 会見から数日経過した頃だ。

 アイは3日間のお休みを貰えた。

 

 あらかじめ準備していたのもあって、すでに入籍関連のことは済ませている。俺とアイの気持ち的には16歳の頃から夫婦だけど、家族みんなで名字を『星野』と統一したことで、もっと家族という繋がりを感じていた。

 

 今も苺プロには記者や報道陣だけでなく、テレビ局から連絡が押し寄せているようで、アイのスケジュール調整でも忙しいらしい。絶賛炎上中で長いお休みになるかと思ったが、多すぎる出演依頼が来ているとのこと。

 

 年末年始の番組にすら急遽呼ばれるくらいには、芸能人としての星野アイの活躍が多くの人々から期待されていた。会見後にあちこちの番組に呼ばれて、結婚や今後の話をするときも、さらに生き生きと輝いていたように思える。

 もう一段階、彼女は進化を遂げてしまったかもしれない。

 

 俺にも出演依頼が来ているようだが、タレント経験はないし、アイの評判にも関わるし、とりあえず子どもたちの冬休み期間は育児や家事を優先させてもらった。どうしてもと連絡は続いているらしく、また家族みんなで相談になるだろうな。

 

「ふわぁ~~」

 

 世間で期待の1番星も(うち)ではのんびりだ。

 嘘をつくことに慣れているとはいえ、秘密を隠し通すためには、やはり気を張ってきていたのだろう。最近の仕事疲れでソファに休んでいるけど、たまに起きてきて家事も手伝ってくれていた。

 

「ご飯の準備できたよ、手を洗ってきて」

「はーい、パパ!」

「ん、行ってくるよ」

 

 瑠美衣や愛久愛海はSNSで、たぶんアンチ? に対してレスバ? をしていたらしく、ホントにママのことが好きだ。2人は賢いから、トラブルにはならないよう、言い方や言葉遣いは気をつけてくれているはず。

 

 そんな2人が戻ってきて。

 

「うー、連れてって」

「ママ…」

「母さん…」

 

 甘えたがりで可愛らしいアイを、俺はお姫様抱っこで洗面所まで運ぶ。

 

 瑠美衣や愛久愛海は やれやれとした表情だけど、ここ数日連続でいろいろ疲れているから許してあげてほしい。真夜中になれば嬉々(きき)として挑んでくるけど、反撃を受けているから。

 

「ん、いつもありがと、クリス君」

 

 手を洗ってから、振り向いてアイはキスをしてきた。

 さすがに不意打ちはドキドキさせられる。

 

「ごはんごはん~!」

 

 ルンルンしながら、トテトテと戻っていく背中を追いかける。

 

 水炊きという部類の鍋料理に、3人とも目をキラキラとさせてくれていた。アイドルやアイドル志望が家族ということもあって、あっさりとした味付けが(うち)では定番だ。その条件でどれだけ美味しくできるかが大切で、和食を中心にレシピ本を読んでいる。

 

「それじゃあ」

「「「「いただきます」」」」

 

 俺たちは手を合わせて、箸を持った。

 

 鶏肉や野菜類やキノコ類、それに豆腐などなど

 俺たちは次々とポン酢をつけながら食べていく。

 

「「おいし~っ!」」

 

 アイドルたちが満面の笑みでそう言ってくれて、とても嬉しくなった。今はアイがあんなに幸せそうに白米を食べられているだけでも、幸せに感じるのに。

 

「ルビー えらいね~? お野菜いっぱい食べれて」

「パパが作ると、あまり苦くないもん」

 

 アイも子どもたちも野菜をいっぱい食べてくれるので、やはり料理の作りがいがある。瑠美衣は何かを思い出しながら言っていたけど、前世であまり野菜を食べるのは得意ではなかったのだろうか。

 

「いい出汁(だし)が出ていて、優しい味だ」

 

 『こういうのがいいんだよ』と懐かしみながら、まるで世界に感謝するように愛久愛海は嬉し涙を流してくれる。演技ではなかったら、彼も10秒で泣けるらしい。

 

「お兄ちゃんが感激で泣いちゃった!?」

 

「どうしよう、ご飯すすんじゃう」

 

 アイは白米をいつの間にか食べきってしまっていた。ちょっとだけ葛藤はあったみたいだけど、彼女は俺が差し出した手にお茶碗を手渡してくる。『運動すればいいよね?』って目で伝えてきて、まあキミがそれでいいなら。

 

 白米を受け取って、アイは引き続き食べ始める。

 体力もだんだん回復してきたらしい。

 

「さて、食べながら、明日からの予定でも考える?」

「「ん~~」」

 

 俺の提案に、アイや瑠美衣は考える素振りを見せた。

 たぶん行きたい場所が多すぎて迷っているのだろう。

 

「ママはあと3日休みだっけ?」

「そうだよー 私も冬休みほしいなー」

 

 そうすれば、クリスマスや年末年始も家族で過ごせるだろうにな。

 

「とりあえず明日から完全にフリーだよね?」

「そ! どうせならどこか出かけたいかな」

 

 斉藤さんは、あまり表立った外出は控えてほしいと言っていた。それでアイが止まるとは彼も思っていなさそうだけど。

 

「よく言うじゃん、なんとかを隠すには って」

「木を隠すなら森の中?」

 

 愛久愛海がそう言うと、『それそれ!』とアイはニコニコしている。

 

 アイは左手で横ピースをキラッとした。

 自然な笑顔でとても輝いている。

 

 そしてアイは提案する。

 

「みんなで遊園地に行こう☆」

「遊園地!? ずっと行ってみたかった!!」

 

「どこに行くか考えないとね」

「関東の遊園地… ディズニー以外はイメージがないな」

 

 

 こうして、家族で遊園地に行くことが決まった。

 

 

☆☆☆

 

 

 そして、遠路はるばる栃木県の那須(なす)までやって来ていた。

 

 瑠美衣や愛久愛海が物心… たぶん物心がついて初めて、他県に来たことになる。さすがに公共交通機関を使うのは避けて、早朝から自家用車で向かった。楽しみで眠れない気持ちもすごいだろうけど、アイ含め子どもたちには車でしっかり休んでもらっていた。

 

 ゲートをくぐれば、一瞬で世界が変わったようだ。

 俺にとってまだまだ現実は未知に溢れている。

 

「「わぁ~~~!!」」

「これはすごいな」

「どこから行くか迷うね」

 

 巨大な観覧車やジェットコースターのレール、あちこちが面白そうでワクワクしてくる。

 

「ね! ね! 写真撮ろ!」

「パパもお兄ちゃんも早く~!」

 

 そのうち迷子になってしまいそうなくらい、アイと瑠美衣が喜んでいるので、俺は愛久愛海に歩幅に合わせながら追いかける。

 

 冬休みということもあって非常に混み合っていた。その中でも、アイは全体的にモコモコなコートでニット帽、そして赤色のマフラーを身に着けていて、とても綺麗で輝いて目立っている。マフラーは彼女のお母さんからのプレゼントだそうだ。

 

 他の来園者たちも思い思いに自分たちの時間を過ごしていて、こちらを気にする様子はなさそうだ。人によってはアトラクションへ向かって全速力だから、まるで全アトラクションを制覇しようというくらいの覇気を感じる。

 

 空いているスペースを見つけて、写真を撮ってから。

 

 俺たちはというと、のんびりと楽しみに来たので人の流れに沿って歩いていく。俺とアイ、子どもたちも目を輝かせてキョロキョロとしていた。

 

 

「この鳥なんだっけ」「さあ?」

 4人で緩やかなコースターに乗ってみたり。

 

「ぴょんぴょんしてて楽しい!」

「うおっ!? 結構跳ねるぞ!」

 上下の揺れで愛久愛海がビックリしたり。

 

「クロミちゃんいないのか~」

「私 マイメロがいい!」

 アイと瑠美衣がサンリオトークしていたり。

 

「150㎝あってよかった~!」

「ハンドルから手を離さないで!?」

 アイが愛久愛海を乗せて運転を体験したり。

 

「こんな感じなんだ」

「単調ではあるよね」

 俺と瑠美衣でメリーゴーランドに乗ったり。

 

「マジピョンかわい~!」

「私もウサギだったよ!」

「ドローカード! よしっ!」

「天の川! 良いカードだ!」

 カード迷路ぐるり森大冒険をやってみて。

 愛久愛海がレベル80の(からす)天狗に喜んだり。

 俺は星のお姫様のカードを引いて嬉しかったり。

 

「あはは! たのしーっ!」

「きゃっ! つめたっ!」

「いくらすぐ乗れるからって!?」

「楽しいからいいんじゃない?」

 冬に水のアトラクションで濡れてしまったり。

 

 

 関東の遊園地の中から相談して選んだけど、俺たち4人は ここ那須の遊園地を心の底から満喫できていた。アトラクションの待ち時間もそれほど長くなくて、何よりも3歳以上であればいいという年齢制限が良い。

 

 俺たちは暖房の効いたレストランへ避難して、温かいナスうどんを食べる。だってここ那須だからな。それはさておき、夢中になってちょっと遅めのお昼ご飯になったことでお客さんは少ない。ここである程度は乾くまで休むことができそうだ。

 

 苺のソフトクリームを分け合っているアイと瑠美衣が、愛久愛海にどうかと尋ねて、彼は顔を真っ赤に遠慮していて。

 

 そんな姿を撮った写真もまた、思い出の1つになる。

 

 

 

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