まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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結婚編
1話(小学校入学式)


 

 『家族で那須の遊園地に行ってきたよ♡』って新婚っぽいツーショット写真をアイがSNSに載せることで、また良くも悪くも世間が盛り上がったり。

 

 アイが休みの日に合わせて、クリスマスパーティーをしたり。

 

 お正月に両親や斉藤夫妻と一緒に集まったり。

 アイと瑠美衣と愛久愛海の晴れ着が可愛かったり。

 

 4人でランドセルを見に行ったこともあった。瑠美衣は赤色でデザインに迷ったり、愛久愛海は黒色と青色で迷ったり、俺とアイが小学生の頃を思い出して懐かしんだり。

 

 そういえば、夫婦で出演してほしいという場合に限って、俺もいくつかテレビに出させてもらった。

 アイの評判を下げないよう真面目に取り組んでいるが、スタッフさんだけでなく、SNSに詳しい瑠美衣や愛久愛海も好評だと教えてくれた。挨拶回りをしっかりしていると、たまにアイが『ごきげんななめ』モードになるので、ちゃんとフォローしている。

 

 休みには4人で一緒によく出かけた。

 雪が積もったときは公園で雪遊びもした。

 よくカラオケにも行った。

 たまに有馬ちゃんとも現場で会った。

 

 秋に予定の結婚式会場も予約した。

 

 『気づいているかもだけど アクアとルビーが子どもたちだよ☆』って幼稚園の卒園式で撮った写真をアイがSNSに載せることで、子役の話題どころか、サイリウムベイビーのことまで再び盛り上がった。

 それもあって2人の出演依頼は増えたが、俺が送迎及び付き添いできる範囲で受けている。負けずぎらいな有馬ちゃんはこの話を耳にして、さらに努力するようになったと聞く。

 

 

 …………ちなみにだが、裁判中のカミキヒ君関連で、まるで『芸能界の闇の火薬庫』のように大爆発炎上中らしい。彼が所属していた劇団ララライだけでなく、他の芸能事務所からもいろいろと噂が出ていて、多くの芸能人や芸能関係者が話題にするのを極力避けている。

 タイミングがいいのかどうか分からないが、SNSにおいて多数のアンチ? の矛先は、そういったことに集中してくれていた。

 

 

☆☆☆

 

 

 ついに今日は、瑠美衣と愛久愛海が小学校に入学する日だ。

 

 有馬ちゃんと同じ小学校で、幸運にも今の住所はちょうどいい場所だった。彼女も子役の仕事を続けながら、4月から小学2年生に通うだろうから、2人の幼馴染として仲の良い関係を続けてほしい。

 

 すでに子どもたちは担任の先生に預けている。

 

 事前に学校側へ相談する機会を設けてもらい、瑠美衣と愛久愛海自身が同じクラスを希望した。同じクラスに双子が所属することのメリットやデメリットを俺とアイはいくつか調べて知っているが、賢くて優しいから大丈夫だと2人の選択に任せた。

 

 俺はスーツで、アイは式服を着て、体育館で待機しているが。

 

「分かってたけど 変装は逆に目立つしなー」

 

 そうつぶやくアイが目立ちすぎていた。

 若いこともあって注目されていて『あれって星野アイでは?』みたいな視線が多数ある。

 

 それはそれとして、やはり俺の金髪というのも目立つのだろう。いや、まあ予想していたよりは、目立つ髪色の方は多いらしい。あの女性なんてピンク髪だよね? たぶん染めてなくてそれだよね?

 

 いやはや、この世界はまだまだ不思議だ。『芸能人の子どもが同級生にいるなんて楽しそうね』みたいに面白がられている気がする。この小学校はたぶん、ちょっとした特殊能力持ちも前世持ちも普通に受け入れてくれるかもしれない。

 

「そだ、ビデオの準備できてる?」

「撮影係の人にも軽く教えてもらったんだ、安心していいよ」

 

 そろそろ時間となるときに、アイはデジタルカメラの最終確認をしながら、俺にビデオカメラについて尋ねてくる。卒園式や入学式でカシャカシャ鳴らし続けるのはどうかと思ったので、これらの撮影機器は最近購入した。

 

――― 時間となって

 軽快な音楽が流れてきて、新入生たちが入場してくる。

 

 すでにアイがプルプルと緊張しているので、俺は小さな声で『落ち着いて』と伝える。うちのママさんはどんな撮影でも全く緊張する様子を見せないのに、瑠美衣や愛久愛海のこういう式典では珍しい姿で可愛らしい。

 

 そしてようやくだった。

 2人が入場してきたらすぐに分かる。

 

「ルっ! アっ!」

 

 アイがもう上手く言葉にできていない。

 小さな声で『うちの子 きゃわ~♡♡』とカメラで連写する。

 

 ビデオカメラを動かさないよう慎重に見ると、意外にも瑠美衣もプルプルと緊張していた。子役でも緊張することはないのに、この入学式でママさんにそっくりで可愛らしい姿だ。いつか大人になった頃に、この録画を見せてあげよう。

 

 同じく制服姿の愛久愛海はというと、堂々と歩いていて、俺たちの姿を見ると自然な笑みを浮かべる。俺の隣にいるアイは、心の中が愛情で限界突破してカメラを落としかけていた。

 

「ふぅ~」

 

 キリッとした表情で『どうしよう 今すぐ抱き着きたい』って目で伝えてくるから、俺は苦笑いしながら録画を一旦止めた。2人が座った後ろにも小学1年生たちが座っていくけど、子どもたちの髪は星のように輝いていた。

 

 

―――だいぶ長く感じた入学式後

 先に小学生たちが退場していって。

 いくつか話を聞いた俺たちも教室へ移動する。

 

 

 教室内では小学1年生たちが緊張して、そわそわとキョロキョロしている。

 

 瑠美衣はアイや俺の姿を見つけて『今すぐ抱き着きたい』と目で訴えかけてきた。

 そして一瞬だけ前を向いてから『うへぇ~ 教科書多いよ』という苦い表情をこちらに見せてきて、隣のアイも『うへぇ~ 教科書多いね』って苦い表情で、似た者親子すぎないか。

 

 愛久愛海はリラックスしたように、机と椅子の調子を確かめている。

 ちょっと不満そうな雰囲気が漂っていて、たぶん『スペースが狭すぎる』と思っているのだろう。すでに積まれている教材を興味がてら読もうとしたらしいが、周囲を気にした様子で両手を膝に置いた。

 

 

―――いろいろと話があって

 今日のところは保護者と下校することになる。

 友達づくりは明日以降というわけか。

 

 ランドセルを持ってきていない場合、俺たち保護者が持って帰ってあげることになっている。さすがに小学1年生の子どもたちには、この全教科の教材を運搬することは難しいだろう。

 なので、斉藤さんから借りてきたジュラルミンケースに、2人分を丁寧に入れていく。

 

「やっぱ目立ちすぎじゃない?」

「どうせ目立つだろう、早いか遅いかだ」

 

「確かにアイは目立っているね」

「お待たせ~」

 

 まるで彼女が主役かのように、撮影会になりかけていたようだが、何とか断ってきたようだ。たぶん今後、例えば文化祭で、保護者や生徒のみが参加できるミニライブが行われる気がする。

 

「ルビー! お手々つなごっか?」

「うん! ママとつなぐ~!」

 

「愛久愛海はどうする?」

「せっかくだから」

 

 アイと瑠美衣、俺と愛久愛海は手を繋いで教室から出ていく。

 

 こうやっていても、親子だと見てくれているようで、他の人たちは追いかけてくる様子はない。俺たちが関係を公表する選択をしたことで、こういうことも気兼ねなく、家族4人で思い出づくりができている。

 

 

☆☆☆

 

 

 (うち)に帰った後、それぞれ着替えたり、瑠美衣と愛久愛海は配布物や教科書を自分で整理したり。

 

 俺とアイはご飯の準備をしたり。

 

「ママ? 今日のご飯は何?」

「手巻き寿司だよ!」

 

 入学祝いということで、何かパーティーらしいことを考えた。

 お寿司を買ってくるのも選択肢だったが、アイはお休みということもあって料理をしたい。かといって、お寿司を握ってみるより、もっとパーティー感を出したいという提案だった。

 

 オレンジのパッケージを開けて、粉末のすし酢を白米にかければ、the寿司な香りが漂ってくる。ちょうど最近に有馬ちゃんがキャンペーンガールをしていたので、気になって買ったけど、これなら柔らかめに炊いているご飯でも水分量を気にしなくてよさそうだ。

 

「わー! お兄ちゃん楽しみだね!」

「ああ、そうだな」

 

 そう言って、2人はソファに座って待っていてくれる。

 俺たちは頷いて、ご飯の支度を一度中断した。

 

「ルビーとアクアは小学校に通うようになるから…… ちょっと伝えておきたいことがあるんだ」

 

 アイはエプロン姿のまま、2人に目線を合わせて優しい声でそう伝える。

 瑠美衣や愛久愛海が、ごくりと息をのむ。

 

弟か妹が できるかもしれないの

 

 子どもたちはポカーンとして。

 一度お互いに顔を見合わせた。

 

「もうできてたの!?」

「ちゃんと産婦人科で()てもらった!?」

 

 瑠美衣は予想していたみたいで、愛久愛海はとても重要な話をしているけど。

 

「今回はまだできてないよ!?」

 

 慌てて、アイは顔の前で手を振っている。

 たぶん昔のことを思い出して恥ずかしがっている。

 

「そのうちね? というか本格的に考えてるって話なの」

 

 アイは一旦深呼吸して。

 

「もちろんルビーとアクアのことも愛してる

 

 赤ちゃんが生まれてくる話を、嬉しがる子どもは多いと言われている。でもどうしても赤ちゃんの育児の時間が増えるから、不安に感じさせてしまうことだろう。2人とも賢くて優しいから、我慢してくれると思うけれど。

 

「うれしい、かも」

 

 特に瑠美衣は嬉しさと不安で揺れているようだ。

 

「えと…実感がないっていうか…… 私はお姉ちゃんになるんでしょ?」

 

 『お兄ちゃんはお兄ちゃんだし、弟か妹ができるのは楽しみ!』と笑顔で本音を伝えてくれた。アイはそんな瑠美衣を よしよしと撫でる。瑠美衣は思いやりのある子だから、しっかりお姉ちゃんしてくれるだろう。無理のない範囲でいいけどね。

 

「ルビーえらいね。これからもママにいっぱい甘えてきていいからね?」

「うん! ママと一緒に赤ちゃんのお世話してみたい!」

 

 ママさんと娘で手のひらを重ね合わせて、キャッキャッし始めたし、今のところは大丈夫そうかな。

 瑠美衣は赤ちゃんの育児の大変さを、受ける側として知っている。とはいえ、『まあパパがついてるもんね』とつぶやいて、俺を信頼してくれているようだ。

 

「アクアも甘えてきてね?」

「お兄ちゃんもママに甘えるべき!」

「十分に甘やかしてもらってるよ」

 

 『だから……』と愛久愛海は真っ直ぐに見つめてくる。

 

「母さん、父さん、僕が願うのはこれだけだよ」

 

 俺たちにそう呼びかけて、彼は大人びた表情を見せた。

 

安全に、元気な子どもを……かな?」

 

 懐かしい言葉と、勇ましい姿だった。

 もしかしたら前世は彼なのかもしれないな。

 

「ん、分かったよ! てか、なんだかちょっと懐かしいね?」

 

「あの人も実はどこかで生きてて、元気でいてくれるといいね」

 

 俺が愛久愛海は抱っこしてあげれば、照れてなんだかんだ嬉しがった様子を見せてくれる。身体に精神は引っ張られるから、親には甘えたくなるものだと思う。どんな前世があっても、俺とアイの息子なんだ。

 

「さてと、あとは食べながら準備しようか」

「はい! ママはお寿司の香りで限界なんです!」

「わーい! おなかペコペコだったんだ!」

「母さんもルビーも手を洗ってからだよ」

 

 こうして早めの手巻き寿司パーティーが始まる。

 

 この幸せな日常にもう1人家族が増えるかもしれなくて、もっと幸せになると思う。

 瑠美衣と愛久愛海もいっぱい甘やかしてあげながら、また1年以内には赤ちゃんの育児が始まるだろう。感謝の気持ちを思い出して、1番頑張ってくれるアイのこともしっかり支えるつもりだ。

 

 

 そういえば冬から春になって、ベランダでカラスを見かけなくなったのはちょっと心配だな。

 

 

 

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