まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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・本作品は独自解釈やオリジナル設定を含みます


番外編2 (星野家の5人目の家族)

 

 

 

 瑠美衣や愛久愛海、かなちゃんの運動会を見に行ったり。

 

 みんなであゆみさんに会いにいったり。

 

 俺の母さんが主婦に戻ることにしたり。

 

 季節が秋から冬になって、今年の冬休みは多くの時間を(うち)で過ごしていた。まるで調整したように時期を空けつつ、身内の大人女性陣が揃って妊娠中だからだ。

 アイが年末年始の番組に出演できない分、あちこちで元B小町メンバーが出演してくれたらしい。解散してから1年だけど、アイも混じって事務所で談笑している姿を見かけるのは安心する。

 

 苺プロ社長の斉藤さんがますます忙しいため、今はミヤコさんは俺の母さんたちと暮らしている。

 事務所で主力のミヤコさんが抜けている期間は、多くのスタッフが支えてくれているようで、俺もできる範囲のことを行っていた。

 

 アイの体調管理や家事も手伝ってくれる瑠美衣や愛久愛海にも、とても感謝している。アイが入院した時には再び俺も病院に泊まり込んで、がんばってくれる彼女を支えた。

 

 

 そうして、春に向かって季節は移り変わっていき。

 

 

―――俺とアイの3人目の子ども、星野月愛(るな)が無事に産まれてくれた。

 

 

☆☆☆

 

 

 久しぶりにベビーベッドを用意して、他にも知育玩具やおもちゃを出してきた。やっぱり瑠美衣や愛久愛海にとってはあまり記憶がないらしいけど、この子たちは赤ちゃんの時もアイの番組を見て育ってきたからな。

 

 そんな俺とアイの長男と長女は、妹の可愛さに夢中だった。

 

「きゃ~ お兄ちゃん! こっち見て笑ったよ!」

「天使かって思うくらい可愛いな!」

 

 瑠美衣も愛久愛海も、アイを推す時くらい興奮していて、月愛はうちの新たなアイドルだ。

 

 兄と姉をほほえましく見ている月愛も転生者で、俺たちの言葉を完全に理解している。愛久愛海や瑠美衣がそうだったように、もう少し大きくなれば話せるようにもなるだろう。

 

(天使ではなく、神なのだけれど)

 

 というように月愛は魔力で念話が使えて、今でも俺にはよく話しかけてくる。でも残念ながら、それ魔力持ち相手に専用なので、お兄ちゃんやお姉ちゃんに伝わっていないよ。

 

 どうやらあのカラスの生まれ変わりのようで、東京ではアイや俺が気になって見ていただけで、宮崎のあの辺りに住んでいる神様だったらしく、確かに魔力とは別種の力も持っているようだ。

 まあ(うち)のベランダにご飯を食べに来ていた腹ペコカラスだったので、とても可愛らしい神様なのだろう。

 

「うわ~ もちもち~ ママが赤ちゃんになったみたいでかわいい~」

 

 瑠美衣が月愛の頬っぺを、指で優しくぷにぷにする。

 そしてアイも『私もぷにぷにして~』と俺に甘えてきて、妻の頬っぺも、もちもちで可愛らしい。

 

「アイと同じ黒髪で、瞳や顔つきも似ているな」

「ルナとお揃いで嬉しいな~ 目つきはクリス君なのかな?」

 

 俺と瑠美衣と愛久愛海が金髪で、アイと月愛が黒髪、たとえどっちの色だったとしても愛するけど、なんだか家族で揃ったって感じはする。

 

「ママ! 抱っこしてみていい?」

「ん、じゃあ私と一緒に抱っこしよっか」

 

(早く大きくなりたいものだよ)

 

 ママさんとお姉ちゃんと妹がとても可愛らしい光景でキャッキャッしていて、俺と愛久愛海がスマホのカメラを向ければ、3人は幸せそうな笑顔でピースしてくれる。

 さすがの神様でも、精神は身体に引っ張られるのかもしれないな。

 

「さ、そろそろご飯にしよっか。ママがいい? パパがいい?」

 

 アイがそう尋ねると、月愛は俺を見てくる。

 

「「え~」」

 

 アイも瑠美衣も残念そうだ。

 

「アクアみたいな反応だね~」

「せっかく、おぎゃばぶ…… とにかくもったいないよ?」

 

「ルビー、お前ってやつは……」

 

「それじゃあ、俺が代わろうか」

 

 俺はアイから月愛の抱っこを任されて、愛久愛海がキッチンへ哺乳瓶の準備に行ってくれる。うちのお兄ちゃんも育児慣れしていることだし、またモテモテになるポイントが増えた気がする。

 

「ルナってパパがホント好きだよね」

「そういうところも私に似たのかもね」

 

 瑠美衣は『じゃあ私がママに甘える~』って、アイに抱き着いて撫でてもらっている。

 赤ちゃんの頃を思い出すように甘えているようで、お姉ちゃんから『おぎゃぁ~』って声まで出ちゃっていた。まあ俺やアイにとって、小学2年生になってもずっと可愛らしい子どもだ。

 

(どっちがお姉さんなんだか)

「ほら、父さん」

「ありがとう」

 

 愛久愛海から手渡された哺乳瓶から、月愛は勢いよく飲んでくれる。

 

「「ルナ きゃわ~♡」」

 

 アイも瑠美衣も、可愛らしい口から愛が溢れているくらいメロメロだな。

 ジト目で飲み終わった月愛は豪快にゲップもしてくれて、安心したように身体を預けてくる。

 

 スヤスヤと寝息を立て始める5人目の家族に、俺たちは『愛してる』と優しく伝えた。

 

 

☆☆☆

 

 

 夜泣きすることもなく、月愛は遠慮せず念話で起こしてくれる。

 

 オムツ替えだったり、暇つぶしだったり、こうして一緒に夜空を見上げることが多い。静かにしているときもあれば、この1年くらいで俺たち家族がどう過ごしてきたか尋ねてくることもある。

 

 人を導き運命を司る神様の一柱(ひとはしら)だったり、カラスだった頃に『力』を使いすぎたり、ちょうど転生のタイミングがこの時期になったり、『器』を別の神様に選ばれてしまったり、そういうことも教えてくれたけど。

 

 『3人目くらい普通の赤ちゃんのほうがよかった?』なんて冗談っぽく言われた時に、優しく叱ったこともあった。俺にとっては、たとえ前世があってもなくとも、魔力があってもなくとも、可愛らしい子どもだから。

 

 俺もアイも瑠美衣も愛久愛海も、この子を愛してる

 

(そうだ、聞きたいことがあった)

「というと?」

 

 俺は夜空を見上げたまま、膝の上に座っている月愛へ相づちを打つ。

 

(あの子たちは前世についてどこまで話した?)

「瑠美衣が前世の母親と会ったくらいで、特には聞いていないかな。俺もアイも話したいなら話せばいいってスタンスだから」

 

 俺が答えると、月愛は満足そうに笑みを浮かべる。

 

 過去を思い出して苦しんでいるならともかく、幸せそうならそれでいい、たぶんこの子もそう思っている。カラスだった頃にも2人を気にしていた様子だったし、あの時に病院で会ったのも雨宮先生を見守っていたからなんだろう。

 

(私の器に、キミたちの子を選ばせてきただけはあるよ)

「その神様には感謝だな」

 

 『死者の記憶を赤子の体に移す術を持つ者』に転生させられたと教えてくれたけど、俺も瑠美衣も愛久愛海も月愛も、そういう神様のおかげでアイと家族になれたんだ。

 

(私が導かなくとも、キミが導いてしまうね)

「そう? 芸能界に関しては、3人の努力だと思うし、斉藤さんたちのおかげかな」

 

 この子も、子役をしたくなるんだろうか。

 それも月愛の選択次第だけど。

 

「俺も月愛も今は同じ家族だから、いわゆる運命共同体なんだ。みんながみんなを導く、そんな感じでいいと思う」

(とても人間らしい考え方だね)

 

 『こういうのは初めてだよ』ってつぶやく月愛も、たくさん新しい経験をしていけるだろう。カラスの姿で会っていた頃は、こんな風に話すこともできなかった。

 

 

 俺の手の上に、可愛らしい手のひらが乗ってくる。もしこの子が生まれ変わったことに意味が求められるとしても、たとえ俺より強く成長したとしても、俺とアイは親として全力で守り通してみせる。

 

 

(お父さん、高千穂に大事なものが残っているんだよ)

 

 月愛が優しい声で伝えてくる。

 早速、この子なりに導いてくれるのかな。

 

「それは急ぎ?」

(そうでもないと思うよ。とはいえ、あの森に残しておいても、お兄ちゃんがかわいそうじゃない?)

 

 俺の予想通りなら、雨宮先生はまだ行方不明扱いのようだから、そこに関することだろう。警察も発見できていないようで、もし見つけたとして事情聴取もありそうだ。何日も東京を離れるのは難しいことになるけど、それでもいつかは見つけるべきか。

 

「ん、なら家族みんなで宮崎旅行をしよう」

 

 ライブのツアーでさえ、アイに何日も会えないのは俺としてもさびしいから。

 

「その時に月愛と俺で一緒に探そうか。事情聴取は俺が受けるとして」

(はぁ~ 観光途中に偶然見つけたって言える? 嘘苦手じゃない?)

 

 あきれたように言われてしまって、そういう状況を思い浮かべてみる。

 ……捜査を混乱させてしまいそうだ。

 

「みんなにも近くまでは来てもらって、基本的にアイから話してもらおう」

(それでよし)

 

 月愛も家族思いで、賢くて優しい子だ。

 また俺1人で解決しようとしてしまっていた。

 

「まあ、もう少し月愛が大きくなってからになるな」

(なめんな すぐ歩けるし)

 

 心の底から楽しそうに伝えてくれた。

 

 この子も愛されているって実感できるくらい、家族みんなでいっぱい愛そう。

 

 

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