まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう 作:ヒラメもち
お母さんが帰ってこれなくなって。
こわそうな
しせつという大きなところにお引っこしした。
学校もちがうとこに行くことになった。
「星野アイっていいます。よろしくおねがいします」
これで合ってたみたいで、みんながパチパチと手をたたいてくれた。
よかった、みんなが笑っていてくれる。
みんなが集まっていろいろ話してくる。
名前をいっぱい言われて覚えられそうになかった。まちがったら怒られるから、この学校でも名前で呼べそうになかった。
『どのあたりに住んでるの?』『どの学校から来たの?』とか聞いてくる。まるでクラスの人気者になったみたいだった。
「住んでるとこはないしょ。となりの町の学校から来たよ」
おうちじゃなくて、しせつに住んでるってなんだか言いづらかった。
『じゃあ好きな食べものは?』って聞いてきた。
お母さんの作ってくれるおやつが思いつくけど。
「いろいろ~」
なぜか言えなかった。
好きな本、好きな曲、好きな芸能人、どれも思いつかなかった。
お母さんといっしょにテレビよく見てたのにな。
それからお勉強して、お昼の時間になった。
今日はパンじゃなくて白米だった。
気になって指でつまんだら、カチカチになってる白米だった。
ガラスじゃなくてよかった。
でもどこかにかくれてるかも。
気になってスプーンでさがしてみる。
『何してるの?』ってキョトンとした顔で女子に聞かれた。
「たべてるよ?」
なんでわざわざ聞いてきたんだろ。
白米はあとにして、おかずから食べることにした。
好ききらいしないとほめられるから、私は野菜だって食べれる。
ガラスもなくて、おいしく食べれた。
あとは残った白米がやっぱり気になった。
だいじょうぶそうなところからゆっくりと食べてみる。
牛乳も飲んだらおなかいっぱいになってきた。
『まだ食べてないの?』って女子に言われた。
もうおかたづけしなきゃなんだって。
「もうちょっと」
『早くしてよ、早く遊びにいきたい』って言われた。
なんだかちょっと怒ってるっぽい。
どうすれば許してもらえるのかな。
「食べきれそうにないなら、お残しにいく?」
もう1人声をかけてきたのが、天使みたいな子でビックリした。
髪が金色なのめずらしいや。
「ん、そうするー」
言われた通りにしたらなんとかなった。そのまま天使みたいな子は重そうなカゴを1人で持っていった。
それを見てたら『ねぇドッジボールいかない?』って女子にさそわれた。
さっきとちがって笑顔のみんなも集まってきた。
「私はいいや」
ちょっと休みたかったもん。
『せっかく待ってたのに』って言われた。
あれ、そんなの
「えっと、ごめん、なら早く遊んできて?」
まぁ待たせちゃったのはわるいし。
早く遊んできてほしいと思ってそう言った。
『ちょっとアイちゃん?』『そんな言いかたある?』って言われた。
たぶんだいぶ怒ってると思う。
まぁ言い訳したら長くなるからだまってた。
ほら、先生が来てなんとかなった。
またお勉強して、しせつに帰ってから考えてみる。
新しい学校では友だちと仲よくしたかったのにな。
そうだ、鏡で笑顔の練習をしてみよっと。
☆☆☆
男子のみんなとは仲よくできそうだった。
『けしごむかして』とか、『三角じょうぎかして』とか、よく言われるもん。
たまになぜか他の人から返してくれることもあるけどね。
ほかにも『すきです!あいしてます!』って言われた。
走っていって、遠くで集まってる男子たちと笑い合ってるから、よく分からなかったけど。
すきとか、あいしてますとか、どういう気持ちなんだろ。ドラマでたまに見る言葉を言われても分からなかった。
まぁこれならお母さんに『学校で友だちはできた?』って聞かれて『できたよ』って笑顔で言えるよね。
☆☆☆
お母さんが、しゃくほう?されたんだって。
だからお母さんがむかえに来てくれると思ってた。
でも何日も来てくれなかった。
なにがいけなかったんだろう。
いい子にしてなかったから?
お母さんだいじょうぶかな?
とりあえず部屋で笑顔の練習をしてたら。
いつのまにか朝で、宿題をやってなかった。
冬じゃないのになんだか寒かった。
でも学校を休むのは、お仕事してるお母さんに電話がかかってきちゃうかも。
とりあえず学校にいこうと思った。
「あれ……」
ランドセルをわすれたことに気づいた。
えっと、今から取りにいったら何分かかるだろ。
時計を見てもうまく数えられなかった。
どうすればいいのか分からなかった。
「……星野さん、保健室で休む?」
「ううん、だいじょうぶ」
私はいい子でいるためにも。
学校は休みたくなかった。
とりあえずその男子の言う通りにしてた。
机を引っつけて、教科書を見せてくれて。
その日はホントにだいじょうぶになった。
教科書とかに書いてる名前を何度も見てたら、『月村
私はだいじょうぶだから。
お母さんもだいじょうぶだといいな。
☆☆☆
お母さんがいつ迎えに来てくれるかは分からない。
たぶん私の中で、あきらめ半分と期待半分ってとこ。
私がちょっと大人になったからなのかな。
たまに学校で困ったことがあると、その中には『いじめ』があったんだとも分かってきた。
他にも文房具を借りたがるのは嘘
まぁ先生やクリス君に言えば何とかなったし。
私の嘘も上手くなってからは女子とも話せるようになった。話を合わせていればいろいろ聞けて楽しいし。
施設で似たようなことがあっても、大人に言えば何とかなったけど。
でも、なんだか施設にいづらくなった。
早めに帰らないように外で時間をつぶす日も多くなった。おこづかいは少ないけど、お店を見るのも楽しかった。
「ねっ放課後、ひま?」
他の子たちがそうしているのをマネして、私もクリス君を遊びに誘ってみることにした。
帰り道も同じ方向みたいで、話してて気が楽だから。
「どこに行くか決まっている?」
「どこでも~」
まぁそんなにお金ないし、どこでもというわけにもいかないけどね。
そこはさすがのクリス君だから分かってくれる。
あちこち街を歩いたり、公園でひと休みしたり。
学校であったことを話したり、お互い静かになってる時間すら楽しかったり。
家族でボール遊びをしている姿がふと目に入った。
うらやましいなとたぶん思った。
昔は私もお母さんと公園で仲良く遊んでいた気もする。あの怖そうな男の人が家に来てからはそういうの少なかったけどね。
あの男の人とは別れたのかなって思うと。
クリス君もいつか離れていっちゃうのかなってちょっと不安になる。
私は嘘
「ねぇ」
「ん?」
私、何を話そうとしたんだっけ。
クリス君はゆっくり待っていてくれて優しいな。
こんなゆっくりした時間がいつまでも続いてほしいような感じで。
あと1年もしないうちに卒業なんだなって思って。
「ねっ、キミはどこの中学に行くの?」
いつのまにか、そんなことを聞いちゃってた。