まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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番外編4 (斉藤ミヤコの日常)

 

 東京に憧れて、いろいろな経験をして。

 苺プロで働くようになって、壱護と結婚して。

 義理の娘ができて、しかも孫までできて。

 

 まさか、私も子どもを産むなんて思わなかった。

 

 想像以上に子育ては大変で、まるで愛衣(メイ)に元気が吸われるよう。

 夜泣きで何度も起きることになって、交代で休まないといけなくて、私も壱護もお酒を飲む暇すらない日々が続いている。そういう生活を幸せに感じる。

 

 月村さんたちの次男の碧斗(アオト)君も元気いっぱいで、私が仕事復帰してからは2人分の子育てを任せることになっている。

 アイやクリス君もお互いに支え合いながら、16歳の頃から子育てをしていたのよね。あの2人も、ルビーやアクアも、だいぶ大きくなった。

 

 今ではアイも楽しそうにお菓子作りをしていて、すっかり3人のママって感じがする。ウェディングドレスまで着てくれて、あの子が幸せになってよかったわ。

 身内以外だと、いろんな嘘をついちゃって、我慢強い子だから。

 

 今日も子どもたちを小学校に迎えに行けるって、うきうきしてるわね。

 

 特にルビーは金髪で、アイの顔立ちに似てきているから、将来的にどうしても隠しきれなかったかもしれない。ダンスのセンス、母親譲りのルックス、それでいて元B小町センターからの英才教育、言っちゃなんだけど芸能人として末恐ろしいわね。

 アクアもまだ小学生なのに、苺プロや五反田監督の手伝い、そこに子役も続けている。たまに最新の医学書を読んでいたり、父親やぴえヨンに混じってトレーニングしていたり、いくらなんでも文武両道すぎないかしら。

 

 それはさておき3人目のルナちゃんって子は、まさしくアイの娘という髪の色をしている。両親が周囲を惹きつける輝きを持っているように、この子も今から将来有望な容姿だって思える。

 もしルナちゃんも子役をするなら、うちの会社の子役のレベルはずっと高いままでしょうね。

 

「落ち着きなよ、話せば分かるから」

 

 アクアとルビーの兄妹のように、ルナもホントに早熟な子なのよね。うちの子も、月村さんたちの子も、ようやくハイハイができるくらいで、しゃべる段階までいっていないもの。

 

「や、やめろぉー!」

 

 ハイハイで追いかけっこをしていたけど、とうとうルナちゃんは捕まっちゃったみたい。

 

 うちの子たちと じゃれあっていて、ケガをする前にそろそろ止めましょうか。

 

「メイ、アオト君、こっちですよ~」

 

 私が積み木やぬいぐるみを揺らすと、メイやアオト君がこちらを見る。

 

 キャッキャッと2人の興味はオモチャに吸われてくれた。こういうの、どんどん買い足さないとならないわね。また遊ぶのに飽きて、ルナちゃんを追いかけ始めたら大変だから。

 

「赤子だから仕方ないけど… 」

 

「娘たちがごめんなさいね」

 

 肩で息をしているルナちゃんの髪を手櫛で整えてあげる。

 

「まったく、私が慈悲深い神でよかったよ」

 

 それにしてもキャラづくりかと思っていたけど、このサラサラな髪だったり、超早熟なところだったり、たまに神秘的なところだったり、もしかすると本当に神様なのかしら。

 

「ちなみに神様というのは本当にいるの?」

「当然、多くの神がいるよ。例えば、世界を作った神様、魂という概念を生み出した神様、ほかにも ―――」

 

 なんだかスケールが大きい話を始めたわね。こうやって撫でていると、なんだかご利益(りやく)があるように思えてくる。

 

「ルナ、おやつできたよ~?」

「待ってました!」

 

 にぱ~ って笑顔で、アイがいるキッチンにトテトテ向かっていった。

 

 そんな姿を見て、最近の赤ちゃんの中にはグルメがいるんだと思った。お昼寝から早めに起きたと思ったら時代劇も真剣に見ていたし、ルナちゃんもどこかの番組かyoutubeに影響されたようね。

 ルビーやアクアも赤ちゃんの頃から難しい言葉を使っていたし、時代かしら。

 

 メイやアオト君と一緒に遊んだり、ミルクを飲ませたり。

 そうこうしていると、車を駐車する音が聞こえてきて。

 

「「ただいまー」」

「おかえり~!」

「おかえりなさい」

 

 昼からクリス君たちが親子で買い出しに行ってくれていて、その大荷物を食事用のテーブルに置いていく。まさしく3世帯分になると、もの凄い量になる。

 

 アイったら、彼に甘えにいく表情は可愛らしい女の子のままね。

 

「いつもありがとうございます」

「いいのいいの」

 

 そう言いながら月村さんはアオト君に目線を合わせて『ただいま』って伝えている。

 

 アイやクリス君もルナちゃんとお話をしながら、荷物を各家庭用に仕分けている。

 

 いつも昼間は預けることになっていて、私は、ちゃんとメイのお母さんをやれているのかしらね。

 

 

☆☆☆

 

 

 東京の街は上から下までキラキラしていて、こんなにいい部屋に住んで夜景を眺めることができる。

 

 今の私がいるのは、あのとき彼が声をかけてくれたから。

 

『これからも俺を支えてくれないか』

 私に居場所を作って支えてくれた。

 

『お前が支えてくれるっていうなら―――』

 私に夢をくれて、生きがいができた。 

 

『いつかこのドームをサイリウムで染め上げる! みんなの夢だ!』

 1番(きら)めく景色を本当にみんなで見れた。

 

「ただいまぁ…! 」

 そんな彼が、汗まみれで、いつも慌てて帰ってきてくれる。

 

「おかえりなさい」

 

 壱護はスーツを私に渡して、タオルを受け取って。

 汗を拭きながらメイに近づいていく。

 

「お~ パパが帰ったぞ~」

 

「手と顔くらい洗ってからにしなさいね」

 

 笑顔で喜ぶメイの顔の前で手を振るくらいはさせてあげてから、さっさと彼を洗面所へ向かわせる。

 

「晩ご飯は?」

「んなもん、全速力で買ってきた」

 

 そう言って、彼は玄関のカバンに乗せたコンビニの袋に、親指を向けた。

 

「もう、作るって言ってるのに」

「お前も明日早いからいいんだよ」

 

 メイが起きているうちにって、私を早めに休ませたいからって、すっかり頼れる父親なのよね。

 

 一緒に住むようになってそのうち禁煙していたし、娘にイヤがられないように髭もちゃんと剃り始めたし、あのサングラスも仕事でしか身に着けなくなったし、私服のセンスもちょっとマシになってきたし。

 

 最近カッコよくも見えてきたけど、まあ昔から性格くらいはイケメンだったかも。

 

「メイぃぃ!!」

 

 苺プロのタレントたちを全力で支えたり、アイやメイのことも心の底から愛していたり、ホントに(きら)めくような笑顔なのよね。

 

「じゃあ私は少し休むから、これ飲んでおいて」

 

 ミックス野菜ジュースをケール多めで作ったものくらい、ちゃんと飲ませて健康でいてほしい。

 

「シャワー浴びたら換気扇忘れずに。メイが眠たそうにしていたら寝室に移動させるように。夜泣きした時は私を起こすように」

「おーう、いつも通りやっておくぞ」

 

 壱護を少しでも寝かせてあげたい。

 そのためにも、私は早く休んでおかないと。

 

 起きたらまずは洗濯を...

 

「ああ。そうだ、ミヤコ」

「え? ちょっ!」

 

 

愛してる

 振り向いたと同時に、不意打ちされた。

 

「ええ、愛してる

 この言葉やキスが、確かに幸せだなって思う。

 

 

 アイには『ミヤコママきいてきいて!』って惚気(のろけ)話によく付き合わされた。今ではその気持ちもよく分かる。だって、こんなにも心が満たされて、幸せだっていっぱいいっぱいだもの。

 

「あー、なんだ、お前に支えてもらって、俺はようやくカッコつけれるんだ」

 

 急に改まってどうしたのよ。

 昔から十分すぎるってのに。

 

「いつもありがとうな、ママさん」

 

 それが私を安心させてくれる。

 最近の悩み、吹き飛んじゃったくらい。

 

 これからも一緒にどんなことも乗り越えてくれるって思える。アイたちや月村さんたちより新米だけど、それでも私たちなりに、メイに愛情を注いでいけばいいのよね。

 

「それはお互いさまよ、パパさん」

 

 決してもうビジネスだけじゃなくて。

 ちゃんと私たちは夫婦としてもパートナーだって実感できているから。

 

 

 

 

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