まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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番外編6 (旅館)

 

 予定通りアイが中心になって警察に話してくれて、観光途中に発見したことで話が進んでいった。

 

 それにしても(ほこら)の裏であって、かなり入念に隠されていた。何年も発見が遅くなってしまって申し訳ないけど、まあ幸運にも本人から『気にしていない』と言ってくれている。

 それよりも古びたキーホルダーが無事だったことに安心しているようだ。

 

 残念ながら俺たちに形式的な雨宮家との繋がりはなく、これからのことは関与することができないだろう。前世から実母や祖父母は永代供養にしていたらしく、そこに埋葬されることが望ましいことではあるけど。

 

 とにかく、東京から遠く離れていても、家族みんなの思い出の地なんだ。だから何年かごとに、お墓参りにみんなで旅行に来ようって話になった。

 

 

―――そして宮崎旅行 2日目の夕方

 

 疲れを癒すため、宿泊する旅館にやってきた。

 

「こういうの初めて~」

「ひゃ~ 畳だ~」

 

 俺が残りの荷物を運び終えると、アイと瑠美衣がキャッキャッと寝転がっている。あれこれあったから、みんな精神的にも疲れていることだろう。

 

 愛久愛海や月愛も机の前に並んで座っていて、落ち着いた雰囲気でお茶を飲んでいる。赤ちゃん用の椅子で優雅に湯呑みを持っている姿は、もしSNSに載せれば相当バズるのではないだろうか。

 

 俺たち用にもお茶を淹れてくれていて、こういうところで飲むとなんだか普段より美味しく感じる。

 

「これ可愛い~」

「ふわふわ~」

 

 ウサギの小物を握ったり、イヌのぬいぐるみを抱えたり、巨大なクッションに座ったり、アイと瑠美衣が赤ちゃん用のサービスを楽しんでくれている。

 せっかくだからと積み木でも遊び始めたので、俺もそこに混じる。カラフルなお城の形にはしてみたくらいではあった。

 

 愛久愛海と月愛は持参していた将棋セットで対局を始めていて、たまにパソコンでも行うくらいに最近の2人の趣味になっている。

 

 ゆったりとしているうちに夕食の時間となって、部屋に料理が運ばれてきた。芸能人たちの身バレ防止で部屋食ができて、赤ちゃん用サービスがあるところ、そういう理由でこの旅館を選ばせてもらった。

 

 離乳食もまるで会席料理のように並んでいて、事前にお願いしたように和風にしてくれている。

 

 牛ステーキ、煮物、漬物、茶碗蒸し、お吸い物、お餅などなど、何よりも炊き込みご飯でよかった。アイは(うち)ではともかく、外で食べる白米が得意というわけではないから。

 

 あの竹に入っているのは、鶏肉やネギの蒸し焼きだろうか。アイや瑠美衣がスマホでカシャカシャ撮っていて、料理は見た目でもプロが作ったって分かる。

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

 俺たちは手を合わせて、お箸を持った。

 

「竹が器なんだね」

「いい香り~」

 

 早速気になる料理を食べてみる。

 しっかりと竹の(さわ)やかな香りがあって、地鶏の美味しさがますます感じられた。

 

「やっぱり高千穂といえば、かっぽ鶏だよ」

「話には聞いてたけど 私は初めて!」

 

 愛久愛海は懐かしそうに味わっていて、瑠美衣は感動しているようだ。月愛も竹に入っている鶏団子を、モキュモキュと幸せそうに食べている。

 

「郷土料理なの?」

「そうだね、母さん」

 

 愛久愛海によれば、高千穂では竹のことを『かっぽ』と呼ぶことから、そういう名前になったらしい。こういう郷土料理はちょっとしたイベントで食べられていて、ちょうど今の時期から始まっている夜神楽(よかぐら)でも出されるようだ。

 

「何(はしら)か、うろうろしていたよ」

「なんかすごい話を聞けた!?」

「だから()られている感覚があったのか」

 

 天照大神を祀る天岩戸神社、芸能や縁結びにご利益(りやく)があるとされる荒立神社、なにかと神話が残っている土地だからな。

 神様の一(はしら)が元気で幸せかどうか、月愛の様子を見ているのかもしれないな。

 

「えっ、じゃあ今も見られているの?」

「さあ? よほど高位なら、私では察知できないから」

「何にせよ、神様には日頃から感謝しないとな」

 

 愛久愛海や瑠美衣が手を合わせて拝むと、月愛がふふんって満足そうだ。

 神社ならともかく、不特定多数の神様に感謝を向けているなら、すぐ隣にも届いているのだろうか。

 

「ねぇルナ、食べ物の神様とかいるの?」

「それはもちろん。厳密には豊穣の神様などだよ」

 

 『じゃあ味わって食べないとね』って笑顔で、どんどんアイも食べ進めてくれる。

 

 

☆☆☆

 

 

 部屋にはお風呂がついていて、家族風呂になっているようだった。

 

「ママとパパとお兄ちゃんと妹と、温泉って幸せすぎる~」

「だね~ 家族みんなで幸せすぎ~」

 

 くるくると髪をサイドでまとめたアイと、ポニーテール風に髪を結んだ瑠美衣が、肩を寄せ合ってお風呂に()かっている。アイはまだまだ若々しく綺麗で、瑠美衣も可愛らしい。

 

「おうちと違ってまたいいよね~」

「ね~ ごくらくじょうどぉ~」

 

 ピンク色のタンキニの水着なアイの刺激が強すぎた。

 のほほんとしてた表情が可愛いし、健康的な素足は美しいし、色白な肌は綺麗だし、ほどよく柔らかい身体つきだし、髪が濡れて色気が増しているし。

 

 水色のワンピースの水着な瑠美衣もまるで天使のようで、将来はママさんに似て可愛らしい美人に育つことだろう。

 

「月愛、熱かったらすぐ言ってね」

「分かっているよ~」

 

 水色でフリル付きの水着の月愛を抱っこしてお風呂に入っているから、俺はその体調管理が最優先だ。赤ちゃんらしくもちもちしていて、とろけるように肩の力を抜いている。

 

「ルナきゃわわ!」

「ゆるキャラみたいで きゃわだね!」

「誰がゆるキャラだよ」

 

 普段クールな娘だから、リラックスしているとギャップ萌えってことだと思う。

 

 そして長女は『それにしても』って、兄をじっくり見始める。

 

「うへへ お兄ちゃんせんせがまだ小学生かぁ~ 可愛いなぁ~」

 

 ブクブクと愛久愛海は軽く顔をお湯につけていて、頬っぺは真っ赤になっていた。

 水着を着ているとしても、アイたちが魅力的だから気持ちはよく分かる。成長すれば美人三姉妹みたいになりそうだ。

 

「そだ、ママ! お兄ちゃんが子どもの頃の写真、今度見せて!」

「ん、いっぱい撮ってるよ!」

 

 そんな母娘の会話に、愛久愛海は『父さん、なんとかしてくれ』って目で伝えてくるけど、身内は女性陣が基本的に押しが強いから。

 

「それにしてもパパって、すごい筋肉だね」

「でしょでしょ~ 体力もすごくてね~」

 

 とあるジムの街雄鳴造さんから、筋トレの極意を教えてもらってからは、限界を超えて鍛えられている。ぴえヨンもアドバイスを定期的に受けることで、すでに筋肉の大きさを自由自在に変化できるようになっていた。

 

「お兄ちゃんも鍛えているし、今のうちに可愛さは堪能すべきだよね! さっ、ぎゅ~しよ!」

「どうしよう、妹が吹っ切れてきたんだけど」

 

 ますます瑠美衣は重度のブラコンになったようで、その想いに応える愛久愛海もシスコンだと思う。2人揃ってマザコンでもあるし。

 

「俺たちがお手本だったかもね」

「だよね! まあ愛がいっぱいでヨシ!」

 

 俺もママさんも公認だから、兄妹でたくさん愛し合ってほしい。将来的にどこまで深い関係になるかは分からないけど、ずっと仲良しでいてくれるだろう。

 

「じゃあママは、ルナとクリス君を可愛がってくるね!」

 

 隣にアイがやってきて。

 月愛を挟むように抱きついてくる。

 

「なら私はせんせ~!」

「飛び込んできた!?」

 

 押しが強いところも瑠美衣はママさん似らしい。愛久愛海はその身体を何とか受け止めて、大人の表情でなでなでする。

 

「仲良きことは美しきかな」

 

 2人で抱っこしている月愛が満足そうに、つぶやいた。

 

 

☆☆☆

 

 

 さて、子どもたちは疲れもあって、お布団に入ってスヤスヤとしているので。

 

 俺たちだけで、再び脱衣所にやってくる。

 

「我慢してた?」

「そっちこそ」

 

 浴衣姿のアイはとても綺麗で可愛らしい。

 優しく触れて、ゆっくり着崩していった。

 

 

 





あとがき
・過去にあった推しの子と温泉のコラボを参考にしました。特にアイのイラスト2種がよき。
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