まぁ我慢強い勇者ならどんな苦難も乗り越えてアイドルを推せるだろう   作:ヒラメもち

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番外編8後編 (瑠美衣視点)

 

 2代目B小町は、私とかなちゃん、そして新たにメムちゃんでメンバーが定まって、デビューに向けてトレーニングを続けている。せっかくだから、ママから合宿しようって提案があったんだけど。

 

 私たちは危機的状況ってやつだった。

 シャワーを浴びて、私の部屋からリビングに戻ってみたら。

 

「晩ごはん楽しみにしてたのに~!」

「はぁ~ あの人たちらしいわね」

「てことは、この3人だけで合宿?」

 

 『2日目のお昼まで 3人でがんばってみてね☆』って伝言と、デフォルメされたウサギ付きのサインが書き置きが机にある。ママがアイドルとしてサインを書くのは数年ぶりだろうから、このサインはプレミア価格待ったなしだよ。

 

 あ、じゃなくて。

 ママ、それにお兄ちゃんやルナがこういう計画を立てていたんだろうね。あの隠し事が苦手なパパには直前に知らせるとして。

 

 うわっ、しかもカラスがベランダにいる。

 あれってルナのペットみたいなものだから、私たちの様子が筒抜けじゃん。ドッキリ企画か何かだよこれ。

 カラスは夜目がきかないってお兄ちゃんが言ってたのに、入れ替わるように飛んできてるや。

 

「こっちは今日やったトレーニングの一覧ね。つまり私たちで継続的に実践しろってこと」

「まあアイさんもぴえヨンさんも、忙しいもんねぇ」

 

 確かにママたちB小町を超えるためには、ずっとおんぶにだっこじゃいけないね。

 

 でも、何よりも危機的状況なのは。

 お腹がぎゅるる~ って音を立てていることだ。

 

「ねぇルビー、料理をしたことは?」

「得意料理は目玉焼きだよ!」

 

 いつだってアイドルは笑顔、かなちゃんの質問に明るく答える。ポーズは横ピースで表情もばっちりだと思う。

 

「…… ウーバーか何かを頼みましょうか」

「あっ、大根おろしもできるよ!」

 

 というかかなちゃんだって、いつもパパかお兄ちゃんに作ってもらってるじゃん。

 

「あんた、もう家庭科で生姜焼きくらい習ったんじゃない?」

「同じ班でお兄ちゃんが焼いてくれた!」

 

 『ブラコンとシスコンが』って、アイドルがしちゃマズい表情だよそれ。

 『うっ… そんなのあったねぇ…』って、メムちゃんが胸を押さえている。

 

「それに、何かあるでしょ、冷凍食品とか」

「アイスならいっぱい買い込んでるよ」

 

「まー待ちなよ、ここは私が作ってさしあげよう」

 

 メムちゃんは料理ができるんだ!

 大人っぽくオシャレだし女子力も高そう!

 

「そうだねぇ…」

 

 メムちゃんは冷蔵庫を確認したり、棚を確認したり。

 野菜室からはお野菜を手に取ったり、ふむふむとしてる。

 

 でもパパって、凝った料理を作りがちなんだよね。ということは食材もそういうのを買っておいたんだと思う。

 

「うどんって簡単に作れて美味しいよね」

「「それでいいや」」

 

 お腹がすいていることだし。

 

 

☆☆☆

 

 

 ご飯のあとは、私の部屋のテーブルを囲んで、もふもふクッションの上に座り込んだ。

 星がデザインされたナイトキャップもバッチリ装備しておく。

 

 かなちゃんはレースがついたパジャマで可愛いし、メムちゃんは水色で襟付きのパジャマで大人っぽくて綺麗だった。カラコンを外してると、ちょっと雰囲気が落ち着いた感じで、そういうイメチェンもギャップがあってなかなか良いね。

 

 まあ私だって、黒色の伊達メガネでクイクイできるんだから。

 

「ルビーちゃんは眼鏡も似合うねぇ」

「でしょでしょ!」

「見よう見まねにしてはマシだけど、まだまだよ」

 

 本物のメガネクイッは、カッコよすぎるもん。

 

「こんな風に、切れ味があるのよね!」

「おおっ! さすが役者のプロ! それっぽい!」

 

「この2人はメガネオタクだった…?」

 

 かなちゃんも青色の伊達メガネをかけて、いつもよりインテリに見えるね。メムちゃんが首を傾げてるけど、私はメガネオタクじゃなくて、お兄ちゃんせんせオタクだよ。

 

「それじゃあ話し合いを始めよっか!」

「そうね。早めにいろいろ決めておきましょう」

 

 それぞれのモチーフのカラーとか、どうセンターを決めていくのかとか、だっけ?

 

 まあ、カラーについてはもう決めてるんだ。

 

「やっぱり私は赤! ママと同じ色にするって決めてた!」

 

 2回のドームライブのことは鮮明に覚えている。

 ママのメイン曲の時に、愛で包まれるように、会場が赤1色だったから。

 

「2人も赤色がよくても、譲らないからね!」

 

「さすが親子っていうべきなのかな?」

「気を付けなさい。ある意味、アイさん以上なのよ」

 

 『こいつはドルオタでアイドルバカだから』って、かなちゃんに褒められて嬉しくなっちゃった。執着っていうのかな、アイドルへの情熱は、ママにだって負けないつもりだから。

 

「ん! ずっと、ずーっと昔から憧れてたから!」

 

 (つら)い時は、もう未来に希望も何もないと思っていた。

 

 でも、せんせに出会えて、一緒にドルオタやって、胸の中が『好き』って気持ちで満たされた。

 生まれ変わって、ママやパパやお兄ちゃんから『愛してる』を感じさせてもらった。

 

「推しがいると世界が輝く! アイドルは生きがい! 『愛してる』って伝え合えば、みんながハッピー!」

 

 ママとパパとお兄ちゃんせんせとルナ、おじいちゃんたちやおばあちゃんたち、それにお母さんやお父さんや弟妹(きょうだい)、そして全国のファン、さらには全世界に愛を伝えてみせるんだ。

 

「ほら、世界で1番のアイドルバカでしょ」

「なにを~! こっちも年季が違うんじゃ~い!」

 

 メムちゃんから実年齢は聞いてて、アイドルの情熱の強さにはビックリした。ルナからのスカウトらしいけど、ドルオタ仲間って感じで嬉しいんだよね。

 

「『アイドルになりたい』って気持ちには、私だって自信があるし」

 

 そう言いながら、黄色ってスマホに打ち込んだらしく、その画像の1つを見せてきた。

 

「1番注目されて、いかにファンを獲得するかが、センターに求められるじゃん? 上手く賢く図太くないとねぇ」

 

 髪色もそうだけど、黄色で元気な明るさが伝わってくる。はっ、ちゃっかりセンターの話まで切り込んできてた、これは小悪魔キャラでずぶといよ!

 

「ダンスが上手くて、正統派アイドルこそがセンターになるべき!」

「今の時代はそれ以外、例えばトーク力も大切なんじゃないかな?」

 

「あらあら、2人揃って夢見がちな女の子ですこと、芸能界はそんなに甘くはないわよ」

 

 かなちゃんまでセンター争いに乗ってくるのかな。

 メガネで頬杖のポーズがカッコよくて、ぐぬぬ…

 

「愛を伝えるのはB小町として基本事項であって、誰よりもファンを獲得することも正しいわね」

 

「「ふむふむ」」

 

 あれ、私たちの考えを肯定されて、思わず頷いちゃった。

 

「求められるのは究極の完璧さよ。それこそがアイさんのセンターを不動なものとして、ドームライブまで行けた理由でもあるんじゃない?」

 

 うっ、その話を出すのはズルいよ。

 ママからいろいろ学ぶようになって、かなちゃんは普段の演技もすごく上手くなってるんだもん。

 

「カリスマのようなものね。誰もが目を離せなくなる、視線を釘付けにする。そうすれば、(おの)ずとファンが付いてくるわ」

 

 そして、かなちゃんは楽しそうに笑顔を見せる。

 太陽のような輝きを持つ女優として、天才子役の頃からネームバリューだってあるけど。

 

 その裏ではとっても努力家で、忍耐力だってすごいし、演技を心の底から楽しんでもいるし。

 

「私、使えるものは全部つかうタイプなの。あんたたちは引き立て役になりすぎないことね」

 

 白色のハンカチを指で挟んで見せてきた。たぶん『紅白』って言葉があるように、ライバルだってことを意識してきている。私だけじゃなく『星野アイも超えてやる』って熱意も感じるけど。

 

 ママを超えるつもりなのは、私も同じだから。

 

「望むところ~! 愛でセンターになってやる~!」

「気持ちと『年の功』でセンターもぎ取ってやら~!」

 

 せっかく人生最初で最後のアイドル活動だもんね。

 ライバルな仲間たちがいて、楽しいのが幸せ!

 

 

 

「そだ、お兄ちゃんせんせに、もう私用の赤色のサイリウム買ってもらってるんだ~」

「……別に? 推し増しさせればいいし? 白の割合であんたに勝てばいいし?」

 

「2人とも強敵だけど、隙は多そうだねぇ~」

 

 

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